首位争いはマドリッド勢に絞られた…/原ゆみこのマドリッド

2020.12.22 23:52 Tue
©Atlético de Madrid
「結局、一番、先見の明があったのかしら」そんな風に私が首を振っていたのは月曜日、ヨーロッパの他国に1日遅れながら、新型コロナウィルス変異種の流入を防ぐため、イギリスからの入国を当面ストップするという、スペイン政府の決定を聞いた時のことでした。いやあ、しばらく前からはプレミアリーグの試合など、入場制限はあるものの、スタンドに観客が復帰。スペインでも先週はラ・リーガの規制が及ばない、2部B以下、アマチュアリーグのスタジアムで行われたコパ・デル・レイ1回戦にファンが入っても特に問題は起きず、CSD(スポーツ上級委員会)も1月には観客再入場の段取りを始める話が出ていたんですけどね。

それもあって、レアル・マドリーが3月のCL16強対決アタランタ戦2ndレグでもサンティアゴ・ベルナベウを使う気がないという記事を読んだ時には違和感を覚えていたんですが、蓋を開けてみればこの通り。スペインでも年明けにはワクチン接種が始まるとはいえ、新たなコロナ株の蔓延で感染者数増減の見込みも立たないとなれば、スタジアムに観客が戻るなんて夢のまた夢では?となれば、昨季が3月に中断して以降、試合をエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)で開催して、ノンストップで進んでいる本営の大改装工事には全然、支障はないかと。

加えて日曜に開かれたクラブ総会では、ペレス会長が「La reforma del fútbol no puede esperar y hay que afrontarla/ラ・レフォルマ・デル・フトボル・ノー・プエデ・エスペラール・イ・アイ・ケ・アフロンタールラ(サッカーの改革は待つことができないし、それに立ち向かわなければならない)」と演説。一応、今の膨大な試合数に混乱するファンや消耗する選手のためとは言っていますが、要は収入の大幅拡大に繋がる、ヨーロッパを股にかけたエリートチームだけのスーパーリーグ構想の実現を暗に仄めかすことに。その開幕に合わせて、2022年夏に予定されているサンティアゴ・ベルナベウの新装オープンをぶつける気かというのは、ちょっと私の考えすぎかもしれないんですが…。
まあ、そんなことはともかく、先週末のリーガの結果をお伝えしていかないと。この14節、土曜の午後2時という早い時間にマドリッド勢の先陣を切ったのはアトレティコで、ワンダ・メトロポリターノに昇格組のエルチェを迎えたんですが、せっかく開始2分にルイス・スアレスがエリア内で倒されて、PKゲットかと思われたチャンスはVAR(ビデオ審判)でオフサイドが発覚し、残念ながら認められず。それからはなかなか敵エリアに切り込むことができず、遠めのシュートばかり撃っていたんですが、どうやらコロナ感染後、失われていたスアレスのゴール嗅覚が戻ってきてくれたようなんですよ。ええ、40分にはトリッピアーのラストパスに彼がゴール前で軽く触れて、先制点が入ってくれたから、助かったの何のって。

それで調子に乗ったか、スアレスは後半14分にもカラスコの左からのパスをゴール右脇から押し込んで、2点目を取ってくれたんですが、最近のアトレティコはセットプレーに弱いんですかね。それから5分もしないうちにCKをモレンテが頭で繋いだところ、エルチェの9番、ボジェがヘッドで得点。先日のマドリーダービーでもエレーラがカセミロのマークに失敗していたように、この日もサビッチが遅れをとっていましたが、何せ、先週はコパ・デル・レイ1回戦の後、第2GKゲルビッチのコロナ感染が発覚。そのせいで密集状態になる、セットプレーの練習もようようできなかった?
27分にはこのところ、敵の標的になりがちなジョアン・フェリックスが前半に受けた脇腹の打撲の痛みに耐えかねて交代。同時にスアレスも引っ込めて、コロナ後遺症の血栓が治ったジエゴ・コスタとコンドグビアを入れたアトレティコだったんですが、その復帰お祝いなのか、35分には運も味方してくれます。ええ、コスタがマルコネに蹴られたというか、自分で勝手に引っくり返ったようにも見えるんですが、それがペナルティとされ、あっさりPKが付与された辺りから、ちょっと最近のVARは対応が変わった感がしないでもなかったんですが、まあそれは後の話。

とりあえず、ここはコスタがPKを決めて、3-1となったため、安心して試合終了を迎えることができたんですが、実はこの日はアトレティコにとって、最高の目が出たんですよ。というのもその次の時間帯ではバルサがバレンシアと2-2で引き分け、続いて同じ勝ち点で首位グループにいたレアル・ソシエダがレバンテに2-1で負け、セビージャもバジャドリーと1-1の引き分けと、上位候補チームはオサスナに1-3で勝ったビジャレアル以外、軒並み躓いてくれたから。実際、単独首位になれるかどうか、お隣さんの結果次第となる前から、コスタなど、リーガ優勝の可能性について、「quien no sueña a lo grande es mejor no vivir/キエン・ノー・スエニャ・ア・ロ・グランデ・エス・メホール・ノー・ビビール(大きな夢を見ない奴は生きていないようなもの)」なんて言っていましたけどね。何より心強いのは、今季の彼らが同じ12試合消化の時点で昨季の倍となる24ゴールを挙げていることでしょうか。

そして翌日曜、先にキックオフとなったのは弟分のヘタフェだったんですが、とうとう彼らは白星なしの苦しい7試合にピリオドを打つことに。そう、こちらも昇格組のカディスが相手だったんですが、前日の結果でいよいよ、降格圏の18位となって挑んだカランサでは前半33分、クーチョがエリア前から弓なりのシュートを決めて先制。その後はなかなか、追加点が取れず、スランプ脱却を目指し、気合を入れまくった選手たちがいつも以上に喧嘩っ早かったため、tangana(タンガナ/小競り合い)にならないかと、心配だったんですが、大丈夫。

後半ロスタイムにはニヨムが敵陣で奪ったボールをゴール右前まで持ち込み、反対側に上がっていたマクシモビッチにパス。彼が押し込んだゴールで0-2として、堂々、10月17日のバルサ戦以来の勝利を飾ることができましたっけ。ま、そんなヘタフェは年内最後、30日の試合がアトレティコとの兄弟分ダービーになるため、オリベイラとチェマが出場停止になるものの、この水曜のセルタ戦でも必勝を目指してほしいんですが、相手はここ4連勝でとうとう8位と、コウデット監督の下でメキメキ成長していますからね。ヘタフェもこの勝利で11位までジャンプアップしたものの、それでも降格圏との勝ち点差が2というのは現在、下層で団子になっているチームが如何に多いかっていうことでしょうか。

え、それで日曜に今節のトリとなったマドリーはどうだったのかって?いやあ、相手は乾貴士選手と武藤嘉紀選手が揃って先発したエイバルだったんですが、この日の彼らは「Empezamos el partido de puta madre/エンペサモス・エル・パルティードー・デ・プータ・マドレ(最高の形でゲームを始めた)」(ジダン監督)という、完璧なスタートを見せたんです。そう、前半6分にはロドリゴのアシストでベンゼマが、13分にはそのベンゼマがモドリッチに折り返して2点目が入るという、効率の良さだけでなく、もうボールが全然、敵に渡らないんですよ。あんなに優雅にパスを繋がれたら、抵抗できるチームなんてないと私も呆気に取られていたところ、流れが変わったのは35分、キケ・ガルシアがエリア前からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めた後でした。

1点を返してエイバルも活気づいたか、それからは拮抗した展開になったんですが、武藤選手が2度程、シュートを外すなど、なかなか同点には追いつけず。そうこうするうち、いよいよ終盤、後半35分には大きな物議を醸すジャッジがあって、いやあ、後でメンディリバル監督も「A Ramos también le ha parecido penalti porque lo ha comentado con otros jugadores/ア・ラモス・タンビエン・レ・ア・パレシードー・ペナルティ・ポルケ・ロ・ア・コメンタードー・コン・オトロス・フガドーレス(ラモスにもペナルティに見えたようだ。他の選手と話していたからね)」と言っていたんですけどね。武藤選手がキケ・ガルシアにアシストしようとして放ったヘッドが腕に当たりながら、審判がペナルティを宣告しないって、一体、どうなっている?

おまけにVARのモニターも見に行かなかったため、「前は2、3分かけて全ての映像を見ていたのに、今日は20秒でそんなにはっきりペナルティじゃないとわかったのか?ハンドのプレーではこういうことが起きる。Nadie tiene claro cuáles son penalti y cuáles no/ナディエ・ティエネ・クラーロ・クアレス・ソン・ペナルティ・イ・クアレス・ノー(どれがペナルティで、どれがそうじゃないか、誰もはっきりわかっていない)」(メンディリバル監督)というのはもっともな意見だったかと。実際、カルバハルなども「アラベス戦でナチョのハンドはペナルティだったのに、アスレティック戦でのカパや今日のセルヒオは手に当たっていたのに違った」と不思議がることしきり。

試合後もディレクト・ゴル(民放のサッカー番組)などでは20分以上もかけて、「ラモスの腕の位置を不自然と見なかったのだろう」とか、「意図的でも意図がなくても腕に当たったら今季はペナルティだったはず」とか、延々とコメンテーター同士で議論を続けていましたが、どうやら、彼らも正確な基準がわからないor正確な基準があるのかどうかすら、わからないみたいでしたしね。私的には10日程前、審判団委員長のベラスコ・カルバージョ氏が今季のジャッジミスは12節までに199回(エリア内での正確度は98.5%)あったと記者会見で報告してから、VARの介入タイミングとハンドの判定に変化が生じた感じがするんですが、こればっかりはねえ。

結局、PK献上を免れたマドリーはロスタイムにルーカス・バスケスが、その有り余る体力を見せつけるかのごとく、ベンゼマのスルーパスからエリア内に切り込み、3点目を挙げて、最後は1-3で勝利。再び同勝ち点でお隣さんに次ぐ2位となったんですが、実はちょっと心配なことも。というのもこのリーガ4試合とCLボルシア・メンヘングラッドバッハ戦の5連勝中、ジダン監督はほとんどスタメンを変えておらず、アセンシオとバルベルデだけだったこの日も含めて、選手交代も2、3人止まりと徹底的に少数精鋭主義を実践。もちろんケガ人などもいましたが、さすがに5連投は35才のモドリッチにはきつかったか、この日は左太ももの筋肉痛でベンチに下がることに。

ゴールの供給源として頼りにされているベンゼマも土曜に33才になりましたし、ラモスも34才とあって、とりわけコロナ禍で圧縮日程となっている今季はクリスマスのparon(パロン/リーガの停止期間)も1週間しかなく、年明けも3日おきで試合が続きますからね。ジダン監督も「Hemos rotado un poco menos ahora pero voy a contar con todos/エモス・ロタードー・ウン・ポコ・メノス・アオラ・ペロ・ボイ・ア・コンタル・コン・トードス(ウチは最近、あまりローテーションをしていないが、私は全員を当てにしている)」と言っていたように、アザールの復帰が見えてきた水曜午後7時45分(日本時間翌午前3時45分)からのグラナダ戦ではエイバル遠征に参加しなかったビニシウスやイスコ、そしてウーデゴールやヨビッチらの登用もありうる?

どちらにしろ、一時の不調から回復し、先週末もベティスに勝って、順位を上げてきたグラナダとの対戦はディ・ステファノでの開催で、2得点して血気盛んな元マドリーのソルダードの「空っぽのバルデベバスより、ベルナベウで8万人のファンにブーイングされながらプレーする方がいい」という夢は叶わないんですが、彼もいつの間にやら、もう35才。そう考えると、開閉式屋根がついて全面改装したマドリーのホームでプレーできる選手って、結構、限られてしまうのかもしれませんね。

そして、そのお隣さんの上でクリスマスを祝いたいアトレティコは火曜の午後8時(日本時間翌午前4時)から、3位のレアル・ソシエダとレアル・アレナで激突するんですが、幸い月曜のマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習ではジョアンの元気になった姿も見られましたしね。とにかく相手はここ8試合、リーガとELで未勝利というちょっと、今の順位が不思議になる程、白星から遠ざかっているとはいえ、この試合ではキャプテンのオジャルサバルとダビド・シルバのケガ治り、出られるらしいため、油断は禁物。ここはいよいよ、ゴールづいてきたスアレルとコスタにまた一働きしてもらわないといけません。

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