コパがないのは淋しいけど…/原ゆみこのマドリッド

2021.02.06 17:00 Sat
©Atlético de Madrid
「守る人、ホントにいるのかしら」そんな風に私が目を丸くしていたのは金曜日、お昼のローカルニュースで聞いて、え?とは思っていたんですけどね。午後に来た日本大使館からのメイルで「レストラン等の店内でも飲食時以外、マスク着用が義務化」という、マドリッド州のコロナ対策規制変更のお知らせを読んだ時のことでした。いやあ、マスク会食と言えば、昨年、日本で推奨されていると聞いて、私も笑い話みたいにスペイン人に教えてあげたこともあったんですけどね。自身、バル(スペインの喫茶店兼バー)でサッカーの試合を見ている際、近くのテーブルでお喋りに花が咲いているとついつい、マスクをしてしまったりもするんですが、まさかスペインでマスクを付けたり、外したりしながらの食事がニューノーマルになろうとは。

おまけにここ数日、マドリッドでの感染者数増加の鎮静化を受け、先週月曜に始まった飲食店の時短営業が午後10時閉店から、また前のように午前0時に戻るかもしれないという予想は悲しくも外れ、来週も午後9時キックオフの試合を最後まで見ることはできないことに。だってえ、コパ・デル・レイはオープン放送で見られるからいいですけど、再来週にはCL16強対決1stレグが始まるんですよ。せめてレアル・マドリーとアトレティコが試合をする、その次の週までにはこの時短を緩めてもらえないと、本当に困ってしまうんですが、そうこうするうち、16日にライプツィヒと試合をするリバプールがドイツに入れないかもしれないという話が。
それが、いつの間にか、イギリスの入国規制が変わらないと、23日にチェルシーもワンダ・メトロポリターノで試合をすることはできないため、アトレティコはすでに両チームが制限なしで移動できる国での代替会場を探しているって、え、コロナ変異株の持ち込みを警戒されているイングランド勢と言えば、24日にはボルシア・メンヘングラッドバッハvsマンチェスター・シティ戦もありますし、同じく再来週から32強対決が始まるELにもマンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、レスター・シティの3チームがいるんですけど、そっちは大丈夫なんですか?各国リーグ戦が終わった後、準々決勝からリスボンで集中開催した昨季と違い、今はまだ、どこもシーズン途中とあって、その手は使えませんしね。果たして今季もヨーロッパの大会の決勝トーナメントが順調に進むのか、何だか、急に心配になってきたんですが…。

まあ、そんなことはともかく、一応、マドリッド勢がいなかった今週ミッドウィークのコパ準々決勝の様子もザッと報告しておくことにすると。まず、火曜に先陣を切ったのは唯一の2部チーム生き残りであるアルメリアとセビージャの一戦で、ずっと0-0が続いていたんですが、後半22分にはオカンポスがヘッドを決め、そのままロペテギ監督のチームが0-1で逃げ切り。それは別にいいんですが、このセビージャと今週末、土曜の午後9時(日本時間翌午前5時)から、サンチェス・ピスファンで対戦するのがマドリッドの弟分ヘタフェで、彼らはここ2試合、すでに週1ペースの余裕日程になっていながら、アスレティックに5-1と大敗した後もコリセウム・アルフォンソ・ペレスでアラベスとスコアレスドローしているんですよね。

今回はようやくDF陣の頭数不足が解消したようで、出場停止だったジェネが戻り、チェマとカバコも回復したようで、ビジャレアルからレンタル移籍が決まるなり、アラベス戦でいきなり先発デビューしていたチャクラも入団プレゼンが済みましたしね。ただ、ヘタフェの問題は守備より、むしろ攻撃の方にあって、ボルダラス監督も金曜の記者会見では、「Sí es verdad que insisto cada día en finalizaciones, tiros a puerta/シー・エス・ベルダッド・ケ・インシスト・カーダ・ディア・エン・フィナリサシオン、ティーロス・ア・プエルタ(毎日、フィニッシュとゴールにシュートするように口を酸っぱくして言っているのは本当だ)」と話していたんですが、こういうのって、結構、ツキに左右されたりもしますからね。
一番いいのはマタやアンヘルがここぞの時の決定力を取り戻してくれることですが、1月にはアレニャ(バルサからレンタル移籍)や久保建英選手(同マドリー)が加わって、エルチェ戦やウエスカ戦ではいい流れを作れるようにもなってきていましたからね。この先も来週は火曜にマドリーとの兄弟分ダービー、そしてレアル・ソシエダ、ベティス、バレンシアと2月はハードな試合が続く彼らですし、体力有利で挑めるこのセビージャ戦では現在、降格圏まで勝ち点差5の12位という、微妙な状況を改善するため、勝ち点1でもいいから、稼いできてもらいたいものです。

そして水曜に行われたコパ準々決勝2試合では先にレバンテvsビジャレアル戦が行われ、0-0で延長戦に入ってしまったため、私がベティスvsバルサ戦を見始めた時にもまだ終わってなかったんですけどね。延長戦後半終了前ギリギリに、リーガ前節のマドリー戦でも殊勲の決勝点を挙げたロジェールが決めて、準決勝進出の切符はレバンテが手に入れることに。一方、クーマン監督がタイトルを最短で獲得できる大会という位置づけをしているバルサは前半37分にケネディが、後半2分にはソルダードがゴールを挙げたグラナダに残り2分まで、2-0と崖っぷちまで追い詰められていたんですが、まさか、ここから盛り返してくとは一体、誰に想像できた?

ええ、43分にグリーズマンが角度のないゴール右脇から撃ったボールが入ったのは、GKアーロンの足に当たるというラッキーのおかげですが、ロスタイムにはジョルディ・アルバが頭で決めて、土壇場の同点劇で延長戦に突入。その前半にはまた、グリーズマンが今度はヘッドで勝ち越し点を入れたところ、そのリードはフェデ・ビコのPKで帳消しにされたものの、後半にはデ・ヨング、そしてジョルディ・アルバがゴールを挙げ、最後は3-5で準決勝進出って、いやあ、こんなに気迫のあるバルサも昨今では珍しかったかと。今季はEL予選から参加して、リーガのチーム中、最多の試合数を消化しているグラナダだけに、このコパによる連戦、最後の延長戦で疲れが出てしまったのは気の毒でしたが、これでバルサはあと2週間、週2ペースの試合が続きますからね。リーガ優勝を狙うマドリッド勢にとっては結構、いい目が出たんじゃないでしょうか。

そして木曜、コパ準々決勝最後の試合もファンミのゴールで先制したベティスに後半ロスタイム、ラウール・ガルシアのヘッドでアスレティックが追いつき、1-1で延長戦へ。それどころか、PK戦にまでもつれ込み、最後はGKウナイ・シモンがカナレスとファンミを止めたアスレティックが1-4で勝ったんですが、これでいよいよ、マルセリーノ監督もカルトゥハ3連覇達成(先月のスペイン・スーパーカップ、4月に行われるレアル・ソシエダとの昨季コパ決勝、今季のコパ決勝)への道筋が見えてきた?いえ、まだ来週と3月3、4日に行われる2試合制の準決勝はあるんですけどね。金曜の抽選で彼らはレバンテと対戦、バルサとはセビージャが当たることになったため、まだどうなるか、わかりませんが、いやホント、コパで熱くなれるヨソのチームが羨ましいですよ。

え、それで火曜から、コロナ陰性になったジダン監督がバルデベバス(バラハス空港の近く)でのセッションに復帰したマドリーはどうしているのかって?実は再び予想が狂って、土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からのウエスカ戦が大変なことになっているんですが、最初の災厄は水曜にアザールが2年前にチェルシーから来て以来、もう何度目になるかわからない負傷に見舞われ、今回は左太もものケガで全治4~6週間となってしまったこと。さすがにベイル(今季はトッテナムにレンタル移籍)を上回る欠場ペースともなると、この夏には昨年延期されたユーロもあるため、ベルギー代表の方からも心配されているようですが、だからって、周りがどうこうできる訳でもありませんからね。

更に今週は2度程、チーム練習に参加していたセルヒオ・ラモスもまだスペイン・スーパーカップ準決勝前に痛めた左ヒザが治らず、カルバハル、ルーカス・バスケス、そしてもちろん、バルベルデ、ロドリゴもまだなんですが、今回はそれに前節のレバンテ戦で退場したミリトンの出場停止も加わり、金曜にはイスコも背筋痛でダウン。とうとうウエスカ(スペイン北西部)遠征に加わるトップチーム選手が、コロナ隔離から戻ってきたナチョも含め、たったの14人になってしまうことに。一応、チュスト、マルビン、そして第3GKのアルトゥーベと3人のカンテラーノ(RMカスティージャの選手)が応援招集されていますが、リーガ戦の48時間前には抗体検査がラ・リーガに義務付けられているため、それをやっていなかった他のカンテラーノは追加できないのも辛いところです。

そのせいもあって、イライラしていたのか、久々に記者会見に姿を見せたジダン監督が首位と勝ち点差10という昨今の不成績に突っ込まれ、「No merezco este tratamiento por parte de la prensa/ノー・メレスコ・エステ・トラタミエントー・ポル・パルテ・デ・ラ・プレンサ(自分はマスコミにこんな風に扱われるいわれはない)。ウチがリーガ優勝したのは10年前じゃなくて、昨季のことなんだから、もう少しリスペクトしてほしい」と珍しく、エキサイトして答えていたんですが、まあ、「Un día estoy fuera, otro día un poco dentro... Si empatamos o perdemos estoy fuera.../ウン・ディア・エストイ・フエラ、オトロ・ディア・ウン・ポコ・デントロ…シー・エンパタモス・オイ・ペルデモス・エストイ・フエラ…(ある日の自分はもうマドリーの外にいて、別の日はちょっと中にいる。引き分けたり、負けたりするとクビになる)」(ジダン監督)と常に取り沙汰されるのは、マドリーを率いる者の宿命ですからね。

とにかく今は前節、レバンテ戦で躓いたチームを立て直し、これ以上、リーガで遅れを取らないように努めるしかありませんが、今回の相手のウエスカは先週末、バジャドリーにラファ・ミールのハットトリックで快勝しながら、未だに最下位。とはいえ、17位とは勝ち点3だけと、新たにモチベーションが高まっているところですからね。シーズン前半の対決にはケガで出られなかった岡崎慎司選手も張り切っているはずですし、今季は下位チームから確実に勝ち点を稼げていないマドリーとしてはベンゼマが当たってくれることを祈るばかり。アザールの離脱で再び、先発のチャンスがもらえそうなビニシウスにも期待です。

そして今節は月曜午後9時(日本時間翌午前5時)にセルタをワンダ・メトロポリターノに迎えるお隣さんなんですが、いやあ、またコロナ陽性者が出てしまいましてねえ。それも水曜にはジョアン・フェリックス、木曜にはこの冬、加入したデンベレ(オリンピック・リヨンからレンタル移籍)と2人もいて、先週もカラスコとエルモーソが自宅隔離でカディス戦に出られなかったことを考えると、もしやチーム内でクラスターが発生している?実際、アトレティコのコロナ発生率はリーガでもかなり高い方で、昨季、リーガが再開した時から数えて、何と選手12人(うちアリアスレバークーゼンにレンタル、ジエゴ・コスタは冬に退団)、シメオネ監督まで被害にあっているとなれば、ワクチンが行き渡る前にチーム内で集団免疫が達成できてしまうかも。

ま、そんなのはもちろん、ただの冗談で、今は攻守の両輪、14得点でピチチ(得点王)レースのトップを走るルイス・スアレスは昨年中、ウルグアイ代表で感染しているため、おそらく大丈夫なものの、GKオブラクにはとりわけ用心してほしいところ。ここ5試合白星がなく、コウデット新監督効果が薄れてきているセルタも前節から、エースのイアゴ・アスパスが復帰して、巻き返しを図ってくるはずですしね。来週もミッドウィークの試合がなく、コロナ隔離以外、負傷者はいないという利点に決して甘えず、2位のバルサとも3位のマドリーとも勝ち点10差という、絶対首位の高みを今しばらく、アトレティコが満喫できるといいのですが…。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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