集中力を持続するのは難しい…/原ゆみこのマドリッド

2020.12.15 22:30 Tue
Getty Images
「まるでCLのカードじゃない」そんな風に私が驚いていたのは月曜日、一応、正午からのCL16強対決抽選会は気になって、UEFA.comのライブストリーミングで見ていたものの、その1時間に始まるEL32強対決抽選会は参加チームにマドリッド勢がいなかったため、何となく無視。外出から帰って結果をチェックしたところ、レアル・ソシエダがCLグループ最終節でライプツィヒに負け、ELに回ったマンチェスター・ユナイテッド、グラナダがそのレアル・ソシエダと引分けてELグループ1位通過したナポリ、そしてグラナダはアトレティコが先週、苦労して下し、CLグループ3位敗退に追いやったザルツブルクと、壮々たる面々と当たったことを知った時のことでした。
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ちなみに肝心のCLの方では、いやあ、こちらもスペイン勢は4チーム、全て勝ち抜けているんですが、グループリーグ最終節で玉突き首位通過となったレアル・マドリー以外、皆、2位通過でしたからね。この大会では新興組のアタランタと当たったお隣さんとは違い、アトレティコはチェルシーと、バルサはPSGと、セビージャはドルトムントという難しい相手となったんですが、どちらにしろ、16強対決のマッチデーは2月16、17、23、24日に1stレグ、3月9、10、16、17日に2ndレグとかなり先の話。そう、今季のグループリーグは後半戦など、ロシアでの試合以外、ほとんど無観客だったものの、ちょっと前から、プレミアリーグなどでは観客を入れ始めていますからね。3月17日にロンドンのスタンフォード・ブリッジにアトレティコが乗り込む頃にはコロナワクチンも行き渡り、普通にスタジアム観戦ができるようになっているのではないかとちょっと、期待してしまうんですが、こればっかりはねえ。折しも昨季、3月にリーガやCLが中断する直前の試合もCL16強対決リバプールvsアトレティコ戦2ndレグ。先日、マハダオンダ(マドリッド近郊)のアトレティコ練習場で久々に会った、顔馴染みのラジオレポーターがその試合の取材に行って、実は感染していたなんて今更ながら聞くと、ホント、このコロナ禍、長引いているなあと溜息が出てしまいますよね。
まあ、そんな来年のことはともかく、今は先週末のリーガがどうだったかをお伝えしていくことにすると。土曜はまるでマドリーダービーの前座のように、弟分のヘタフェがセビージャを明るい太陽の下、コリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えたんですが、スランプを脱出することはできませんでした。いえ、マタ、ジェネ、チェマのレギュラー3選手を欠きながら、CL決勝トーナメントを果たして意気上がるセビージャ相手に後半41分まで0-0と、粘ってはいたんですけどね。勝ち点1獲得まであと数分と迫りながら、スソのクロスを照準バッチリのヘッドでエチェイタが自陣ゴールに決めているって、一体、どうなっているんでしょう!

結局、この1点がモノを言い、0-1で負けたヘタフェはこれで7試合連続白星なしとなってしまったんですが、こんな不調が続くのは2016-17シーズン、2部に降格していたチームを途中で引き受けて以来、その年に1部復帰。それから3シーズン、常に8位以上をキープしていたボルダラス監督にとっては初めての体験ですからね。まだ特には監督交代の噂などは出ていないんものの、降格圏まで勝ち点差2という事情も鑑みて、1月の移籍市場では最近、ビジャレアルでの出場機会の少なさに河岸を変えるかもしれないという、マドリーからレンタル移籍中の久保建英選手を始め、戦力の補強を真剣に考えた方がいいかも。
何はともあれ、今週のヘタフェは木曜にコパ・デル・レイ1回戦のアナイタスナ(3部)戦を控えているんですが、それこそ日曜のカディス戦にはfinal(フィナル/決勝戦)のような覚悟で挑んでもらいたいところかと。そうそう、実はそのカディスに兄貴分のマドリーは0-1で負け、アトレティコは4-0で勝利と前例が割れているんですよね。よって、当然、後者の戦いを見習うべきと言いたいところですが…決勝戦に強いのはやっぱり、マドリーの方だったんです。

そう、今季無敗の首位として土曜の夜、エスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)に堂々、乗り込んだアトレティコだったんですが、序盤からライバルに主導権を握られ、前半9分にはベンゼマのシュートをGKオブラクがゴールポストに逸らして、何とかピンチを逃れる始末。まだその時には、水曜のCLザルツブルク戦も似たような始まり方で、それでも最後は勝ったんだからと私も不安を抑えつけていたんですが、早くも15分には悪夢が現実になることに。

クロースがCKを蹴ったところ、カセミロのマークに付いていたエレーラが何をどうしたか、両脚を開いて倒れてしまい、まんまとヘッドを撃たれ、それが先制点になってしまったから、さあ大変。いやあ、シメオネ監督はサウールの調子が良くないと見たか、ザルツブルク戦から、1人だけ、スタメンを変えていたんですが、まさにそれで入ったエレーラのミスでゴールを奪われてしまったとなれば、「El entrenador se equivocó en el planteamiento/エル・エントレナドール・セ・エキボコ・エン・エル・プランテミエントー(監督が戦略を間違えた)」(シメオネ監督)と反省していたのも当然だった?

その後も前半はマドリーに手も足も出ず、ハーフタイム直前など、ボールを目の前のビニシウス目掛けて蹴り、いざこざの原因を作ったコケが、「Koke, ya había pitado la puta madre!/コケ、ジャー・アビア・ピタードー・ラ・プータ・マドレ(コケ、もう終了の笛が鳴ったんだぞ)」とスペイン代表の先輩、セルヒオ・ラモスから怒られたりしていたんですが、おそらくこれは「En el primer tiempo no hemos sido nosotros en ningún momento/エン・エル・プリメール・ティエンポー・ノー・エモス・シードー・ノソトロス・エン・ニングン・モメントー(前半は一時もボクたち自身じゃなかった)。相手の方がいいプレーをして、強度もあった」(コケ)というフラストレーションのせい。

そこでシメオネ監督も後半頭から、エレーラ、カラスコ、フェリペの3人を一気にレマル、コレア、ロディに代え、システムも最近、上手くいっていた3人CB制から、慣れ親しんだ4-4-2に変えたところ、後半9分、RMカスティージャ育ちのマルコス・ジョレンテが勝手知ったる地の利を生かし、エリア内右からファーサイドにキラーパスを供給。先日のバジャドリー戦では同じようなシチュエーションでゴール正面のルイス・スアレスが撃てず、左側から来たレマルが決めてくれたんですが、この日はジョアン・フェリックスを通り過ぎたボールをゴールのネット脇に撃ち込んでしまうことに。

この同点のビッグチャンスをレマルがフイにしてしまったことで、せっかく3年目の今季こそ、モナコに払った7000万ユーロ(約89億円)の高額移籍金を正当化できるのかと思いかけていたのが、在籍、最初の2シーズンでリーガ2得点ということは、要は1年に1本しかゴールを決めない選手という評価に戻ってしまった感もあるんですが、不可解なことはまだ続いて、15分にはシメオネ監督がジョアンをサウールに交代。先日のレッドブル・アレーナでのスアレスやサウール同様、今はどこもスタンドがベンチになっているため、ピッチを出された当人が怒って椅子を蹴っているシーンなどがTVカメラに捉えられ、物議を醸していましたが、まあ、その気持ちもわからなくはありません。

挙句の果てに19分、今度はクロースの蹴ったFKをDFがクリアしたところ、エリア外で誰も守っていなかったため、カルバハルが余裕でロックオン。オブラクの弾いたシュートが今度はゴールポストに当たった後、自身の背中に当たって中に入ってしまうとは、まさに不運もここに極まれりと言えましょうか。いえ、火曜にモデルの彼女、ダフネさんが長男、マルティン君を出産。「妊娠中から、ずっとゴールを決めたいと思ってたけど、ケガもあって叶わなかった」というカルバハルには悪いんですが、これはオブラクのオウンゴールですからね。

だからって、終了間際にはルーカス・バスケスの至近距離シュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)、3点差負けの屈辱を防いでくれたオブラクにケチをつけられるアトレティコファンはいないんですが、シメオネ監督もシメオネ監督で、2点差になったというのに、27分にはCFのスアレスをボランチのコンドグビアに代え、反撃ではなく、「Un resultado mas abultado era más dañoso/ウン・レスルタードー・マス・アブルタードー・エラ・マス・ダニョーソ(大差がついたら、よりダメージが大きくなる)」のを防ぐ方を選んだというのも何とも消極的。実際、34分にサウールのヘッドがGKクルトワに弾かれず、1点差になっていれば、勝敗もどうなるかわからなかったところでしたが…。

おそらくシメオネ監督には、「Un gran esfuerzo el otro día, un ansía de no quedar fuera de Champions, hubo mucha carga emocional/ウン・グラン・エスフエルソ・エル・オトロ・ディア、ウン・アンシア・デ・ノー・ケダール・フエラ・デ・チャンピオンズ、ウボ・ムーチャ・カルガ・エモシオナル(先日の物凄い努力、CLに敗退できないという焦燥感で心理的にとても大きなップレッシャーを受けていた)」選手たちが、このダービーの前にやり切った感に浸っているのがわかったんでしょうね。ええ、これは昨季、paron(パロン/リーガの停止期間)後、頑張って、マストのCL出場圏内入りを決めるやいなや、最後の2、3試合がふにゃふにゃしてしまったのと同じで、もしやその日、負けても勝ち点差3で、お隣さんの上にいられるという余裕も影響した?

逆にジダン監督が、「Hicimos una muy buena presión en todo el campo y no dejamos al Atlético en todo el partido/イシモス・ウナ・ムイ・ブエナ・プレシオン・エン・トードー・エル・カンポ・イ・ノー・デハモス・アル・アトレティコ・エン・トードー・エル・パルティードー(ウチはピッチの全てでいいプレッシャーをかけ、試合を通して、アトレティコに自由にさせなかった)」と満足気に語っていたマドリーの方は、とにかくこの、セビージャ戦、CLボルシア・メンヘングラッドバッハ戦、マドリーダービーの3試合全てが決勝のようなものでしたからね。2014年、2016年のCL決勝でもアトレティコを制した彼らですから、その気になって挑めば、元々の選手たちの質の高さもあって、大一番には勝てるということなんでしょうけど…。

問題は普通の試合なんですよ。今週の彼らは火曜午後10時(日本時間翌午前6時)から、本来1月20日前後に予定されていた19節のアスレティック戦が先行開催。いえ、まだサッカー協会から正式発表がないため、確実とは言えないんですが、無観客試合となるのを嫌ったサウジアラビアに断られ、ファイナルフォー形式で行われる2度目のスペイン・スーパーカップが、その1月第3、4週にアンダルシア地方であるからのようなんですけどね。先週末もバレンシアと2-2で引き分け、13位と不本意な位置に留まっている相手ですから、マドリーの選手たちが油断して、ディ・ステファノで負けたカディス戦、アラベス戦、もしくはCLシャフタール戦の二の舞にならないかが心配。

ただ、ここで勝利すれば、消化試合が2つ多いとはいえ、レアル・ソシエダと同じ勝ち点で2位に戻ったお隣さんと並べるとあって、気合も入るかもしれないんですが、気掛かりなのはカセミロが累積警告で出場停止になるのと、ダービーでもアセンシオ、ロドリゴ、そして負傷が治ったバルベルデだけの3人しか、交代出場させなかったジダン監督が決戦ウィークで疲れた主力メンバーに忖度して、マルセロやイスコをスタメンにしてしまうかもしれないこと。何せ、リハビリ中のメンバーはまだ、アザールもウーデゴールもヨビッチもマリアーノも戻って来られませんからね。今季はローテーションするたびに痛い目を見ている彼らですが、主力のクロースやモドリッチ、ベンゼマら、皆30代と早々、無理もさせ続けられないため、その辺が悩みの種になりますでしょうか。

そしてアトティコの方は水曜、午後7時(日本時間翌午前3時)から、マジョルカ島でカルダサル(3部)とコパ・デル・レイ1回戦なんですが、月曜にはエレーラが左足をまたケガしたとの報が。ジエゴ・コスタやヒメネスも鋭意リハビリ中ですが、ま、こちらは久々の観客入場試合になるとはいえ、カテゴリーがかなり違いますからね。昨季はスペイン・スーパーカップ出場で1、2回戦を免除、最初となった32強対決でクルトゥラル・レオネサ(2部B)に控えメンバーを使って2-1としてやられたような、恥ずかしいことにはならないと思いますが、さて。何はともあれ、CLグループリーグ突破で緩んでしまった選手たちも年内あと4試合、しっかり気を引き締め直して、いいプレーを見せてもらえたらいいんですが。


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