心配の種は尽きない…/原ゆみこのマドリッド

2020.04.24 15:45 Fri
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「どこだってそう思うわよね」そんな風に私が頷いていたのは木曜日、暇潰しに眺めていたAS(スポーツ紙)のトップに「ワクチンができない限り、レアル・マドリーはリスクゼロの活動再開はありえないと見ている」という記事を読んだ時のことでした。いやあ、スペインも新型コロナウィルス禍によるEstado de Alarma(エスタードー・デ・アラルマ/警戒事態)に入ってすでに6週目、来週からはこんなに長く家に閉じ込められているのはあまりに可哀そうと、14才以下の年少者には保護者1人が連れ添って、3人まで一緒に短時間の散歩に出ることが許されるみたいなんですけどね。

要は私など、出かけられる場所がスーパーしかないのは同じで、リーガのクラブについてもまだ練習場を使う許可は下りていないんですが、やはりドイツやお隣のポルトガルのチームがトレーニングを再開している映像を見ると、焦るんですかね。先週はラ・リーガが細部まで練ったシーズン再開への予定表を各クラブに送付。それによると、来週火曜には各チームの選手、スタッフら全員のPCR検査を行い、5月9日には練習場での個人練習から、徐々にグループ練習、最後はチーム練習に移行し、6月5日もしくは12日の週末にはリーガ第28節を始めることになっているんですが、マドリーが問題にしているのはそれまでの感染検査の回数なんですよ。

ええ、練習開始前の1週間は毎日検査とのことなんですが、ジダン監督のチームは選手やコーチ陣だけでなく、用具係や施設のスタッフを入れると総勢60~70人にもなる大所帯。それだけの人数に7日間、抗体検査だけでも続けるとなると、キットの数も膨大になりますし、それはもっと小規模ではあれ、他のクラブも同様かと。おまけにミニプレシーズン当初は毎日、練習が終われば皆、家族の待つ自宅に帰る訳ですし、いくら試合開始前の3週間はバルデベバス(バラハス空港の近く)の寮で合宿したとて、試合当日は、いえ、どう転んでもリーガの残り試合が無観客となるとわかった途端、マドリーはラ・リーガやUEFAに同敷地内にあるRMカスティージャのホーム、エスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノでの開催をお願いしていますからね。

そちらもピッチサイズは105x68メートルとサンティアゴ・ベルナベウと同じですし、VAR(ビデオ審判)やより強力な照明の設置など、ちょっとした手間をかけるだけで済むだけでなく、現在も進行形のベルナベウの改装工事を試合が戻ってくる夏の間、ストップする必要がなくなるという利点があるのはともかく、寮からはカートで行けるという職住超接近環境。とはいえ、アウェイとなると、飛行機やバスを使った移動、遠征先で休むホテルなどが安全なのか、わからないとなれば、マドリーが「感染の危険に目を閉じて試合する」か、「ワクチン投与が可能になるまで試合をしない」という突極の選択を迫られていると言うのもわからないではない?

いやあ、コロナのワクチンが開発されるのなんて、それこそ1年か1年半先の話。その頃まで待っていたら、リーガというものが存在したということすら、世界に忘れ去られてしまうかもしれませんしね。何よりスペインのGDPの1.37%、およそ160億ユーロ(約1兆8560億円)を稼ぎ出す大産業とあって、この日曜にはCSD(スポーツ上級委員会)のイレーネ・ロサノ委員長がこのparon(パロン/リーガの中断期間)中もイザコザが絶えないサッカー協会のルビアレス会長とラ・リーガのテバス会長を招集。昨今定番となっているTV会議ではなく、朝10時から、午後7時まで顔を突き合わせて協議していたんですが、それも早く折り合いをつけて、サッカーを再開してほしいという願いの表れだったかと。

結果、ラ・リーガの立てた日程で保健省の承認を求めることになったんですが、後日、テバス会長が各クラブに会談内容を伝えたところ、どうやら観客を入れての試合開催にはやはりワクチンの存在が欠かせないというのがCSDの意見とのこと。ええ、来年の1月まではムリだろうと言われたようなんですが、いやあ、これは大打撃ですよ!だってえ、その場合、クラブは来季のabono(アボノ/年間指定席)を売ることもできず、シーズン前半はチケット収入もなし。当然、併設のオフィシャルショップやミュージアムへの客足にも影響するでしょうし、それを踏まえてテバス会長はこの夏、高額移籍金を払っての選手獲得は忘れるべきと警告を発したそう。

となると、ここ数週、日替わりでスポーツ紙のマドリーページを飾っていた、いえ、カゼミロの後継として押されている17才のカマビンガ(スタッド・レンヌ)などは5000万ユーロ(約58億円)と、それ程ではないんですが、ジダン監督のお気に入りのポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)や次代のギャラクティコとして、ファンからも切望されているムバッペ(パリ・サンジェルマン)などは完全にアウト。それでもいざとなれば、マドリーは今季レンタルに出しているアクラフ(ドルトムント)、レギロン(セビージャ)、ウーデゴーア(レアル・ソシエダ)、前線が足りなければマジョラル(レバンテ)、オスカル(レガネス)、久保建英選手(マジョルカ)と一銭も払わず、優秀な選手を加えることができるため、あまり補強不足に悩むことはないかと思うんですが、マドリッドの弟分のヘタフェやレガネスは言うに及ばず、お隣さんなど、一体どうしたらいいんでしょう。

それどころか、アトレティコでは獲得選手候補でなく、サウールにマンチェスター・ユナイテッドが7000万ユーロ(約81億円)払う用意があるとか、同クラブはジョアン・フェリックスもほしがっているとか、トマスの父親が「息子はすでにアーセナルと話を始めている」と言ったとか、高額売却の噂ばかりが出てくるのは、もちろん、プレミアリーグだって、コロナ禍で大幅収入減となっているのは同じはずですからね。試合がない間もページを埋めないといけない番記者たちの苦肉の産物だというのは私にもわかるんですが、いやまったく、本当に心臓に悪い。

彼らに関して他は、未だに3月11日にアンフィールドでCL準々決勝突破を決めたリバプール戦に3000人ものアトレティコファンが駆けつけたため、当地での感染者数が3人から1200人にまで増えたとリバプール市長が批判するなど、イギリス側から感染拡大の責を負わされていることぐらいですが、実は似たような心配は無観客試合にもあって、そう、まさにその前日にスタンドに人のいないメスタージャで行われた16強対決アタランタ戦2ndレグなど、熱心なバレンシアファンが3000人以上もスタジアムの周りに集結。その3週間前、1stレグに応援に行き、コロナ流行のホットスポットとして先行していたミラノから持ち帰ったウィルスをますます広げる結果になったなんてことがありましたが、果たしてマドリー・ダービーやクラシコ(伝統の一戦)の夜、熱心なサポーターが家やバル(スペインの喫茶店兼バー)でおとなしくTVを見ているなんて考えられる?

そこで各クラブのファンからは大型スクリーンをスタジアムの駐車場に設置して、ドライブインシアター形式で試合を見てもらうなどの案が出てきているんですが、いやあ。どちらにしろ、再開前の3週間、ずっと個室で誰とも会わずに過ごす隔離合宿に断固反対しているAFE(サッカー選手の労働組合)を始め、選手や関係者だけが大量のウィルス感染検査をすることには、いえ、ラ・リーガは独自に3000個のキットを用意したと言っていますけどね。医療従事者にもまだ検査が行き渡っていない現在では各方面からも批判が噴出しているため、なかなか目論見通りにはいかないかもしれません。

え、それで加盟55サッカー協会とのTV会談を経た後、木曜にはUEFAの理事会が開かれたんだろうって?そうなんですが、やはり優先順位は各国国内リーグを再開して残り試合を済ませることにあって、とりあえず8月の第1週までには終了していることが望ましいのだとか。一方でオランダなど、政府が9月までスポーツを含むイベントの全中止を決めたため、仕方なくリーグ打ち切りとなってしまった国もあるんですが、その場合には当該の協会が来季のCL、EL出場チームをできるだけ、リーグの順位に従って決めることに。選考結果にはもちろん、後からUEFAの審査があるんですが、うーん、そうなると現在6位のアトレティコが出場権を得るにはやっぱりリーガを再開してもらわないといけない?

ちなみに今季のCLとELの残り試合については各国のリーグと並行して行うか、8月に集中して一気にやるか、まだ検討中だそうで、様子見も兼ねて、5月の理事会で決めるとのこと。でも8月になると、ドイツなど5月9日にブンデスリーガが再開すれば、6月には終わってしまうため、その後、CL16強対決チェルシー戦2ndレグがまだのバイエルン、ELで同じ境遇にあるヴォルフスグルク、フランクフルトだけがまた7月中にプレシーズン練習を始めて、ヨーロッパの大会を戦う破目に。その頃にはもう、彼の地で来季が始まっていたら、移籍する選手などどうするんだろうかと、私など疑問に思ってしまうんですが、こればっかりはねえ。

とにかく状況がそれぞれの国よって違いますし、スペインなどはピークから、新規感染者や死者の数は減少傾向にあるとはいえ、まだまだ先は読めず。何より、サッカーは選手同士の接触が多いため、ワクチンのない今、完璧な安全策と言えるようなものは取りようがありませんしね。こうなると、「予定を決めるのは我々ではなくウィルス。Está muy bien plantearse escenarios, pero no sirve absolutamente de nada/エスタ・ムイ・ビエン・プランテアールセ・エセナリオス、ペロ・ノー・シルベ・アブソルータメンテ・デ・ナーダ(計画を練るのはとても良いが、本当にまったく何の役にも立たない)」という、2部の弟分ラージョのパコ・ヘメス監督の言葉が一番、気分的にしっくりきますかね。
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