対岸の火事ではなかった…/原ゆみこのマドリッド

2020.02.29 13:30 Sat
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「間が悪いというか、何というか」そんな風に私が眉をしかめていたのは金曜日、EL16強対決組み合わせ抽選でヘタフェがインテルと当たったのを知った時のことでした。いやあ、昨年グループリーグ突破が決まった折など、意気軒高なファンたちが「決勝トーナメントの相手はアヤックスとか、インテルがいい」とCLグループリーグ3位敗退で回って来た有名どころを挙げていたため、その望みは完全に叶ったことになるんですけどね。とにかくコロナウィルスが勢いを振るう今は歓迎できない相手で、だって、感染者の多いミラノで木曜に行われたインテルの32強対決ルドゴレツ戦2ndレグはサン・シーロで無観客試合だったんですよ。

つまりアムステルダムに2500人のファンが応援に行ったアヤックス戦2ndレグのリピートはできず、いえ、少なくともヨハン・クライフ・アレナでホームのサポーターから、ビールの入ったプラスティックカップを大量に投げつけられ、避難しなければならなかった選手の家族や友人たちのような目に遭う恐れはないんですけどね。3月12日の1stレグはルドゴレツのように試合前記者会見も練習公開もなくなり、ヘタフェもチーム全員、マスクをつけてミラノに乗り込まないといけない?

ちなみに同じEL16強組のセビージャも相手がローマに決まったんですが、こちらは1stレグがサンチェス・ピスフサンで行われるため、まあセーフかと。ええ、火曜に同じイタリア南部でナポリと対戦、CL16強対決1stレグをグリーズマンのゴールで1-1に持ち込んで帰って来たバルサも大丈夫のようでしたしね。そんな中、先週サン・シーロを借りて行われたアタランタとの同ラウンドに応援に行ったバレンシアファンから、ウィルス陽性者が数人現れるわ、3月16日にメスタジャで開催される2ndレグにイタリアのホットゾーンである北部在住のアタラタンタファンが大挙押し寄せるのを懸念、早々に無観客開催が決まるわと、ここ数日はスペインでもウィルス感染予防対策が進行。

何せ金曜の朝にはマドリッドでも陽性患者が5人見つかったとかで、そうなると3月19日にコリセウム・アルフォンソ・ペレスで行われるヘタフェvsインテルの2ndレグ開催もどうなるか、危ぶまれるんですが、一説によると、更なる感染拡大の際にはリーガの一時停止なども検討されることになるとか。とりあえず、今週末の26節は前日記者会見やヴィッセル神戸で引退をしたビジャへの表彰行事を取り止めたバレンシアvsベティス戦を含め、予定通り、試合がありますが、セリエA複数試合が無観客開催となったイタリアのようになる前に事態が収束してほしいものです。

え、コロナも心配だけど、今週はレアル・マドリーも大変なことになってしまったんだろうって?その通りで、水曜にはサンティアゴ・ベルナベウでCL16強対決マンチェスター・シティ戦1stレグがあったんですが、いや別にスタジアム入りする選手のバスを迎えるファンの熱狂ぶり(https://bit.ly/39aXkbb)がbengala(ベンガラ/発煙筒)がなかったせいか、先週のリバプール戦にワンダ・メトロポリターノ周辺の空を赤々と染めていたアトレティコファンより、地味だったせいではないと思いますけどね。確かにキックオフ前の垂れ幕とモザイクもフォンド・スール(ゴール裏南側)だけでしたが、それも前人未踏のCL優勝13回を成し遂げているクラブなら、決勝トーナメント初戦など、そこまで力を入れずとも勝てるはずと見なされていたとも解釈できなくはないとはいえ…。

いやあ、スタメンには両チーム共、サプライズがあって、マンチェスター・シティはエースのアグエロが、マドリーはクロースがベンチ待機だったんですが、戦略的には「En el parón estuve diez días viendo al Madrid/エン・エル・パロン・エストゥーベ・ディエス・ディアス・ビエンドー・アル・マドリッド(プレミアリーグの停止期間10日間、マドリーの試合を見ていた)」というグアルディオラ監督に軍配が挙がりましたかね。「彼らはカンプ・ノウでもかなり高い位置でプレスをかけていたから、ウチにもしてくるだろうと、それに対抗するオプションを探した」相手は前半、時間稼ぎのようにゆっくりプレーしていたんですが、29分、せっかくベンゼマのヘッドをGKエデルソンが弾いたボールがいいところに転がってきながら、シュート直前にビニシウスが足を滑らせてしまったのは今、思うとホントに痛かったかと。

そう、30分過ぎにはCBラポルテが太ももを痛め、ボランチのフェルナンジーニョを代理で入れざるを得なくなった相手だったにも関わらず、前半終了直前にはCKから、ガブリエウ・ジェズスのシュートをゴールライン前に並んだセルヒオ・ラモス、カセミロ、バランの3人でようやく防いだりしていましたからね。後半もマフレズの1対1のシュートをGKクルトワが連続して弾き、何とか均衡を保っていたマドリーだったんですが、意外や意外、14分にはビニシウスが敵DFの間を横に縫って送ったパスをイスコが決め、先制点を取ってしまったから、ビックリしたの何のって。

ただねえ、マンチェスター・シティには切り札があったんですよ。それはケガからの復帰が間に合うかどうか懸念されていたスターリングで、グアルディオラ監督は27分に彼を投入。するとその4分後、デ・ブライネがエリア内右奥から上げたクロスをガブリエウ・ジェズスがヘッドで決めて同点に。おまけに37分にはカルバハルがスターリングからボールを奪おうと、エリア内でタックルをかけたところ、タイミングが遅れてペナルティ献上とは、やってくれるじゃないですか。

同僚のベルギー代表守護神をデ・ブラインがPKで破った上、40分には「No hay jugadores en el mundo como él/ノー・アイ・フガドーレス・エン・エル・ムンド・コモ・エル(彼のような選手は世界にいない)。サイドから入った時、止めるのが非常に難しいからね。バラン、ラモス、カセミロ、バルベルデに正面から挑まず済むように彼を選んだ」(グアルディオラ監督)という、ガブリエウ・ジェズスがエリアに1人向かったところ、後ろからキャプテンが倒してしまったから、さあ大変!

いやあ、1点目のゴールの時、ガブリエウ・ジェズスがセルヒオ・ラモスの背を手で押したのがファールにならなにのなら、このプレーもレッドカードには値しないという元審判コメンテーターの意見もあったんですけどね。試合後、ミックスゾーンにただ1人、送り込まれた19才のビニシウスなど、「VAR(ビデオ審判)すら、見に行かなかった。Siempre vienen aquí los árbitros y pitan contra nosotros/シエンプレ・ビエネン・アキー・ロス・アルビトロス・イ・ピタン・コントラ・ノソトロス(いつも審判はウチに不利になるようにジャッジしにここに来る)。ボクらがCLもリーガも一番多く優勝しているチームだからさ」と文句を言っていたんですが、何よりの問題は1-2での敗戦から、3月17日の2ndレグではエティハド・スタジアムで、出場停止となるラモス抜きでの逆転をしないと準々決勝に進めないこと。

いえ、「Si hay un equipo que puede remontar es el Real Madrid/シー・アイ・ウン・エキポ・ケ・プエデ・レモンタール・エル・レアル・マドリッド(逆転できるチームがあるとしたら、それはレアル・マドリー)」というカセミロの意見にも頷けない訳ではないんですけどね。今年に入ってベンゼマはゴール日照り、この日途中出場したベイルもパッとしませんし、足首の骨に再びヒビが入ったアザールが戻る見込みもないとあって、「Nos ha faltado 10 minutos más de concentración/ノス・ア・ファルタードー・ディエス・ミヌートス・マス・デ・コンセントラシオン(ウチはあと10分の集中力が足りなかった)」(ジダン監督)のが高くつかないといいのですが、さて。

それより今、考えないといけないのは、翌日はワンダ・メトロポリターノでチームのリハビリ練習を見ながら、グアルディオラ監督がベルナベウで指揮官として個人最多の11勝目を満喫していたことではなく、この日曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのクラシコ(伝統の一戦)で、何せセティエン監督も昨季までベティスでの2年間、マドリーのホームで連勝していますからね。相手はCLナポリ戦こそ、ガットゥーゾ監督のメッシ封じ込め工作が成功、不発に終わったんですが、まさか天下のマドリーがそんな手を使う訳にはいきませんし、かといって、放っておけば、リーガ前節のエイバル戦のように、1人で4ゴールみたいなことにもなりかねないかと。

もちろん、「El domingo tenemos una gran oportunidad de cambiar esto/エル・ドミンゴ・テネモス・ウナ・グラン・オポルトゥニダッド・デ・カンビアル・エスト(ウチには日曜にこの事態を変えるビッグチャンスがある)」というジダン監督の言葉を疑う訳ではありませんが、ここ3試合ホームゲームで1勝もできず、リーガも2試合白星なしで、勝ち点3上回っていた首位だったのが、あっという間に2差の2位という現状では私もあまり自信を持てず。一応、マドリーではアセンシオとアザールの他にはケガ人はいないんですが、メッシやグリーズマンを警戒しながら、ナポリ戦でのネンザから速攻回復したピケとGKテア・シュテーゲンが立ちはだかるゴールを陥れられるかが、リーガ優勝戦線から脱落しないための鍵となりそうですね。

そして木曜は弟分ヘタフェの番だったんですが、いやあ、先週のコリセウム・アルフォンソ・ペレスでの1stレグの後、去年の夏にアヤックスからバルサに移籍したデ・ヨングの「観客を楽しませるためにプレーしない彼らの試合を見るのは不快だ」という、オランダのメディアへのインタビューのコピーをロッカールームの壁に貼り(https://bit.ly/38bPPzo)、ほとんどの選手が経験のないヨーロッパ名門のホームにおける2ndレグに挑むチームを鼓舞したボルダラス監督の狙いが見事的中したんですよ。

ええ、1stレグで2-0という余裕のスコアにも関わらず、反骨精神を120%に高めてピッチに立った1週間前とおなじスタメン選手たちは前半4分、スローインからデイベルソンがワンタッチで上げたボールを誰より戦うFWのマタがゴール前でゲット。リサンドロ・マルティネスに先んじて虎の子の1点を挙げたとなれば、相手は逆転突破に4点が必要なんですから、もうこっちのものですって。ただ、そこは昨季のCLで準決勝まで進出した後、選手9人の売却で2億ユーロ(約240億円)を稼いだ代わりに弱体化したとはいえ、4回のヨーロッパ制覇を誇るアヤックス。9分にはブリントがゴール前に出したラストパスをダニーロに決められ、同点にされた上、後半18分にはエィティングの放ったFKをオリベラが頭でオウンゴールにしてしまい、2-1と逆転されてしまったんですが、大丈夫。

ヘタフェが昨季の16強対決1stレグではワンダ・メトロポリターノで2-0と勝ちながら、トリノでクリスチアーノ・ロナウドにハットトリックを許し、逆転敗退した兄貴分の轍を踏むことはなく、というか、アヤックスにはそこまでのスーパークラックはいませんからね。2-1で負けたとはいえ、「ウチには3度枠に当たったシュートがあって、不当に取り消されたゴールもあった。Si eso es un equipo defensivo, yo no sé lo que es el fútbol/シー・エソ・エス・ウン・エキポ・デフェンシーボ、ジョ・ノー・セ・ロ・ケ・エス・エル・フトボル(それで守備的なチームと言われるなら、私には何がサッカーなのかわからない)」とボルダラス監督も言っていた通り、総合スコア3-2で突破が決まりましたっけ。

いやあ、2008年にUEFAカップ準々決勝まで行った時には32強対決はAEKアテネ、16強対決はベンフィカを制して、最後はバイエルンと2試合引き分け、総合スコア4-4ながら、アウェイゴールで敗退。当時と比べると、今回はアヤックフ、インテルと最初からハードルが高くなっているのは何ですが、今は彼らもリーガで4位にいるセビージャとたった勝ち点差1の5位という、実力のあるチームですからね。同日夜、VAR判定で敵のゴールが取り消されたおかげで、ルーマニアのクルージュと0-0と引分け、1stレグでの1-1のアウェイゴールがモノを言い、16強に入ったロペテギ監督のチームもホームのファンからpito(ピト/ブーイング)が飛ぶなど、あまり調子が良くないようなので、前節は彼らに0-3で完敗したものの、この日曜のマジョルカ戦は再びヘタフェがCL出場圏に返り咲くチャンスになる?

ただ、実は3位のアトレティコもそのセビージャと勝ち点が同じなのは困ったもんなんですが、この週末はシメオネ監督のチームも降格圏のエスパニョールと日曜午後4時(日本時間午前0時)から、RCDEスタジアムで対戦。相手はELスペイン勢3チーム中、唯一、32強対決で敗退したチームで、まあ、最下位という現状を考えると、アベラルド監督がウォルバーハンプトンとの2試合、どちらも控え選手で挑んだのももっともですけどね。1stレグで4-0と大敗、2ndレグはカレリのハットトリックで3-2と勝ったものの、全然逆転には及ばず、逆に負担が軽くなってホッとしているところでしょうが、ここ2週間、負傷でお休みしていた、この冬にベンフィカから移籍して以来、4試合4得点のラウール・デ・トーマスには用心しないと。

だってえ、アトレティコはここ2年間、アウェイでエスパニョールに2連敗と苦手にしているんですよ。前節こそ、ワンダでビジャレアルに3-1と逆転勝ちしたものの、まだまだ油断はできないかと。ミッドウィークの試合のなかった今週のマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習にはジエゴ・コスタが戻ったものの、先週途中出場したジョアン・フェリックス共々、控えスタートでカラスコが先発に抜擢なんて話も聞きますが、果たしてどうなることやら。トリッピアーの復帰も心強いんですが、金曜はカゼでお休みしていたGKオブラクが試合までに治ってくれるかが、一番気になりますね。

そしてガチで降格圏脱出の戦いに浸っているレガネスは土曜日、ブタルケに1部昇格の恩師、アシエル・ガリターノ監督が率いるアラベスを迎えるんですが、サッカー協会もバルサに長期傷病特例移籍で奪われたブライトワイテに代わるFW補強を認めてくれず。もうカリージョとゲレロで開き直って、ゴールを入れていくしかないんですが、前節にセルタに負けたため、残留ゾーン17位との差が勝ち点5に開いてしまいましたからね。今週末はお隣さんのヘタフェや兄貴分が援護射撃をしてくれるのを祈りつつ、せめてホームゲームでは勝ち点3を貯められるようになってほしいものです。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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