神戸ベスト4進出も問題多いACL/六川亨の日本サッカー見聞録

2020.12.12 20:00 Sat
Getty Images
10日に行われたACL準々決勝は、日本勢で唯一勝ち残った神戸がPK戦の末に水原(韓国)を下し、ベスト4へと勝ち進んだ。神戸は13日にペルセポリス(イラン)の待つ決勝戦(19日)への出場権を賭けて、蔚山(韓国)と対戦する。
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勝つには勝った神戸だが、中2日で準決勝を戦わなければならないことを考えると、延長戦の30分は余分だったというのが正直な感想だ。後半のビッグチャンスをドウグラスが確実に決めていれば――ピッチはデコボコのフカフカだったため、彼を責めることはできないとしても――90分で決着をつけるべきだった。そしてまた、圧倒的に押していてもワンチャンスを決められたり(延長後半の決定機は山口が阻止)、PK戦で敗れたりするのもサッカーであり、韓国勢との戦いでもあった。日本勢への対抗心と、ACLがもたらす賞金からくる図式であり、これはいまも昔も変わらない。
神戸に話を戻すと、PK戦こそ第1キッカーでシュートを成功させたイニエスタだが、右足太股のケガはかなり深刻そうだ。残り2試合(勝ち進めば)、彼の不在を前提に戦わなければならないだろう。それでも総力戦でJリーグの底力を発揮して欲しい。

このACLだが、現状では来シーズンの日程が決まらないことで様々な障害になっている。
現状で決まっているのは、来年2月に延期された“クラブW杯”がカタールで開催されること。本来は24チームに改編され、中国での開催が決まっていた“新クラブW杯”がコロナの影響で、現行の7チームによる大会として12月に日本で開催されること。そして2年に1回開催される“EAFF E- 1選手権”が中国で12月に開催されることだ。

これらの大会はセントラル開催で、開催期間も限られている。一方のACLはホーム・アンド・アウェーが基本で、開催時期も長く、地域も広大だ。このためACLの開催時期が決まらないと、Jリーグも開幕と閉幕の日時を決められないだけでなく、上記の国際大会も日程を決められない。

しかしながら、12月の中旬を迎えようとしている現在もACLの日程は未定のまま。そこでJリーグは、開幕の日程が決まらないと各クラブも1月のオフの期間をいつまでにするか、チームの始動日と新入団選手の会見、キャンプの日程が決められないとして「12月8日がリミット」と決断。J1の開幕は2月27日、J2とJ3は3月13日と決めた。

そしてJリーグの最終節は、日本開催のクラブW杯とEAFF E- 1選手権の最終日と重ならないようにしなければならない。これら2大会についてJリーグの関係者は「JFA(日本サッカー協会)マター」としながらも、村井チェアマンは「現行スタイルのクラブW杯の最後の大会が日本で開催されるのは大変光栄なこと。その前にリーグの全日程を終えなければならない」として、12月4、5日を最終節に決めた。

ただし、リーグ王者の川崎Fと天皇杯覇者の対戦するゼロックス杯とルヴァン杯の日程はACLが未定のため、こちらも未定のままだ。

ちなみに田嶋JFA会長はリモートによるFIFA(国際サッカー連盟)のコングレス(総会)に参加後、「クラブW杯の日本開催はAFC(アジアサッカー連盟)も全会一致で決まった。日程は決まっていないが、ヨーロッパのカレンダーは12月のクリスマス前に中断する。来年はE-1があるがヨーロッパを考えると決勝は19日しかないかな」と私案を語り、須原専務理事も「(E-1連盟と)連絡はとっています」とのことだ。

このコングレスでは、英国そのものがEU(欧州連合)から脱退したことを受け、英国4協会(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)もEUから外れたことが報告された。ただし英国4協会はいままで通りそれぞれが独立したFA(協会)で、それは香港と中国、グアムとアメリカ(いずれも別協会とする)などと同じ扱いであることも確認された。

こうして日程の決まらないACLを尻目に、できる範囲で日本も大会の枠組みを決めている。それでも懸念されるのは、五輪やW杯予選も開催された上で、チーム数の増えたJ1リーグが無事に日程を消化できるかどうかということである。

今年はコロナの影響でリーグ戦の再開が遅れたため、リーグ戦とルヴァン杯とACLを並行して戦った神戸、横浜FM、FC東京は連戦を強いられた。リーグ戦で失速した一因と言えるだろう。さすがに来シーズンは日程的に今年より緩やかになるだろうが、五輪が開催されれば横浜FMとFC東京はホーム・スタジアムを使えないため、夏場にアウェーの連戦が予想される。

両チームに救いがあるとすればACLがないことで、つくづくACLは日本のサッカーカレンダーにとってネックになっている。さりとてFIFA主催のクラブW杯につながるだけに、無視するわけにはいかない。なんとも悩ましい大会でもある。何かいい解決法はないだろうか。
【文・六川亨】
1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた


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