何よりの妙薬は勝利だった…/原ゆみこのマドリッド

2020.10.27 20:55 Tue
©Atlético de Madrid
「これじゃ、喜んでる間もありゃしない」そんな風に私が嘆いていたのは月曜日、お昼のニュースでレアル・マドリーがドイツ行きの飛行機に乗るシーンを目にした時のことでした。いやあ、実は先週中にはCSD(スポーツ上級委員会)のお達しにより、とりあえず、ラ・リーガとスペイン・サッカー協会の平日開催試合を巡る争いが決着。ようやく金曜と月曜にもプレーできるようになったため、まだ月曜の夜にもリーガ7節のレバンテvsセルタ戦があったりするんですけどね。土曜にはせっかくクラシコ(伝統の一戦、バルサvsマドリー戦のこと)に勝ったものの、火曜にはもう、CLグループリーグ2節、ボルシア・メンヘングラッドバッハ戦となれば、選手たちだけでなく、ファンだって疲れてしまわない?

実際、10月のインターナショナルマッチウィーク明けから始まった地獄の7連戦は、ヨーロッパの大会に出場しているどのチームにとっても恐ろしいもので、いや、私もこんなに頻繁に近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に入り浸っているのは、何せ、3月から3カ月近く続いたEstado de Alarma(エスタードー・デ・アラルマ/警戒事態)宣言がこの日曜に再びスペイン全土に発布されていますからねえ。今度はお店の営業停止や日中の外出禁止までには至らないものの、最近は若者や学生のfiesta(フィエスタ/パーティ)やbotellon(ボテジョン/野外での酒盛り)が増えてきたのもあってか、午前0時から朝6時までは多人数で集まってはいけないことに。
飲食店も午前0時に閉店となるのは、まあ、それまでに終わらない試合は今のところないため、別にいいんですけどね。要はスペイン中でコロナ感染者が激増しているということで、バルでの試合観戦もリスクが高いのかもと、私が怖くなってしまったのはともかく、早くも試合過多に選手の負傷が始まっているんですよ。ええ、クラシコではマドリーのナチョがハーフまであと少しというところで太ももを痛めて交代。11月の代表戦週間明けまで戻って来られなくなったかと思えば、バルサでもコウチーニョが太もものケガで全治3週間に。7連戦のスタート早々のセルタ戦でジエゴ・コスタを失っていたアトレティコなど、ベティス戦でもカラスコが、こちらも3週間の離脱となってしまったんですが、いやもう、このペースで12月まで続いたら、コロナ以上にケガ人の方がどのチームにとっても頭痛の種になるかも。

え、今回、土曜午後4時からのクラシコをバルで見ていたのが年配のマドリーファン2人と4、5人の若者グループしかおらず、席取りにも全然、苦労がなかったのはコロナによる、外出自粛ムードのせいかって?いやあ、店内にはキャパの半分しか客が入れませんし、今はカウンターでの立ち飲みも禁じられているため、座れなかったらどうしようと、ドキドキして行った私だったんですけどね。もしや皆、9月中にテレフォニカ(スペインのNTT)の固定電話+携帯2台+インターネット+リーガ、CL全試合視聴で月額56ユーロ(約7000円)という、6カ月限定のスーパーオファーに乗って、自宅で見ている?このコロナ期間にサッカーファンが減ってしまったとは思えませんが、本当のところ、どうなんでしょうね。

まあ、そんなことはともかく、クラシコがどんな試合だったかもお伝えしていくことにすると、リーガ前節のカディス戦、ミッドウィークのCLシャフタール戦での先発ローテーションが祟り、痛い目を見たジダン監督のチームでしたが、その甲斐は十分、ありました。ええ、開始5分にはベンゼマのスルーパスを受けたバルベルデが鋭いシュートを決め、早くも先制しているんですから、驚いたの何のって。ところが、その3分後にはバルサも反撃、ケガが治って戻ってきたジョルディ・アルバからの折り返しをゴール前でアンス・ファティが押し込んで、あっという間に同点になったため、もしや撃ち合いが見られるのかと、ワクワクしていたところ…。
それ程でもありませんでした。その後、前半はメッシが、こちらも超特急でヒザの打撲から回復し、チームの窮地を救うべく駆けつけたはずだったセルヒオ・ラモスを抜いて、放ったシュートをGKクルトワが弾いてくれたぐらいで、前述のナチョがルーカス・バスケスに代わって間もなく、1-1のまま、ハーフタイムに入ります。ただ、やっぱり主役になるよう生まれついている選手というのはいるんですね。後半16分にはセットプレー中にレングレが、まるで素材の耐久性に挑戦するがごとく、ラモスのユニを満々に引っ張って、いえ、その後の当人の倒れ方には少々、不自然な感もあったものの、VAR(ビデオ審判)から報告を受けた主審がリプレーを見て、ペナルティを取ってくれるとは、何てラッキーなんでしょう。

当然、このPKはすでに22回連続で成功しているラモスがしっかり決め、「Ha decantado la balanza a su favor/ア・デカンタードー・ラ・バランサ・ア・ス・ファボール(バランスを彼ら優位に傾けた)。リードしたマドリーは快適な状態になって、カウンターを狙ってきた」(ブスケツ)という流れになったんですが、その5分後にはバルベルデをモドリッチに代えたジダン監督とは違い、クーマン監督の動きは遅かったですね。ええ、35分には3人目の交代選手として、ロドリゴがピッチに入るのを待っていたところ、その横にバルサの最初の交代選手が3人もずらりと並んでいたところ…。

おかげで勘違いしたモドリッチがつい、ロドリゴにパスを送ってしまい、あとで「Calma, todavía estoy fuera papa!/カルマ、トダビア・エストイ・フエラ・パパ(落ち着いて。ボクはまだピッチ外だよ、パパ)」とと、19才の後輩にツィッターでからかわれていたりしたんですが、大丈夫。アンス・ファティ、ペドリの17才コンビとブスケツをグリーズマン、デンベレ、そしてこちらも19才のトリンコンに代え、更にはジョルディ・アルバからブライトワイテと、総勢6人ものFWで同点を狙ったバルサだったんですが、GKネトがクロースの連続シュートをdoble paradon(ドブレ・パラドン/2度のスーパーセーブ)で防いでいなければ、もっと早くにマドリーは3点目を挙げられていたかと。

結局、最後は45分、エリア内に侵入したビニシウスをネトが吹っ飛ばしてシュートを防いだ後、こぼれ球をロドリゴがモドリッチにパス。「Por qué no me devuelves la pared, hijo?/ポル・ケ・ノー・メ・デブエルベス・ラ・パレッド、イホ(どうして壁パスを返してくれないんだい、息子よ)」とリツートしていた35才が敵DFをフェイントでかわし、試合に決着をつける3点目を入れたため、「Pero te devolví Papa!/ペロ・テ・デボルビ・パパ(でも返したよ、パパ)」と反論されていましたけどね。これでスコアは1-3、カンプ・ノウで気分の上がる勝ち点3をもぎ取って、マドリーは帰京できることに。

おかげでここ2連敗のせいで、後任監督の候補まで取り沙汰されるという、マドリーを取り巻いていたクライシス状態は雲散霧消し、逆にCLフェレンツバーロシュ戦こそ、大勝したものの、リーガでは前節のヘタフェ戦から2連敗。代表戦前のセビージャとの引き分けも合わせると、リーガで3試合連続白星なしとなったバルサにババを付け替えることができたんですが、それにしても文句が多いのはクーマン監督。だってえ、コリセウム・アルフォンソ・ペレスで1-0と負けた後も、ピッチでボルダラス監督にニヨムから、失礼なことを言われたと抗議していただけでなく、この日は何と、引き上げてくる審判団を待ち伏せしていたんですよ。

「どうしてなんだ?君は先週のヘタフェ戦であった2つのタックルの映像を見たか? Solo hay VAR en contra/ソロ・アイ・バル・エン・コントラ(ウチに不利なVAR判定しかない)」と噛みついていたらしいんですが、まあ確かに「Estos agarrones pasan siempre en el área/エストス・アガロネス・パサン・シエンプレ・エン・エル・アレア(ああいう引っ張り合いはエリア内ではいつもあること)」(クーマン監督)というのも一理ありますけどね。おかげで前節、こちらは素材が劣ったか、レアル・ソシエダ戦でサナブリアがユニに穴まで開けられながら、ペナルティを取ってもらえなかったシーンをベティスがわざわざツイートしていたなんてこともあったんですが、そういうジャッジのバラつきは昨今、決して珍しいものではなし。

実際、日曜にグラナダと試合した弟分のヘタフェなんて、クラシコではカセミロがメッシをエリア内で倒しても、先にボールに触っているという理由でペナルティにならなかったのとほとんど同じプレーでPKを献上。ジェネはボールを蹴ってから、ヤンヘル・エレーラと接触したというのに、モントロのゴールで1点を取られてしまったのですから、たまったもんじゃなかったかと。おかげで雨の中、ホルホ・モリーナやケネディら、ヘタフェから、今季グラナダに移った選手の古巣訪問による同窓会的雰囲気などまったくなく、両チーム合わせて42ものファールが飛び交う激戦で0-1の負けという結果になってしまっては、悔しさもひとしおだったかと。

そのせいかどうか知りませんが、試合後、気分が悪くなって記者会見に出られなかったボルダラス監督に代わり、質問に答えていたモレノ第2監督によると、「Djené toca el balón, recibe una patada/ジェネ・トカ・エル・バロン、レシーベ・ウナ・パタダ(ジェネはボールに触って、相手に蹴られもした)」そうで、ケガまでしているとはまったくツイていない。とりあえず、今季のヘタフェはヨーロッパの大会参加組ではないため、先週木曜にはPSVに1-2で勝利、今週木曜にはPAOKとのELホームゲームと過密スケジュール真っ只中のグラナダとは違い、日曜のバレンシア戦まで時間がありますからね。ここはじっくり調整して、上位定着を目指したらいいかと。

え、話が日曜に飛んでしまったようだけど、クラシコの後にはアトレティコの試合もあったんだろうって?その通りで、シメオネ監督のチームはワンダ・メトロポリターノにベティスを迎えたんですけど、何せ先週、ミュンヘンで4-0というgoleada(ゴレアダ/ゴルラッシュ)を喰らってきたばかりですからねえ。おまけにその日も前半は攻められっぱなしで、GKオブラクがいなかったら、危なかった場面もあったんですが、バイエルンが持つ恐ろしいまでの決定力がベティスにはなかったのが幸い。0-0のまま、後半のピッチに戻って来たアトレティコはロッカールームで心を入れ替えたのか、再開からたった1分、スローインを起点として、エリア内右奥まで切り込んだマルコス・ジョレンテが右足の内側で、角度のないところから、先制点を決めてしまうって、狸に化かされるとはまさにこのこと?

ローテーションもあって、レマルとトレイラを先発させたのを後半頭から、カラスコとエレーラに代えたのも当たりました。25分には独走したカラスコをモントーヤがエリア前で後ろからタックル、VARで最後のデフェンダーのファールということで退場になったのも追い風となり、ロスタイムには前半、シュートを2度とも外してしまったルイス・スアレスがロディに出したスルーパスから、自身へのラストパスをゲット。これで2点目が決めるって、いやあ、セルタ戦もそうでしたが、2-0でまとめる辺り、最近のアトレティコはほんとに辻褄合わせが上手い。これでリーガ20チーム中、無敗は彼らだけとなり、カラスコの負傷さえなければ、CLザルツブルク戦ももっと、気が楽に迎えられたんでしょうが…。

というのも月曜のマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習ではスアレスがジム籠りとなってしまい、シメオネ監督によると、先発するかどうかは当日の状態次第になってしまったから。もちろん、現在、リーグ5連勝中でオーストリア・ブンデスリーガ首位といっても、CL初戦でロコモティブ・モスクワと2-2で引き分けたザルツブルクがバイエルン程、強いということはありえないんですが、とにかくゴールを入れないことには勝てませんからねえ。火曜の午後9時(日本時間翌午前5時)からのワンダでは、ベティス戦では後半途中まで温存されたジョアン・フェリックスが頑張ってくれることを期待しています。

そして同日、同時刻にキックオフとなるお隣さんでは、ドイツ遠征メンバーにアザールが加わるという嬉しいニュースが。ようやく太もものケガを克服して、今季初のベンチ入りとなりましたが、こちらもジダン監督によると、「招集したのは状態がいいから。Mañana veremos cómo le vamos a utilizar/マニャーナ・ベレモス・コモ・レ・バモス・ア・ウティリサール(どう使うかは明日、見てみよう)」とのことで、出場するかはわかりませんけどね。相手のボルシア・メンヘングラッドバッハもここまで国内戦2勝2分け1敗の5位と、調子はそこそこのようですが、CL1節ではインテルと2-2で分けているため、黒星スタートしたマドリーもアトレティコ同様、ここで勝てば、形勢を一気に挽回できるかと。

ただ1つ、懸念材料があるとすれば、ナチョの負傷により、元々、カルバハル、オドリオソラの両名が離脱中の右SBを誰がやるかなんですが、メンディを当てれば、調子の良くないマルセロを左SBで使わないといけなくなり、かといって、クラシコでナチョに代わったルーカス・バスケスは本来、サイドアタッカーですからね。メンヘングラッドバッハの攻撃陣を防ぐにはどちらが良いか、ジダン監督には熟考してもらいたいところですが、さて。何にしても前日記者会見でクロースが、「初戦の黒星ですでにプレッシャーはある。Para nosotros es una final/パラ・ノソトロス・エス・ウナ・フィナル(ボクらにとっては決勝戦のようなもの)」と言っていた気構えで挑めば、遅れをとることはないんじゃないでしょうか。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
関連ニュース

奇跡はホームでしか起きない…/原ゆみこのマドリッド

「ダメだわ、これじゃ秘技メトロポリターノマジックが使えない」そんな風に私が嘆いていたのは金曜日、CL準々決勝抽選でアトレティコとドルトムントの対戦が決定。もちろん、マンチェスター・シティと3年連続で対決するお隣さんや、エムバペを連れたルイス・エンリケ監督がPSGを率いて里帰りするバルサを羨むことはなかったものの、2ndレグをジグナル・イドゥナ・パークでプレーしないといけないことがわかった時のことでした。いやあ、もうあれだけ絶望視されていた16強対決インテル戦2ndレグで奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)を起こし、準々決勝に進出できただけでも今季は儲けものと言えなくはないんですけどね。 おまけに8強に残った中で一番与しやすしと、どのチームも対戦を望んでいたドルトムントを引き当てたのは幸運だったとしても、実際、相手もアトレティコも国内リーグでは首位から遠く離れた4位なんですよ。テルジッチ監督のチームが5位ライプツィヒと勝ち点1で来季のCL出場権を争っているのも、アスレティックに勝ち点2差に迫られている彼らと似たようなものですし、何より怖いのはドルトムントのチームカラーが黄色だということ。そう、アウェイぼろぼろの今季、シメオネ監督のチームはリーガ前節も降格圏のカディスに負けるという醜態をさらしただけでなく、同じ黄色のユニをまとうラス・パルマスにもカナリア諸島遠征でやられているんですよ。 そのせいで私など、今から4月頭のラ・セラミカでのビジャレル戦を心配していたものですが、かてて加えて、ドルトムントのホームスタジアムでは有名な「Gelbe Wand(黄色の壁)」が立ちはだかることに。となると4月10日の1stレグでは、今季たった1分け1敗しかしていないメトロポリターノの神通力を借りて、3-0、いいえ、5-0ぐらいで勝っておかないと、とても突破はできないかと。そうは言っても、同様の夢を見ていたコパ・デル・レイ準決勝1stレグではよりによって、アスレティックに0-1で負け、案の定、サン・マメスでの2ndレグで3-0とぶちのめされていた記憶もまだ新しいですからね。 過去の対戦成績も2勝1分け3敗と微妙なドルトムントですし、直近2018-19シーズンのCLグルプリーグでもやはりアウェイでは4-0とボロ負けして、ホームで2-0の勝利。たとえ、何かの間違いで準決勝に進出できたとしても、PSG vsバルサ戦の勝者と当たるそちらも2ndレグがアウェイとなると…やはり6月1日のウェンブリーでアトレティコが2016年以来の決勝をプレーすることを望むなんて、とても恐れ多くてできやしない? まあ、そんな先のことを話していても仕方ないので、とりあえず、水曜のインテル戦がどうだったか、お伝えしていくことにしましょうか。前日、1stレグで1-1と引分けていたバルサがホームのモンジュイックでナポリを3-1と粉砕した後、サン・シーロでの1-0の敗戦を引っくり返すべく、メトロポリターノにインテルを迎えたアトレティコだったんですが、相手はその後もセリアAで4連勝。とうとう今年になってから、13連勝という破竹の勢いで乗り込んで来るというのに、アトレティコファンもやはり、ほぼ無敵のホームでは強気になれるんでしょうかね。 この日もスタジアム入りを大勢がお出迎えして、赤白のbegala(ベンガラ/発煙筒)の煙の中をチームバスは通り抜けて行ったんですが、そのファンの応援に選手たちが見事に応えてくれるとは!いえ、序盤からサムエル・リノ、モラタ、そしてインテル戦1stレグで負ったネンザから復帰してきたグリーズマンらが撃っていったものの、なかなか総合スコアを同点にするゴールは入らなかったんですけどね。それどころか、前半33分には得意のザル守備が発動。バレッラの折り返しのパスをディマルコに決められて、ミラノから来た3400人のティフォシを大喜びさせていたんですが、いやもう、この時は私も目の前が真っ暗になったと言わなかったら、ウソになるかと。 その3分後、「アスレティック戦にも出ようとしたけど、ダメだった。でも今日の試合はチームにもボクにも重要だったから、aunque aún me duele al hacer algunos gestos/アウンケ・アウン・メ・ドゥエレ・アル・アセール・アルグーノス・ヘストス(まだ何がしかの動きをする時、痛むとしても)、ムリしないといけなかったんだ」というグリーズマンがやってくれたんです!そう、コケがエリア内に入れたパスをパヴァールがクリアしようとしたボールが彼の元に落ちて来たところ、体をクルリと回してシュート。それがゴールとなり、再び総合スコアが1-2の1点差になったとなれば、また初心に戻って、同点を目指せば良かったんですが…。 それから全然、ゴールが入らなくてねえ。前半を1-1のままで終わった後、やはりグリーズマン、モラタ、ジョレンテらが後半も決められず、ようやく26分にはデ・パウル、リノをコレア、リケルメに代えてみても大勢は変わりません。時折、カウンターをかけてくるインテルにもトゥラムにフリーで撃たれて、幸い大きく枠を外れてくれるというドッキリシーンがあったため、34分にモラタ、モリーナがメンフィス・デパイ、バリオスに代わった辺りでは、ええ、彼らは土壇場に根性のレモンターダ体質が炸裂するお隣さんとは違いますからね。私もほとんど諦めていたんですが、いえいえ、とんでもない。 何と40分にはシュートをポストに当てていたデパイがその2分後、コケのラストパスから総合スコア2-2に追いつくゴールを挙げてしまったから、もう場内は蜂の巣をつついたような騒ぎに。でもねえ、これだと延長戦になるだけで、何せ昨今は体力不足著しいアトレティコですからね。とにかくあと1点取って、正規の時間内に勝って終わらせてもらいたかったんですが、後半ロスタイム、せっかくグリーズマンが絶妙のパスをリケルメに送りながら、当人がシュートを撃ち上げてしまってはどうしようもありませんって。 ほぼその時点で延長戦入りが確定し、私も30分帰りが遅れるだけでなく、惨めな気分でメトロに乗ることを覚悟したんですが、いやあ、意外でした。この日のアトレティコは疲れを見せず、いえ、延長戦前半にはジョレンテがアスピリクエタに、後半頭からは3週間のブランクもあって、とうとう走れなくなってしまったグリーズマンもサウールに交代しましたけどね。ただ、幾つかチャンスはあったものの、やっぱりゴールは入らず、とうとう最後はPK戦上等のプレーをしていたインテルの思うつぼになってしまうことに。 実際、試合中のPKもほぼ半分は失敗しているアトレティコですからね。PK戦でも2016年CL決勝やスペイン・スーパーカップなどでマドリーに負けている黒歴史ばかり記憶に残っているため、その時は私の思いも延長戦で負けるより、PK戦で負ける方がずっと悲惨という方向にシフトしていたんですが、それがこの日はシメオネ監督の企みがまんまと当たったんですよ。そう、「Aguantamos los cambios porque sabíamos que estaba la posiblidad del alargue/アグアンタモス・ロス・カンビオス・ポルケ・サビアモス・ケ・エスタバ・ラ・ポシビリダッド・デル・アラルゲ(試合が長引く可能性があることを知っていたから、選手交代を遅らせた)」(シメオネ監督)おかげで延長戦を耐え抜いただけでなく、PK戦のキッカーには途中出場の選手を指名。 まあ、その中でもサウールはGKゾマーに止められてしまいましたが、デパイ、リケルメ、コレアがしっかり成功する脇で、あとはGKオブラクの独壇場に。いやあ、これまでPK戦ではほとんど止められず、批判されていた彼でしたが、この日は相当、相手を研究していたんでしょうね。インテルの第2キッカーのアレクシス・サンチェスと第3キッカーのクラーセンを続けて弾き、最後は第5キッカーのラウタロが大きく撃ち上げてしまうって、え?これってもしや、奇跡じゃない(PK戦3-2)? とはいっても、「La afición no falla, nosotros podemos fallar, pero ellos nunca fallan/ラ・アフィシオン・ノー・ファジャ、ノソトロス・ポデモス・ファジャール、ペロ・エジョス・ヌンカ・ファジャン(ファンはしくじらない。ボクらはしくじることもあるけど、彼らは決してしくじらない)」(オブラク)とか、「全力は尽くすけど、結果を見れば、ボクらがホームで違うチームなのは明らか。Es gracias a la afición/エス・グラシアス・ア・ラ・アフィシオン(それはファンのおかげだ)」(グリーズマン)とか聞かされると、スタジアムで多数派の応援がないとアトレティコは勝てないのかと、頭が痛くなってしまいますけどね。 果てては、「全員がこの態度、プレーの激しさ、集中力でプレーしている時、ウチはアウェイでのチームとは違う」(コケ)なんて言われた日には、外に出ると何でそれができないのか、突っ込みたくもなりますが、まあ、それはそれ。「El equipo lo ha logrado desde el que nadie creía/エル・エキポ・ロ・ア・ログラードー・デスデ・エル・ケ・ナディエ・クレイア(チームは誰も信じていなかったところから、突破を達成した)」(シメオネ監督)というのは事実ですからね。今は褒めておくことにしますが、日曜午後9時(日本時間翌午前5時)にはもう、リーガのバルサ戦がありながら、延長戦疲れで木金練習休みっていうのはいくら、またメトロポリターノ開催だからって、ホームに頼りすぎじゃないでしょうか。 そして他のマドリッド勢の週末の予定についても触れておくと、先陣を切るのは土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、エル・サダルでのオサスナ戦に挑むマドリーなんですが、まあ、こちらはすでに先週にはCL準々決勝進出を決め、ミッドウィークフリーだった今週は余裕でしたからね。リーガも2位ジローナと勝ち点7差の首位とあって、丁度、マンチェスター・シティとの対戦が決まった直後にアンチェロッティ監督の記者会見があったのもタイミングの妙。おかげで2年前はサンティアゴ・ベルナベウでの準決勝2ndレグで奇跡のレモンターダをして、Decimocuarta(デシモクアルタ/14回目のCL優勝のこと)に繋げながら、昨季の準決勝では2ndレグがエティハドだったせいもあったか、0-4の大敗を喫し、結果的に相手がCL初優勝を遂げるという、因縁のシティ戦に関しての質問の方が多くなることに。 まあ、それも仕方なくて、何せオサスナはもう11年もマドリーに勝っていないばかりか、今回はルベン・ペーニャ、ダビド・ガルシア、キケ・バラハ、アイマール・オロスと主力に負傷者が大量発生。となれば、出場停止処分2試合目となるベリンガムがいなくても不足はないかと思いますが、おまけに今節、3位と4位は星の潰し合いをしてくれますからね。あとは同じ土曜にコリセウムにジローナを迎える弟分のヘタフェが頑張ってくれれば、マドリーにとって、最高の形で来週のインターナショナルウィークのparon(パロン/リーガの停止期間)を迎えられることになる? ただ、前節もバレンシアに1-0で惜敗してしまったボルダラス監督のチームが比較的、得意のホームとはいえ、今は首位奪還を諦め、CL出場圏に留まることに専念しているジローナを押しとどめることができるかどうかは微妙。ええ、エースのボルハ・マジョラルがヒザの半月板負傷で今季絶望になってしまい、ゴールを頻繁に挙げてくれる選手がいないのがやはり、堪えているようですからね。この試合ではグリーンウッドが出場停止から戻って来るのは朗報ですが、マタとラタサには更なる精進を期待するばかり。なるたけ早くあと5つに迫っている勝ち点40に達して、ファンを安心させてあげられるといいのですが。 一方、前線に負傷者がいる訳ではないのに、今季は慢性的にゴール不足に苦しんでいるもう1つの弟分、ラージョは日曜にベティスとエスタディオ・バジェカスでホームゲームなんですが、こちらは前節もアラベスに負けて、とうとう白星なしが9試合に。降格圏とも勝ち点4差になってしまいましたし、イニゴ・ペレス監督も就任から4試合が経ちながら、未だに勝てていないというのも心配なんですが、こればっかりはねえ。 幸い相手のベティスも先週、ビジャレアルに負けて順位を7位に落とすなど、それ程、調子がいい訳ではない上、今回はサバリー、ベジェリン、マルク・ロカを負傷で、チミ・アビラも出場停止で欠いているため、ラージョにも勝機はなくないんですけどね。要注意なのは1カ月半、ケガのリハビリをしていたイスコがついに戻ってくること。1試合1得点がやっとこの現状ではとにかく、絶対に失点を許さず、何とかRdT(ラウール・デ・トマス)やアルバロ・ガルシアが当たってくれることを祈るばかりですが…残り6試合、果たしてバジェカスのファンが「Vida de pirata(ビダ・デ・ピラータ/海賊人生)」を歌って、今季2度目のホーム勝利を祝うことはできる日は来てくれるんでしょうか。 <HR>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.16 22:00 Sat

過ちから学ばないチームもある…/原ゆみこのマドリッド

「やっぱり勝たなきゃダメなのよ」そんな風に私が絶望していたのは月曜日、4位アトレティコと5位アスレティックの差がたった勝ち点2しかない順位表を眺めていた時のことでした。いやあ、先週末は久々にミッドウィークフリーの1週間を過ごしながら、シメオネ監督のチームはアウェイ弱者の真骨頂を披露。9月から白星がない18位のカディスにヌエボ・ミランディージャでコロッと負けた後、コケが「Tenemos que ver qué nos está pasando fuera de casa/テネモス・ケ・ベル・ケ・ノス・エスタ・パサンドー・フエラ・デ・カサ(アウェイでボクらに何が起きているのか、見てみないといけない)」などと言っているのを聞いた日には、あまりに今更ながらで、開いた口が塞がらなかったんですけどね。 そう、彼らは1月からアウェイゲームで1勝2分け3敗とボロボロで、直近では最下位のアルメリアとも2-2と引分け。ずっと週2試合ペースで忙しかったとはいえ、少なくとも先週中には十分、勝てない理由を分析して、軌道修正する時間はあったはずですが、同じ降格圏組でも勝ち点10多いカディスには負けてしまう程の重症だったとは、これ如何に。それとももしや、残り5試合のアウェイ戦で1勝もできずとも、ええ、アスレティックもここ4試合、2分け2敗とアウェイを苦手にしていましたからね。 彼らとは神風の吹くメトロポリターノで直接対決もある上、レアル・マドリー、ヘタフェ、ラージョら、マドリッド勢らのホームでの援護射撃も当てにできると思ったか、アウェイで頑張らなくても4位にはなれるはずと、ノホホンとしていたのが致命的。日曜にはアスレティックがグラン・カナリア島でラス・パルマスに0-2と勝ったから、いよいよ虎の子のCL出場圏末席の座がピンチになってしまったんですが、ホント、愚かですよね。バルベルデ監督のチームには今季唯一のホーム黒星をコパ・デル・レイ準決勝1stレグで喰らっているのを忘れているなんて。 その後、サン・マメスの2ndレグでもアウェイ弱者ぶりをあますところなく発揮して、コパ決勝の切符を奪われてしまっただけでなく、ここ11年間、皆勤しているCL出場権も取られてしまったら、最悪中の最悪ですが、え?もしや、アトレティコの選手たちはこの水曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのCL16強対決インテル戦2ndレグで頭がいっぱいだったんじゃないかって?うーん、確かにその試合では1-0で負けた1stレグをremontada(レモンターダ/逆転突破)しないといけず、それもメトロポリターノのファンの力を借りれば、可能かもしれないと、浮足立っていたところはあったかもしれませんけどね。 だからといって、土曜のカディス戦の惨状の言い訳になるはずもないんですが、ちなみにどんな試合だったかお話ししておくと。前日からチーム練習に復帰したグリーズマンをお留守番にして、シメオネ監督はモラタとメンフィス・デパイの2トップをリピート。それが2人共、まだ何もしていない前半24分には得意の敵の動きを注意深く見守るだけの守備が顕現し、ソブリーノが左から上げたクロスをファンミがヘッドでゴールに叩き込むのにパウリスタもエルモーソもまったく干渉しないんですから、一体、どうしたらいいものやら。 幸い40分に敵のパスがエリア内にいたパウリスタの腕に当たった時にはハンドをお目こぼししてもらえたんですけどね。サムエル・リノのシュートも昨今あるあるで、GKレデスマに弾かれてしまったため、1-0で折り返したアトレティコは後半頭から、一気に選手3人を交代。ええ、デ・パウル、サウール、デパイをリケルメ、コレア、モリーナにしてみたんですが、降格の危機に瀕している相手のアグレッシブなプレーに対抗するどころではなく、19分には再び、ファンミにゴールを奪われてしまうことに。そう、今度は自陣からハビ・エルナンデスが蹴ったロングボールをパウリスタがクリアできず、他のDFたちもヘルプに来ていなかったため、まんまとシュートされてしまうんですから、もうこの世も末ですって! いやあ、今季もヒメネスが負傷でいないことが多く、サビッチ、エルモーソも怪しいプレーが多いため、1月にバレンシアから移籍したCBの株が最近急上昇。それが、単にその相対評価のおかげだっただけなのがわかったのもガッカリでしたが、アトレティコは唯一と言ってもいい絶好機にもジョレンテのヘッドがレデスマにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまいましたからね。前節のベティス戦では8試合ぶりにゴールを挙げたものの、やはりゴール日照りから完全脱却はしていなかったか、モラタも不発だったんですが、シメオネ監督も2点目を取られた時点でギブアップ。あとはフェアマーレンとカンテラーノ(アトレティコBの選手)のエル・ジェバリを入れて、リノとコケの体力温存をしていたんですが、ホントにもう。 そのまま、2-0で負けた後、シメオネ監督はいつも通り、「Siento que el equipo está dando todo/シエントー・ケ・エル・エキポ・エスタ・ダンドー・トードー(チームは全力を尽くしているように感じる)。私がホームでのパフォーマンスを発揮できる方法を見つけられていない」と全てを自己責任にしていましたけどね。アウェイで悲惨なプレーしかできない理由を問われ、「No es tiempo de hablar de LaLiga/ノー・エス・ティエンポー・デ・アブラル・デ・ラ・リーガ(今はリーガについて話す時じゃない)」(ビッツェル)と差し迫ったインテル戦を口実に、選手たちが現実直視を避けているようでは、この先も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でアトレティコの試合を見るたび、私は溜息をつくことにならない? まあ、それでも万が一、CLで逆転突破できれば、ええ、水曜にはグリーズマンと風邪でカディス戦を休んだバリオスも戻って来られるようですしね。今週末日曜のバルサ戦もホームですし、相手も火曜にはナポリとの2ndレグがあって、CL準々決勝進出が叶うか、叶わないかで、士気が変わってくる可能性も。そこで勝てれば、アトレティコもリーガ4位の座を守る戦いが少しは楽になるかと思いますが…とにかく全てがメトロポリターノマジックにおんぶに抱っこというのは不安すぎますよね。 え、先週末、リーガで辛い思いをしたのはアトレティコだけじゃないだろうって?その通りで、土曜には彼らの前の時間帯に弟分のヘタフェがメスタジャに乗り込んだんですが、前半40分にウーゴ・ドゥーロに見事なvaselina(バセリーナ/ループシュート)で古巣恩返しゴールを決められ、その1点を返せずに敗戦。ただ、前節のマドリー戦でディアカビがヒザの脱臼という重傷を負い、CB不足に相手が陥っていたせいもあったか、後半にはマタ、ラタサ、オスカル・ロドリゲスのシュートがGKママルダシビリの八面六臂の活躍で防がれ、得点できなかったという経緯も。とりあえず、ボルハ・マジョラルが半月板損傷で今季絶望となったせいでの攻撃力減退をあまり感じさせなかったのは良かったかと。 一応、ヘタフェは12位で降格圏まで勝ち点15差と余裕がありますし、こちらもやや内弁慶の気があるため、土曜にジローナをコリセウムに迎える試合で挽回できたらいいんですけどね。といっても相手はオサスナに勝って、プチ不調を脱出。1度はバルサに越された2位に返り咲き、CL出場権ゲットに邁進中とあって、バレンシア戦で出場停止だったグリーンウッドが戻るといっても、ちょっと難しいかもしれませんが、さて。ミチェル監督のチームもシーズン前半のように無敵ではないため、互角の勝負ができたら、ファンも喜んでくれるんじゃないでしょうか。 そして日曜組だったラージョもアウェイゲームでアラベスに1-0と負けたんですが、いえ、確かに前半44分のゴロサベルのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)には成す術がなかったんですけどね。彼らの得点力不足は今更、嘆いても仕方ないとはいえ、この日はせっかく後半、RdT(ラウール・デ・トマス)のゴールが決まってもオフサイドで認められず。ロスタイムにはイシの至近距離ヘッドをGKシベラに弾かれ、ファルカオが撃ったこぼれ球もゴールバーを直撃と、勝ち点1すら持ち帰れなかったのがもう、残念どころの話じゃなくなってきちゃったんですよ。 そう、情けない兄貴分がカディスに負けていたため、同じ16位のままでもとうとう、ラージョと降格圏18位の差が勝ち点4になってしまったからで、このままだと、最終節までもつれ込む残留争いに巻き込まれる恐れがなきにしろあらず。何せ、彼らの場合は今季ホームで1勝しか挙げておらず、この日曜にエスタディオ・バジェカスにベティスを迎える試合もあまり楽観的になれませんからね。フランシスコ監督を引き継いだイニゴ・ペレス監督も4試合で2分け2敗と、まったく悪い流れを変えられていませんし、私もかなり心配になってきているんですが…ここは、選手たちが奮起してくれることを祈るしかありません。 そんな中、マドリッド勢3チームが続々と負けた後、唯一、先週末白星を挙げたのがレアル・マドリーだったんですが、まあ、日曜はサンティアゴ・ベルナベウでのセルタ戦でしたからね。ここ4試合で1勝3引き分けとちょっと停滞気味で、直近のCLライプツィヒ戦2ndレグでは準々決勝進出を決めたものの、要求の高いマドリーファンからpito(ピト/ブーイング)を受けたなんてこともあったものの、逆にそれが選手たちに喝を入れてくれたんでしょうか。ベリンガムの2試合出場停止に加え、ローテーションでスタメンにブライム、モドリッチ、ルーカス・バスケスを入れたアンチェロッティ監督のチームはこの日は序盤から、積極的に出ていくことに。 そのおかげもあって、前半21分にはモドリッチの蹴ったCKをリュディガーがヘッド。これはGKグァイタに弾かれてしまったものの、ビニシウスが2度撃ちで先制ゴールを挙げたとなれば、ええ、相手は降格圏と勝ち点2差しかない17位のチームですからね。スタンドもgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を期待したんですが、その後はなかなか追加点が入りません。1-0のまま、後半が始まったのにジレたか、ビニシウスなど、9分にはミンゲサにユニフォームを引っ張られてドリブルを止められたのがよっぽど悔しかったんですかね。ライプツィヒ戦のオルバンに続いて、相手を突き倒し、この日もイエローカードをもらっていたんですが、まったく。 いやまあ、この試合の前に「あれ程、付け狙われる選手は見たことがない。Creo que todo el mundo tiene que cambiar la actitud contra Vini/クレオ・ケ・トードー・エル・ムンド・ティエネ・ケ・カンビアール・ラ・アクティトゥッド・コントラ・ビニ(皆がビニシウスに対する態度を改めないといけないと思う)」とアンチェロッティ監督に庇われたせいで、当人も自分のやることは何でも正当化できると自信をつけちゃったのかもしれませんけどね。何かもう、最近の彼はいきなりキレることが多すぎて、そのうち大事を起こすんじゃないかと不安になりますが、大丈夫。 時間はかかったものの、ロドリゴがホセルに代わった後の34分、またしてもモドリッチのCKから、リュディガーがヘッドして、いえ、これもゴールバーに弾かれてしまったんですけどね。今度はグァイタの背中に当たり、オウンゴールでマドリーは2点目をゲット。更に43分にはビニシウスのクロスをグァイタが逃し、後ろにいたカルロス・ロドリゲスが自軍ゴールに蹴り込んで、3点目となったとなれば、ゴール祝いを楽しみにベルナベウにやって来るファンも満足しますって。 おまけにロスタイム4分には、ようやく3点差となって出番がもらえたセバージョスとギュレルが発奮。クロースが素早く出したFKを前者がエリア内に送り、後者がグァイタをかわして撃ったボールがゴールに入り、今季加入した18才のトルコ人MFのマドリー初得点となるんですから、嬉しいじゃないですか。ええ、シーズン前半の彼は負傷に祟られ、治った後も選手層の厚さになかなか、試合で自身のプレーを披露する機会がありませんでしたからね。まだ若いですし、今季は修行の年と割り切って、精進に努めていた甲斐があったかと。 結局、ほとんどチャンスもなかったセルタはそのまま4-0で負け、ベニテス監督もより厳しくなった残留争いを続けることになったんですが、マドリーの方は2位ジローナ、3位バルサとの差をそれぞれ、勝ち点7、8と保って、再びミッドウィークフリーの1週間を楽しめることに。バルサやアトレティコがCL準々決勝に勝ち上がるかどうか、高みで見物しながら、土曜のオサスナ戦までじっくり調整していればいいんですが、来週はドイツ代表復帰を決めたクロースを含め、大量の選手が世界各地に出向するインターナショナルウィークに入りますからね。スペインとモロッコの間で迷っていたブライムも後者を選び、即招集となるようですし、アンチェロッティ監督の当面の懸念は代表戦で負傷者が出ないかといったところになりましょうか。 <HR>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.12 20:00 Tue

逆境じゃないと燃えないチームもある…/原ゆみこのマドリッド

「そりゃあ4-0負けよりは絶対、いいけどね」そんな風に私が溜息をついていたのは金曜日、前夜のEL16強対決1stレグでビジャレアルがオリンピック・マルセイユに大敗したとこを知った時のことでした。いやあ、今季はCL以外のヨーロッパの大会、スペイン勢はパッとしてなくて、まずは昨夏、オサスナがクラブ・ブルージュに負けて、コンフェレンスリーグのグループリーグ出場が叶わず。2月にもELグループ3位でコンフェレンスリーグ16強対決出場プレーオフに回ったベティスがディナモ・ザクレブに苦杯を喫し、結局、UEFA第3の大会には1チームも参加しないんですけどね。 おまけにグループ首位でEL16強対決に直接進出しながら、うーん、もうこれは運命の皮肉としか言いようがない?今季はマルセイユの指揮官としてスタートしながら、8月にCL予選3回戦でパナシナイコスに負けてCLに行けず、9月にはクラブのお家騒動で辞任。その後、11月にビジャレアルに戻って来たマルセリーノ監督が、ELグループを2位で突破して、16強対戦出場プレーオフでシャフタールを倒したマルセイユと再会し、goleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らうとは。結果、ほぼ100%、準々決勝進出への道を閉ざされてしまったんですが、だからって、1stレグで1-0負けのアトレティコが来週水曜、メトロポリターノでの2ndレグで逆転突破できる可能性の方が高いかというと、それもまた、かなり怪しいような。 いえまあ、今週火曜にPSGとの2ndレグをホームで戦い、クラブの格というか、エムバペとの格の違いを見せつけられ、1-2というスコア以上に実力が及ばず、敗退したレアル・ソシエダは元々、パリでも2-0で負けてしましたからね(総合スコア1-4)。むしろアトレティコがお手本にすべきは、1stレグで1-0負けだった悔しさをアリアンツ・アレナでの3-0勝利で見事に晴らしたバイエルン・ミュンヘンであるべきなんですが、いやだって、相手はラツィオですしね。 あちらはグループリーグをアトレティコに続いて2位で突破したチームというだけでなく、セリアAでは9位。2位のユベントスと勝ち点差15の絶対首位、インテルと比べるべくもない上、アトレティコのエースはハリー・ケインではなく、モラタですからね。片やラツィオ戦2ndレグの2ゴールを含め、今季公式戦通算35得点、もう一方はリーガ前節ベティス戦で8試合ぶりにゴールを挙げ、ようやく自己最多タイのシーズン20得点に達したなんて知ると、2点取れば、逆転突破というのもかなりハードルが高い気がしないでもないんですが…いや、今は一足先にCL準々決勝の切符をつかみ取ったお隣さんの話からしていきましょうか。 そう、今週の水曜にライプツィヒ戦2ndレグをサンティアゴ・ベルナベウで迎えたレアル・マドリーだったんですが、3週間前の1stレグではブライムのゴールで0-1と先勝。この微妙なアドバンテージがアンチェロッティ監督に迷いを与えたか、今季はベリンガムの加入で捨てたはずだった4-3-3の陣形に回帰しただけでなく、「La idea era presionar más, con medios de energía/ラ・イデア・エラ・プレシオナール・マス、コン・メディオス・デ・エネルヒア(中盤のエネルギーでもっとプレスをかける計画だった)」(アンチェロッティ監督)という、前線の右にロドリゴではなく、バルベルデを置くMF5人体制でスタートして驚かされることに。 それがまた全然上手くいかず、ええ、1stレグでもシュートをより多く放っていたのはライプツィヒだったんですが、この日も序盤から、相手にがんがん来られ、シュシュコ、オペンダ、ヘンドリクスと撃たれまくっているんですから、困ったもんじゃないですか。幸い向こうのシュート精度が悪く、GKルーニンに止められたり、枠を外れてくれたりしていたから、それはいいとしても、攻撃の方もさっぱりではねえ。「Hemos jugado muy frenados/エモス・フガードー・ムイ・フレナードス(ウチはブレーキをかなり踏みつつプレーした)。低すぎる位置でプレスをかけることもなく、ボールを持った時もスピードが遅く、横パスばかりで深みがなかった」(アンチェロッティ監督)という具合では、ベルナベウのファンから久々にpito(ピト/ブーイング)が降り注がれることになっても仕方がなかった? そのまま前半は0-0で終わったため、後半頭から、マドリーはカマビンガに代え、ロドリゴを投入したんですが、一悶着あったのは9分のこと。というのもボールのある場所とはかけ離れたところで、ビニシウスがオルバンを後ろから腕で押して倒した上、起き上がってきた相手の首に両手をかけて再び倒すという、呆気に取られるような蛮行を働いたから。いやあ、あんなことしたら最後、一発レッドでも、イエローカード2枚でも喰らって、退場させられていても不思議はなかったんですけどね。その場はイエローが1枚しか出ず、ビニシウスはピッチに残れることに。 それどころではなく、20分にはマドリーがこの試合、初めての高速カウンターを発動させ、自陣エリア前からクロースが放ったボールを追いかけてベリンガムが上がると、敵エリア前でラストパス。このボールをオルバンに先んじて、ビニシウスがワンタッチで撃ち込み、先制ゴールを挙げてしまったとなれば、ライプツィヒの怒りはかくたるや、想像するに難しくなかったかと。おかげでその3分後、今度はラウムのクロスをリベンジに燃えていたオルバンがヘッドで撃ち込み、あっという間に同点にされてしまったんですが、それでも総合スコアは2-1。大勢は変わらなかったところ…。 30分過ぎにはクロースをモドリッチに、40分にはベリンガムをホセルに代えたマドリーは何とかそのまま逃げ切ることができたとはいうものの、まったく心臓に悪い試合でしたよ。ロスタイムにもダニ・オルモのvaselina(バセリーナ/ループシュート)がゴールバーに当たるなど、とにかくあと1点取って、延長戦に持ち込んでやろうと攻めてくる相手にグダグダになっていましたが、それもこれも「Cuando tienes una pequeña ventaja no vas a tope/クアンドー・ティエネス・ウナ・ペケーニャ・ベンタハ・ノー・バス・ア・トペ(アドバンテージが少しある時は全力で行かない)」という、彼らの悪い癖が原因。 そう、何せ、根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)が売りのマドリーですからね。ダニ・オルモは「Nos faltó adelantarnos/ノス・ファルトー・アデランタールノス(ウチに欠けていたのは先制すること)」と言っていたものの、下手に前半から総合スコア1-1タイに持ち込んでいようものなら、遅くても後半終盤にはマドリーのレモンターダ精神が爆発。結局、点を取られていただろうというのはこれまで何度となく、マドリーダービーでその光景を見せつけられてきた私だっただけに確信できるんですが、とりあえず、午後9時キックオフ試合が延長戦にならないで済んだのは有難かったかと。 CL優勝14回の王者に僅差負けと五分に闘い、娘さんのリクエストだったベリンガムのユニフォームもゲットしたマルコ・ローゼ監督も、ドイツから駆けつけた4200人のファンもある程度、満足して帰ったかと思いますが、ただ、どうしても汚点として残ってしまうのはビニシウスの退場ニアミスの件。いくら年々、ゴール数を増やし、チームの主役を張るようになってきても、やはりある程度、品行公正でないと、天下のマドリーの顔としては難がある気もしないではありませんが、さて。来季にはとうとうエムバペ(PSG)も来るようですし、ビニシウスには更なる精進を期待するしかありません。 そして今季も無事にCL準々決勝進出を遂げ、今週末の日曜午後6時30分(日本時間午後2時30分)には再び、セルタ戦をベルナベウで迎えるマドリーなんですが、何せ、リーガでも彼らは2位ジローナと勝ち点7差の首位と余裕がありますからね。前節のバレンシア戦、最後の瞬間に決めた勝ち越しゴールが時間切れで認められず、抗議でレッドカードをもらったベリンガムは2試合出場停止処分を課され、出られないとはいえ、相手は降格圏の1つ上、17位のチーム。それでも先週末は最下位のアルメリアに1-0で勝って、ようやく18位のカディスと勝ち点差5をつけているんですが、まあ、普通に考えれば、マドリーの勝利は堅いかと。 加えて、ベリンガムの負傷休場中、立派に代わりを果たしたブライムはライプツィヒ戦に出ておらず、他にもルーカス・バスケス、セバージョス、そして途中出場だったモドリッチ、ホセル、ロドリゴと疲れを貯めていない選手が十分いますからね。来週もミッドウィークフリーであるものの、アンチェロッティ監督がローテーションをする確率はかなり高いかと。ここ4試合で1勝3分けと少々、停滞している気味はあっても、ベニテス監督がよっほどの奇策でもぶつけて来ない限り、今度はマドリーファンから、ブーイングが飛んでくることもないんじゃないでしょうか。 一方、CL16強対決2ndレグが来週になるアトレティコは土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、また頭の痛いアウェイゲームに挑むんですが、え?今回の相手は降格圏のカディスなんだから、そんなに心配することはないだろうって?いや、それが2節前には最下位のアルメリアとですら、2-2で引分ける程、メトロポリターノを離れると、昨今は弱っちいシメオネ監督のチームとあって、木曜にはヘスス・ヒル筆頭株主がマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場を急襲。3月の各国代表戦のparon(パロン/リーガの停止期間)前のこのカディス戦、来週末のバルサ戦、そしてもちろんCLインテル戦2ndレグが今季の命運を握っていると、選手たちに喝を入れることに。 ただ、今週は試合がなく、じっくり調整できたため、選手たちは体力を回復しているはずですが、金曜にとうとう足首のネンザが治り、チーム練習に加わったグリーズマンはまだ、「Para mañana no va a estar a disposición/パラ・マニャーナ・ノー・バ・エスタル・ア・ディスポシシオン(明日は出場できない)。インテル戦に間に合うかもわからないが、バルサ戦には出られる」(シメオネ監督)という状態だそう。ここ2シーズン、何度も負傷をリピートしているヒメネスは代表戦明けの復帰ですし、アスピリクエタも練習には参加したものの、遠征には参加せず、そこへバリオスが風邪でお休みとなると…コケとデ・パウルが揃って、リーガで累積警告になるまで、あとイエローカード1枚というのも、今は2位3位にそれぞれ勝ち点4、3差と迫ってきただけにちょっと、怖いですよね。 そしてマドリッドの弟分チームたちはまずは土曜にヘタフェがメスタジャでバレンシア戦。ボルダラス監督は2021-22シーズンに率いた古巣を訪問することになりますが、何と言っても痛手なのは、先週末のラス・パルマス戦でエースのボルハ・マジョラルがヒザの半月板を損傷し、今季ほぼ絶望となってしまったこと。おまけにその試合ではグリーンウッドも累積警告となり、マドリーと引分けて、士気が上がっているバラハ監督のチームとの対戦にはFWがマタとラタサしかいないとなれば、得点するのがかなり大変かと。逆にDF陣ではジェネとアルデレテが戻ってくるため、バルサ戦での4-0負けから、2試合で7失点という、太っ腹守備ではなくなるはずですが、まずはあと勝ち点5と迫った、残留確定ゾーン到達を目指してほしいところかと。 ラージョの番は翌日曜で、こちらもアウェイでアラベス戦なんですが、とにかく彼らは今年になってから、1月2日のヘタフェとの弟分ダービー以来、8試合白星がないというスランプを早急に脱出しないことにはねえ。前節のカディス戦でもエスタディオ・バジェカスで大みぞれの中、せっかく先制しながら、追いつかれてしまいましたし、もうイニゴ・ペレス新監督も就任4試合目とあって、そろそろ初勝利を期待したいところですが…もしやこちらも16位ながら、降格圏とは勝ち点7とそこそこ距離があるのが、選手たちの危機感を呼び覚ます邪魔をしているのかもしれませんね。 <HR>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.09 21:00 Sat

春はまだ来ない…/原ゆみこのマドリッド

「次の試合は凍えなくて済みそうね」そんな風に私がホッとしていたのは月曜日、強風とみぞれの中、ホッカイロを唯一の頼りにスタンドで震える週末を乗り越えた後のことでした。いやあ、相変わらず、今季はリーガの割り当てが不均衡で、27節もマドリッド勢4チーム中3チームがホーム開催。おかげでエスタディオ・バジェカス、コリセウム、そしてメトロポリターノでの3試合をスタジアム観戦したんですが、よもや3月になって、この冬、一番の寒い思いをさせられるとは!もちろん、ズブ濡れになって、プレーしていた選手たちの比ではないでしょうが、夕方からの試合で気温も5、6℃はあったというものの、寒風がモロに吹きつけてきて、辛かったの何のって。 え、だったら、午後9時(日本時間翌午前5時)と遅い時間に始まる今週水曜のCL16強対決ライプツィヒ戦2ndレグなんて、完全にアウトじゃないかって?いやそれが、やはり世界最高を自負するクラブは観戦環境も最高で、ええ、3年間、こつこつ続けてきた全面改修もいよいよ終わりが近づき、今季から、サンティアゴ・ベルナベウは悪天候時にスタジアムの屋根を閉じることができるように。プレス席が8階の高みにあるように、四方もスタンドでがっちり囲まれているため、風が入って来ず、しかも天井の梁には暖房設備もあるため、夜の試合でもファンは心置きなく、コートを脱いで、ユニフォーム姿でレアル・マドリーの応援に精を出せるんですよ。 まあ、別に私がそうする訳ではありませんが、遥か昔に感じられる2月13日にあったライプツィヒでの1stレグはブライムがゴールを挙げて、マドリーが0-1で先勝。折しも土曜にはボーフムに1-4と勝利し、ブンデスリーガ5位で来季のCL出場権争いの真っ最中にある相手には少々、もの足りないアドバンテージではありますが、その試合を負傷で欠場したリーガピチチ(得点王)のベリンガムが戻って来ましたからね。同様にリュディガーも復帰していますし、出られないのは4月まで待たないといけないGKクルトワ、ミリトン、そしてヒザの靭帯断裂の時期が遅く、今季絶望となっているアラバだけとなれば、リーガで躓いたばかりとはいえ、最多の優勝14回を誇る得意の大会だけに、まだこの段階で敗退を心配する必要はない? そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢の試合がどうだったか見ていくことにすると、土曜は午後4時15分のラージョvsカディス戦からスタート。降格圏18位、しかも昨年の9月から白星がない絶不調の相手だけに、今にも雨が降りそうな天候にも関わらず、今季の2度目のホーム勝利を見られるかと、ラージョファンはエスタディオ・バジェカスに駆けつけたんですけどね。残念ながら、私が観戦していた前半は、イニゴ・ペレス新監督のデビュー戦だったマドリーとの兄弟分ダービーで負傷したイシが復帰したにも関わらず、大したことも起こらず終了。 それが午後6時30分前にコリセウムに着くべく、ハーフタイムにスタジアムを出た私がメトロ、セルカニアス(国鉄近郊路線)を乗り継いでいる間に大変なことになっていたようで、いえ、電車の窓から、天気がかなり荒れ模様だったのはわかったんですけどね。どうやらバジェカスでは後半10分過ぎから、激しくみぞれが降り注ぎ、ピッチが真っ白に。「Los jugadores no sentían los pies/ロス・フガドーレス・ノー・センティアン・ロス・ピエス(選手たちには足の感覚が無かった)」(ペジェフリーノ監督)程の有り様にゲームが12分間中断していたんですが、やはりガンガン雨が吹きつける中、私がようやくコリセウムに辿り着く寸前だった後半32分、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況がラージョのゴールを絶叫することに。 そう、イシの蹴ったCKにGKレデスマの手が届かず、ファーサイドに落ちたボールをルジューヌが蹴り込んで先制点となったんですが、うーん、その時もまだ雨は止んでいなかったみたいですからねえ。そのまま勝ったら、選手たちもファンもズブ濡れのまま、「La vida de pirate(ラ・ビダ・デ・ピラータ/海賊人生)」を歌う、恒例のお祝いをするのかと、試合前からビショビショになってアップしているヘタフェとラス・パルマスの選手たちを眺めながら、心配になったものの、これはいいんだか悪いんだか。後半ロスタイム2分にはチュストのスルーパスをハビ・エルナンデスに決められて、最後はカディスと1-1で引分けちゃいましたっけ。 おかげで降格圏との差は勝ち点7で変わらないながら、順位が16位に落ちてしまったラージョですが、まだ残り11試合ありますからね。まずはこの日曜のアラベス戦から、心機一転、頑張ってもらいたいものですが、とにかくRdT(ラウール・デ・トマス)を筆頭にファルカオ、カメージョ、エヌテカら、FW陣がゴールを挙げてくれないことには、残留達成の道も厳しいものになるかもしれません。 一方、濡れた机やシートを拭くのに何枚ものテッシュが必要だったコリセウムではキックオフから少しして、雨がみぞれに変わり、視界が白くなってしまったんですが、幸いピッチに積もるまでには至らず。ヘタフェの選手たちもそれ程、気にならなかったのか、早くも前半11分にはディエゴ・リコのロングパスをマタがエリア内で胸トラップ、volea(ボレア/ボレーシュート)を決めて先制すると、その3分後にもグリーンウッドが2点目を挙げていたんですが、もしやこれって、温暖なカナリア諸島から来たラス・パルマスがこういう悪天候に不慣れだったせい? 実際、雨が止んだ35分にはヘタフェOBでもあるサンドロにエリア前からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決められてしまったんですが、45分にはマタのクロスをマクシモビッチがヘッドして3点目を奪い、試合は3-1のスコアでハーフタイムに入ることに。2点差もあれば、後半ムリして攻める必要もないとボルダラス監督も思ったか、右SBをカルモナから本職のファン・イグレシアスに代えて再開したところ、5分には大勢の選手をすり抜けるマルモルのラストパスをカルドナに流し込まれ、あっという間に1点差になってしまったから、さあ大変。更に14分には、同じくヘタフェOBのムニルがGKダビド・ソリアを1対1で破り、うーん、最初はオフサイドと判定されていたんですけどね。 VAR(ビデオ審判)により、それが取り消され、とうとう3-3になってしまったとなれば、やっぱりジェネとアルデレテのダブル出場停止は痛かった?試合は結局、そのまま引分けで終わったんですが、何より大きな犠牲だったのは後半33分に負傷交代したマジョラルで、ええ、翌日の検査で左ヒザの半月板損傷が発覚し、全治2、3カ月となってしまいましたからね。ここまでリーガ15得点で、サラ(スペイン人の得点王)賞獲得や3月のスペイン代表に招集される当人の夢も潰えてしまいましたし、大体がして、ヘタフェは彼のゴールを当てにして、1月にヒザの靭帯断裂からようやく復活した、昨季までのエース、エネス・ウナルをボーンマスに売却。一応、残留目安の勝ち点40まではあと5ポイントと順調ではありますが、FWがマタ、グリーンウッド、ラタサだけとなっては、勝ち点7差ある6位以上のEL出場圏を目指すのはちょっと、難しくなってきたかと。 そんなヘタフェは次節、土曜にバレンシア戦をメスタジャでプレーするんですが、折しもその日は兄貴分が次の時間帯でまさにその相手と激突。私も急いでマドリード市内に戻り、自宅近くのバル(スペインの喫茶店兼バー)に滑り込んで、後半から見ることができたんですが、前半はかなりの波乱があったよう。いやあ、先週もミッドウィークフリーだった上、足首のネンザからとうとうベリンガムも復帰したため、誰もがより強力になったマドリーを期待していたんですけどね。27分にはビニシウスが自陣エリア内でフルキエにボールを奪われ、そのクロスをカノスは撃ち損じてしまったものの、ウーゴ・ドゥーロに決められてしまうんですから、困ったもんじゃないですか。 その3分後にもマドリーはカルバハルが不注意なバックパスを送り、そのボールを奪ったヤレムチュクがウクライナ代表仲間のGKルーニンをかわして、バレンシアの2点目を挙げたんですが、ロスタイムにはミスをした2人が奮起。カルバハルのシュートはGKママルダシビリに弾かれてしまったものの、こぼれ球をビニシウスが押し込んで2-1になったところで、前半は終了します。すると後半はアンチェロッティ監督がクロース、ロドリゴをモドリッチ、ブライムに、更にカマビンガ、メンディをホセル、フラン・ガルシアに代えてから、マドリーに勢いがつき、とうとう31分にはブライムのクロスをビニシウスがゴール前からヘッドして同点に追いついたため、これは十八番のremontada(レモンターダ/逆転劇)コースかと思ったところ…。 それが無茶苦茶アクシデントの多い終盤だったんですよ。まずは41分、マドリーのFK攻撃の際にチュアメニがディアカビの上に倒れ、相手がヒザを脱臼。全治1年にもなる大ケガに両チームの選手が騒然となる中、当人は担架退場したんですが、45分にはエリア内でシュートに行ったウーゴ・ドゥーロがフラン・ガルシアとナチョの間で倒れて、主審がペナルティを宣告したから、ビックリしたの何のって。これは幸いVAR注進のおかげでなくなったんですが、まさかロスタイム7分が1分延長された最後のプレーで、「Es algo que no me había pasado nunca en mi carrera/エス・アルゴ・ケ・ノー・メ・アビア・パサードー・ヌンカ・エン・ミ・カレラ(私のキャリアの中で1度も起きなかった何か)」(アンチェロッティ監督)が発生するとは! そう、「El árbitro dice que es la última/エル・アルビトロ・ディセ・ケ・エス・ラ・ウルティマ(審判はこれが最後だと言った)」(ウーゴ・ドゥーロ)CKで、モドリッチが蹴ったボールをママルダシビリがパンチングで弾き、本来なら、そこで終了の笛が鳴ってもおかしくなかったんですけどね。ヒル・マンサーノ主審がそれをしなかったため、転がったボールを拾ったブライムが渾身のクロスを挙げたところ、何とベリンガムのヘッドがゴールに入ったんですよ。なのにその途中に笛が吹かれていたため、ゴールはスコアに上がらず、マドリーの逆転勝利も雲散霧消となれば、大騒動にならない訳はありませんって(最終結果2-2)。 ええ、ベリンガムなど、主審に「It's a fucking goal!(あれはクソッたれなゴールだ)」とイギリス人にありがちな形容詞をつけて抗議したため、レッドカードを出されてしまいましたしね。彼には日曜のセルタ戦以降、2、3試合の出場停止処分が課されるかもしれないとなると、マドリーにとってはじくじたる思いでしょうが、ただ日曜の結果を見ると、大した痛手ではなかったかと。というのも2位のジローナはコパ・デル・レイ準決勝レアル・ソシエダ戦2ndレグと決勝進出祝いで疲弊しているはずのマジョルカに敗れ、勝ち点差が7に拡大。3位のバルサもアトレティコを破って、コパ決勝の切符を掴んだアスレティックとスコアレスドローとなり、勝ち点8差のままで、唯一、4位のアトレティコだけが勝利して、首位チームの躓きに乗じることができたんですが…。 いやあ、自業自得とはいえ、勝ち点13差が11差になったとて、誰も話題にはしてくれませんよねえ。ちなみにCL16強対決インテル戦1stレグ、リーガのアルメリア戦、コパ準決勝2ndレグのアウェイ3連戦で1勝もできず、ようやくメトロポリターノに戻って来た彼らは、ベティス戦でやはりホームに勝る場所はないことを再確認。ええ、前半8分にはもう、メンフィス・デパイのシュートがゴール前でベジェリン、ペッツェッラが弾き合って、最後はGKルイ・シウバのオウンゴールで先制とは、ラッキー以外の何物でもないじゃないですか。 ただ、サン・マメスでも17本(うち枠内6本)も撃ちながら、無得点で終わったシュート効率の悪さは持続していて、デパイが2度続けて弾かれていたり、27分などもう最悪。モラタがルイ・シウバに倒され、VARでオフサイドでなかったことが保証されたため、PKをもらったんですが、モラタはそのPKを止められたけでなく、その跳ね返りを3度シュートして、ことごとく弾かれているんですから、恐ろしい。でもねえ、努力が実るのもメトロポリターノのいいところで、またしてもみぞれが降り出していた44分、デ・パウルがエリア外から撃ったシュートをルイ・シウバが弾いたボールに誰より早く反応。ヘッドで2点目を挙げてくれたとなれば、ここ8試合続いたモラタのゴール日照りもとうとう終わったと見なしていい? おかげで2-0とリードして後半に入ったアトレティコは、うーん、シメオネ監督によると、「ウチはハードな試合をこなした後で、決勝に行けなかった失望が、podía pasar factura en algún momento/ポディア・パサール・ファクトゥーラ・エン・アルグン・モメントー(いつかはツケとなって現れかねなかった)」そうなんですけどね。ペジェグリーニ監督の梃入れが効いて、17分にはジョレンテのボールロストから、途中出場のカルバーリョにエリア外から見事なゴールを決められて、1点差に迫られた後はもっぱら専守防衛に回ることに。ええ、それこそ33分にギド・ロドリゲスのシュートをGKオブラクがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防ぐやいなや、シメオネ監督は大慌てでデパイに代え、レイニウドを入れていたぐらいですからね。 最後はモラタもサビッチに代わり、ジョレンテとリケルメが前線という純正FWなしの陣形にして、ベティスの反撃に耐えていたんですが、大丈夫。これがアウェイなら、昨今のサル守備も相まって、簡単に追いつかれてしまうところでしたが、不思議にもメトロポリターノでは耐えられてしまうとなれば、もう一生、ホームゲームだけしていればいいと思ってしまうのはきっと、私だけではなかったかと(最終結果2-1)。 おかげで5位のアスレティックとの勝ち点差が5に増え、コパ決勝のみならず、来季のCL出場権の懸かった4位まで奪われるという心配からはとりま、解放されたアトレティコでしたが、いよいよ今週は待ちに待ったミッドウィークフリーが到来。何せ、最下位のアルメリアと引分けるぐらいのアウェイ弱者の彼らですからね。土曜のカディス戦には不安が大ありとはいえ、このメトロポリターノでの地の利を生かせば、来週水曜のCLインテル戦2ndレグでの逆転突破や、その次のバルサ戦も何とかなるんじゃないかと私も楽観的になりたいものですが…とにかく大事なのは、「リーガで4位になればいいと思うだけでなく、もっと上を目指さないと。Siempre hay que ser ambiciosos para lograr cosas más grandes/シエンプレ・アイ・ケ・セル・マス・アンビシオーソス・パラ・ログラル・コーサス・マス・グランデス(常にもっと大きなことを達成するために野心的でないといけない)」(オブラク)という姿勢ですよね。 <HR>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.05 21:00 Tue

逆転どころじゃなかった…/原ゆみこのマドリッド

「それでも昨季よりはマシなのかしら」そんな風に私が自分を慰めていたのは金曜日、3年ぶりのタイトル獲得の期待が懸けられていたコパ・デル・レイ準決勝敗退が決まり、ほぼほぼ、アトレティコの今季が終わってしまったのを実感していた時のことでした。いやあ、1年前を振り返れば、ヨーロッパの大会からCLグループリーグ最下位で年内に完全撤退した後、コパも1月末の準々決勝でお隣さんに負けて終了。それ以来、CL出場権のもらえる4位以内に喰い込むため、ひたすらリーガの闘いに邁進するだけの彼らでしたからね。 比べて今年はまだ、たとえ、1stレグで1-0と負け、相手は今年になって、11連勝しているセリエA首位独走チームとはいえ、再来週の13日(水)にはCL16強対決インテル戦2ndレグを今季はまだ1敗しかしていない、ファンの心の拠り所、メトロポリターノでプレーできるだけ、僅かな希望は残っているんですけどね。とはいえ、CL決勝トーナメントにしろ、リーガの残り試合にしろ、半分は昨今、シメオネ監督のチームが超苦手にしているアウェイゲーム。そう思うと、お先真っ暗な気がしてくるんですが、折しもリーガ4位争いの相手でもあるアスレティックはこの先、4月6日のコパ決勝まで、40年ぶりの悲願の優勝が叶うかもと頭がいっぱいになっている可能性が。 その分、リーガが疎かになってくれたら、有難いんですが、まあ、とりあえず、今週の試合を振り返っていくことにすると。火曜に先行して行われたコパ準決勝のもう1つのカードではレアル・ソシエダがマジョルカをホームに迎えたんですが、あちらは1stレグもスコアレスドローでしたしね。ガッツリ五分で始まった試合は前半終了間際、久保建英選手のクロスがエリア内でライージョの手に当たり、ソシエダがPKで先制のチャンスを掴んだものの、ブライス・メンデスがマジョルカのコパ専任GKグレイフに弾かれ、0-0のまま、ハーフタイムに入ることに。 すると後半5分、左SBジャウメ・コスタのクロスを右SBのジオ・ゴンサレルがヘッドで決めて、アギーレ監督のチームが先制点をゲット。レアル・アレナのファンを凍りつかせたんですが、大丈夫。18分にイマノル監督が満を持して、ここ3週間、負傷で休んでいたオジャルサバルを投入したところ、26分にはブライス・メンデスのスルーパスから、同点ゴールを挙げているんですから、頼れるキャプテンとはまさにこのこと?それが後半残りも1-1のまま、延長戦でも両チーム得点がなかったため、決着がPK戦にもつれ込んだところ、最初のキッカーに立ったオジャルサバルがグレイフに弾かれてしまうとは! 結局、続く9人のキッカー全員が成功したため、最後はダルデルが5本目を決めたマジョルカが4-5で21年ぶりの決勝に進出し、2003年にレクレアティボ(当時は1部、現在はRFEF1部/実質3部)に勝利して、初優勝を遂げた大会で2度目の戴冠を目指すことになったんですが、いやあ。2021年にはコロナ禍で1年遅れとなった2019-20シーズンのコパに優勝したソシエダですが、こちらもアトレティコ同様、来週火曜のCL16強対決PSG戦2ndレグで、2-0で負けた1stレグのremontada(レモンターダ/逆転突破)だけが、今季の楽しみを長引かせる命綱になってしまったのは辛いところですよね。 そして翌水曜にはコパはなかったんですが、スペイン女子代表がセビージャのカルトゥーハでフランスを2-0で下し、昨年のW杯に続き、第1回女子ネーションズリーグ優勝を遂げて、スペイン中が沸くことに。いやあ、私もあまり、女子サッカーは見ないんですが、W杯優勝表彰式でルビアレス前サッカー協会会長がジェニ・エルモーソ(パチューカ)に同意のないキスをした件でFIFAから処分を受け、停職処分になった煽りを喰らい、ホルヘ・ビルダ監督(現モロッコ女子代表)が解任に。その後、モンセ・トメ監督体制になってもスペインの強さにまったく翳りは見えず、ええ、準決勝でもオランダを3-0で退け、余裕でこの夏のパリ五輪出場権も勝ち取っていましたからね。 とにかく、バロンドール&FIFAベスト受賞のアイタナ・ボンマティ(バルサ)を擁するこのチームは、フランス女子代表のルナール監督にして、「2018年男子W杯で私はモロッコ代表監督を率いて、イニエスタ、ブスケツ、イスコを中盤に配したスペインと対戦したが、その時と同じような感覚がした」と言わしめるぐらい、ボール扱いが巧み。だからこそ、翌日のアトレティコが尚更、稚拙に見えたなんてこともあったんですが、これは同日、北朝鮮に勝って、五輪出場を勝ち取った日本女子代表にとっても、いえ、W杯グループリーグで彼女たちはスペインに4-0で大勝しているんですけどね。当たりたくない相手ではないかと思いますが、まあそれはそれ。 翌木曜にマドリッドに戻った女子代表は恒例の大統領官邸、マドリッド市庁舎、州庁舎巡りの後、市内パレードはなしで、夕方から、ビスタ・アレグレ(バスケットボールアリーナ兼マルチイベント会場)に大勢のファンを集めて祝賀イベントを開催。まあ、この辺は昨年ネーションズリーグに初優勝した男子代表と同じ扱いだったため、女子選手たちにも不満はなかったかと。それが終わってしばらくしてから、いよいよ、サン・マメスでアスレティックvsアトレティコ戦の2ndレグが始まったんですが…。 どうもコパ準決勝を地元で開催できるのが久々とあって、アスレティックの過激なファンたちがエキサイトし過ぎてしまったみたいで、まあ、チームバスのお出迎え時に大量のbengala(ベンガラ/発煙筒)を焚くなんてことはアトレティコのウルトラグループもしょっちゅうやっているため、珍しくはないんですが、警官隊と市街戦状態になってはねえ。おまけに試合前にはビルバオのバル(スペインの喫茶店兼バー)にいたアトレティコファンが襲われて、2人が病院送りになったなんて聞くと、試合の結果も相まって、ホントに現地観戦に行かずに良かったと小心者の私など、自分の選択を正当化することができたんですが、それにしたって、あそこまで失望させられるとは! ええ、インテル戦の1stレグで捻挫したグリーズマンが出場できず、ヒメネス、アスピリクエタ、レマル共々、スタンドで応援となるのはわかっていたとはいえ、それでも一応、立ち上がりはアトレティコもまず、1stレグで0-1と負けていたスコアを同点にしようと、攻めていたんですけどね。サムエル・リノとエルモーソのシュートが外れたのは2人共、前日、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場の外から、私が覗いていたセッションの最後にやっていたシュート特訓に加わっていなかったため、仕方ないと諦めもついたんですが、もしやシメオネ監督が力を入れるべきだったのは最近、特に磨きのかかったザル守備改善の方だった? というのも13分にはニコ・ウィリアムスが左サイドを上がり、そのクロスから、反対側にいたイニャキ・ウィリアムスにvolea(ボレア/ボレーシュート)でまんまと先制ゴールを挙げられてしまったからで、実際、兄の方は完全にフリーでしたからね。おまけにシュートの軌道上にいたエルモーソなんて、体をかがめて、ボールが当たらないようによけているとなれば、当人が今季で終わる契約を延長しなくても、残念がるファンは少ないかと。ただ、それでもアトレティコが2点取らないといけないのは変わらなかったため、選手たちが根性を見せてくれるのを祈っていたんですが…。 全然です。それこそ、前日のシュート特訓に参加していたジョレンテ、コレアもシュートを外してしまう有り様で、ええ、26分の兄弟連携プレー、イニャキのラストパスから、ニコのシュートは幸い外れてくれたんですけどね。42分には再びイニャキがゴール前の弟にボールを送り、この時はサビッチがマークしていながら、逃げられてしまい、アスレティックは2点目をゲット。そのまま2-0で後半開始となったんですが、うーん、それがスタンドのファンが担架で運ばれるアクシデントがあって、15分程、キックオフできず、ピッチで待機せざるを得なかったのもアトレティコの反撃精神に水を差したんでしょうかね。 珍しくハーフでの選手入れ替えをせず、9分になってから、モリーナ、エルモーソ、コレアをレイニウド、バリオス、メンフィス・デパイに代えたシメオネ監督だったんですが、とうとう16分にはアウェイのダメダメ守備がGKオブラクにまで伝染してしまったから、さあ大変!そう、サンセットのシュートは弾いたものの、そのボールが丁度、サビッチとビッツェルの間、グルセタが1人でいた場所に行ってしまい、3点目を取られてしまったとなれば、もう延長戦に持ち込んでやろうという気力だって、湧きはしませんって。 実際、その後はシュート特訓メンバーだったモラタもヘッドを2回外し、デパイにも、リケルメにも名誉の1点さえ、奪うことさえできなかったんですから、え?もしかして、シメオネ監督が常々、スタジアムのプレッシャーや120分間プレーした後の疲れなど、再現できないのだから、PKの練習はしないと言っているのと同様、シュートを練習してもムダなんじゃないかって?うーん、リーガ前節のセビージャ戦でエリア外から決勝ゴールを挙げたモドリッチなど、毎日の練習の賜物とのことでしたが、それが試合で決まるのは才能があってこそかもしれませんからね。 もちろん、今季19得点挙げているモラタに才能がない訳ないはずですが、ここ8試合ノーゴールと、それがコンスタントに顕現できないのも問題で、結局、試合は3-0、総合スコア4-0でアトレティコは完敗。しかも怖いのはもう中2日で、日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)にはリーガのベティス戦がやって来ることで、いえ、コパ決勝進出で二日酔いモードになっているアスレティックはバルサ戦ですから、勝って、アトレティコとの差を縮めるのは難しいはずなんですけどね。 シメオネ監督は「Cuando la situación no se da, hay que estar tranquilos/クアンドー・ラ・シトゥアシオン・ノー・セ・ダ、アイ・ケ・エスタル・トランキーロス(状況が悪い時には落ち着いていないといけない)」と言っていたものの、相手のベティスは今週試合がなかっただけでなく、その前の週にコンフェレンスリーグのプレーオフでディナモ・ザグレブに敗退。来週の16強対決もないため、リーガに全集中していますからね。となると、いくら今季リーガではまだ不敗のメトロポリターノでも決して、安心はできないんですが…。「Vamos a intentar por lo menos cambiar la imagen de hoy/バモス・ア・インテンタール・ポル・ロ・メノス・カンビアール・ラ・イマヘン・デ・オイ(せめて今日のボクらのイメージを変えるように試みる)」(コケ)ぐらいは、ファンにインテル戦2ndレグ前に愛想を尽かされないためにもやってくれたらと思います。 そして今週末のマドリッド勢の予定も見ておくと、他3チームは皆、土曜試合となり、最初にキックオフするのはエスタディオ・バジェカスでのラージョvsカディス戦。前節はジローナに3-0と完敗し、デビュー戦もレアル・マドリーと1-1の引分けと、まだイニゴ・ペレス新監督就任後の初白星が掴めていない弟分ですが、とにかく相手は18位ですからね。ここで勝っておけば、降格圏との差も勝ち点差7から広がって都合がいいんですが、何はともあれ、ゴール日照りが解消されないことにはどうしようもないかと。 続く時間帯でスタートするのはもう1つの弟分、ヘタフェでコリセウムにラス・パルマスを迎えるんですが、実は彼らも前節はバルサに4-0とgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らってきたばかり。その試合でジェネとアルデレテの2人のCBが累積警告となり、今回は出場できないのは痛いですが、10位の彼らと8位の相手の差はたったの勝ち点2だけですからね。3月のスペイン代表招集リスト発表まであと2試合となり、夏のユーロを見据えて、デ・ラ・フエンテ監督にアピールしたいボルハ・マジョラル辺りが頑張ってくれれば、いい結果を出せるかもしれませんよ。 一方、土曜午後9時(日本時間翌午前5時)から、ラストを飾るのがマドリーで、メスタジャでのバレンシア戦に挑むんですが、実はこれ、昨季はビニシウスに人種差別的な野次が飛び、大きな問題になったカードでねえ。その時はクラブに厳しい処分が下り、バレンシアも該当のファンをスタジアムから永久追放するなど、まあイロイロあったんですが、果たして今回、何も騒ぎがなくて済むのかはちょっと気になるところ。ただ、いい知らせもあって、ミッドウィークフリーだったおかげで、マドリーではとうとう、ジローナ戦で足首を痛め、3試合休場していたベリンガムが「Está al cien por cien/エスタ・アル・シエン・ポル・シエン(100%の状態)」(アンチェロッティ監督)となって復帰することに。 ええ、彼のいない間、マドリーはどの試合も1得点しかしていませんからね。加えて、ホセルも回復し、前節セビージャ戦では出場停止だったカルバハルとカマビンガも戻るとなれば、逆にスタメン選びに困ってしまう?とはいえ、相手のバレンシアは先週末、地元で10人が犠牲になった集合住宅全焼火災でグラナダ戦を延期していて、体力の余り具合ではマドリーの上を行きますからね。来週水曜のCL16強対決ライプツィヒ戦2ndレグも気になるだけに、ここはアンチェロッティ監督のローテーションの腕の見せどころとなりますが、今は2位ジローナとの差も勝ち点6ある彼らだけに余裕を持ってプレーできるんじゃないでしょうか。 <HR>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.02 20:00 Sat
NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly