大事なのは目先の試合の方なんだけど…/原ゆみこのマドリッド

2021.02.20 22:45 Sat
©Atlético de Madrid
「今、どっちがいいのか訊かれてもね」そんな風に私が肩をすくめていたのは金曜日、リーガ戦を翌日に控えたジダン監督への質問の半分近くが、エムバペとハーランドに関してだったのを知った時のことでした。いやあ、確かにCL16強対決1stレグ第2陣のレアル・マドリーの試合がなかった今週、火曜には22才のFWがカンプ・ノウでハットリックの大爆発。PSGが1-4と圧勝し、昨季準々決勝バイエルン戦での8-2負けの悪夢を彷彿させるダメージを永遠のライバル、バルサに与えることになったんですけどね。

すると翌水曜には、エムバペに負けじとばかり、20才のノルウェイ人CFがサンチェス・ピスファンで2ゴールを挙げ、ドルトムントがセビージャに2-3で先勝したんですが、まったく運命とは皮肉なもの。というのも2人共、ここ長らく、レアル・マドリーの次代ギャラクティコ候補として、名前が挙がっていたため、スペインのスポーツメディアはどちらをこの夏、ペレス会長が獲得すべきかという議論で大盛り上がりすることになったから。

一応、私もエムバテが来たら、ポジションが被って、2年前、チェルシーに1憶ユーロ(約128憶円)払ったアザールの影がますます薄くなるんじゃないかとか、すでにジョルディ・アルバやピケと試合中、スペイン語で口論しているシーンが目撃されたエムバテに比べ、ハーランドは同胞のウーデゴーア(アーセナルにレンタル移籍)のようにチームメートと馴染むのに時間がかかるんじゃないだろうかとか、少しは考えたりもしていたんですけどね。現実的にはどちらも、移籍金1~2億ユーロといった超高額になることから、夢見ることすら、不可能なアトレティコのシメオネ監督まで、トバッチリを受けて質問される破目になるとは。
そのせいか、「2人共、異なる特性を持った偉大な選手。Si alguien los pudiese tener juntos tendría un equipazo/シー・アルギエン・ロス・プエディエセ・テネル・フントス・テンドリア・ウン・エキパソ(どこか両方揃って獲得できるクラブがあれば、凄いチームを作れるだろう)」とちょっと、一線引いたところから話していたりもしたんですが、このコロナ不況の折、天下のマドリーとはいえ、2人いっぺんにというのはムリなこと、ちょっと当てつけていた?ただ、それ以前に今週末のやりくりにすら、四苦八苦しているジダン監督にそんな質問ばかりというのも何だか、マドリー番記者たち自体、すでに今季より、来季を見たがっているような気がするのは私だけでしょうか。

まあ、マドリーの新たな苦境はまたあとでお話しすることにして、先にお隣さんが水曜に戦った、延期されていた2節のレバンテ戦がどうだったか、報告していくことにすると。いやあ、それがいよいよ、とっておきの仮想勝ち点を具現化するチャンスだったんですが、早くも前半17分にアトレティコは失点。それも超特急でケガを治して先発に戻ったヒメネスが自陣前でボールを失くし、バルディに決められているという情けない有り様で、まあ、最近の彼らはこれで6試合連続、計8失点と、シメオネ体制では今までなかった守備のポカが続いていますからね。
同時にremontada(レモンターダ/逆転劇)も珍しくなくなっていたため、私も焦らず見ていたところ、案の定、37分には短いCKで始まったプレーから、マルコス・ジョレンテがシュート。そのボールがロベル・ピレスの頭に当たって同点弾となっているのですから、やっぱり、ノッている選手にはツキも味方してくれる?とはいえ、この日はレバンテのGKアイトル・フェルナンデスも冴えていたか、その1分後にはルイス・スアレス、ジョレンテの一撃をどちらもparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防がれ、ハーフタイム前に逆転することはできませんでしたっけ。

そして後から考えると、悔やんでも悔やみきれないチャンスが水の泡を消えたのは後半2分、スアレスのシュートが弾かれた後、転がったボールをフリーで拾ったコレアが、いやあ、彼の場合は先週末のグラナダ戦のように絶対、敵DFに当たるだろうなというシュートが、やっぱり当たりながら、意表を突いて決勝点になってしまったりと、常日頃から、人の予想を超えるところがありますからね。その日はゴール1メートル前から天高く撃ち上げて、見る者全ての目を丸くさせていたんですが、まあ、この日はスアレスが今年になって、初めて2試合連続ノーゴールだったというのが一番、堪えたかと。39分、やっとコロナ陽性が消え、途中出場できたジョアン・フェリックスからスルーパスをもらって、サウールが決めたゴールもオフサイドだったため、試合は1-1の引き分けで終わることに。

え、それでも2位マドリーとの差は勝ち点6に、3位のバルサとの差は勝ち点9に広がったんだから、それ程、気にすることはないんじゃないかって?その通りで、試合の終盤、クレルクの強烈シュートを弾いて土壇場の敗戦を回避。揺るぎない存在感を示してくれたGKオブラクも、昨今の失点ペースに不満はもちろんあるでしょうが、「vamos partido a partido a ver si hacemos lo suficiente para estar ahí arriba o no/バモス・パルティードー・ア・パルティードー・ア・ベル・シー・アセモス・ロ・スフィシエンテ・パラ・エスタル・アイー・アリーバ・オ・ノー(ウチは1試合、1試合やってって、上にいるのに十分なだけ、できるかどうかだね)」と言っていましたしね。

むしろ、今は変則日程の妙で、この土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)、今度はワンダ・メトロポリターノで再戦となるレバンテから、勝ち点3を奪うことに集中しないといけませんが、実は試合前日には悪いニュースといいニュースが。というのもカラスコがグラナダ戦で左足に打撲を受けており、水曜も途中までプレーしたんですが、今週末は大事を取って、お休みすることに。来週の火曜、イギリス勢がスペインに入国できないため、ルーマニアのブカレストに河岸を変えて開催するCLチェルシー戦1stレグの出場も微妙と言われていますが、代わって、コロナ隔離中だったレマルが陰性となり、復帰が可能になったのは不幸中の幸いだったかと。デンベレも土曜の朝にはチームに合流できそうで、あとはエレーラを待つのみなんですが、サウール、サビッチの2人は累積警告により、土曜は出場停止。スアレスもあとイエローカード1枚に迫っているため、注意が必要となっています。

そしてアトレティコのコロナ禍など、笑い話になってしまいそうなほど、今季は負傷禍に見舞われているお隣さんはというと。いやあ、災いが災いと呼ぶと言いますか、先週末のバレンシア戦で復帰したばかりのカルバハルが前半途中で再負傷、全治6~8週間となってしまったのも大打撃だったんですが、この木曜の練習では頼みの綱だったチーム内ピチチ(得点王)のベンゼマが左太ももを痛め、来週水曜のCLアタランタ戦1stレグまで危うくなってしまったから、さあ大変!何せ、1月の市場でヨビッチがアイントラハト・フランクフルトにレンタル移籍してしまった後、他にCFと言えば、マリアーノしかいませんからね。

これで負傷者が9人となり、トップチームのフィールドプレーヤーがたった11人だけとなれば、え、もしや、スタメンに入れないのはイスコだけ?「ベンゼマが大事なのはわかっているが、ケガしているんだから、tenemos que pensar en los que van a estar/テネモス・ケ・ペンサル・エン・ソル・ケ・バン・ア・エスタル(いる選手たちのことを考えないと)」というジダン監督はRMカスティージャ(マドリーのBチーム)のチュスト、ミゲール、アリーバス、ブランコ、そして弟分のヘタフェからレンタルで修行に来ているウーゴ・ドゥーロをヘルプとして招集していますけどね。土曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのバジャドリー戦はそれで乗り切れても、昨季もCL16強対決でバレンシアをボコボコにしたアタランタに立ち向かう際にはかなり不安が残るかと。

とはいえ、負傷者大量発生に悩んでいるのはバジャドリーも同じで、こちらも6人いる上、オラサが出場停止という逆境も。セルヒオ監督も早く降格圏の18位を離れたいところでしょうが、今季のマドリーには下位チームから、取りこぼす悪い癖があるところを上手く利用できるかどうか。その辺はいざ、試合が始まってみないことには、相手がどういうモードで立ち向かってくるのか、わかないところがあるんですが…。

そんな兄貴分たちの横で、何かますますマズいことになっているんですよ、金曜に24節の先陣を切ったヘタフェが。そう、前節のレアル・ソシエダ戦でまた退席処分を受けたボルダラス監督がベニト・ビジャマリンのプレス用ボックスから見守る中、3CBの5人DF制でスタートした彼らは、ベティスにほとんどボールを握られていた前半をかろうじて無失点で凌いだんですけどね。後半に入り、22分にアンヘルがアレニャに代わってから、だんだん攻撃できるようになっていったものの、せっかくのアランバリの絶好機も枠を外してしまっては。それどころか、その直後、30分にはこの冬、ビジャレアルから移籍してから、ずっと先発を務めているCBチャクラがエリア内でボルハ・イグレシアスの顔を後ろ手で払ったとして、ペナルティを取られてしまうんですから、一寸先は闇とはまさにこのこと?

でも大丈夫、この時はカナレスのPKの方向を見事に読んだGKダビド・ソリアがセーブに成功。失点せずに済んだため、再び攻勢に転じられるかと思ったんですけどね。ようやく36分になって、久保建英選手がピッチに登場した後、悪夢が繰り返されるんですから、まったくたまったもんじゃありません。ええ、チャクラが今度はエリア内でボルハを倒し、またしてもPKを献上。カナレスと代わってキッカーに立ったボルハにはソリアも歯が立たず、残り6分で1-0とされてしまっては、いくらボルダラス監督が手持ちのFW、マタとウナルを投入して、土壇場の同点劇を目指したとて、悪い流れにドップリ浸っている今のヘタフェには叶いっこありませんって。

これでもう、彼らは5敗1分けと白星なしを6試合に更新と、いえまあ、まだ順位は14位のままですし、降格圏までは勝ち点3で、間に他のチームもいますから、絶望的とまでは言えないんですけどね。ヘタフェは2015-16シーズン、エスクリバ監督(先日、エルチェの監督に就任)を長く引っ張り過ぎて、12年ぶりに2部に戻ることになったなんてこともあったため、この度、アンヘル・トーレス会長がどこまで辛抱するのか、気になるところですが、こればっかりはねえ。

何はともあれ、次節のバレンシア戦では気分を切り替えて、また勝ち点を溜めていけるようになるといいんですが…そうそう、昨季はヘタフェもアヤックスに勝って、絶賛されていたEL32強対決1stレグではこの木曜、グラナダがナポリに、ビジャレアルもザルツブルクに2-0と快勝。イギリス勢入国禁止のため、トリノのユベントス・スタジアムでホームゲームを戦ったレアル・ソシエダだけが、マンチェスター・ユナイテッドに0-4と大敗していましたが、これはあまりアトレティコにとってはいい前例にならないかも。それにしてもホント、あのヨーロッパを風を切って歩いていたヘタフェがたった1年で、こうまで落ち込んでしまうとは、私も今はちょっと茫然自失状態です。

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