どこも勝てなかった…/原ゆみこのマドリッド

2020.02.18 18:15 Tue
Getty Images
「引っ越し準備なんて、してないといいんだけど」そんな風に私が心配していたのは月曜日、ヘタフェのホームページで練習予定を見たところ、この日がdescanso(デスカンソ/お休み)になっているのに気づいた時のことでした。いやあ、今週は木曜にファンが心待ちにしていたヨーロッパのビッグマッチ、EL32強対決アヤックス戦1stレグがコリセウム・アルフォンソ・ペレスでありますからね。いくら午前中、リーガ協会から、太ももの手術で全治6カ月となったデンベレに代わるべく、移籍市場外補強の許可が出たとはいえ、今日の明日でアンヘルがバルサに行ってしまうとは考えにくいものの、この特例も15日以内という条件付き。
PR
せめて今週と来週のアヤックス連戦が終わるまで待ってほしいところですが、バルサにも来週火曜にはCL16強対決ナポリ戦1stレグもあるため、そうそう悠長にはしていられない?大体がしてこの状況の元凶は、補強対象になるのがリーガに在籍、もしくは失業中の選手のみという縛りの中、ウィリアム・ホセ(レアル・ソシエダ)、ローレン(ベティス)、ルーカス・ペレス(アラベス)ら、候補が所属クラブの強い売却拒否表明や高額移籍金のせいで、次々と脱落していったというのに、アンヘル・トーレス会長だけが妙に移籍に前向き。「契約破棄金額はたったの1000万ユーロ(約12億円)だから」と、今季29試合で14ゴール挙げている32才FWのお得感をアピールしているのもどうかと思うんですが、まさか、当人が誰より効果的なアピールをカンプ・ノウでやってくれるとは!そう、いよいよ補強の本命はアンヘルと報じられるようになった土曜、ヘタフェはバルサ戦に挑んだんですが、これがまた驚きの展開に。前線からプレスをかけ、GKテア・シュテーゲンがプレーを始めるのを邪魔した彼らは前半22分、CKからのホルヘ・モリーナのヘッドは弾かれたものの、ニヨムが押し込んでゴールに入ったんですよ。残念ながら、VAR(ビデオ審判)により、シュート前にニヨムがウムティティにファールしていたことが発覚したため、スコアボードには上がりませんでしたが、これにはクラブ史初のカンプ・ノウでの勝利も夢ではないと期待を持ったファンも多かったかと。
そこに立ちふさがったのは現実の壁で、ええ、後でボルダラス監督も「ウチは世界最高の選手のインスピレーションによって、8分間で試合に負けた」と言っていたんですが、33分、メッシがエリア前から出したスルーパスをグリーズマンがvaselina(バセリーナ/ループシュート)。GKダビド・ソリアの上を抜かれて先制点を奪われると、39分にもメッシが負傷交代したジョルディ・アルバの代わりに入ったフィルポ・ジュニオールに繋ぎ、そのクロスからセルジ・ロベルトに2点目を決められているとなれば、「Nos ha faltado esa calidad que los grandes sí tienen/ノス・ア・ファルタードー・エサ・カリダッド・ケ・ロス・グランデス・シー・ティエネン(ウチにはビッグクラブが持つ質の高さが欠けていた)」(ボルダラス監督)という嘆きも正当化できる?

まあ、その辺はヘタフェで今季絶賛されているククレジャがバルサのカンテラ育ち、トップチームに場所がないおかげでレンタルされた選手で、その彼のボールロストが失点に繋がったプレーなど見ても納得できたりするんですが、後半、ゴールを決める才能がお金持ちチームだけの専売特許ではないことを示してくれたのがアンヘル。ホルヘ・モリーナに代わってピッチに立っていた21分、マタのクロスを完璧なvolea(ボレア/ボレーシュート)でネットに叩き込んだのですから、ビックリしたの何のって。
うーん、これで27分のチャンスにアンヘルの至近距離シュートがテア・シュテーゲンにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されず、更に跳ねたボールをマタが空振りするように払われていなければ、バルサも終盤は劣勢を時間稼ぎでやり過ごそうとしていたこともありますし、引き分けに持ち込めたかもしれなかったんですけどね。先日、エル・パイス(スペインの一般紙)のインタビューでは、「ウチはレガネスの選手でさえ、お金がなくて獲れなかった。昨季レンタルでいたフルキエ(現グラナダ)も買えなかったよ」と打ち明けていたボルダラス監督ですが、それでも雑草のように逞しい選手たちは最後まで根性で反撃。

31才のマタまで、こむら返りを起こす程走って、バルサを追いつめたチームには、監督も「Tiene mucho mérito lo que están haciendo/ティエネ・ムーチョ・メリト・ロ・ケ・エスタン・アシエンドー(彼らがやっていることには大きなメリットがある)」と称賛の言葉しかありませんでしたっけ(最終結果2-1)。まあ、2位3位対決とは言っても別にヘタフェには優勝を狙う義理もないですしね。昨季はあと一歩で届かなかったCL出場圏にこんな時期になってもいられるだけで偉業なんですから、木曜午後6時55分からのアヤックス戦でも名門チームに負けない意地を見せてもらいたいところです。

そして日曜には降格圏脱出に再びチャレンジするレガネスの応援にブタルケへ行った私でしたが、シュート数11と3本のベティスを大幅に上回ったものの、どうしてもゴールが決まらず。それどころか、GKソリアーノがカナレスやアレニャのシュートを弾いてくれなければ、スコアレスドローでの勝ち点1すら、逃しそうでししたが、実は月曜夜になって、お隣さんの災厄が彼らにも飛び火したんですよ。ええ、バルサがFW補強候補の1人にブライトワイテを加え、代理人がバルセロナ入りしたという報が入ったからですが、いやいや。どんなに契約破棄金額2000万ユーロ(約24億円)がレガネスにとって大金だろうと、エン・ネシリをセビージャに同額で獲られた後、唯一残ったエースまで放出したら、きっと経営陣は目先の金に目がくらみ、チームを2部に降格させたというファンからの誹りを免れませんよ。

え、でも夜にセルタと試合したレアル・マドリーも危機にある弟分に援護射撃ができなかったんだろうって?その通りで先発にアザールが復帰したのは喜ばしかったんですが、前半7分にはイアゴ・アスパスのスルーパスから、この冬、ロコモティフ・モスクワから加わったスモロフに決められて、あっさり先制されているのは如何なものかと。敵も前日、久保建英選手が途中出場したマジョルカが1-0でアラベスに勝利、マドリーに負けてしまっては来週、レガネスとの直接対決を迎えるまで、降格圏で過ごさないといけないことをわかっていたせいですかね。5人DF制も効果的だったか、前半は0-1で終わったんですが…。

後半6分のことでした。メンディをベンチに残し、その日、先発に起用されたのを疑問視されていたマルセロが発奮。エリア内奥から送った折り返しのパスをベンゼマは撃てなかったものの、クロースが決めて同点に追いついたのは。おまけに20分にはGKルーベン・ブランコにアザールが倒され、マドリーはPKをゲット。セルヒオ・ラモスが危なげなく沈めて、これで2-1のremontada(レモンターダ/逆転劇)が完成です。

いやあ、そのままマドリーが勝利するだろうとスタンドのファンもホッと胸を撫でおろしたものでしたけどね。そうは問屋が卸さず、11月末に足の骨にヒビが入って以来、初めての出場となったアザールが予定通り、28分にはビニシウスと交代で退き、ラフィーニャに後ろから乱暴なタックルをかけながら、イエローカードで済んだベイルもメンディにバトンタッチした後、シスト、デニス・スアレル、サンティ・ミナと着々とピッチにアタッカーを増やしていたセルタがまたしてもスルーパスに成功。今度はミナがフィニッシュして、土壇場で2-2に追いつかれてしまったとなれば、どうしたらいいんでしょう。

うーん、2度も敵にDFラインの裏を取られてしまったジダン監督は、「Es difícil estar metidos los 90 minutos cada cuatro días/エス・ディフィシル・エスタル・メティードス・ロス・ノベンタ・ミヌートス・カーダ・クアトロ・ディアス(4日おきに90分、集中しているのは難しい)」と言っていましたけどね。コパ・デル・レイを準々決勝で敗退したマドリーの前回の試合は1週間前のオサスナ戦、その時はプレーしてない選手もいるんですから、ちょっとこの言い訳は的外れ。というか、「Estamos primero en la tabla y luego puedes perder puntos/エスタモス・プリメーロ・エン・ラ・タブラ・イ・ルエゴ・プエデス・ペルデル・プントス(ウチは順位表の一番上にいて、それで勝ち点を失うこともできる)」という、それでもバルサより1ポイント上回っている余裕だった?

この日は2度も悔しい思いをしたGKクルトワも「No siempre puedes tener la portería a cero porque si no el fútbol se vuelve aburrido/ノー・シエンプレ・プエデス・テネール・ラ・ポルティリア・ア・セロ・ポルケ・シーノー・エル・フトボル・セ・ブエルベ・アブリードー(いつも失点0という訳にはいかない。そうだったら、サッカーがつまらなくなるじゃないか)」とうそぶいていましたが、クラシコ(伝統の一戦)も次のレバンテ戦の後にやって来ますしね。何より来週は水曜にCLマンチェスター・シティ戦1stレグもサンティアゴ・ベルナベウであるため、早いうちにミスは修正しておいた方がいいんじゃないでしょうか。

そして最後にいよいよ、火曜にはCLリバプール戦1stレグが到来してしまうアトレティコなんですが、ここ毎節、CL出場圏に留まれるかどうかが焦点になっている彼らは先週末、金曜のバレンシア戦で2度もリードしながら、勝利を掴むことができず。いやあ、ここ最近の弟分ヘタフェの頑張りに初心を思い出したか、前気味のプレスで相手を押し込み、前半15分にビトロとコレアが連携、後者のシュートがパウリスタに当たって落ちたところにマルコス・ジョレンテが詰めて先制した時には、負傷から復帰したモラタが控えで、再びCF抜きの布陣だったにも関わらず、いい攻撃ができるようになったじゃないかと喜んでいたんですけどね。

それを台無しにしてくれたのはセットプレーのゆとり守備で、40分にはパレホのCKをファーポストのマキシ・ゴメスに折り返され、パウリスタのヘッドで同点に。その2分後にはトマスのミドルシュートで再度リードしたものの、後半14分には今度はFKから、コンドグビアに両足がもつれたかのようなシュートで2-2にされているとなれば、もう私がGKオブラクだったら、早々に移籍を決意しているかも。

でも彼は辛抱強いんです。終盤もCKから狙われて、2連続パラドンでアトレティコの勝ち点1をキープしてくれた守護神は今季の失点17のうち、8点もセットプレーで取られていながらも「大事なのは集中すること。Si nos colocamos como debemos, seguro que podemos hacerlo mejor/シー・ノス・コロカモス・コモ・デベモス、セグロ・ケ・ポデモス・アセールロ・メホール(やるべきようにボクらが位置につけば、きっともっと上手くできるよ)」とリバプールがピッチを検分した後、ワンダ・メトロポリターノであった前日記者会見で前向きにコメント。

いやもう、チームのバラハス空港到着が遅れ、それこそ昨季、1stレグで3-0と勝利していたバルサを逆転敗退に導いたアンフィールドでの4点目、速攻CKでオリジのゴールに繋げた曲者アーノルドがビジターチームの記者会見に現れたため、ワンダのピッチを散策するサラー、マネ、フィルミノら自慢の3弾頭、更には招集リストに入った南野拓実選手の姿を見ることは私もできなかったんですけどね(https://bit.ly/2UVvWK9)。クロップ監督も「100%を出して、全力で戦わないといけないチームがあるとすれば、それはアトレティコ」と言ってくれていたんですが、CL決勝に2年連続で出場。昨季はそれこそ、このスタジアムでトッテナムを0-2と圧倒して優勝杯を掲げた相手となれば、そんなの社交辞令にしか聞こえませんって。

実際、アトレティコは午前中の練習でようやくジエゴ・コスタにalta medica/アルタ・メディカ(全快通知)が出て、前日合宿に参加できることになったものの、相変わらずジョアン・フェリックスはリハビリ中。トリッピアーとエレーラもまだなのはともかく、バレンシア戦ではフィリペ・ルイス(現フラメンゴ)とリュカ・エルナンデス(同バイエルン)のいない左SBも大問題なのが大バレでしたからね。ええ、ロディとサウールの2人がかりでもフェラン・トーレスを止められず、前者がイエローカードをもらっていたのを懸念して、右SHのアリアスを左に回せば攻撃力が低下。最後は使い古された奥の手、サウールを使ったところ、シメオネ監督の目の前で相手に置いて行かれているとなれば、一体、誰がサラーを押さえてくれるのでしょう。

いえ、「No veo pesimismo, veo optimismo e ilusión/ノー・ベオ・ペシミスモ、ベオ・オプティミスモ・エ・イルシオン(悲観的には見えない。楽観的だし、希望に燃えているように見えるよ)」とシメオネ監督は話していましたけどね。世間一般も勝ち抜け候補はリバプール一択、顔馴染みの番記者たちからも勇気づけられるような話が聞こえてこなかったのは私も辛いんですが…そんなリバプール戦は火曜午後9時(日本時間翌午前5時)からキックオフ。昨季、同ラウンドでユベントスに2-0と先勝した時のように(2ndレグで逆転されたのはまた後で反省することにして)、何とか2ndレグに繋げられる結果を出してくれたらと思います。

PR

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly