首位に浮かれていてはいけない…/原ゆみこのマドリッド

2020.12.09 10:00 Wed
©Atlético de Madrid
「何だか余裕あるじゃない」そんな風に私が呟いていたのは月曜日、6日の憲法記念日と8日の聖母受胎日のpuente(プエンテ/連休のこと)の狭間まで祝日になるとは思わず、平日は30分に1本のマハダオンダ(マドリッド近郊)行きのパスが1時間に1本になっているのに焦りながら、何とか間に合ったアトレティコのトレーニングセッションを見学していた時のことでした。いやあ、CLグループリーグ後半戦も残りあと1節となった今週の彼らにはこの水曜、ザルツブルク戦が控えているんですけどね。土曜のリーガ戦の後、日曜にリハビリセッションを行い、月曜はガッツリ、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場で汗を流していたお隣さんと違い、シメオネ監督は日曜を休養日に。
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よって、月曜はリーガ戦のフル出場組がジム調整となり、グラウンドには10人程しか、選手がいなかったからですが、でもそうなると、全員が揃うのは火曜の午前中にオーストリアに移動した後、夕方にあるレッドブル・アレーナでのスタジアム練習しかないんですよお。いくら、日曜最後の試合でレアル・ソシエダがアラベスと0-0で引き分けたため、7連勝中のアトレティコが勝ち点差1で堂々単独首位に。開幕から10試合で勝ち点26という数字が前回リーガ優勝した2013-14シーズンの27ポイントに次ぐ、クラブ史上2番目の好成績ともあり、今季のV候補本命に推されるようになったからって、残りはまだ28試合もありますからね。え、CLだって、ザルツブルクとは引き分けでいいんだから、私が見られた15分間、選手たちがビーチボールを半分に切ったような台の上でバランスを取るトレーニングばかりをやっていて、全然、ボールを蹴るところが見られなくても不安になることはないだろうって?まあ、最悪、スコアレスドローでもいいとなれば、そうなんですが、うっかり負けたりすると、来年はEL決勝トーナメントに参加する破目になりますからね。ただ、この地獄の10連戦中、あんまり練習しすぎるのもいけないというのは、日曜のセッションでレアル・マドリーのウーデゴールが負傷したという報などを聞くと、ちょっと考えてしまうところなんですが…。
いえ、まずは先週末のリーガ戦から話していかないと。マドリッド勢が揃ってプレーした土曜日は、弟分のヘタフェがアウェイのレバンテ戦で先陣を切ったんですが、これがまさに天中殺のような展開に。ええ、開始5分にロジェールに先制ゴールを奪われたのはともかく、その流れの中でCBチェマのjuego peligroso(フエゴ・ペリグローソ/危険なプレー)が発覚し、いきなりレッドカードを出されてしまったから、さあ大変!それで勢いづいたレバンテが、ボルダラス監督がエースのマタを下げ、代わりのCB、エチェイタを入れる前に、今度はダニ・ゴメスのゴールで2点目をゲットとなれば、正直、もうどうしていいか、わかりませんって。

結局、後半も12分にデ・フルートスに3点目を決められただけでなく、31分にはもう1人の先発CB、ジェネも2枚目のイエローカードをもらって退場と、最後は9人になってしまったヘタフェは3-0で完敗したんですが、いやあ。もうこれで、10月にバルサに勝利して以来、3分け3敗と6試合連続で白星なしになってしまいましたからねえ。順位こそ、まだ15位ですが、いつの間にやら、降格圏まで勝ち点差2と迫ってしまいましたし、この1週間は重々反省して、土曜のセビージャ戦に備えてもらいたいかと。
一方、そのセビージャとサンチェス・ピスファンで次の時間帯に激突したのが兄貴分のマドリーで、何せ、先週はシャフタールに2-0と負け、CL最終節での勝利にクラブの今季を懸けることになった彼らですが、リーガも前節のアラベス戦に1-2の敗戦と不覚を取っていましたからね。順位も4位で、放っておくと、どんどん首位との勝ち点差が開いてしまう恐れもあったため、ジダン監督もローテーションする訳にはいかず。CL5節でセビージャはチェルシーに4-0と大敗したものの、すでに2位以上でグループ突破が決まっていたこともあり、この試合のために選手を大量に温存していたため、どちらかというと、相手に分がありそうに思えたものでしたが…。

いやあ、序盤にはロドリゴのシュートやベンゼマがゴール前でヘッドといったマドリーのチャンスはあったものの、なかなか点が入らないんですよ。でも大丈夫、私が近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で遅めのランチを取りながら、見ていた前半は0-0で終わったものの、いよいよ本腰を入れて観戦を始めた後半には、いえ、まずはデ・ヨングのchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)にドッキリさせられるなんてこともあったんですけどね。10分にはメンディのラストパスがビニシウスに渡り、そのシュートはいつもの如く、GKボノの正面に飛んだんですが、まさか、それを弾き損ねてオウンゴールにしてくれるとは!

まあ、後で当人が「El gol es mío, claro. Yo golpeo a la portería/エル・ゴル・エス・ミオ、クラーロ。ジョ・ゴルペオ・ア・ラ・プエルタ(ボクのゴールさ、もちろん。自分はゴール目掛けて蹴ったんだから)」と主張していたのはともかく、これでマドリーは虎の子の1点をゲット。「después se han encerrado, nos han tapado los espacios/デスプエス・セ・アン・エンセラードー、ノス・アン・タパードー・ロス・エスパシオス(その後は引きこもって、ウチにスペースを与えなかった)」(ロペテギ監督)という、ジダン監督のプランが功を奏したか、40分のオカンポスのオーバーヘッドもGKクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防ぎ、3試合ぶりに勝利を挙げることができたのは良かったんですが、うーん。

いくら、「el equipo estaba bien y quería seguir así/エル・エキポ・エスタバ・ビエン・イ・ケリア・セギール・アシー(チームはいい状態だったから、そのまま続けたかった)」(ジダン監督)とはいえ、ロドリゴをアセンシオに代えただけで、交代枠を1つしか使わなかったのはどうかと。と言っても何が何でも勝たないといけない試合でしたしね。10月にもカディス、シャフタールと格下相手に2連敗を喰らった後、クラシコ(伝統の一戦、バルサvsマドリー戦のこと)で快勝して、解任の噂を払拭したジダン監督だけに今回もきっと、無事に切り抜けられる?

何にしろ、全ては水曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、エスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)でキックオフとなるボルシア・メンヘングラッドバッハ戦の結果次第で、いやまあ、同時進行のインテルがシャフタールに勝ってくれれば、引き分けでもいいんですけどね。他人頼みではなく、ここは勝って堂々、決勝トーナメントに進出してほしいかと。ちなみにメンヘングラッドバッハは先週末のブンデスリーガ、2-2でマドリーと引き分けた前半戦の対決で2ゴールを挙げたトゥラムを後半まで温存して、フライブルクとドローという結果に。

対してマドリーでは古巣のセビージャ訪問を諦めて、ケガから完璧に回復したセルヒオ・ラモスが迎え撃つ準備を完了。ただ、ちょっと気になるのはもしPKがあった場合、11月のネーションズリークのスイス戦で2度、弾かれてしまったGKゾマー相手に再び、ラモスがチャレンジすることになるのかですが、さあて。カルバハルも復帰を急いているものの、微妙なところで、アザール、バルベルデはまだ時間がかかるため、招集リストに戻るのはコロナ明けのヨビッチぐらいでしょうか。そうそう、そのラモスが負傷したドイツとのネーションリーグ最終節で大勝し、ファイナルフォー出場が決まったスペインですが、先週の抽選会では準決勝でイタリアと対戦することが決定。ただ開催は、2022年W杯予選や1年延期となったユーロ2020を済ませての来年10月となるため、まだあまり気にしなくていいかと思います。

そして土曜は引き続き、バルでアトレティコvsバジャドリー戦を見た私だったんですが、リーガでは調子がいいせいか、シメオネ監督はかなり、スタメンにローテーションをかけていましたね。ええ、ジョアン・フェリックス、マルコス・ジョレンテ、コケをベンチに置き、晴れてコロナ陰性となったルイス・スアレスにはコレアとレマル、ビトロをヘルプに付けたんですが、こちらも相手の方がシュートを多く撃っていた前半はスコアレスドローに留まることに。そこで後半頭から、まずビトロをジョレンテに代えたところ、11分には早速、効果が現れたんですよ。ええ、ジョレンテが中盤から出したボールをトリピアーがエリア内にラストパス。ゴール前、あとちょっとでスアレスは届かなかったんですが、後ろから駆けつけてきたレマルがシュートして、先制点となったから、驚いたの何のって。

何せ、2シーズン前、7000万ユーロ(約90億円)という高額移籍金でモナコから来ながら、まったく活躍できず、この夏も放出要員と言われていた彼ですからね。まさに、それでも使い続けていたシメオネ監督の辛抱の勝利といった感じですが、この直後、アトレティコはサウール、コレアをコケ、ジョアンへとリフレッシュ。ウルグアイ代表合宿中からの感染隔離で3週間、プレーしていなかったスアレスもコンドグビアと代わったものの、1点を守り抜く態勢に入るどころか、27分にはGKオブラクのロングフィードをトリピアーが頭で流し、ドリブルでエリア内に突進したジョレンテが2点目を挙げるって、いや、ホント、「Asi es futbol/アシー・エス・フトボル(それがサッカー)」。シュートが全部入る日もあれば、全然入らない日もあるというのには納得です。

もちろん、それだけでなく、バジャドリーのセルヒオ監督も「Bプランでは打撃を与えることはできなかったが、Aプランになったら、どうなるか、もう見た通り。確かにウチは相手により良い選手を出させたが、también hay que saber a quién nos enfrentábamos/タンビエン・アイ・ケ・サベール・ア・キエン・ノス・エンフレンタバモス(誰と戦っているのかも知らないといけない)」と言っていた通り、アトレティコの選手たちの方が才能で勝っていたというのもあるんでしょうけどね。土曜最後の試合では、あのバルサが宿敵マドリーの轍を踏むがように、アトレティコなど、4-0で大勝していたカディスを前に信じられない守備ミスが勃発。2-1で負けたなんて例もあるため、世の中、才能だけではないのも確かなんでしょうけど…。

何はともあれ、2-0で再びリーガで勝ち星を積み上げたアトレティコは勝ち点差6をキープしたまま、土曜のマドリーダービーに挑めることに。更に主力選手がムダに体力を消耗することなく、適度に体を動かした状態で、土曜は打撲で欠場したカラスコも含め、ザルツブルク戦も迎えられますが、相手もこの一戦に勝利すれば、2位突破が可能とあって、週末のリーグ戦では大々的にローテーションをかけ、甘んじて下位のアドミラに1-0で敗れるという選択をしていますからね。またヒメネスが負傷期に入ってしまったため、最近、滅法、シメオネ監督が気に入っているCB3人制はサビッチ、フェリペ、エルモーソのままとなるアトレティコも失点だけには要注意。水曜午後11時には無事に決勝トーナメント進出を果たして、来週月曜のCL16強対決抽選会に参加できるといいのですが。


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