課題はこなしておくべきだった…/原ゆみこのマドリッド

2020.04.19 15:00 Sun
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「そうか、だからアスレティックのユニを着てたんだ」そんな風に私が遠い目をしていたのは土曜日、1日1回は外の空気を吸いたくて通っている近所のスーパーで赤白ストライブのシャツを着た女性を見た際には、まったく思い至らなかったんですけどね。お昼のスポーツニュースで本来なら、この4月18日はカルトゥハで開催されるコパ・デル・レイ決勝の応援に駆けつけたアスレティックとレアル・ソシエダのファンでセビージャ(スペイン南部の都市)が大賑わいしているはずだったことに気づかされた時のことでした。

いやあ、3月第1週にあった準決勝2ndレグでまず、レアル・ソシエダが2部のミランデスとの2ndレグにも勝利。2連勝で決勝進出を決めた翌日、ラス・カルメネスでユーリ・ベルチチェが終盤、起死回生のアウェイゴールを挙げ、2-1でグラナダに負けながら、アスレティックが5年ぶりにファイナリストとなった話なんて、もうとうに記憶の底に埋もれてしまっていましたからね。

それには準決勝以外、一発勝負となった今季のコパではマドリッド勢が2回戦でバラドーナ(2部B)に負けたヘタフェを筆頭に、アトレティコも初戦となった32強対決でクルトゥラル・レオネサ(2部B)に敗退。16強対決ではレガネスがカンプ・ノウでバルサに5-0と叩きのめされ、最後の期待が懸かったレアル・マドリーもサンティアゴ・ベルナベウでの準々決勝でレアル・ソシエダに3-4と撃ち負ける始末とあって、私のコパへの興味は早々に薄れていたんですが、史上初となったレアル・ソシエダとアスレティックのバスクダービー決勝へ向けて、地元の盛り上がりときたらかくありなん。

それこそ対決が決まった瞬間から、セビージャのホテル料金が跳ね上がり、両チームのファンもスペイン北部のバスク地方から、飛行機、AVE(スペインの新幹線)、車(9時間近くの道程)と、あらゆる手段を駆使してはせ参じるはずだったんですが、それも翌週、新型コロナウィルス禍によるリーガの中断と共にコパ決勝も開催日未定で延期されることに。以来、1カ月以上もスペイン全土にEstado de Alarma(エスタードー・デ・アラルマ/警戒事態)が敷かれ、不要不急の用事で外出すると罰金を取られるため、大多数の人々が自宅で引きこもり生活を余儀なくされているんですが、どうやらビルバオやサン・セバスティアンに住むファンたちはこの日付をとにかく、祝いたかったよう。

ええ、各家庭のバルコニーがクラブの旗などでデコレーションされ、午後8時に、今ではヨーロッパ中の慣習となった医療従事者や生活維持に必須の業務を遂行する人々へ贈る感謝の拍手の後、イムノ(クラブ歌)や応援歌を歌って盛り上がっていましたが、実はコパがサッカー協会主催の大会であることから、今週もスペインのプロサッカー界は獲らぬ狸の皮算用騒動を起こすことになったんですよ。

というのも火曜にサッカー協会が2部B以下、3部や地方リーグユースらのアマチュアサッカー、女子リーガ、フットサルリーガについて、今季はもう終了するという提案をした時にはまだ、いえ、3部各グループの現在上位にいる7チームで1試合制のプレーオフをやり、2部B昇格チームを決定。来季は2部Bのチーム数を増やして、3部共々、降格チームはなしにするという点については、主にプレーオフ境界線スレスレにいる当事者たちから文句が出ていたぐらいで、とにかくマイナーレベルのクラブでは練習や試合での感染予防策を講じる予算もなかなか、捻出できませんからね。

よってそれ程、大ごとにはならなかったんですが、木曜にはサッカー協会の会合で、リーガが再開する前に「UEFAから来季のCL、EL出場チームを訊かれた場合に限り」、中断した27節時の順位に基づき、CLには1位から4位のバルサ、レアル・マドリー、セビージャ、レアル・ソシエダが、ELには5、6位のヘタフェとアトレティコ、そしてEL最後の1枠は通常、コパ優勝チームが該当するんですが、リーガでCL圏にいるレアル・ソシエダが優勝した時は準優勝のアスレティックを当てるというアナウンスがあったから、さあ大変!

だってえ、数年前から、UEFAの規定でコパ優勝チームがリーグ順位でヨーロッパの大会出場権を得ていれば、リーガ7位がEL出場3チーム目となることになっているんですよ。もちろん、これには現在7位にいるバレンシアが黙っておらず、クラブから直ちにUEFAへ抗議の書簡を送付。いや、文句をつけるなら、サッカー協会へだろうというツッコミはさておき、それには来週木曜に予定されているUEFAと参加55カ国のサッカー協会のTV会議で前から、「7月中には来季のCL、EL参加チームのリストを作成しないといけない」と言っている主催団体にルビアレス会長が打診され、うっかりこの選定チームを告げられたら困るという牽制の意味もあったのかも。

え、エル・パイス(スペインの一般紙)などでも言われていたように、このリーガ7位ではなく、コパ準優勝チームがELに出場するという特例はコロナ禍が一向に収まる気配を見せず、たとえ夏の開催となっても無観客試合やむなしという状況で、何が何でもスタンドを満員にしてのコパ決勝を望むサッカー協会が12月に試合を先送りすることを計画。そこで今季限りでの引退を表明しているベテランFW、39才のアドゥリスがコパ決勝までの契約延長に同意しているアスレティックが優勝しながら、来季のELに参加していなかったなどということになれば、整合性が取れないための苦肉の策じゃないのかって?

まあ、そういう見方もできますが、当然ながら、この案に対する不満は他のクラブからも出ていて、その1つがマドリッドの弟分ヘタフェ。というのも彼らは4位のレアル・ソシエダと同じ勝ち点で並んでいて、しかもシーズン前半の10月16日にはアノエタでマタとマクシモビッチのゴールにより、1-2と勝利しているんですよ。4月22日に予定されていた後半戦のコリセウム・アルフォンソ・ペレスでの試合はいつ行われるか、まったくわからないんですが、ボルダラス監督も「まず直接対決の結果、次に総得失点差、最後に総得点数で決まるはず」と言っていた通り、今彼らが4位でなく、5位なのは単純に相手が得失点差で上回っているから。

つまり直接対決の結果が反映されていないため、いえ、「ウチがEL16強対決インテル戦1stレグでミラノ遠征を拒否した時、UEFAもスポーツ省もその判断を高評価してくれた。La Federación no me felicitó/ラ・フェデラシオン・ノー・メ・フェリシト(サッカー協会だけが褒めてくれなかったね)」とあまり、ルビアレス会長に好感を抱いていないようなアンヘル・トーレス会長など、「協会は誰も頼みもしないリストを作ることぐらいしか、やることがないのだろう。そもそもUEFAだって、まず国内リーグを終了することを優先しているのに」とラジオのインタビューではもっと、歯に衣を着せていませんでしたけどね。

別にヘタフェにはCLに何が何でも参加しないといけない義務もないですし、ELに2年連続で出場できるだけでも歴史的快挙なんですが、やはりそこは昨季も最終節で4位をセビージャに奪われたというのがトラウマになっている?どちらにしろ、アトレティコのヒル・マリン筆頭株主も「Decisiones como la que ha tomado la Federación sólo sirven para enfrentar a unos clubes con otros/デシシオネス・コモ・ラ・ケ・ア・トマードー・ラ・フェデラシオン・ソロ・シルベン・パラ・エンフレンタール・ア・ウノス・クルベス・コン・オトロス(協会がしたような決定はクラブ同士が争うことにしか、役立たない)」と言っていたように、この暫定来季UEFA大会参加チーム選定はただでさえ、試合ができずにイライラしているリーガ関係者をいたずらに刺激する結果にしかなりませんでしたっけ。

え、でもすでにERTE(スペインの不況時における雇用調整法)を申請、トップチームの選手やスタッフの給与カットもしているアトレティコにとって、もし本当に来季CLに行けないことになれば、財政的に非常にまずいことにならないのかって?そうですね、今季5億ユーロ(約585億円)程の予算のうち、15%がCLからの収益と言われていますから、大変は大変なんですけどね。それもこれもリーガが中断になるまで、とりわけアウェイ13試合で3勝だけという、勝ち点を取りこぼしまくったせいでの自業自得という面もなきにしろあらず。

もちろんシメオネ監督も選手たちも残り11試合で辻褄を合わすつもりだったとは思いますが、万が一、リーガが再開されなかった場合、せめてリバプールを倒し、準々決勝進出が決まっているCLの方だけでも残りのラウンドが行われ、そこで優勝して来季の出場権を勝ち取るぐらいしか、望みはないかと。うーん、すでに幾つかのチームが練習を始めているドイツなどでは、ブンデスリーガを5月9日の週末に再開するという話もすでに出ているようなんですけどね。

サッカー協会と根深く対立しているラ・リーガもヨーロッパの大会出場チームをサッカー協会が独断で決めることは越権行為と激しく抗議した後、すでに1部と2部の42チームに5月4日には個人セッションから、4段階を経てのミニプレシーズン実施の指針を配布していたことが発覚。それによると、その期間には最近は中国から輸入した分も届き、数に余裕が出てきたため、ラ・リーガが一括購入した2000個の検査キットを使い、各選手は練習場に集まる前には抗体検査に加え、PCR検査も課し、6月初旬に試合が再開されるまで計3回のテストを義務化するのだとか。

更にこのミニプレシーズン中は練習場の施設や近隣のホテルに選手、スタッフが泊まり込み、家族との接触も避けて感染を防ぐという厳しい合宿なども指示されているんですが、それもスペインの警戒事態が予定通り、今月26日で終わってくれればこそですからね。土曜にはついにペドロ・サンチェス首相が5月9日まで再延長を発表し、そうなると、その頃にはずっと自宅でセミバケーション状態にある選手たちももう今季は終わっていいよという気分になっているかもしれませんし、ファンの方もだんだん、ヨーロッパの大会出場チームはいっそ抽選で決めたらいいなんて思うようになったりは…まあ、それはないんじゃないでしょうか。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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