CLも気になるけど…/原ゆみこのマドリッド

2021.03.13 17:30 Sat
「何か納得いかないわよね」そんな風に私が不満に思っていたのは金曜日、CL16強対決のカードの中でアトレティコだけがホームゲームの1stレグを中立地のブカレスト(ルーマニア)でプレーした後、2ndレグを敵チームのスタジアムで戦わないといけないのに気づいた時のことでした。というのも同じく1stレグをブダペスト(ハンガリー)に移動して戦った、昨季のCL準々決勝でアトレティコに冷水を浴びせたライプツィヒはアウェイ戦でもプシュカス・アレナをリピート。それこそ、去年の今頃、シメオネ監督のチームが2連勝で16強対決敗退に追いやったリバプールに連敗して、今季の大会から姿を消したのに続き、来週火曜にはマンチェスター・シティもボルシア・メンヘングラッドバッハとの2ndレグをブダペストで開催と、2試合共、中立地でプレーすることになっていたから。

そこでマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場にアトレティコのセッションを見学に行った際、広報の人に理由を訊いてみたところ、こういう不公平な扱いになった理由はスペインとドイツのコロナ感染防止対策のための出入国制限の差。CL戦の遠征においてはプロのクラブということで、イギリス入国後の隔離期間は免除されても、ドイツではイギリスから帰国した後に隔離されてしまうからだとか。スペインではPCR検査の陰性証明だけで戻れるため、2ndレグをロンドンでやるのに問題はないそうですが、無観客なのは同じとて、勝手知ったるワンダ・メトロポリターノでプレーできず、相手はスタンフォード・ブリッジでノビノビ戦えるって、やっぱり不公平じゃない?

何せ、今週はまず、火曜にドルトムンドに2-3で負けた1stレグからのremontada(レモンターダ/逆転勝ち抜け)にセビージャが挑み、エン・ネシリが2ゴール挙げたものの、ハーランドにも同じだけ決められ、2-2の引き分けが精一杯。総合スコア5-4で16強対決敗退スペイン勢第1号となった翌日には、いえ、こちらは元々、1-4からの奇跡的な大逆転が必要とされていましたからね。パリでバルサがPSGと1-1で分け、総合スコア5-2で早期敗退となったのは仕方ないところもありましたが、来週16強対決第2陣として、火曜にアタランタをエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)に迎えるレアル・マドリーも1stレグは0-1の僅差勝利。水曜にトリを飾るアトレティコに至っては、初戦に0-1で負けているとなれば、準々決勝にスペイン勢がゼロということも起こりうるかも。
え、それより今はアトレティコが水曜のアスレティック戦でしっかり、保険を貯金に替えられたのか、気になるって?そうですね、このミッドウィークには1月に暴風雨フィロメナによるマドリッドの大雪で、いえ、ワンダ・メトロポリターノは暖房ランプで芝生を完璧な状態に保っていたんですけどね。ビジターチームの乗った飛行機がバラハス空港に着陸できず、延期されていた18節はその頃より、ずっと快適な気温でキックオフ。先週末はマドリーダービーで3位のお隣さんと引分け、差を広げられなかっただけでなく、2位バルサも勝ち点差3に迫っていたため、この日は絶対勝つぞという勢いを序盤の猛攻で示した首位チームでしたが、それがもったのは僅か10分ぐらいだったかと。

いつの間にやら、攻守ところを変え、前半21分にはウィリアムスのラストパスを受けたムニアインが、「Me pilla a contrapié, le doy, me resbalo y me da en la otra pierna/メ・ピジャ・ア・コントラピエ、レ・ドイ、メ・レスバロ・イ・メ・ダ・エン・ラ・オトラ・ピエルナ(重心のある足の方にボールが来たのを蹴ったら、足を滑らして、反対の足に当たった)」(ムニアイン)という、あまり正当ではないシュートがGKオブラクを惑わしたか、先制点になってしまったから、ビックリしたの何のって。もう最近では早い時間に敵にリードされるのも珍しくなくなっていたアトレティコでしたが、この日はひときわ出鼻をくじかれたか、それからはアスレティックの独壇場に。カラスコのエリア外からのシュート程度はあったものの、あとは烏合の衆の如く、ただただ、ボールを追いかけるだけの姿に私も絶望的になっていたところ…。
予想もしない同点劇が訪れたのは前半ロスタイム。ええ、その頃はすでにシメオネ監督がハーフタイムに檄を飛ばしてくれるのを期待するばかりだったんですが、その1分が終わろうという瞬間、敵エリア内左奥からレマルが上げたクロスをマルコス・ジョレンテがヘッドで決めてくれたとなれば、後でマルセリーノ監督が「Si dejó seguir hasta que el Atlético metió gol/シー・デホ・セギール・アスタ・ケ・エル・アトレティコ・メティオ・ゴル(アトレティコがゴールを入れるまで続けさせたとしても)、ウチは何も言えないし、言い訳にもならない」と嘆いていた気持ちも理解できる?

すると後半は追いついたことで再び、アトレティコの気勢が上がったか、6分にはルイス・スアレスがエリア内でウナイ・ヌニェスに足を引っかけられてペナルティをゲット。PKも当人がしっかり決め、いやまあ、同日、遅くのPSG戦ではメッシがPKを失敗したなんて聞くと、ホントにバルサは太っ腹なプレゼントをしてくれたなと実感してしまうんですけどね。これで2-1とリードしたアトレティコは追加点を取れなかったものの、やはりアスレティックもコパ・デル・レイ準決勝レバンテ戦2ndレグの延長戦もあって、疲れていたんですかね。

今週は地元の海洋博物館に展示されていたgabarra(ガバラ/ビルバオの運河で使われた木材運搬船。1984年にアスレティックのリーガ優勝パレードに使われて以来、出航していない)がいよいよ、昨季と今季の連続コパ決勝、レアル・ソシエダ戦かバルサ戦のどちらかでは勝って、4月には出番が来るかもしれないと思われたか、20万ユーロ(約2600万円)をかけた修復後の進水試験をしていたなんてニュースもありましたが、リーガの方では力及ばず。アトレティコも終盤はまた、自陣エリア周辺に固まって専守防衛になっていたものの、土壇場で追いつかれたセルタ戦、マドリー戦の轍は踏まず、2-1で4試合ぶりのホーム勝利を挙げることができましたっけ。

え、マドリーダービーでもジョレンテのアシストでスアレスがゴールを入れていたけど、こんな破壊力のあるアタッカーコンビはリーガ広しと言えど、なかなかお目にかかれないんじゃないかって?いやあ、シメオネ監督は「No son pareja de ataque, uno juega en el medio/ノー・ソン・パレハ・デ・アタケ、ウノ・フエガ・エン・エル・メディオ(彼らはアタッカーコンビじゃない。1人は中盤でプレーしている)」と言っていましたが、元々、ゴール量産型CFであるスアレスが今季18得点と、メッシと1本差でpichichi(ピチチ/得点王)レーストップを争っているのは想定内としても、この日のゴールでリーガ9本目、CLを加えて計10本としたジョレンテにはシャッポを脱ぐしかないかと。

まあ、このパターンはお隣さんもちょっと似ていて、エースのベンゼマが18ゴール、チーム内次点はボランチのカセミロで6ゴールと、この2人にはアトレティコも前節のダービーでやられてしまったんですが、少し気の毒だったのは一応、こちらも今季10ゴール挙げていながら、今年になってから、あまり調子が上がらないジョアン・フェリックス。ええ、丁度、アスレティック戦の前、シメオネ監督が彼のことを尋ねられ、「ウチはチームだから、全員の貢献が必要で、チームが上手く機能すれば、個々の才能も輝く」云々から、「Sin voluntad el talento no alcanza/シン・ボルンタッド・エル・タレントー・ノー・アルカンサ(意欲がないと、才能だけでは達することはできない)」と決めの一言。

これを逆手に取られ、この日も後半最初にコレアと交代となったジョアンは「意欲に欠けていたのか?」と訊かれてしまう破目に。それには、自分が言ったのは選手一般の意欲で、特に彼だけのことではないと否定していたシメオネ監督でしたが、その後が「1年前、アトレティコに来た時はあまりプレー時間をもらえず、招集外になったりもしたが、努力を欠かさず、練習を続けていた。Tuvo esa voluntad que te lleva a estar en este momento/トゥボ・ボルンタッド・ケ・テ・ジェバ・ア・エスタル・エン・エステ・モメントー(その意欲が彼を今の状態に導いた)」と、ジョレンテ絶賛になってしまってはねえ。

ちなみにそのジョレンテ、アスレティック戦の終盤には珍しく、交代となったんですが、「小さな痛みがあって、もうチームに貢献できなかったんだ。でも、de cara al próximo partido no habrá problema/デ・カラ・アル・プロキシモ・パルティードー・ノー・アブラ・プロブレマ(次の試合に向けて、問題はないよ)」と当人も言っていた通り、金曜の練習には普通に参加。マスコミ公開15分以降の様子もわかるらしい主要スポーツ紙の情報によると、土曜午後9時(日本時間翌午前5時)からの、弟分ヘタフェとのミニダービーでは今度はジョアンが控えで、コレア先発とローテーションがあるようですが、木曜からチームに合流したヒメネスが、累積警告で出場停止となるフェリペの代わりに出られるかは当日までわからないよう。

どちらにしろ、アスレティック戦の勝利でバルサとの差も勝ち点6に広がりましたし、マドリーとは8差とちょっと余裕ができたとはいえ、ここでまた白星が続かないと、また首位の座が危なくなりますからね。せっかくバレンシアに3-0と快勝しながら、バジャドリーに2-1と競り負け、相変わらす、降格圏まで勝ち点差5の15位と低空飛行のヘタフェには悪いんですが、何せ、彼らはこの兄貴分にここ18試合白星なしの得点なし、通算34-0で負けているという、天敵どころでない相性の悪さ。丁度、バジャドリー戦で退場したマタも出場停止処分2試合となってしまいましたし、その先はエルチェ、オサスナ、カディスと直接ライバルが続くため、今週末はとりあえず、自分たちのプレーを取り戻すことに専念してもらえたらと思います。

え、それでも今節のヘタフェはもう1つの兄貴分の援護射撃を受けられるかもしれないんだろうって?その通りで同じ土曜の午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)にはマドリーが17位のエルチェをホームに迎えることに。こちらはミッドウィークに試合がなく、とうとう木曜には2月にヒザの手術をしたキャプテンのセルヒオ・ラモスと、太ももを負傷していたアザールもチーム練習に合流。CLアタランタ戦2ndレグの足慣らしのため、途中出場するようですが、ケガが治り、ダービーではベンチに入っていたマルセロとオドリオソラにまた不具合が出て、欠場という残念な知らせもあります。

まあ、カルバハルの復帰がまだまだかかる中、右SBのレギュラーはルーカス・バスケスですし、左もメンディがしっかりやっているので、そこは大丈夫そうですが、マリアーノも離脱しているため、またしばらく、CFはベンゼマ一択かと。ジダン監督は前向きに、「ウチはちょっと後ろにいるが、どのチームも勝ち点は落とす。リーガの残り12試合では多くのことが起きるだろう。Vamos a creer hasta el final, mientras haya opciones/バモス・ア・クレエル・アスタ・エル・フィナル、ミエントラス・アジャ・オプシオネス(可能性がある限り、我々は最後まで信じる)」と言っていましたが、それにはまず、自分たちが勝たないと話になりませんからね。とはいえ、エルクリバ監督が復帰したエルチェも前節はセビージャを2-1で下し、士気が上昇中。今季はカディス、アラベスといった辺りにマドリーがホームで躓いているのも、彼らにとって、励みになるかもしれませんよ。

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly