リーガ再開にゴーサインは出たものの…/原ゆみこのマドリッド

2020.05.24 17:00 Sun
©Atlético de Madrid
「意外と早かったわね」そんな風に私が驚いていたのはようやく来週から、マドリッドもEstado de Alarma/エスタードー・デ・アラルマ(警戒事態)緩和エーズ1に移行できることが決まった翌日の土曜日、ペドロ・サンチェス首相が記者会見で「A partir del 8 de junio volverá LaLiga de fútbol/ア・パルティル・デル・オチョ・デ・フニオ・ボルベラ・ラ・リーガ・デ・フトボル(6月8日以降にサッカーのリーガは再開される)」と発言したのを知った時のことでした。いやあ、ずっとラ・リーガのテバス会長などは12日金曜の週末からと主張していたため、日付が一桁だったのには当惑したものだったんですけどね。
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それも各チームの監督や選手からは12日ではチーム全体での練習期間が短すぎ、もう1週間は必要という声も結構、聞こえてきていたため、私も心の準備ができていなかったんですが、どうやらこれって、去年の12月、ウクライナ人選手のゾズリャをナチ扱いする野次がエスタディオ・デ・バジェカスのスタンドで発生。0-0の前半終了時点で中断されていた2部のラージョvsアルバセテ戦の後半をまず9日にやってから、1部2部の残り11節を金曜からの週末で一斉スタートというテバス会長の思惑通りになったよう。ただ、災難だったのはその再開トップバッターを担うことになるマドリッドの弟分、ラージョが今週頭に揉めていて、練習場でのセッションが1週間経過してもクラブがERTE(不況時の雇用調整法)適応を解除せず、減給待遇が続いていたことに不満を持っていた選手たちが実力行使。月曜火曜と出勤を拒否したため、パコ・ヘメス監督の練習計画が狂ってしまったことですが、大丈夫。一説によると、父親を新型コロナウィルスで失ったラウール・マルティン・プレサ会長が失意の余り、業務遂行不可能になり、なかなか手続きが進まなかったそうですが、水曜にはERTEを取り下げ、選手たちも練習場でのグループセッションに復帰することに。まだまだ現在の10位から、勝ち点差6ある昇格プレーオフ圏の6位まで、追い込み体制を整えるのには時間がありますって。
ちなみに10人までのグループ練習が許可された今週、1部のマドリッドのチームが何をしていたのかを見ていくと、勝ち点差2で首位バルサを追うレアル・マドリーは月曜から土曜までみっちりバルデベバス(バラハス空港の近く)の施設で練習。水曜にはリーガ中断となった3月半ば、ベニト・ビジャマリンで2-1とベティスに負けた後の記者会見以来、初めてオフィシャルウェブでコメントしたジダン監督も「選手たちもあと11試合あるのを意識していて、タイトルを獲るため、力強い終わり方を望んでいる。Está en el ADN del club/エスタ・エン・エル・アーデーエネ・デル・クルブ(クラブのDNAにそれがあるんだ)」と楽観的でしたが、確かにねえ。

だってえ、彼らはこの思わぬparon(パロン/リーガの中断期間)のおかげで長期リハビリ中だったアセンシオ、3月に足首を手術したアザールも完治し、出場可能に。結果、ビニシウスとロドリゴのブラジル人ティーンエイジャーのアタッカーコンビとポジション争いをすることになるとはいえ、一旦、シーズンが再開されれば、週末は7連続、その間にミッドウィークの試合が4回入るという強行スケジュールになりますからね。順調にリーガが7月26日に終わっても、8月には1stレグで1-2とマンチェスター・シティに敗戦。しかも退場したセルヒオ・ラモスが出られない、エティハド・スタジアムでの16強対決2ndレグから始まるCLでのremontada(レモンターダ/逆転勝利)大作戦が待っているとなれば、とにかく頭数は大いに越したことない?
そんな中、練習再開直前にヨビッチに踵の骨折が発覚したのもあり、気になるのは手薄なCFのポジションで、ベンゼマは元気なんですが、マリアーノがまだ1度もグラウンドに姿を見せておらず。マルカ(スポーツ紙)によると、どうやら足の指にできた血豆が治らず、ずっとジムごもりをしているのだとか。冬に加入したトップ下のブラジル人、18才のヘイニエルも今季プレーする予定だったRMカスティージャが2部B4位までのプレーオフ圏に届かず、今季は営業終了。PCR検査こそ受けたものの、ジダン監督のセッションには参加せず、バケーション状態になってしまったのも不思議ですが、もしやこれは再開後のリーガ戦の交代枠が5人に、ベンチ入りが23人に増員されたにも関わらず、EU圏外出身選手枠は3人で変わらなかったのが影響しているのかも。

まあ、木曜にはペレス会長の激励訪問もあったバルデベバスでの練習の様子は毎日、オフィシャルウェブにビデオが上がるため、そちらで楽しんでもらえばいいんですが、いやあ、藪蛇なこともあるもんですね。先日はロンド(輪の中に選手が入ってボールを奪うゲーム)に現役時代の足捌きがまったく衰えていないジダン監督絶賛参加中のシーンが映っていたためか、「リーガのお目付け役から注意があった。8人、9人のグループだと選手の負担が大きくなるため、スタッフが演習に入って助けていただけなのに」とバジャドリーのセルヒオ監督が愚痴をこぼすなんてことも。とはいえ、この辺は練習期間が進むにつれ、どんどん緩くなっていくんじゃないでしょうか。

え、それでも一足早く先週末から再開したブンデスリーガ同様、ゴールが入っても選手たちが団子になって祝うことはできないんだろうって?その通りで、お隣さんのサウールなども「veo muy raro que en un córner puedas defender al lado de un compañero y luego no puedas abrazarlo en un gol/ベオ・ムイ・ラーロ・ケ・エン・ウン・コルネル・プエデス・デフェンデール・アル・ラードー・デ・ウン・コンパニェロ・イ・ルエゴ・ノー・プエダス・アブラサールロ・エン・ウン・ゴル(CKの時には同僚の側で守ることができるのに、その後、ゴールで抱き合えないなんて変だよね)」と納得していないようでしたが、実際、今週に入って強度が上がったマハダオンダ(マドリッド郊外)でのセッションビデオを見ると、まったく容赦なしですからね。

これじゃゴール祝いだけ禁じても意味はないだろうと、私なども思うんですが、まあそれはそれ。とにかくリーガでは勝ち点13差の首位の高みなどはもう他人事、まずはCL出場圏4位レアル・ソシエダとの1差を引っくり返すことに集中しないといけないアトレティコでは、今年になって、ヒザの靭帯断裂から回復してきたベルサイコが手術箇所から補強材を取り出すために内視鏡手術を受け、しばらく練習に参加できないんですが、再開初戦のアスレティックとの試合には間に合う予定。CL16強対決リバプール戦2ndレグで負傷したモラタもすでに完治と、メンバー的に不足はないんですが、逆に相手にはこのコロナ災禍で間接的な犠牲者が発生しているんですよ。

それは水曜に今季の残り試合には戻らず、前倒しの引退を発表した39才のベテランFWアドゥリツで、うーん、世が世なら、4月に行われていたはずのコパ・デル・レイ決勝で花道を飾る予定だったんですけどね。ずっと患っていた腰のケガが悪化し、医者に手術を勧められたことから、「Por mucho que quieras a veces hay un límite. Es mejor que yo no esté/ポル・ムーチョ・ケ・キエラス・ア・ベセス・アイ・ウン・リミテ。エス・メホール・ケ・ジョ・ノー・エステ(どんなに望んでも時には限界がある。自分はいない方がいい)」と身を引くことに。そこで、若い時分はバジャドリー、マジョルカ、バレンシアと他のチームでも活躍したものの、アスレティックでも172ゴールを挙げているレジェンドとして、金曜には当局の許可を得て、サン・マメスでセレモニーが行われたんですが…。

うーん、この先しばらくはこういうのがテンプレになるんでしょうかね。もちろんファンをスタンドに入れることはできず、見送るチームメートやマスコミはピッチに2メートル間隔の椅子を置いて座らされるという不思議な光景が展開。同僚のイバイ・ゴメスなどは、「ボクらは絶対、コパに優勝してガバラ(アスレティックが優勝パレードに使うビルバオの運河で使われた木材運搬船)を出すよ。その船首にはアドゥがいなきゃいけない」とお別れの言葉を送っていましたが、そのお祝いも込みでサポーターと共に祝うため、レアル・ソシエダとのコパ決勝が来年まで延期になってしまったというのは皮肉な巡り合わせではありますね。

そして1部の弟分たち、兄貴分を勝ち点差1で上回っての5位につけ、今季こそ初のCL出場権獲得の夢を果たしたいヘタフェ、残留圏と3差の19位の現状を覆し、残り試合で降格を阻止したいレガネスも今週は順調にグループ練習を続けていたんですが、さすが後者は切羽詰まっているせいでしょうかね。アギーレ監督はダブルセッションの日を2度設ける程の張り切りよう。いやあ、この週中からマドリッドでも日中の気温がとうとう30度を突破、合わせて嫌がらせのようにお店のような屋内だけでなく、往来でもマスクが義務化(しないと罰金)されたため、私も外出するたび、熱中症になるんじゃないかとヒヤヒヤしているんですが、それだけにとりわけ午後の炎天下でマスク、手袋装備で指導に当たっているコーチングスタッフの体調が気遣われるところ。

ますます気温が上がるであろう6月からの試合では一応、週末は最初の時間帯が午後6時(日本時間翌午前1時)、平日は午後7時半(同午前2時半)スタートと、これまでのような昼間の開催は避けるようですが、セビージャなど南部の都市では夜になっても涼しくならなかったりしますからね。かといって、最終時間帯午後11時(同午前6時)キックオフというのもゾッとしないんですが、実はバル(スペインの喫茶店兼バー)で試合を見るファンも大変なんですよ。というのもペドロ・サンチェス首相は6月第2週にはスペイン中が緩和フェーズ3になっているはずとは言うものの、マドリッドなどようやく月曜からフェーズ1に入ったばかりですからね。

そんな首都のチームも全国と歩調を合わせ、週明けは全員練習に移行すると見込まれているものの、まだまだ街中のお店はテラス席の半分だけしかオープンできず。フェーズ2でようやく店内の席4割が解放されるとはいえ、果たして行きつけのバルでTVを見られる位置が確保できるものかどうか。メニュー(定食)の提供やグループで大皿料理をつついたりも禁じられているとあって、もしやひたすらビールを飲むだけになるんじゃないかと、私も恐れているんですが、こればっかりはねえ。何はともあれ、今は早くマドリッドのフェーズが2になって、好きな時間に街を歩き回れる日を待つしかありません。


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