勝っても先が読めない…/原ゆみこのマドリッド

2020.03.13 13:00 Fri
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Getty Images
「気の毒というか、何と言うか」そんな風に私が同情していたのは木曜日、新型コロナウィルス対策でエイバル戦前のジダン監督記者会見を中止、恒例の練習公開15分も止めて、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場をブンカーにしたと報じられていたレアル・マドリーで、皮肉にもバスケットボールチームのトンプキンスの感染陽性が発覚。いやあ、彼はどうやら1週間前、無観客試合で行われたユーロリーグのオリンピア・ミラン戦遠征時にもらって来たと見られているんですけどね。広大な敷地の中、サッカーグラウンドと体育館は離れているとはいえ、施設内部で共有するスペースもあることから、両チームの選手たちを始め、スタッフ、従業員らは一斉に帰宅させられることに。

もちろんジダン監督の予定していたその日の練習も中止となり、午後には業者が施設の消毒に精を出していましたが、この先、選手たちは2、3週間、自宅隔離状態におかれるとなれば、お昼にはサッカー協会、リーガ協会、AFE(選手の労働組合)の合意を得て、今週末と来週末の1部、2部のリーガ戦が無観客開催どころではなく、延期と決まったのはありがたかったかと。更に夕方にはUEFAからも来週火曜に予定されていたCL16強対決マンチェスター・シティ戦2ndレグが、前日にルガーノが感染していることがわかったユベントスとオリンピック・リヨンの試合と共に延期という通達も届きましたしね。

おかげでセルヒオ・ラモスの累積警告による出場停止は変わらずとも、GKクルトワやマルセロの負傷欠場を憂うる必要はなくなったんですが、その一方でスペインとイタリアの直行便が停止されたことから、火曜にはたとえ、来季のUEFA主催大会出場禁止処分を喰らうことになっても絶対、ミラノには行かないとアンヘル・トーレス会長が宣言。水曜には無事にEL16強対決インテル戦1stレグ延期を認められた弟分のヘタフェだったんですけどね。ローマがイタリアを出られず、サンチェス・ピスファンでの1stレグが延期となったセビージャ同様、残る6カードは木曜に実施されているため、来週には2ndレグ、翌金曜には準々決勝組み合わせ抽選会という、余裕のない日程の中、ひょっとすると中立地で1試合のみのガチンコ勝負となるかもしれないというのもひどくない?

それでもとりあえず、ヘタフェは日曜のグラナダ戦を目指して練習を続けていたんですが、そちらも例に漏れず延期に。その後はインターナショナルマッチウィークに入るため、各国代表に招集されている選手以外、更に2週間のparon(パロン/リーガの停止期間)となり、試合がないのは仕方ありませんが、大体がして、その代表戦だって、木曜に中止が発表された29日のオランダvsスペインの親善試合を始め、開催を取り止める国が多そうですからね。マドリーの選手たちは自宅にもジムを備えているため、個々に体調維持に努めることになるそうですが、何となくヘタフェやレガネスはプレシーズン練習みたいな雰囲気になってしまいそうな。

いやあ、現在はスペインも感染者が激増し、緊急事態に入っているため、人の集まるスポーツイベントなどが中止になるのも当然ですけどね。いざリーガ再開となった時、クリスマスバケーション以上の間が空いてしまった各チームがどんな状態になっているのか、ちょっと心配です。

え、その試合延期期間に最高の形で入ったマドリッド勢もいるんじゃないかって? うーん、まあその通りで、火曜にはメスタジャでイタリア全土封鎖を一瞬の差ですり抜けて来たアタランタが、無観客試合なのがもったいない程の撃ち合いで3-4とバレンシアに勝利。総合スコア8-4でCL準々決勝進出を決めた翌日、アンフィールドでリバプールとの16強対決2ndレグに挑んだアトレティコだったんですが、まだイギリスには渡航制限もかかってなかったため、2500人のファンが大挙して応援に。おそらく5万人以上入るスタジアムでは少数派だったでしょうが、意表を突いて先発に抜擢されたジエゴ・コスタが開始15秒、ジョアン・フェリックスからスルーパスを受けて、枠は捉えられなかったものの、シュートを放ったのには勇気づけられたかと。

でもねえ、そこからは1stレグ1-0での負けを挽回しようと猛攻をかけてくるリバプールの独壇場で、ワイナルドゥム、マネ、フィルミノとガンガン撃ってくるのをGKオブラクが必死で止めていたんですが、来たるべきものがやって来たのは44分。ええ、クロップ監督の隠し玉、オックスレード=チェンパレンが右から入れたクロスをワイナルドゥムがヘッドで決め、総合スコタでイーブンにされてしまっては一体、どうしたらいい?だってえ、その日のアトレティコはたまにボールを持っても、お家芸の「3度のパスも続かない」状態で、とても得点を望めるようには見えなかったんですよ。実際、後半もオブラクのparadon(パラドン/スーパーセーブ)が続き、ドシャ降りの雨の中、1人、ユニフォームを泥だらけにしていたんですが…。

それだけにロスタイム、ロディの蹴ったFKをサウールが頭でゴールに叩き込んだ時は奇跡が起きたかと、バル(スペインの喫茶店兼バー)のTVを立ち見していたお客さんたちも沸いたんだですが、いや、世の中、そんなに都合よくいきませんって。勝ち抜けを決めるはずのアウェイゴールはくっきりはっきりオフサイドだったため、そのまま試合は延長に突入。いみじくも後でジョアンが「Sufrir es el lema del Atlético/スフリル・エス・エル・レマ・デル・アトレティコ(苦しむことはアトレティコのモットー)」と言っていたように、私も腹を括って、カーニャ(グラスビール)のお代わりを頼むことに。

そして延長戦前半4分、今度はワイナルドゥムのクロスをフィルミノがゴール前でヘッド、これはゴールポストに当たって入らなかったんですが、サビッチが見守る中、すんなり同選手に蹴り込まれているようでは、はあ。もうこの時点でアトレティコの敗退を覚悟したファンも多かったと思うんですけどね。大丈夫、「Intenté transmitir a la gente que con un gol se podía pasar/インテンテ・トランスミティール・ア・ラ・ヘンテ・ケ・コン・ウン・ゴル・セ・ポディア・パサール(皆に1点取れば勝ち抜けられると伝えようとした)」とキャプテンのコケが試合後、打ち明けていた通り、選手たちは誰も諦めていなかったんです!

ただ好機が生まれたのはリバプールのミスのおかげで、その日はGKアリソンのケガでゴールを守っていたアドリアンがゴールキックを自陣にいたジョアンに向けて蹴るという、滅多にない大ポカを犯してくれたから。ええ、そのボールが後半10分から、コスタに代わってピッチに入っていたマルコス・ジョレンテに渡り、ライン前からのシュートで値千金の1点が入るなんて、ビックリしたの何のって。おまけに延長ハーフタイム直前にはガソリンの尽きたジョアンと交代したモラタがカウンター。敵エリア前でジョレンテにパスを送ったところ、2度目のシュートもゴール枠ギリギリに決まるとは、え、もしかして私、夢でも見ている?

いやあ、もう延長後半はサラー、マネに加え、フィルミノに代わった南野拓実選手、そしてオリジも入り、FW4人体制で逆転に必要となったあと2点を奪いに行ったリバプールでしたが、「Hemos defendido todos a muerte/エモス・デフェンディードー・トードス・ア・ムエルテ/ボクらは全員、死に物狂いで守った」(ジョレンテ)アトレティコは得点を許さず。それどころか、終了間際にはリーガ前節のセビージャ戦で太ももを痛め、その日はコスタに先発を譲って、途中出場したものの、やはりどこかぎこちなかったモラタが今度はジョレンテのパスから独走してるんですよ。

ええ、「Es cierto que estaba un poco tocado/エス・シエルトー・ケ・エスタバ・ウン・ポコ・トカード(ちょっと具合が悪かったのは確か)だけど、スペースがあって走れる時は全部忘れちゃうものさ」(ジョレンテ)とRMカスティージャ育ちの後輩も認めていましたが、そのままモラタが3点目を決めて、最後は2-3の勝利(総合スコア2-4)って、ほとんど詐欺じゃない?

いやあ、アンフィールドでは10年前、やはり1-0で勝利したEL準決勝1stレグの後、2ndレグで延長に入り、フォルランのゴールで2-1として、ハンブルクでの決勝で48年ぶりに国際タイトルを獲得したなんてこともあったんですけどね。シメオネ監督は「Ellos empujando y nosotros sosteniendo y sosteniendo sin salir del plan que teníamos/エジョス・エンプジャンドー・イ・ノソトロス・ソステニエンドー・イ・ソステニエンドー・シン・サリール・デル・プラン・ケ・テニアモス(相手が押してきて、ウチはプラン通り、耐えて耐え抜いた)」と言っていましたが、それも34回もシュートを撃たれ、12回は枠内、そのうち8回を渾身のセーブで防いでくれたオブラクがいてくれてこそ。

実際、「あれだけのサッカー選手を擁して、アトレティコがああいうタイプのプレーをするのが私には理解できない。コケ、サウール、ジョレンテらがいれば、自陣にいてカウンターを狙う以外のサッカーもできるはず」というクロップ監督の言葉はちょっと買いかぶりすぎな気もしますけどね。何はともあれ、「Our first, main mistake tonight was that we scored the second goal too late(ウチの最初で、最大のミスは2点目を入れたのが遅すぎたこと)」(クロップ監督)おかげで、2年ぶりにCL準々決勝に進出できたのはまったくもって喜ばしいかと。

といっても来週火曜の16強対決2ndレグ2試合が延期、その日に開かれるUEFAの会合で次第で水曜の2試合もどうなるかわからないとあって、現在、アタランタ、ライプツィヒ、PSG、そしてアトレティコの4チームだけが勝ち抜け決定している今季のCLがこの先、どうなるか、さっぱりわからないんですけどね。それどころか、3月後半にはプレーオフで残り2枠の出場国が決まるのを待っている6月のユーロ開催も危ぶまれているぐらいですが、こればっかりはねえ。

ちなみに木曜早朝にボロボロに疲れてバラハス空港に着いたアトレティコはリーガ延期の報を幸いとばかり、1週間ばかり、練習休みにする計画だとか。いやあ、木曜のリバプールではコロナウィルス感染者が10人出たということで、タイミング的には早すぎるものの、マドリッドから大量に移動したアトレティコファン由来も疑われているようですし、とうとうサンティアゴ・ベルナベウのスタジアムツアーも中止となった今は私もおとなしく、家にこもっているのが一番かもしれませんね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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