リーガ再開を期待してもいいのだろうか…/原ゆみこのマドリッド
2020.04.30 20:30 Thu
「お隣さんみたいなことにならなくて良かったわね」そんな風に私がホッとしていたのは火曜日、ペドロ・サンチェス首相が新型コロナウィルスによるEstado de Alarma(エスタードー・デ・アラルマ/警戒事態)にスペインが3月14日に突入して以来、もう何度目になるか覚えていない記者会見生中継で「Los deportistas profesionales podrán entrenar individualmente a partir del 4 de mayo/ロス・デポルティスタス・プロフェシオナレス・ポドラン・エントレナール・インディビドゥアルメンテ・ア・パルティル・デル・クアトロ・デ・マジョ(プロスポーツ選手は5月4日から個人練習をすることができる)」と言うのを聞いた時のことでした。
でも大丈夫。スペイン政府の段階的外出禁止令解除計画を踏まえて、AS(スポーツ紙)などが掲載していたリーガ再開へのスケジュールではもう来週月曜から、各チームは練習場で個人トレーニングを実施。18日には4~5人程度のグループセッション、25日には8人ぐらいまで人数を増やし、6月1日にはいよいよチーム全員による練習、そして5日か12日の週末に28節から止まっていた試合が無観客で始まるそう。
ただねえ、週明けからの練習開始についてはまだはっきりしていない点があって、レアル・マドリーなどからは、「政府はオリンピック選手などが使うスポーツ施設を解除計画のフェーズ1、5月11日から開くことにしているが、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場はもう使っていいのか」といった素朴な疑問から、「4日からプロ選手は個人でentrenamiento basico/エントレナミエントー・バシコ(基礎的な練習)を始めていいと言われているが、具体的にどこまでやっていいのかわからない」、「同様にフェーズ2のentrenamiento medio/エントレナミエントー・メディオ(中程度の練習)とは何を指すのか」ともう、現場の混乱ぶりがひしひしと伝わってくることに。
何にしろ、5月9日から16日に1週間延期になったとはいえ、すでに練習再開から3週間以上が経過しているブンデスリーガが先に始まるようなので、リーガもそちらを参考にすればいいんですが、怖いのはトレーニング期間中やリーグ戦再開となってから、チームの誰かに感染陽性者が現れるケース。うーん、基本的には当人を隔離するだけで、チームの活動は続行という方針のようですけどね。その場合、選手の中には感染を恐れて、プレーを拒否する人も出てくるかもしれませんし、それが多数となれば試合をするなど、夢のまた夢。
ラ・リーガのテバス会長などは、「試合を放棄するチームがあれば、規定通り相手の不戦勝。勝ち点3を失う」と厳しいことを言っていましたが、サッカー界だけでありませんよ。政府の解除予定を見て、5月11日からのフェーズ1にはレストランのテラスがオープンするとか、25日からのフェーズ2では店内でも飲食できるし、映画館や劇場、美術館なども入場制限して、ソーシャル・ディスタンスを維持しつつ、営業再開。6月下旬には地中海のビーチへ国内旅行もできるようになるのではないかと、今はスペイン全土がウキウキしているんですけどね。それも一時は1日900人以上を記録した後、ようやく300人台が続いている死亡者数や現在23万人以上と、世界3位につける感染者数が再び上昇しないという条件が満たされない限り、絵に描いた餅だということを忘れないようにしないと。
え、何にしろ7月末までにリーガ残り11節を終えるとなると、全てのチームがかなりのハードスケジュールになるんじゃないかって?その通りで私など、UEFAが8月7、8日に、メスタージャで無観客試合をしたバレンシアがアタランタに敗退、アトレティコがアンフィールドでリバプールに連勝して、感動的な勝ち抜けをした後、中止となったマンチェスター・シティvsマドリー、バルセロナvsナポリ戦を含むCL16強対決2ndレグの残りを実施。翌週のミッドウィークと週末で準々決勝の1st、2ndレグ、次の週には準決勝の2試合、そして29日にイスタンブールでの決勝を計画していると聞いて、真夏に延々と連戦を強いられる選手たちの体力を心配してしまったんですが、いやあ。
何せ、1月に入団したヘイニエル(フラメンゴから移籍)も含め、トップチームに26人の選手を擁するマドリーなど、現在FIFAが2021年まで、試合での選手交代枠を3人から5人に増やすよう提案していることもあり、余裕があるんですけどね。3月に足首の手術をしたアザールも回復、昨年7月にヒザの靭帯断裂をしたアセンシオもピッチに戻る日を指折り数えている状態となれば、今季、ラウール監督率いるRMカスティージャ(2部B)から、そちらは一足早く、シーズン打ち切りが終わったのをいいことに徴用できるようなカンテラーノ(ユースチームの選手)がおらずとも、アクラフ(ドルトムント)、ウーデゴーア(レアル・ソシエダ)、レギロン(セビージャ)ら、レンタル先で活躍している選手たちが来季戻って来るのをただただ、楽しみに待っていればいいんですが、少数精鋭のお隣さんなんて、トップチームのフィールドプレーヤーが21人しかいませんからね。
そのせいか、先日のマルカ(スポーツ紙)ではアトレティコB(2部B)やフベニル(その下のカテゴリー)の有望株を紹介していたりしたんですが、もうリーガデビューを果たしているリケルメやカメージョ、マヌ・サンチェスらはともかく、10代前半の選手まで並べられてもねえ。火曜には50才のバースデーを迎えたシメオネ監督もリーガが再開したら、これまでのようにコケ、サウール、トマス、モラタ、コレアらを皆勤させるのではなく、今季はほとんど使われていないサポンジッチや1月に中国から戻ったカラスコら、チーム全員を万遍なくプレーさせないと、8月末のCL決勝を迎える前に息切れしてしまうかもしれませんよ。
そしてマドリッドの弟分では先週末にとうとう、選手たちに最大16%の年棒カットの同意を取り付け、ERTE(スペインの不況時雇用調整法)の申請を逃れた19位のレガネスは、どちらかというとこのまま降格なしでシーズン打ち切り派かもしれませんが、6位のアトレティコと一緒に、CL出場圏復帰を目指してリーガ再開を待ち望んでいる5位のヘタフェも8月はEL16強対決で忙しくなる予定。こちらはトップチーム24人プラス、カンテラーノのウーゴ・ドゥーロと戦力的に充実している方なんですが、何より特筆すべきはこの小規模なクラブがリーガで唯一、選手の給料減額もERTEも宣言せずと、ゆとり経営を誇っていることかと。
いやあ、「El fútbol para mí es como una droga porque es lo que desestresa/エル・フトボル・パラ・ミー・エス・コモ・ウナ・ドローガ・ポルケ・エス・ロ・ケ・デセストレサ(サッカーは自分にとってドラッグみたいなもの。それでストレス解消になるんだから)」というボルダラス監督など、毎朝、ズルをしないよう、選手たちに体重計の数値を写メさせて、グラウンドに戻れる日を今か今かと待っているんですけどね。先ほど、TVニュースで5月中の練習再開予定を立てているセリエAも下手したら、打ち切りとなる可能性があると報じられていたのはちょっと、気になるかと。
だってえ、3月にミラノでの1stレグ遠征を拒否したヘタフェはまず、インテルとEL16強対決の2試合戦わないといけないんですよ。もしもイタリアのチームがこのままバケーション入りしてしまえば、7月にプレシーズンをやって、フレッシュな状態でリーガ疲れもピークにあるだろう彼らと当たることになり、それってとっても不公平じゃない?まあ、同じことはCLをプレーするPSGにも言えますが、とにかく各国の進展状況が異なるのにいきなり1カ月の短期決戦とか、今季のヨーロッパの大会はかなりいびつな様相を呈するんじゃないかと思いますが、さて。
そうこうするうちにテレマドリッド(ローカルTV局)の夜のスポーツニュースからは、やはりラ・リーガが一旦、中止させられた感染検査の手配を再びするのに手間取り、来週月曜は練習場での個人セッション開始ではなく、その日から検査を行って、順次練習に移行する予定という報道も。リーガ再開は6月27日まで遅れると言っていましたが、いやはや。もうすでに私自身もマスクをつけてスーパーに行くのが、気温のせいで苦しくなってきているんですが、東京でのオリンピックが2021年夏に延期と決まった時同様、毎年、シーズン開幕直後の8月や9月、猛暑の中での試合は議論の的だったはずなのに、今年に限ってはまったく無視されているのはやはり、リーガを打ち切ると、サッカー界だけでなく、スペイン経済にも大打撃になるせいですかね。
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いやあ、折しもその少し前にはフランスのエドゥアール・フィリップ首相が国内のスポーツイベントを9月まで中止することを発表。スペイン同様、リーグ・アンも5月11日には練習再開して、6月17日には今季のリーグ戦の残りをスタート、フランスサッカー協会も6月13日か20日にはクープ・ドゥ・フランス決勝パリ・サンジェルマン(PSG)vsサンテチェンヌ、続いてリーグカップ決勝PSGvsリヨンの開催を獲らぬ狸の皮算用で計画していたんですが、政府の決定の前にはどうすることもできませんからね。すでにチャンピオンズリーグ(CL)16強対決でドルトムントを下し、準々決勝進出が決まっているPSGだけは早々と「CLが再開したら、たとえホームゲームをフランス国外でプレーすることになっても出る」とアル・ケライフィ会長が意志表明していましたが、彼らはリーグ・アン中断時点で1位を独走。今季の優勝チームを決めるのか、オランダのようになしになるのかはともかく、来季のCL参加は確実なのとは異なり、6位のリヨンなど、リーグカップ優勝で行けるはずだったヨーロッパリーグ(EL)にすら、来季は届きませんからね。もう16強対決1stレグで1-0とユベントスに先勝したところで止まったCLで優勝して、来季のCL出場権獲得を目指すしかないんじゃないかと思いますが、え、その境遇、ちょっとリーガが今季打ち切りとなった場合のアトレティコ・マドリーに似てなくもない?ただねえ、週明けからの練習開始についてはまだはっきりしていない点があって、レアル・マドリーなどからは、「政府はオリンピック選手などが使うスポーツ施設を解除計画のフェーズ1、5月11日から開くことにしているが、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場はもう使っていいのか」といった素朴な疑問から、「4日からプロ選手は個人でentrenamiento basico/エントレナミエントー・バシコ(基礎的な練習)を始めていいと言われているが、具体的にどこまでやっていいのかわからない」、「同様にフェーズ2のentrenamiento medio/エントレナミエントー・メディオ(中程度の練習)とは何を指すのか」ともう、現場の混乱ぶりがひしひしと伝わってくることに。
大体がして、ラ・リーガが今週火曜に各チームの選手、スタッフ、関係者らに実施を予定していたPCR検査も保健省にダメ出しされ、いまだに行われていませんからね。練習を再開するにしてもまずはその前に誰も感染していないかどうか、確かめないといけないのでは?おまけに広いお庭や完璧なジムが自宅にあるセルヒオ・ラモスなど、「Estoy más fino incluso que en mitad de temporada/エストイ・マス・フィノー・インクルソ・ケ・エン・ミタッド・デ・テンポラーダ(ボクはシーズンの途中以上に体がキレているよ)。3日おきにプレーしていると回復の時間がないからね」と言っていたものの、全ての選手がそこまで恵まれた環境にいる訳ではないとなれば、6週間以上、通常のバケーション期間より長い日数、自宅トレだけだった後には全員がプレシーズン開始前と同じぐらい、綿密な身体検査を受けるべきかと。
何にしろ、5月9日から16日に1週間延期になったとはいえ、すでに練習再開から3週間以上が経過しているブンデスリーガが先に始まるようなので、リーガもそちらを参考にすればいいんですが、怖いのはトレーニング期間中やリーグ戦再開となってから、チームの誰かに感染陽性者が現れるケース。うーん、基本的には当人を隔離するだけで、チームの活動は続行という方針のようですけどね。その場合、選手の中には感染を恐れて、プレーを拒否する人も出てくるかもしれませんし、それが多数となれば試合をするなど、夢のまた夢。
ラ・リーガのテバス会長などは、「試合を放棄するチームがあれば、規定通り相手の不戦勝。勝ち点3を失う」と厳しいことを言っていましたが、サッカー界だけでありませんよ。政府の解除予定を見て、5月11日からのフェーズ1にはレストランのテラスがオープンするとか、25日からのフェーズ2では店内でも飲食できるし、映画館や劇場、美術館なども入場制限して、ソーシャル・ディスタンスを維持しつつ、営業再開。6月下旬には地中海のビーチへ国内旅行もできるようになるのではないかと、今はスペイン全土がウキウキしているんですけどね。それも一時は1日900人以上を記録した後、ようやく300人台が続いている死亡者数や現在23万人以上と、世界3位につける感染者数が再び上昇しないという条件が満たされない限り、絵に描いた餅だということを忘れないようにしないと。
え、何にしろ7月末までにリーガ残り11節を終えるとなると、全てのチームがかなりのハードスケジュールになるんじゃないかって?その通りで私など、UEFAが8月7、8日に、メスタージャで無観客試合をしたバレンシアがアタランタに敗退、アトレティコがアンフィールドでリバプールに連勝して、感動的な勝ち抜けをした後、中止となったマンチェスター・シティvsマドリー、バルセロナvsナポリ戦を含むCL16強対決2ndレグの残りを実施。翌週のミッドウィークと週末で準々決勝の1st、2ndレグ、次の週には準決勝の2試合、そして29日にイスタンブールでの決勝を計画していると聞いて、真夏に延々と連戦を強いられる選手たちの体力を心配してしまったんですが、いやあ。
何せ、1月に入団したヘイニエル(フラメンゴから移籍)も含め、トップチームに26人の選手を擁するマドリーなど、現在FIFAが2021年まで、試合での選手交代枠を3人から5人に増やすよう提案していることもあり、余裕があるんですけどね。3月に足首の手術をしたアザールも回復、昨年7月にヒザの靭帯断裂をしたアセンシオもピッチに戻る日を指折り数えている状態となれば、今季、ラウール監督率いるRMカスティージャ(2部B)から、そちらは一足早く、シーズン打ち切りが終わったのをいいことに徴用できるようなカンテラーノ(ユースチームの選手)がおらずとも、アクラフ(ドルトムント)、ウーデゴーア(レアル・ソシエダ)、レギロン(セビージャ)ら、レンタル先で活躍している選手たちが来季戻って来るのをただただ、楽しみに待っていればいいんですが、少数精鋭のお隣さんなんて、トップチームのフィールドプレーヤーが21人しかいませんからね。
そのせいか、先日のマルカ(スポーツ紙)ではアトレティコB(2部B)やフベニル(その下のカテゴリー)の有望株を紹介していたりしたんですが、もうリーガデビューを果たしているリケルメやカメージョ、マヌ・サンチェスらはともかく、10代前半の選手まで並べられてもねえ。火曜には50才のバースデーを迎えたシメオネ監督もリーガが再開したら、これまでのようにコケ、サウール、トマス、モラタ、コレアらを皆勤させるのではなく、今季はほとんど使われていないサポンジッチや1月に中国から戻ったカラスコら、チーム全員を万遍なくプレーさせないと、8月末のCL決勝を迎える前に息切れしてしまうかもしれませんよ。
そしてマドリッドの弟分では先週末にとうとう、選手たちに最大16%の年棒カットの同意を取り付け、ERTE(スペインの不況時雇用調整法)の申請を逃れた19位のレガネスは、どちらかというとこのまま降格なしでシーズン打ち切り派かもしれませんが、6位のアトレティコと一緒に、CL出場圏復帰を目指してリーガ再開を待ち望んでいる5位のヘタフェも8月はEL16強対決で忙しくなる予定。こちらはトップチーム24人プラス、カンテラーノのウーゴ・ドゥーロと戦力的に充実している方なんですが、何より特筆すべきはこの小規模なクラブがリーガで唯一、選手の給料減額もERTEも宣言せずと、ゆとり経営を誇っていることかと。
いやあ、「El fútbol para mí es como una droga porque es lo que desestresa/エル・フトボル・パラ・ミー・エス・コモ・ウナ・ドローガ・ポルケ・エス・ロ・ケ・デセストレサ(サッカーは自分にとってドラッグみたいなもの。それでストレス解消になるんだから)」というボルダラス監督など、毎朝、ズルをしないよう、選手たちに体重計の数値を写メさせて、グラウンドに戻れる日を今か今かと待っているんですけどね。先ほど、TVニュースで5月中の練習再開予定を立てているセリエAも下手したら、打ち切りとなる可能性があると報じられていたのはちょっと、気になるかと。
だってえ、3月にミラノでの1stレグ遠征を拒否したヘタフェはまず、インテルとEL16強対決の2試合戦わないといけないんですよ。もしもイタリアのチームがこのままバケーション入りしてしまえば、7月にプレシーズンをやって、フレッシュな状態でリーガ疲れもピークにあるだろう彼らと当たることになり、それってとっても不公平じゃない?まあ、同じことはCLをプレーするPSGにも言えますが、とにかく各国の進展状況が異なるのにいきなり1カ月の短期決戦とか、今季のヨーロッパの大会はかなりいびつな様相を呈するんじゃないかと思いますが、さて。
そうこうするうちにテレマドリッド(ローカルTV局)の夜のスポーツニュースからは、やはりラ・リーガが一旦、中止させられた感染検査の手配を再びするのに手間取り、来週月曜は練習場での個人セッション開始ではなく、その日から検査を行って、順次練習に移行する予定という報道も。リーガ再開は6月27日まで遅れると言っていましたが、いやはや。もうすでに私自身もマスクをつけてスーパーに行くのが、気温のせいで苦しくなってきているんですが、東京でのオリンピックが2021年夏に延期と決まった時同様、毎年、シーズン開幕直後の8月や9月、猛暑の中での試合は議論の的だったはずなのに、今年に限ってはまったく無視されているのはやはり、リーガを打ち切ると、サッカー界だけでなく、スペイン経済にも大打撃になるせいですかね。
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