浮かれた自分が愚かだった…/原ゆみこのマドリッド

2020.10.03 17:00 Sat
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「当分、ミッドウィーク開催リーガはないからいいけどお」そんな風に私が嘆いていたのは金曜日、ここ最近のコロナウィルス感染者数急上昇を受け、マドリッドが再び、confinamiento(コンフィナミエントー/外出禁止)体制に入ると聞いた時のことでした。いやあ、とはいっても第1波の到来した3月、4月のEstado de alarma(エスタードー・デ・アラルマ/国家警戒事態)程、厳しいものではなく、当時は完全休業に追いやられたレストランやバル(スペインの喫茶店兼バー)などもお店を開けることはできるようなんですけどね。ただ、営業時間が午後11時までになるため、今週のように週中設定のリーガ節があると、遅い時間帯に当たるカードの終了が11時15分過ぎになり、最後まで試合を見られない心配があったから。

それ以外にも再び、バルのカウンターで立ち飲みが禁じられたり、店内キャパを50%に制限されたり、はたまた、仕事などのよんどころのない事情がない限り、マドリッド郊外のヘタフェやレガネスに行けなくなってしまったりと、いやま、今季になってもラ・リーガがスタジアムに入れる記者の数を厳しく制限しているため、私も試合には行けないので別にいいんですけどね。それよりむしろ、気になっているのは木曜に決まったCLグループリーグの日程で、グループAとなったアトレティコが先日はUEFAスーパーカップでセビージャを倒したかと思えば、水曜にはDFLスーパーカップでもドルトムントに勝利。2009年にグアルディオラ監督下のバルサが達成したsextete(セクステテ/6冠優勝のこと)に並ぶまで、あとクラブW杯を残すのみとなったCL王者、バイエルンと同じ組になったことはまだ、別に心配するには早いんですけどね。
他がザルツブルク(オーストリア)、ロコモティブ・モスクワ(ロシア)と、まあ、それなりだったのもありますが、お隣さんがシャフタール(ウクライナ)、インテル(イタリア)、ボルシア・メンヘングラッドバッハ(ドイツ)と同組のグループBになってしまった方が大問題。というのもAからDのグループは同じ曜日の開催となるからで、UEFAはこのグループリーグ、スタジアムの収容人員30%までのファンの入場を認めたそうですが、それも各国の衛生規範に従ってとあって、とてもスペインでは望めそうにありませんしね。

もし同時刻のキックオフとなった場合、大抵のバルはレアル・マドリーの試合を優先。ええ、10月21日の開幕節はマドリーvsシャフタール戦が午後6時55分、バイエルンvsアトレティコ戦が午後9時キックオフとズレてくれたものの、27日の2節ではアトレティコvsザルツブツク戦とメンヘングラッドバッハvsマドリー戦が午後9時でもろかぶり。いよいよ最終節でグループ勝ち抜けを争っているアトレティコを尻目に、すでに突破の決まったマドリーの試合を見る破目になったりしたら、どうしようと今から、頭が痛いんですが、まあ、それはまだ先の話ですからね。今はとりあえず、今週のミッドウィーク・リーガがどうだったか、報告していくことにすると。

火曜に先陣を切ったのは弟分のヘタフェだったんですが、いやあ、昨季もコロナ禍でリーグが中断するまで、CL出場圏内で3、4位争いをしていたこともありますが、もう弟分なんて、呼んでいられないかもしれませんよ。そう、コリセウム・アルフォンソ・ペレスにベティスを迎えた彼らはキックオフから、エンジン全開。前半13分にはニヨムのクロスをアンヘルがchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)で叩き込み、VAR(ビデオ審判)にオフサイド疑惑を払拭されたおかげもあって、先制点をゲットすると、39分にはククレジャがエリア外から弾丸シュートを決めて、2点目が入ります。42分にもクーチョのラストパスをアンヘルがネットに突き刺し、前半だけで3-0としたとなれば、後半は流しモードになったとしても仕方ない?
うーん、確かに「Nos han tirado tres veces y nos hicieron tres goles/オンス・アン・ティラードー・トレス・ベセス・イ・ノス・イシエロン・トレス・ゴーレス(相手は3回、シュートを撃って、3ゴールを挙げた)」とペジェグリーニ監督が言っていた通りではあるんですけどね。前節ではVARに祟られて、兄貴分のマドリーに2-3と競り負けたのがよっぽど堪えたか、開幕2連勝で昨季の悪いイメージを払拭したベティスもあっという間に元に戻ってしまった感がなきにしろあらず。ただ、それでもボルダラス監督は記者会見で戦力不足を訴えることを止めず、ええ、退団した選手の方が加入した選手より、全然、多いのは本当ですからね。

とはいえ、「もうトップチームには22人いる。El entrenador está últimamente un poco quejica. Si vamos líderes, qué más queremos/エル・エントレナドール・エスタ・ウツティマメンテ・ウン・ポコ・ケヒカ。シー・バモス・リデレス、ケ・マス・ケレモス(最近、監督はちょっと文句が多い。ウチが首位だったら、もっと何が欲しいんだ)」というアンヘル・トーレス会長の言い分ももっともで、ええ、2節からスタートして3試合、何と、2勝1分けのヘタフェは兄貴分たちを差し置いて、堂々、首位の座についたんですよ。もちろん、この土曜のレアル・ソシエダ戦を見てみないことには、何とも言えませんが、今季の彼らはELがない分、試合数が少ないのも事実。金曜にはELのグループリーグ組み合わせも決まり、ナポリ(イタリア)、AZ(オランダ)、リエカ(クロアチア)との対戦にウキウキしているだろう相手に付け込む隙は十分、ありそうです。

そして水曜にはマドリッドの2強がプレーしたんですが、どうして、ああもアトレティコはファンを天から地べたに突き落とすのが得意なんでしょうか。そう、開幕だった前節、グラナダ戦では6-1のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を披露し、モラタ(ユベントスにレンタル移籍)に代わり、ルイス・スアレス(バルサから加入)した今季はもう、ゴール日照りという単語とは無縁になったはずだというのに、早くも非常な現実を突きつけられるとは、これ、如何に。アルコラスでのウエスカ戦では序盤から、ボールを支配していたものの、前半はほとんどチャンスが作れません。

デビュー戦の20分間で挙げた2ゴールを買われ、その日はスタメンに入ったスアレスも不発で、後半、ジョアン・フェリックスからのスルーパスで得たチャンスもGKアンドレス・フェルナンデスに防がれてしまい、そのジョアンのシュートも密集した敵のDF陣やGKに弾かれてしまう始末。「Hemos hecho un gran trabajo defensivo/エモス・エッチョー・ウン・グラン・トラバッホ・デフェンシボ(ウチは偉大な守備の仕事をした)」という、1部に復帰したばかりのミチェル監督のチームから、1点も取れないとはどうしたことでしょう。幸い、岡崎慎司選手が先発したウエスカもGKオブラクを破ることはできなかったため、最後はスコアレスドローという結果に終わりましたが、そこはいくら、「後半のウチはゴールを追求したし、fue diferente a los empates de otras ocasiones/フエ・ディフェレンテ・ア・ロス・エンパテス・デ・オトラス・オカシオネス(以前のドローとは違った)」(シメオネ監督)と言われてもねえ。

というのも昨季の彼らは引き分けの帝王で、38試合中16試合がドロー。しかもアウェイでは6勝しかできなかったという悲惨な過去を振り返ると、一刻も早く、「Tenemos que aprender de nuestros errores para que no vuelva a pasar/テネモス・ケ・アプレンデール・デ・ヌエストロス・エローレス・パラ・ケ・ノー・ブエウバ・ア・パサール(ボクらはミスから学ばないといけない。もう繰り返さないようにね)」というサウールの言葉を有言実行してもらいたいところですが、はあ。スアレスが来ても、敵に狭いスペースに固まってしまわれるとお手上げって、こうなると、もうメッシにも来てもらうしかない?

これでは日曜に大幅ローテーションしたせいで、大敗を喫したものの、木曜には見事にEL予選プレーオフでマルメ(スウェーデン)を1-3と撃破。とうとうグループリーグ出場にこぎつけ、クラブ創設以来、初のヨーロッパの舞台でPSV(オランダ)、PAOK(ギリシャ)、オモニア(キプロス)と戦うことになった、グラナダなど、高笑いが止まらないといったところでしょうが、アトレティコはこの土曜、午後4時(日本時間午後11時)から、ワンダ・メトロポリターノにビジャレアルを迎えて仕切り直し。こちらもELのグループで、2年前、アトレティコが連続ドローでCL早期敗退をする原因を作ったカラバフ(アゼルバイジャン)、マッカビ・テルアビフ(イスラエル)、シバススポル(トルコ)との対戦が決まったばかりのチームですが、このミッドウィーク節でもアラベスを3-1と破り、ヘタフェと同じ勝ち点7で並ぶ、4チームの首位グループに入っているだけに、やたら守備的にはならず、スペースがもらえそうなのはアトレティコにとって、助けになるんじゃないでしょうか。

え、ヘタフェと同じ火曜にレアル・ソシエダに勝ったバレンシアも首位グループにいるとなると、あと1つは当然、マドリーなんじゃないかって?まあ、その通りなんですが、アトレティコの試合の後もバルに居座って、私が見ていたバジャドリー戦も途中まではかなり、スコアレスドローの気配が強かったんですよ。それも前節のベティス戦に続き、連続スタメンとなったヨビッチがCKからのヘッドをGKロベルトにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されたりと,チャンスに決めきれなかったせいですが、ジダン監督が後半11分、早めに実施した3人一斉交代が実を結ぶことに。20分、敵エリア内での混乱の中、ベンゼマの前で蹴ったブルーノからのボールがオフサイドの位置にいたビニシウスへと渡り、そのシュートから決まったゴールが先制点として認められているんですから、驚いたの何のって。

まあ、これもVAR様々で、最後に触れたのがバジャドリーの選手だったことがわかったんですが、ここは開幕レアル・ソシエダ戦で先発に抜擢されながら、ベティス戦では出番なし。この日も控えだったにも関わらず、交代でピッチに入ってから、ずっと積極的に攻撃に絡んでいった当人のやる気を褒めてあげるべきかと。そこへ、ジダン監督からは「Para eso está Thibaut/パラ・エソ・エスタ・ティブー(クルトワはそのためにいる)」とあっさり、言われてしまいますが、ヴァイスマンやワルドのシュートを昨季のサモラ(リーガで一番失点率が低いGKに与えられる賞)が弾いてくれたのもあって、マドリーは1-0で逃げ切りに成功しましたっけ。

ちなみにジダン監督がこの3試合、イロイロなシステムを使っているのには訳があって、「No hemos tenido pretemporada para probar/ノー・エモス・テニードー・プレテンポラーダ・パラ・プロバル(ウチにはプレシーズンに試す機会がなかった)」せいなんですが、まあ確かにテストマッチがヘタフェとの練習試合だけではねえ。実際、ここしばらくはそれが続きそうな感じで、というのもアセンシオは先月のスペイン代表合宿で腫らしたヒザが治り、この日、途中出場したんですが、何と、足並みを揃えるはずだったアザールが試合当日になって、太ももを痛めてしまったから。全治は3週間とも1カ月とも言われていますが、こうなるとお馴染みの4-3-3が戻ってくる日は遠いかもしれません。

そして、ヨビッチにレンタルのオファーがないせいか、ここ2試合で途中出場しながら、結局、ローマで2年間、過ごすことが決まったボルハ・マジョラルが旅立って行った翌日、マドリーには思わぬ負傷者も発生。それはカルバハルで、バルデベバス(バラハス空港の近く)での午前セッションで右ヒザ靭帯を損傷し、全治2カ月となってしまったため、バジャドリー戦で先発したオドリオソラにはしばらく1人で頑張ってもらわないといけないことに。

同様に被害を受けたのは金曜に招集リストが発表されたスペイン代表で、ええ、カルバハルは右SBのレギュラーですからね。今回はラス・ロサス(マドリッド郊外)のサッカー協会施設でではなく、バルセロナのSEAT(スペインの自動車メーカー)本社で記者会見も行ったルイス・エンリケ監督は急遽、セルジ・ロベルト(バルサ)を呼ぶことに。その一方で、マドリーの次の相手、日曜午後4時から、ホームのシュタット・デ・バレンシアの改修工事がまだ終わっていないため、ビジャレアルのラ・セラミカを借りて戦うレバンテでは、57年ぶりにカンパーニャがスペイン代表に招集。クラブを挙げて大喜びしていたのは印象に残りましたっけ。

そう、コロナ禍のせいで日程が詰まり、この10月は3試合をプレーすることになるルイス・エンリケ監督のリストは総勢25人。カルバハルの他にもマドリー勢はアセンシオが復帰したばかり、セビージャに移籍したオスカル・ロドリゲス(昨季はレガネスにレンタル)もプレー時間不足ということでリスト外になり、更にはバイエルンからリバプールに移ったばかりのチアゴ・アルカンタラが現在、感染隔離中とあって、少々、メンバーは変わっているんですけどね。いやあ、来週水曜、リスボンのジョゼ・アルバラーデ(スポルティングCPのホーム)で開かれるポルトガルとの親善試合には3割程度ながら、観客が入れるそうなんですが、今回もエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)でプレーする、10日(土)のネイションズリーグ3節のスイス戦は無観客って、ホントにマドリッドの感染状況が悪いのは困りもの。

13日(火)のウクライナとのアウェイ戦はどうなのか、よくわからないんですが、ヨーロッパの他の国ではすでにスタンドに観客が入っているところもあるのを見るにつけ、悔しさも募るばかりかと。幸い、代表戦はTVE(スペイン国営放送)で自宅観戦できますし、こちらはバルサで大当たりしている17才のアンス・ファティがいるため、ゴールに不自由はしなさそうですが、自業自得とはいえ、今回もアトレティコからは誰も呼ばれていないというのも何だか、寂しい感じがします。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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