スタジアム観戦はまだ無理でも…/原ゆみこのマドリッド

2020.08.31 11:35 Mon
©超ワールドサッカー
「シャワーも使わせてもらえないなんて」そんな風に私が気の毒がっていたのは土曜日、予定表をめくってみれば、何と6カ月ぶりとなる生観戦となったレガネスvsエイバルのプレシーズンマッチ終了後、乾貴士選手も含めて、ビジターチームがユニフォームのまま、インスタラシオン・デポルティーボ・ブタルケ(レガネスの練習場)の駐車場に止まっているチームバスに乗り込む姿を見た時のことでした。いやあ、確かにマドリッドを筆頭に、現在のスペインは新型コロナウィルス再流行の真っ只中ではあるんですけどね。折しもその日はそれまで40度近くあった気温がいきなり20度以下に下がるという、物凄い気候変動に襲われていたんですが、いくら感染防止のために施設の使用が制限されているとはいえ、これじゃホテルに着く前に風邪を引く選手が出ても不思議はない?

ちなみにその、まだ肌寒い午前10時という早朝開催となった試合はアギーレ監督から、ホセ・ルイス・マルティ監督に代わり、気持ちも新たに1部再昇格を目指すレガネスが序盤から敵を圧倒。開始3分にはCKから、オメルオがヘッドで先制点を叩き込んだかと思えば、12分にもロサレスがエリア前からの一撃で2点目をゲットすると、40分にはカウンター攻撃からアルナイスが3点目と、うーん、昨季後半に失ったエン・ネシリ(セビージャに移籍)、ブライトワイテ(同バルサ)、そしてレンタル期間の終わったカリージョ、ゲレーロ、アサーレ、オスカルもいなくなった後、サビン・メリーノがデポルティーボへのレンタルから戻って来ただけで、まだまだ攻撃陣の補強はできてないはずなんですけどね。

この猛攻に前半のエイバルは手も足も出ず、メンディリバル監督の怒声が無観客のスタンドの隅々まで一際、よく聞こえた後半には丁度、記者たちが座っていた側の前、左サイドでプレーする乾選手がシュートを撃つシーンも間近で見られたんですけどね。前日は同じマドリッドの2部の弟分、イラオラ新監督が率いるラージョにエスタディオ・デ・バジェカスで0-1と勝った相手にペドロ・レオンがピッチに入った後半ロスタイム、PKによる1点を与えただけで3-1の勝利とはもしや、4年前のお隣さん、ヘタフェのようにレガネスの1部最短Uターンも決して夢ではない?
いえまあ、去年のプレシーズンマッチでも彼らは負けなしと好調だったんですが、結果はあの通り、最終節ですでに優勝決定済みだった兄貴分のレアル・マドリーから、残留を決める勝ち越し点が取れず、4年間を過ごした1部から、おさらばすることになったんですけどね。この夏も最初の親善試合、カルタヘナ(2部)戦から2連勝と言ってもまだまだ先のあることですし、とりあえず、GKクエジェルを始め、ブスティンサ、ルーベン・ペレス、シオバスといったベテランたちがチームに残留してくれたことを幸いとして、精進を続けて欲しいかと。

そんなレガネスは再び来週、火曜にラージョをブタルケに迎えて親善試合をするんですが、実はこの試合、相手にコロナ陽性者が現れたため、1度は延期になったといういわく付き。昨今、その手の事情によるスケジュール変更が多々あるのもこの国の感染状況を反映していると言っていいかもしれません。
そして今季はオレジャナがバジャドリーに移籍したため、より出番が増えることが期待される乾選手のいるエイバルは来週金曜にオサスナと対戦するんですが、もしや昨季のリーガ再開以来、無観客試合が続いているお詫びの意味もあるんですかね。この夏のプレシーズンマッチはクラブがストリーミング中継することが多いんですよ。ええ、この日もレガネスがライブ放送していましたし、とりわけ、最寄りに大都市もないムルシア州(スペイン南東部)のサン・ペドロ・デル・ピナタルまで、ビジャレアルの親善試合を見に行くこともできない私などにとってはそれが何よりの味方に。

まあ、初戦のカルタヘナ戦など、途中で中継が切れてしまったりと少々、難がなくもないんですけどね。続いて彼らはテネリフェ(2部)に2-3で負けた後、お昼のTVニュースでは合宿先ホテルでnovatada(ノバタダ/新人の通過儀礼)を受け、チームメートの見守る中、ドラえもんの歌を披露する姿の方が注目されていた久保建英選手が途中出場した金曜もハビ・ガルシア新監督率いるバレンシアに1-2で連敗。とはいえ、まだ来週水曜午後7時(日本時間翌午前2時)にはレアル・ソシエダ戦も控えているため、夜更かしのできるファンはその時間、ビジャレアルのオフィシャルページやツィッターをチェックしてみるといいかと。

実際、私も水曜、たまたまマルカ(スポーツ紙)をネットで見ていて、アラベスvsウエスカ戦のライブ中継が始まったこと知り、おかげで今季からは晴れて1部でもっと多くのスペイン人ファンに、その雄姿を披露できることになった岡崎慎司選手の見事なtaconazo(タコナソ/ヒールキック)による同点ゴールを見れたりしたため、興味のあるチームの試合日程は気に留めておくのがお勧めです。ちなみにウエスカは土曜にレアル・ソシエタと2-2で引き分けた後、日曜にもサダベル(2部)と対戦することになっているんですが、何と言ってやっぱり、一番気になるのはリーガの新シーズンの予定かと。

いやあ、先週の日曜に1部昇格プレーオフ2ndレグでジローナを下し、エルチェがウエスカ、カディスに続く、最後の1席を掴むかなり以前から、開幕は9月12日の週末という話がまことしやかに流れていたため、私もそうなんだと思っていたんですけどね。実はこの月曜にはサッカー協会がそのラ・リーガ案にストップをかけるという出来事が。それも2部B降格が決まったデポルティーボやヌマンシアが衛生規定違反により、フエンラブラダの強制降格を訴えている件やサッカー協会自体も2部24チーム制を提案していたせいで、ラ・リーガが木曜に予定していた組み合わせ抽選会を違法として、中止を求めたから、ビックリしたの何のって。

でも大丈夫、お隣のフランスではもう今季が始まっていますし、ブンデスリーガやプレミアリーグも9月からのスタートが決まっているとなれば、スペインのGDPの1.3%を占めるラ・リーガも遅れを取ることはできないと焦ったか、木曜にはCSD(スポーツ上級委員会)の仲裁で正式に9月の第2週末開幕が決定。丁度、その日にはTAD(スポーツ調停法廷)から、フエンラが2部に留まる裁定も出ましたしね。週明けには1部20チーム、2部22チームによる組み合わせ抽選も実施され、来年5月30日に終了(2部はその1週間後)することになりましたっけ。

ただし、これには例外があって、8月にヨーロッパの大会を戦ったチームは遅れてスタート。ええ、16強対決で敗退したヘタフェとマドリーは1週間後の2節から、準々決勝で敗退したアトレティコとバルサ、ELに優勝したセビージャは9月24日にブダペストで定員の3割、観客が入れることになったUEFAスーパーカップでCL王者のバイエルンと戦わないといけないせいもありますが、3節目に当たる26日の週末からリーガ戦を始めます。昇格プレーオフ決勝を終えたばかりのエルチェとジローナもこの最後の組に入りました。

よって、プレシーズン開始もマドリッド1部勢ではヘタフェがこの火曜に先陣を切ることになり、今や恒例となったPCR検査から始まったんですが、1週間前に陽性報道があったダミアンとは別に複数人、感染者がいたため、キャンプ地への移動が遅れるなんていう話も。ただ、ファンにとってもっとショックだったのは38才のエース、ホルヘ・モリーナがグラナダに電撃移籍してしまったことで、うーん、EL16強対決インテル戦前には「ベティス時代、16強は体験しているから、今度は8強に入りたい」と言っていた彼ですが、痛恨のPK失敗が響いて敗退。今度は昨季の最終節でヘタフェをかわして出場権を手に入れたグラナダで再び、EL準々決勝進出を狙うというのも凄いですが、この4年間、マドリッドの弟分の1部復帰と残留争いに関わらずに済むチーム作りに貢献してくれた大恩は絶対、忘れられませんって。

実際、彼の移籍はウナル・エネル(ビジャレアルから移籍)とクーチョ・エルナンデス(ワトフォードからレンタル)の加入により、前線が定員オーバーになってしまったせいでもあるんですが、その余波はカンテラーノ(ヘタフェBの選手)のウード・ドゥーロにも及ぶことに。こちらは同じ2部BのRMカスティージャ(マドリーの下部チーム)にレンタルで出ることになり、ラウール監督の下、火曜にはUEFAユースリーグ決勝でベンフィカを破り、初優勝を遂げたフベニルA(カスティージャの1つ下のカテゴリー)から昇格する選手たちに混じって、更なる成長を目指すことに。

そうそう、その優勝メンバーは2部Bの開幕日がまだ決まっていないこともあり、10人程がこの日曜にはPCR検査、月曜からバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でプレシーズンのトレーニングを開始するジダン監督のトップチームのヘルプ要員として選ばれるそうなんですが、来週はスペイン代表U21代表のお勤めに行かないといけないドゥーロはちょっとハンデがありますかね。

え、月曜にはネーションズリーグのドイツ、ウクライナ戦に備え、スペインA代表もラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設に集合するように、どの国も代表戦週間に入るため、マドリーもあまり人数が揃わないんだろうって?その通りで、セルヒオ・ラモス、カルバハル、アセンシオに加え、それぞれレンタル移籍が終わり、次の行き先を探しているレギロン(今季はセビージャでプレー)、オスカル(同レガネス、セビージャ行きが濃厚に)の2人もスペイン代表に呼ばれていますしね。他にもクルトワ、アザール(ベルギー)、バラン、メンディ(フランス)、クロース(ドイツ)、ヨビッチ(セルビア)、レニン(ウクライナ)、昨季終盤はベンチ入りを遠慮していたベイルも移籍先がまったく決まらないまま、ウェールズ代表に行ってしまうんですが、今回は中南米勢がヨーロッパに留まるため、マルセロ、カセミロ、ビニシウス、バルベルデらを含め、13人は確実にいるよう。

その中にはレアル・ソシエダでのレンタル期間を1年に切り上げて帰還、ヒザの治療をするため、ノルウェイ代表に行かないウーデゴール、体調を整えるため、クロアチア代表招集を辞退したモドリッチもいるんですが、すでに移籍先がほぼ決まっているマリアーノ(ベンフィカ)、ブライム(ミラン)、ハメス・ロドリゲス(エバートン)らが参加するのかは微妙。更にはセバージョス(アーセナルへのレンタルが終了)、マジョラル(同レバンテ、バレンシア加入が濃厚)、オドリオソラ(同バイエルン)といった名前もありますが、まずは誰もPCR陽性にならないといいですよね。

え、それでプレシーズン開始が最も遅く、来週木曜になるアトレティコなんて、せいぜい故郷のブラジルにレンタルに出ていたカンテラーノ(Bチームの選手)のカイオ・エンリケがロディの控えとして戻りながら、お財布事情優先でモナコに売却。代わりにオサスナにレンタルが決まりかけていたマヌ・サンチェスが残ることになったぐらいで、とうとう最近はマルカも1ページしか割いてくれないぐらい、トップチームには動きがないとなれば、私も今、スペイン中が大騒ぎになっているメッシのバルサ退団の件に触れない訳にはいかないんじゃないかって?

いやまあ、月曜にクーマン新監督から、同じカステルデフェルス(バルセロナ近郊)の歩いて行ける距離に住む大親友、ルイス・スアレスが戦力外通告を受けたことが最後の一押しとなって、CL準々決勝でバイエルンに2-8と大敗したせいで傷心だった彼がコロナ禍で昨季が8月まで続いたことを利用。契約では6月末日までに申し出ないといけなかった自由移籍の権利を行使するというFAXをクラブに送り、7億ユーロ(約882億円)の契約破棄金額を払わずに出て行こうとしていることから、バルトメウ会長の辞任を求めるファンがカンプ・ノウ前に詰めかけたり、当の会長がメッシの残留と引き換えに辞任を示唆したり、今ではもう、マンチェスター・シティ、PSG、マンチェスター・ユナイテッドといった移籍先候補に話題が移っていたりするんですが、何と言っても対岸の火事ですからね。

ただ、その関連で金曜にはマルカに「バイエルン戦より前から、メッシ退団を予感したバルトメウ会長がグリーズマンとジョアン・フェリックスのトレードをヒル・マリン筆頭株主に持ちかけていた」なんて記事が出てきたのには呆気に取られたの何のって。だってえ、1年前、1憶2000万ユーロ(約151億円)の契約解除金を払って河岸を変えたグリーズマンと1憶2700万ユーロ(約160億円)の移籍金をベンフィカに払って獲得したジョアンは、値段的には大体、同じですが、あまりにも今更すぎじゃあないですか。もちろん、ヒル・マリン氏はノーと即答、後日、レマルとジエゴ・コスタとのトレードならとこちらも凄い調子のいいオファーを出したそうですが、結局、金曜にはクーマン監督がグリーズマンに直接、今季のチーム構想の軸になる旨を伝えていたことがわかるって、やっぱりこのトレード話はガセだったのかも。

何にしろ、昨季途中から、ボランチ改め、FWとなったマルコス・ジョレンテはバケーション中も体を鍛えるのに余念がないものの、もっと高みを目指すにはゴールを量産してくれるストライカーが必要なのがアトレティコ。その割にはコロナ禍による緊縮財政のせいもありますが、なかなか前線を強化する選手が決まらないじれったさもありますが、今季の市場は10月5日まで開いていますからね。焦らず、いい選択をすれば、いよいよシメオネ監督のリーガのバルサ戦初勝利も近づく気がするんですが…。

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly