笑えない展開になってきた…/原ゆみこのマドリッド

2020.07.30 16:00 Thu
©Atlético de Madrid
「天国から地獄に落とされるとはまさにこのこと!」そんな風に私が呆気に取られていたのは火曜日、マドリッド2部の弟分、フエンラブラダのプラエナ会長、サンドバル監督、チームドクター、選手のウーゴ・フライレとその代理人をサッカー協会の競技委員会が水曜に開かれる会合にオンライン参加するように要請。事と次第によっては、義務違反により、2部B降格処分もありうるかもしれないと知った時のことでした。いやあ、新型コロナウィルス流行によるparon(パロン/リーガの停止期間)が開けてから5週間強、連日連夜ぶっ続けでプレーして、1部は19日の日曜日に、2部も翌20日にはシーズン終了に辿り着いたスペインだったんですけどね。

残念ながら、最後の最後でケチがつき、2部最終節当日にフエンラにコロナ陽性者が複数いることが発覚。リアソルで開催予定だったデポルティーボ戦が延期されただけでなく、以来ずっと、チーム全員がラ・コルーニャ(スペイン北西部のビーチリゾート都市)のホテルで隔離されているんですが、いやもう、それからが大変だったんですよ。というのもフエンラは6位で終わったエルチェと勝ち点差1と丁度、1部昇格プレーオフ参加が懸かる位置にいただけでなく、デポルティーボの方は他のチームの最終節の結果により、戦わずして2部B降格が決定。

そこで早々に42節の全てのカードのやり直しから始まって、今季をシーズン無効として、昇格も降格もなしにすべきとか、はたまた感染者がいるにも関わらず、マドリッドから危険を顧みず、移動してきたフエンラを公衆衛生規律違反と見なし、たまたまチームドクターも同伴していなかったことから、降格処分にすべきって、ちょっとお、いくら名門クラブが2部B行きになるは悔しいからって、そこまで言う?
まあ、これには便乗しないのは損とばかり、全試合消化して7位に留まった、もう1つの弟分、ラージョなども「最終節は公平性が保たれていないため、エルチェとラージョでプレプレーオフの一戦をやるか、6チームでプレーオフをするべき」といった、こじつけのような提案や、19位で最終節に降格が決まったヌマンシアも来季の2部リーガを24チームで開催することを主張、挙句の果てには、もっと前に落ちていたエクストレマデラもシーズン無効を支持と、もう無茶苦茶な様相を呈しているですが、日曜にラ・リーガがフエンラの「選手たちの回復を待って試合をするか、デポルティーボ戦を完全に中止とするか、当局の決定に従う」という声明を深読みしたのも事態を悪化させたかと。

ええ、フエンラの好意に感謝しつつ、「延期試合は実施せず、昇格プレーオフにはエルチェが出場すると競技委員会に伝える」という声明を出したところ、プラエナ会長、そしてプレーオフ出場ボーナス2万2000ユーロ(約270万円)が懸かっている選手たちから猛反発を受けることに。うーん、正直、ラ・コルーニャで隔離生活を始めてからもフエンラ関係者の陽性反応は増え続け、先週土曜にはマドリッド居残り組の4人を含め、新たに12人が感染していたことが判明。計28人となり、金曜など、具合の悪くなった陽性の選手が市内の病院に救急車で搬送されるなど、もうホント、試合のできる状態になるのはいつになるやら、まったくわからないんですけどね。
感染していない選手たちだって、滞在しているホテル・フィニステレが一般営業も止めていない都合上、ジムもプールも使えず、自身の個室に軟禁状態。シーツもろくろく代えてもらえないとなれば、その体調は推して知るべしかと。何せ、彼らは去年の夏、初めて2部に昇格したばかりですからね。本来なら、先週木曜には始まっていた準決勝1stレグを延期させられたアルメリア、ジローナ、そして相手が決まるのを待っているサラゴサらと共に、月曜にはラ・リーガの指示でPCR検査を受け、準備万端なエルチェに忖度して、ここは譲ってあげても全然、悪くはないと思いますが…でも、降格なんて問題外ですよ!

まあ、その辺はデポルティーボ戦の実施、プレーオフ参加チームの件を含め、競技委員会の結論を待たないといけないんですが、実はあまり騒ぎにはなっていないものの、コロナ陽性者と濃厚接触した選手がいたため、先週土曜に予定されていた2部B昇格プレーオフでもポルトゥガレテvsサスタオ戦が延期に。と思いきや、リーガ終了から1週間のバケーションを取った後、8月7日のCL16強対決マンチェスター・シティ戦2ndレグに向けての練習再開に先立ち、月曜に選手やスタッフの自宅でPCR検査を行ったレアル・マドリーでも陽性の選手が見つかったという報が入ってきたから、ビックリしたの何のって。

うーん、最近はスペイン全土でも感染者が再び増え始めていますし、中にはセビージャのバネガのように先週末、スタッフ12人のクラスターが発生したバレンシア(スペイン南部のビーチリゾート)のディスコを訪れ、まだ警戒事態だった時期に禁止されていた10人以上が集まるバーベキューの写真を公開して、お目玉を喰らっていた奥さんが再び映像をアップ。マスクもせず、如何にも感染最適環境にいたように見えながら、8月5日のEL16強対決ローマ戦に備えた練習再開前の検査では大丈夫だったなんてこともありましたしね。

たとえ、8月8日のCL16強対決2ndレグのため、カンプ・ノウを訪れるナポリが遠征を渋るほど、感染者が増えてきているバルセロナでマリアーノが休暇を過ごしたとて、ウィルスをもらったのは運が悪かったとしか言いようがないんですが、バケーション先はイビサ島が多かったチームメートたちとの接触はなかったため、無症状の彼は1人で2週間の自宅隔離となることに。当然、マンチェスター・シティ戦には間に合わないとはいえ、他はリーガ最終戦を欠場したマルセロ、アザールを含め、火曜には猛暑のバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場で元気にトレーニングしていましたからね。

何より、サンティアゴ・ベルナベウで1-2と負けた1stレグを戦った2月26日はもう遠い昔、今は栄えあるリーガチャンピオンとして、自信もつけたマドリーとなれば、たとえ、この日曜、四男のマキシモ・アドリアーノ君が誕生したキャプテンのセルヒオ・ラモスが出場停止でおらずとも、最後の2節、ワトフォード、ノーウィッチシティをgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)で下し、リバプールと勝ち点差18の2位で先週末、プレミアリーグを終えたグアルディオラ監督のチームだって、恐れるには足らず?向こうはアグエロもケガでいないようですしね。今週から、イギリスではコロナ輸入を警戒して、スペインからの渡航者には2週間の隔離措置を強いているんですが、それもCL遠征は例外ということで、マドリー関係者は影響を受けないというのも朗報ではあります。

え、それで3月に昨季のCL王者を16強対決2ndレグでも破り、今季のプレミアリーグ絶対王者に早めのバケーションを贈ってあげたアトレティコも8月13日の準々決勝ライプツイヒ戦に向けて、練習を再開したんだろうって?その通りでお隣さんより1日早い日曜にPCR検査を行った彼らは月曜から始動。ちなみに最初、AS(スポーツ紙)などが、例年のプレシーズンキャンプ地、ロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)で合宿に入ると言っていたのは勇み足だったようで、この暑い中、マハダオンダ(マドリッド近郊)からチームは動かないようですが、ここはコロナだけでなく、熱中症にも十分、気をつけてほしいところ。

ちなみにこちらの欠席者はリーガ最終節でケガをしたトマス、中断期間中に靭帯断裂したヒザから補助パーツを取り出す手術をしたベルサイコだけどなっていますが、丁度、そのレアル・ソシエダ戦の日、マラガでの2部昇格プレーオフ初戦の応援に行っていたマヌ・サンチェスとリケルメも再び、トップチームに合流。結局、最後は決勝でもアンス・ファティとリキ・プッチの参加をセティエン監督に阻まれたバルサBを制し、見事、昇格を決めたサバデル相手にPK戦で兄貴分同様、ダメダメなところを露呈して、アトレティコBは早期敗退してしまったんですが、まあそれはそれ。

アトレティコがリスボンのエスタディオ・ジョゼ・アルバラーデ(スポルティングCPのホーム)で、エースだったベルナーがもう移籍先のチェルシーの練習に合流しているライプツィヒを破り、準決勝に進めば、アタランタvsPSG戦の勝者との試合はエスタディオ・ダ・ルス(ベンフィカのホーム)で18日。同じ会場で行われる決勝も23日と、またハードスケジュールになるため、カンテラーノ(アトレティコBの選手)たちにも沢山、働いてもらわないと。彼らとはあまり年齢が変わらない20才のジョアン・フェリックスにもとりわけ、現地での練習場がベンフィカの施設に決まったこともありますし、古巣での煌めきを思い出してくれることを期待しています。

そしてまだシーズンが終わっていないマドリッド勢は1部の弟分にもいて、それは8月5日にEL16強対決インテル戦をドイツのアレナ・アウフシャルケでプレーするヘタフェ。いやあ、彼らは最終節で来季のEL出場権を逃し、リーガ再開後はまったく以前の面影がないんですが、早急に選手たちの気分を切り替えたかったんですかね。1週間の休暇を取った後、月曜から、こちらはそれこそ、ボルダラス監督のプレシーズンご用達、アリカンテ(スペイン南東部)のオリバで木曜まで4日間の合宿に入っています。

何せ、相手はセリエA9連覇を先週、達成したユベントスにこそ及ばず、アタランタやラツィオと2位を最終節まで争うことになるとはいえ、来季のCL出場権を獲得しているチームですからね。メンバーを見てもルカクやら、リーガ中断中にバルサ移籍が決まったと思わされながらも実はまだ、契約延長の交渉をしているラウタロやら、アレクシス・サンチェスやらと、名の知れた選手が多いため、突破は難しいかもしれませんが、そこは一発勝負。リーグ終了が8月2日と休む時間のない相手の疲れを上手く利用できれば、勝機もあるかもしれません。

え、それで来季はラージョやアルコルコンと2部でご一緒することになったレガネスはどうしているのかって?いやあ、最終節のマドリー戦で勝ち越しの1点が取れず、4年間過ごした1部を後にすることが決まった翌日、アギーレ監督の退任が発表されたんですが、まだ新監督は決まっておらず。最初は2016年にクラブ史上初の1部昇格を果たしたアシエル・ガリターノ監督(今季終盤、アラベスの監督を解任)の復帰が取り沙汰されていたんですが、いつの間にか立ち消えになり、その後は今季、コパ・デル・レイで2部のミランデスを準決勝まで導いたイラオラ監督、今週になってからはルビ監督(今季、リーガ再開3試合目にベティス監督を解任)の名前などが挙がっていますが、さあて。

いずれにしろ、フエンラブラダの件が片づかない限り、1部も2部もいつ来季が始まるのか、わかりませんからね。一応、9月中旬と言われてはいるものの、コロナウィルス流行が収まらない限り、スタジアム無観客状態は続くでしょうし、こればっかりはどうしようもなし。一応、最近はお店やレストランもほぼ平常モード、普通に外出できるようになったとはいえ、40度近く気温が上がるマドリッドでもマスク着用が義務化されたため、私もつい、出不精になっちゃうんですよね。

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