また本大会への道のりが始まった…/原ゆみこのマドリッド

2021.03.27 22:30 Sat
©Atlético de Madrid
「やっぱり観客が入るかどうかは場所次第なのね」そんな風に私が溜息をついていたのは金曜日、今週始まった2022年W杯予選でスペイン代表が日曜にプレーするジョージアのディナモ・アレナ(ディナモ・トビリシのホーム)では、キャパの30%までという制限はあるものの、すでに1万5000枚のチケットが完売御礼となったという記事を見つけた時のことでした。いやあ、TVのニュースでチラリと見たいくつかの予選映像では、ワクチン接種が超スピードで進んでいるイスラエルなど、テル・アビブでのデンマーク戦がほぼ満員状態。先日、アトレティコがCL16強対決チェルシー戦1stレグのホームゲームをやったブカレストのスタディオヌル・ナツィオナルでのルーマニアvs北アイルランド戦もスタンドにかなりの人がいたんですけどね。

今週末からセマナ・サンタ(イースターウィーク)に合わせて、またしても国内移動規制のかかるスペインなど、当然の如く、3月の代表戦は無観客。木曜に行われたロス・カルメネス(グラナダのホーム)でのギリシャ戦も来週水曜、セビージャ(スペイン南部)のカルトゥーハでプレーするコソボ戦もファンはまったく入れず、大体がして、やはりカルトゥーハで行われる4月3日の昨季コパ・デル・レイ決勝アスレティックvsレアル・ソシエダ戦も、17日の今季コパ決勝バルサvsアスレティック戦も無観客開催と決まってしまいましたからね。

当然、リーガなど、いつファンがスタジアムに戻って来られるやら、見当もつかないんですが、せいぜい慰めになるニュースと言えば、今月末にはイギリスからスペインへの航空便発着が解禁に。よって、レアル・マドリーはお隣さんのようにどこか遠く離れた中立地に行く必要がなく、4月6日のCL準々決勝リバプール戦1stレグをエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)で戦えるようになったことぐらいなんですが…。
まあ、そんなことはともかく、久々のスペインの試合がどうだったか、お伝えしていくことにすると。何せ、昨年最後となった11月のドイツ戦はネーションズリーグという別の大会でしたからね。彼らがカルトゥーハで6-0と大勝したのを覚えている人も少ないかと思いますが、もちろん代表監督は別。おかげで10月のファイナルフォー出場権を勝ち取ったことに感謝したか、このギリリャ戦ではその時のスタメンをほぼリピートすることに。そう、ほぼと言うのは今回、パウ・トーレス(ビジャレアル)とセルジ・ロベルト(バルサ)が負傷中で招集されていませんからね。代わりのCBとしてエリック・ガルシア(マンチェスター・シティ)がセルヒオ・ラモス(マドリー)とペアを組み、右SBにはマルコス・ジョレンテ(アトレティコ)って、え、彼はSBじゃないんですけどお!

うーん、確かにジョレンテはマルチプレーヤーで、トリッピアーとベルサイコが諸々の事情でいない間、3人CB制でカリレーロ(長い距離をカバーするSB)を任されたり、チェルシー戦2ndレグでサビッチが退場した後、止むを得ず、その辺でプレーしていたこともありましたけどね。当人も後で「Donde yo creo más ayudo en mi equipo es de interior/ドンデ・ジョ・クレオ・マス・アジュド・エン・ミ・エキポ・エス・デ・インテリオル(自分がチームを一番助けられるポジションはサイドハーフだと思う)」と言っていましたが、まあ、アトレティコの先輩のコケなどもまだ代表歴が浅かったデル・ボスケ監督時代、右SBにいきなり抜擢され、右往左往していたなんてこともありましたからね。これが2度目の招集となるジョレンテに選択肢はなかったかと。
そしてスペイン鉄板の4-3-3で始まった試合の方は、まあ予想通り、序盤から彼らが圧倒的にボールを握っていたんですけどね。そのポゼッション率が70%から80%へと上昇していく一方で、なかなかチャンスは生まれず、最初のシュートが前半13分、コケがエリア内から2度も撃ちながら、両方とも敵DFに弾かれてしまうといった有り様でしたが、大丈夫。ダニ・オルモ(ライプツィヒ)の一撃がゴールバーに弾かれたシーンをうっかり見逃し、私がリプレーを待っていた31分、去年の夏まで、1年半という短い時間でしたが、アトレティコで培われたコンビーネションが炸裂。コケが弓なりのクロスをモラタ(ユベントス)に送ったところ、そのシュートがバッチリ決まって、先制点になってくれたとなれば、もう勝利は見えた?

いやあ、それがシナリオ通りにいかないのがサッカーあるあるで、ハーフタイムまでに追加点がなかったにも関わらず、ルイス・エンリケ監督はラモスをイニゴ・マルティネス(アスレティック)に交代。この日で179キャップを達成した彼に世界最多記録となっている代表戦184試合出場が近づいてきているのと、リーガ前節カディス戦を脚の打撲でお休みしていることを鑑みて、「Hablamos antes de partido que solo jugaría medio tiempo/アブラモス・アンテス・デ・パルティードー・ケ・ソロ・フガリア・メディオ・ティエンポー(試合前にプレーはハーフだけにすると話し合った)」(ルイス・エンリケ監督)結果の折衷案だったようですが、これだって、別にそのままスペインが勝っていれば、批判される筋合いもなかったんですけどね。

ところが後半11分、よりにもよって交代出場したイニゴ・マルティネスがエリア内でボールをクリアしたついでにマスラス(オリンピアコス)を蹴ってしまったから、さあ大変!「取り合いになったボールで止まれなかった。Con VAR el resultado hubiera sido diferente/コン・バル・エル・レスルタードー・ウビエラ・シドー・ディフェレンテ(VARがあれば結果は違っただろう)」(イニゴ・マルティネス)というのはどうかわかりませんが、何にせよ、ネーションズリーグ同様、このW杯ヨーロッパ予選ではVAR(ビデオ審判)を使ってないため、主審の判定でペナルティが確定。GKウナイ・シモン(アスレティック)は先日、アラベス戦で見せたオブラクの奇跡を繰り返すことはできず、バカセタス(トラブゾンスポル)のPKが決まって、スコアは1-1の同点になることに。

うーん、前回、スペインがホームゲームで失点したのは2年前、メスタジャ(バレンシアのホーム)で行われたユーロ2020予選のノルウェイ戦で、その時もイニゴ・マルティネスのペナルティが原因だったと聞いたりすると、やはり6月のまさに、その1年延期された本大会でCBのレギュラーになるのはラモスとパウ・トーレスになりそうな気もしますけどね。でも本当に問題なのはその後、時間はたっぷりあったというのにあと1点が取れなかったことで、それから10分もしないうちにルイス・エンリケ監督は現在、これも昨夏から延期されていたU21ユーロ・ハンガリー/スロベニア共催大会でグループリーグを戦っている弟分チームから、徴用した18才のペドリ(バルサ)と20才のブライアン・ヒル(セビージャからレンタル移籍してエイバルでプレー)を投入。

そのU21チームが前日、マリボリでの初戦でスロベニアに0-3と快勝したのは、そちらで頑張っているククレジャ(ヘタフェ)やブライム(マドリーからレンタル移籍してミランでプレー)らもいるため、嬉しかったんですが、勝ち越し点が必要な切羽詰まった状況で、若い2人をデビューさせるルイス・エンリケ監督もかなり勇気があったかと。一応、A代表初招集の知らせに涙していたヒルなどは、得意の左サイドから切り込みでチャンスを作ろうとしていたんですが、まあねえ。ドイツ戦の6得点で忘れられていたものの、元々、ゴール不足が言われていたスペインですし、国産ピチチ(得点王)のジェラール・モレノ(ビジャレアル)が前節のカディス戦でケガをして、この試合だけ欠場していたのも間が悪かったかと。

最後は後半頭からキャプテンをやっていたコケ、そしてドイツ戦ではハットトリックの大活躍だったものの、ギリシャの堅い守備陣の前にまったく精彩のなかったフェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)がチアゴ・アルカンタラ(リバプール)とオジャルサバル(レアル・ソシエダ)に代わったものの、2点目を挙げることは叶わず。結局、引き分けで終わったんですが、ルイス・エンリケ監督によると、その原因は「Nos ha faltado frescura y finura en el último tercio del campo/ノス・ア・ファルタードー・フレスクーラ・イ・フィヌラ・エン・エル・ウルティモ・テルシオ・デル・カンポ(ウチはフレッシュさと鋭さがピッチのファイナルサードで欠けていた)」せいなのだとか。「あれだけの選手を守備に当てられては、もっとインスピレーションがいる」とも言っていましたが、いや、それ、きっと次のジョージア、コソボ戦も同じですから。

何せ、5チーム編成のスペインのいるグループは残り1チームがズラタン・イブラヒモビッチが復帰したスウェーデンで、同日、ジョージアに1-0で勝っていますからね。このW杯予選では本大会に直接進めるのが各グループ首位のみ、2位だとプレーオフに回るため、こうなると日曜午後6時(日本時間翌午前2時)からのジョージア戦では絶対勝利が必須となってきますが、さて。そのままグラナダ(スペイン南部、アルハンブラ宮殿で有名な町)に連泊したチームは翌日もロス・カルメネスで練習。午後には空路、トリビシに移動し、到着したのは夜のようでしたが、今度は「状態は完璧」とルイス・エンリケ監督が保証したラモスは当然として、ギリシャ戦で出なかったブスケツやジョルディ・アルバら、バルサ勢もプレーするんでしょうかね。

え、そんなことが気になるのはやっぱり、私がparon(パロン/リーガの休止期間)明けのリーガを心配しているからかって?まあ、その通りで、いえ、コケなどはテレマドリッド(ローカルTV局)のインタビューで、「Estar peleando LaLiga no nos lo esperábamos porque el club nos exige ser terceros/エスタル・ペレアンドー・ラ・リーガ・ノー・ノス・ロ・エスペラバモス・ポルケ・エル・クルブ・ノス・エクシーヘ・セル・テルセーロス(リーガ優勝を争うなんて予想してなかったよ。だってクラブはボクらに3位になることを求めているんだから)」とシレッとした顔で言っていたりしたんですけどね。それでも優勝を目指していない訳ではないようで、「代表に行くのはここ数カ月間、プレッシャーのかかっていた選手たちにはいいことさ」と河岸を変えることの効用を強調。

まあ、今回、いつも長距離移動の疲れを心配される南米勢が招集免除されているため、ルイス・スアレスを筆頭にヒメネス、トレイラ(ウルグアイ)、ロディ、フェリペ(ブラジル)らはマハダオンダ(マドリッド郊外)の練習場でじっくり調整に励めていますしね。火曜こそ、デンベレがセッション開始早々、いきなり貧血で倒れてしまい、彼は先日、コロナにも感染していたため、後遺症かと心配されたんですが、幸い金曜には何事もなく復帰。代表出向組では水曜にオブラクがここ2試合完封の余波を買って、お隣さんのモドリッチ率いるクロアチアから、1-0でスロベニアが勝利をもぎ取ったなんてこともありましたし、懸念があるとすれば、ベルギーがウェールズに3-1と快勝した試合にカラスコが体の不具合で出場できなかったことぐらいかと。

そのベルギー代表では、そういえば、昨年9月の代表戦でもマドリーのGKクルトワがケガでプレーできず、挨拶だけしてマドリッドに戻って来たなんてこともあったんですが、今回は先日再び、復帰時期不明のリハビリに入ったアザールが代表のチームドクターと相談するため、合宿を訪問中というニュースも。意外だったのは早々と火曜にはクロースがドイツ代表を離脱したことで、ええ、こちらもケガのための帰還なんですが、何せ、マドリーの中盤は固定メンバーでの出場が続いていますからね。ようやく復帰したバルベルデも前節のセルタ戦で負傷、どうやらこちらはリバプール戦にも間に合わなさそうともことで、太ももを痛めたクロースには何とか、回復してもらわないとマズいんですが、果たしてどうなることやら。

そして今週、世間を騒がせている話題は、2年前にマドリーを退団したクリスティアーノ・ロナウドが今季、ユベントスがCL16強対決でポルト相手に敗退、セリエAでも首位インテルと勝ち点差10の3位と優勝が難しくなってきたことを踏まえ、古巣に戻る可能性が出てきたという報道。いやあ、ユーベと同じ3100万ユーロ(約40億円)の年棒はとても出せないペレス会長のクラブなので、もしロナウドが2400万ユーロ(約31億円)まで減給に応じてくれたらとか、イロイロ、条件はあるようですけどね。更に先日は相変わらず、ウェールズ代表に行った時だけ口を開くベイル(トッテナムにレンタル移籍)もこの夏、マドリーに戻る予定と公言。となると、あのCL3連覇を成し遂げた伝説のBBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)復活もありうる訳ですが、え?最近のマドリーファンはハーランド(ドルトムント)やエムバペ(PSG)ら、若い新生ギャラクティコの加入を期待しているのではって?

いやまあ、とりわけ前者などは丁度、コロナによる入国制限により、自国でホームゲームが行えず、W杯予選の1戦目がジブラルタル(イベリア半島内にあるイギリス領)との試合だったのもあって、今週はノルウェイ代表合宿でマルベジャ(地中海沿岸のビーチリゾート都市)に滞在。2試合目のトルコ戦もマラガ(スペイン南部、マルベジャから1時間)で開催とあって、連日、スペインマスコミに追い回され、ちょっと気の毒なぐらいなんですが、どちらにしろ、来季の戦力候補は今のリーガの優勝戦線には関係ありませんからね。マドリーもアトレティコも週末はミニバケーションに入るため、それぞれエイバル戦、セビージャ戦を迎える彼らの様子はまた各国代表選手が合流してから、報告したいと思います。

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