ゴールは運次第なのかも…/原ゆみこのマドリッド

2020.12.01 20:30 Tue
「頭を切り替えるのが大変になってきたわ」そんな風に私が嘆いていたのは月曜日、リーガの順位表で首位のレアル・ソシエダがビジャレアルと1-1で分けたため、差を勝ち点1に縮め、2位につけているアトレティコを見てニンマリした後、今週は火曜開催のCLグループリーグへと目を移すとそこでも彼らは2位。とはいえ、状況的にはかなり厳しいことに気づいてしまったから。だってえ、リーガでは破竹の6連勝中というのに、CLでは3、4節でロコモティブ・モスクワに連続引き分け。おかげでこの5節、もし初戦で4-0と大敗を喰らっている、前大会王者のバイエルンにまた負けてしまったら、計算上では、たとえ、最終節のザルツブルク戦で勝っても、ロコモティブ・モスクワが2連勝すれば、3位敗退、来年はEL決勝トーナメント参加というシナリオもありうるんですよお。

折しもこの日曜には、2年前にアル・サッドに移籍し、この6月に退団していたアトレティコの元キャプテン、ガビが自身のSNSで現役引退発表していたんですが、それで思い出したのが、彼がいた最後のシーズン。やはりグループ最弱だったカラバフに2引き分けして、チームがCL早期敗退の瀬戸際に追い込まれた試合の直後、「A día de hoy, es una mierda/アディア・デ・オイ、エス・ウナ・ミエルダ(今日のところはクソみたいなもんだ)」とEL行きについて、ボロくそに言っていたものですが、その思い出のワンダ・メトロポリターノのミックスゾーンも今はコロナ禍により、固く閉ざされたまま。ガビからキャプテンを引き継いだコケなども、まあ、その年はELに優勝したせいもあるんでしょうかね。前日記者会見では、「Esta noche soñaremos con ganar al Bayern/エスタ・ノッチェ・ソニャレモス・コン・ガナール・アル・バイエルン(今夜はバイエルンに勝つことを夢見るよ)」とどこか、呑気なものでしたが、いや、ホント、心配になりますって。
そんなことはともかく、先に週末のリーガの話からしていくことにすると、土曜にマドリッド勢の先陣を切ったのはアトレティコ。中2日置いた先にはCLバイエルン戦が迫っていましたから、ローテーションがあるのは覚悟していたものの、メスタジャではジョアン・フェリックスとカラスコを温存し、代わってスタメンに入ったのがレマル、そして最近、シメオネ監督が気に入っているエルモーソを第3のCBとして入れ、ロディに左のアタッカー兼SBを任せるとは結構、予想外だったかと。それでもこの日は前半からレマルが健闘し、2度程、バレンシアのGKドメネクにparadon(パラドン/スーパーセーブ)を強いていたんですが、やはり、11月の各国代表戦明けからのなかなか、ゴールが入らない病は治っていなかったよう。

ええ、サウールやマルコス・ジョレンテ、コレラらも積極的に撃っていったんですが、ドメネクに弾かれなければ、枠を外れるといった具合でしたからね。幸いバレンシアの方も、後でハビ・グラシア監督が「あのプレーがゴールになっていたら、もっと試合もオープンになって、hubiéramos tenido más opciones de puntuar/ウビエラモス・テニードー・マス・オプシオネス・デ・プントゥアル(勝ち点を稼ぐオプションがもっとあったろう)」と嘆いていたように、前半21分にラチッチのシュートがゴールポストに当たったのが一番のチャンスだったため、両チーム、無得点のまま、試合はハーフタイムに。後半頭からはいよいよ、ロディに代わってジョアンが出動です。

でもねえ、あまり変化はなかったかもしれません。またしてもジョレンテはシュートを弾かれ、レマルの一撃もヴァスに当たって逸れてしまったとなれば、うーん、後半20分過ぎから始まった戦力のリフレッシュもカラスコ、ビトロ、コンドグビアが入った後はもう、ベンチにはCBのフェリペと、ルイス・スアレスがコロナ陽性、ジエゴ・コスタを血栓症と両CFが戦列を離れても一向にお声のかからないFWサポンジッチ以外、4人のカンテラーノ(アトレティコB)しか、残っていませんでしたからね。先週のCLロコモティブ・モスクワ戦のようにまた、スコアレスドローで終わってしまうのかと恐れていたところ…。
信じる者は救われるとはまさにこのことです。ええ、「La suerte ha sumado/ラ・スエルテ・ア・スマードー(運も巡ってきた)」と後でカラスコも言っていたんですが、31分、彼がエリア内左から出したラストパスをゴール前のビトロは撃てなかったものの、その後ろでボールが抜けてくるとは思っていなかったラトの足に当たり、ネットに入ってくれたから、ビックリしたの何のって。オウンゴールで値千金の1点をゲットしたアトレティコはそのまま最後までリードを保って、0-1で勝っちゃったんですよ。

いやあ、これで今季リーガ戦9試合中、7回目の無失点を達成したのはGKオブラクでしたが、間違いなく、MVP級の働きをしたドネネクも「No han sido muy superiores a nosotros y lo justo habría sido un empate/ノー・アン・シードー・ムイ・スペリオーレス・ア・ノソトロス・イ・ロ・フストー・アブリア・シドー・ウン・エンパテ(ウチより相手がずっと上だった訳じゃない。より順当なのは引き分けだったろう)」と言っていたんですけどねえ。ずっとではなくても、シュート数などでも勝っていたのはアトレティコでしたし、何より、撃っても撃っても入らずとも、諦めずに攻め続ける根性は褒めてあげていいかと。そこにツキが加われば、それこそ鬼に金棒じゃないですか。

え、試合後はレマルがインタビューに答えていたけど、2年前、ジョアンが来る前はクラブ史上最高額の7000万ユーロ(約88億円)という移籍金でモナコから鳴り物入りで入団しながら、まったく活躍できず。表舞台に立つこともなかったため、いつの間にか、スペイン語がペラペラになっているのには驚いたって?そうですね、私も知らなかったんですが、特に今季は過密日程も手伝って、シメオネ監督が辛抱強く使っていた成果がようやく出てきたよう。ただ、指揮官が「Juega muy bien, créanme/フエガ・ムイ・ビエン、クレアンメ(彼はとてもいいプレーをする。私を信じてくれ)」と記者会見でマスコミを説得しないといけないというのも、どうなんでしょうかね。

そしてまた夜になって、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に戻った私だったんですが、何せ先日のCLではインテルを寄せ付けなかったレアル・マドリーですからね。相手もアラベスと強豪チームではないため、どこか気楽に眺めていたものの、まさか開始早々の3分、CKをラグアルディアがヘッドしたボールがナチョの腕に当たり、ペナルティを取られてしまうとは一体、誰が予想した?ルーカス・ペレスがPKを決め、これで代表戦前のバレンシア戦でのソレルのハットトリックから、前節ビジャレアル戦のジェラール・モレノの同点ゴールと、マドリーはここリーガ3試合、PKで5失点って、いやもう、これって、何かに憑かれているとしか言えない?

まさにジダン監督も「Es el peor inicio de la temporada/エス・エル・ペオール・イニシオ・デ・ラ・テンポラーダ(今季最悪の始まり方だった)」と言っていた通りだったんですが、それとは逆にマドリーの方はアザールがドゥアルテにエリア内で倒されてもVAR(ビデオ審判)にスルーされるわ、ハーフタイム入り直前、ラグアルディアが犯したマルセロへのペナルティも無視。いえ、当人も「Ha tirado de mi pelo/ア・ティラードー・デ・ミ・ペロ(ボクの髪を引っ張ったんだ)」とベガ主審に猛抗議したんですけどね。一番はっきり、そのシーンを捉えていた映像ではマルセロのアフロに入ってしまった相手の手が髪に絡まって、抜けなかったようにも見えましたが、もしや審判にも、掴めるような髪型をしているせいでの自己責任と解釈された?

エスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)のスタンドに陣取った、セルヒオ・ラモス、ベンゼマ、カルバハル、バルベルデといった負傷中の選手たちも無観客で声が通るのをいいことに、「Penalti clarísimo, hombre!/ペナルティ・クラリシモ、オンブレ(明白なペナルティだぜ、おいおい)」と圧力をかけたんですけどねえ。サンティアゴ・ベルナベウなら響き渡ったであろう、ファンからのpito(ピト/ブーイング)程の影響もなく、全然、相手にしてもらえないんですから、まったくツイていません。

とはいえ、まだ差はたった1点。後半丸々あれば、たとえ、この日、コロナ明け、3試合目となったアザールが太ももを痛め、前半28分にロドリゴと交代になっていたとしても、十分、逆転は可能かと想えたんですが、何と、再開から3分、今度はGKクルトワが大チョンボ。ええ、ゴールキックを自分の正面にいたホセルに出してしまい、そのまま2点目を決められてしまうなんて、やってくれるじゃないですか。実際、それ以外は味方の守備の乱れから、ルーカス・ペレスやホセルに複数回、カウンターで1対1に迫られながら、チームのピンチを救っていた彼なんですけどね。遅ればせながら、41分にはCKからのプレーでカセミロがゴールを挙げて1点差に迫り、土壇場で2-2と引分けたCLボルシア・メンヘングラッドバッハ戦の再現もありかと思われたものの、最後はイスコのシュートがゴールバーに当たって万事休すとなりましたっけ。

結局、試合は1-2でマドリーの敗戦となり、何せ、もうこれで今季リーガ10試合のうち、5勝3分け2敗と半分しか勝てていませんからね。ただ、その黒星を喫した相手、カディス、バレンシア、アラベスの3チームがヨーロッパの大会に参加しておらず、「Lo hemos estudiado durante toda la semana y el míster nos ha dado las claves/ロ・エモス・エストゥデシアンドー・ドゥランテ・トーダ・ラ・セマーナ・イ・エル・ミステル・ノス・ア・ダードー・ラス・クラベス(1週間ずっと、ウチは相手を研究して、監督が要点を教えてくれた)」(ルーカス・ペレス)という事情は考慮するべきかと。

え、それは地獄の10連戦に参加中のチームは皆、同じ条件だし、ケガで出られない選手がいてもインテルには勝っているんだから、言い訳にはならないって?うーん、今は4位のままとはいえ、お隣さんとも勝ち点差が6に開いてしまいましたしね。こうなるとアラベスのマチン監督に「Sinceramente, hubiese preferido ganar a un rival que fuese directo que no ganar al Real Madrid/シンセラメンテ、ウビエセ・プレフェリードー・ガナール・ア・ウン・リバル・ケ・フエセ・ディレクトー・ケ・ノー・ガナール・アル・レアル・マドリー(正直に言うと、レアル・マドリーに勝てないより、直接ライバルに勝つ方が好ましいんだが)」なんて言われてしまうのも自業自得だった?

ただ、そんなマドリーでもCLではまだ恵まれていて、いえ、すでにグループ突破が決まったバルサやセビージャ程ではないんですけどね。この火曜午後6時55分(日本時間翌午前2時55分)から、2年前、リバプール相手に今のところ、最後となるDecimotercera(デシモテルセーラ/13回目のCL優勝のこと)を達成したゲンのいいオリンピスキー・スタジアムで行われるシャフタール戦に勝てば、決勝トーナメントの切符をゲットできることに。まあ、今度は右太ももを負傷したアザールは全治3週間。とうとう、第2のベイル(現トッテナム)か、カカーかと言われるようになってしまったのは気の毒ですが、昨季、チェルシーから来て、ここまで全試合の30%しか出場していないため、チームも彼がいないのには慣れていますからね。

セルヒオ・ラモスもまだ治らず、キエフ遠征には参加していませんが、これもインテル戦の前例からすれば、ナチョとバランが頑張ってくれるかと。唯一、気掛かりなのはその試合でカルバハルも太ももを痛め、アラベス戦から引き続いて、本職でないルーカス・バスケスが務める右SBですが、とうとうベンゼマの筋肉痛が治って、出場できるという朗報もありますからね。たとえ、1節では油断が祟って、ディ・ステファノで2-3と負けているシャフタールとはいえ、基本的には格下のチームですから、余裕で勝てると思うのですが、さて。

一方、私が覗きに行ったワンダ・メトロポリターノでの前日練習ではまだルイス・スアレス、トレイラ、ウルグアイ代表クラスター被害者の姿は見えず、どうやらその日、行ったPCR検査ではまだ陽性だったようなんですけどね。シメオネ監督によると、「Si mañana diese negativo podría estar en condiciones/シー・マニャーナ・ディエセ・ネガティーボ・ポドリア・エンスタル・エン・コンディシオネス(もし明日、陰性が出たら、プレーできるコンディションなるかもしれない)」とのことで、うーん、リーガでは2回、陰性結果が必要と聞いていましたが、UEFAの大会では1回でいい?

まあ、その辺は曖昧なことも多いため、あまりスアレスは当てにしない方がいいかと思いますが、嬉しいことにやはり、過密日程消化中のバイエルンはすでに1位突破が決まっているせいか、エースのレバンドフスキ、GKノイアー、そして1節でゴールを挙げているゴレツカをミュンヘンに残してマドリッド入り。とはいえ、前節はメッシをお留守番にしたバルサがディナモ・キエフに0-4と大勝したなんてこともありましたからね。火曜の午後9時(日本時間翌午前5時)からの一戦ではとにかく、守備を決して怠らず、ゴール運が巡ってくるのを期待するということになりますでしょうか。

そして最後に日曜にリーガをプレーしたマドリッドの弟分、ヘタフェなんですが、いやあ、また引き分けちゃったんですよ。ええ、アスレティックをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えた彼らは前半9分、CKからビジャリブレにヘッドで決められて、早々にリードを奪われてしまう始末。後半30分には何とか、アンヘルのゴールで追いついたんですが、逆転勝利までには至らず、もうこれで5試合連続白星なしとは情けない。まあ、彼らの場合はミッドウィークに試合がなく、土曜の相手、レバンテに備えて、準備する時間がたっぷりあるのは兄貴分たちから見たら、羨ましい限りなんですけどね。今はケガ人もほとんどいないとはいえ、ゴール日照りばかりは運が変わってくれるのを待つしかないというのは辛いところですよね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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