コパはまだ終わってないけど…/原ゆみこのマドリッド

2020.02.11 17:00 Tue
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「今週はゆっくりできるわね」そんな風に私が気を緩めていたのは月曜日、先週の準々決勝でコパ・デル・レイ、マドリッド勢唯一の生き残りだったレアル・マドリーが敗退してしまったため、水木は自宅でクアトロ(スペインのオープン民放)が中継してくれるアスレティックvsミランデス、レアル・ソシエダvsグラナダの準決勝1stレグを眺めていればいいことに気がついた時のことでした。いやあ、実はコパ敗退のトバッチリというのもあって、最初は土曜に予定されていたバレンシアvsアトレティコ戦が金曜午後9時(日本時間翌午前5時)に繰り上げ。共々、来週ミッドウィークにはCL16強対決1stレグが入っているため、休養日を増やすことで利害が一致したという事情もあるようなんですけどね。

ただお休みを1日長く取ったからといって、アトレティコの状況が改善するかと言えば、難しいところで、どうしてそうなのか、まずは先週末のリーガの試合を振り返ってみることにすると。土曜日、トップバッターとして午後1時からキックオフしたのは弟分のレガネスだったんですが、せっかく前節は土壇場でレアル・ソシエダにオスカルの秀逸FKゴールで2-1と勝ち、降格圏脱出まであと一息と迫りながら、シュタット・デ・バレンシアではレベンテに2-0と完敗。ええ、だらしない方の兄貴分の悪い癖が伝染ったか、眠ったままピッチに出た前半にロチーナとロジェルにゴールを奪われ、後半の反撃も空しく、今季のアウェイ白星はまたお預けになることに。

まあ、残留争いについては前節、レガネスからこの冬、電撃移籍をしたエン・ネシリが初ゴールを決めたセビージャを後半ロスタイムにシストのゴールでセルタが2-1と逆転勝利。17位とレッドゾーンを抜け出し、エスパニョールもラウール・デ・トマスがベンフィカから加入後、自身4得点目を挙げてマジョルカに1-0で勝利と、その結果、18位マジョルカ、19位レガネス、20位エスパニョールが3者、勝ち点18で並ぶことになったんですけどね。今週末、日曜にベティスをブタルケに迎える試合で勝てば、レガネスにも再び浮上のチャンスが巡ってくるはずですが、リーガ残り15試合、この調子だと、残留1席を4チームが争うことになりそうですね。

ちなみにその日、私は午後4時から、コリセウム・アルフォンソ・ペレスでヘタフェの試合を見ていたんですが、どうやら相手のバレンシアは先週、コパ準々決勝でグラナダに負けたショックがまだ尾を引いていたよう。前半が0-0に終わったのもひとえにGKドメネクのおかげで、そのささやかな抵抗も後半13分までのことでした。ええ、マタのシュートは弾かれたものの、こぼれたボールを詰めていたホルヘ・モリーナが決めて、とうとうヘタフェが先制点を取ることに。続く22分にも38才のエースがハッスル、ゴール前で3人の敵に囲まれながら、フェイントで器用にかわして2点目を挙げているって、いやもう、これにはスタンドを埋めたファンも脱帽するしかありませんって。

その後、ホルヘ・モリーナは30分過ぎに大きなオベーションを浴びてアンヘルと交代。シュートなどとても撃てる状態になかったバレンシアを前に2-0は安全圏であったものの、ヘタフェのFW30代トリオはあくまで貪欲です。42分にはアンヘルが抜け出すと、エリア内でその日、何度もトライしながら、得点を挙げることのできなかったマタにラストパス。3点目のゴールをプレゼントしているんですから、本当にこのチームの選手たちは気遣いができる。これでサン・マメスでのアスレティク戦に続き、リーグの名門に2連勝となれば、「Un equipo no va tercero por suerte, ni casualidad ni por jugar al límite del reglamento/ウン・エキポ・ノー・バ・テルセーロ・ポル・スエルテ、ニ・カスアリダッド・ニ・ポル・フガール・アル・リミテ・デル・レグラメント(チームが3位につけているのは運だけじゃなくて、偶然でもなくて、ルールギリギリでプレーするからでもない)」とバレンシアのロドリゴが認めていたのも当然だった?

うーん、試合後すぐ、ピッチでインタビューに答えていたパウリスタによると、「Ellos han sido más hombres. En general ha sido una mierda todo/エジョス・アン・シドー・マス・オンブレス。エン・ヘネラル・ア・シードー・ウナ・ミエルダ・トードー(相手の方がずっと男だった。全般的にウチはクソみたいだった)」とどうやら、バレンシアの落ち込みぶりは半端なかったようなんですけどね。それでもこれで勝ち点42となったヘタフェは、ボルダラス監督も「Hemos alcanzado nuestro objetivo virtualmente/エモス・アルカンサードー・ヌエストロ・オブヘティーボ・ビルトゥアルメンテ(ウチは実質的に目標を達成した)」と言っていた通り、ほぼ残留が確定。土曜にカンプ・ノウへ乗り込むバルサ戦、そして来週木曜のEL32強対決アヤックス戦1stレグに心おきなく挑めるようになったのは朗報ですよね。

そしてコリセウムを後にして、セルカニアス(国鉄近郊路線)とメトロを乗り継いでワンダ・メトロポリターノに向かった私だったんですが、凄いですよ、アトレティコのファンも。このところ5試合連続白星なしと、絶不調に見舞われているチームを励まそうと、いえ、客の入りを懸念したクラブがソシオ(協賛会員)向けに10ユーロ(約1200円)からという激安チケットを用意したおかげもあったんですけどね。グラナダ相手の普通のリーガ戦だったにも関わらず、フォンド・スール(南側ゴール裏席)の応援団が赤白の垂れ幕を用意。「Contigo Hasta Morir/コンティーゴ・アスタ・モリール(死ぬまで君たちと)」という横断幕にはいつも「2部Bに行ってもついていく」と歌っているエスタディオ・バジェカスのラージョファンを思い出して、ちょっと背筋が寒くなったんですが、いや、本当にお寒いのはチームのプレーの方だった?

でも、立ち上がりは良かったんですよ。51年ぶりのコパ準決勝に備え、GKをルイ・シウバからアーロンに代えるなど、戦力を温存してきたグラナダに対して、スペイン・スーパーカップ準決勝で20分プレーしただけで再び負傷して、姿を消していたコケが戻ってきたアトレティコは開始5分、サウールの投げたスルーインをキャプテンがコレアに繋いで先制点をゲット。リーガ戦4試合ぶりに入ったゴールに場内も歓喜したんですが、それからがねえ。前半はともかく、何度かのカウンターが失敗した後など、どんどんチームが引いてしまい、後半にはシメオネ監督がロディを下げ、サウールを左SBに、カラスコをfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/何となくCFの位置にいるMF)体制にしたのも混乱を助長したんですかね。グラナダに攻め込まれている姿には、いつ同点にされるかと生きた心地もしなかったかと。

でも大丈夫。アトレティコには守護神オブラクがいるんです。最大のピンチ、26分にソルダードが繰り出した空中taconazo(タコナソ/ヒールキック)からのシュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)で弾き、いやあ、こぼれ球をサビッチが真っすぐグラナダの選手に向けてクリアするのを見た日には、さすがの彼もクラクラしたんじゃないかと思いますけどね。幸いヤンヘル・エレーラのシュートはサウールの足に当たってくれたため、ゴールは破られず。残り5分にはコケに代わり、レマルがスタンドからpito(ピト/ブーイング)を浴びてピッチに入ったんですが、致命的な守備ミスを犯すことはなく、そのまま試合は1-0で終わってくれたから、ありがたかったの何のって。

この勝利で順位が4位に戻り、翌日はセビージャが負けてくれたため、弟分に上を行かれているのは変わりませんが、そのままCL圏内で1週間を過ごせることになったアトレティコなんですけどね。やはり試合後の記者会見ではどうしてあんなにチームが後ずさりしてしまうのかが、質問の焦点に。シメオネ監督曰く、「Necesitábamos ganar ante todo y eso genera ansiedad/ネセシタモス・ガナール・アンテ・トードー・イ・エソ・ヘネラ・アンシエダッド(ウチはとにかく勝利を必要としていて、それが焦燥感を生んだ)」そうなんですが、傑作だったのはコレア。ええ、「Cuando marcamos, que nos cuesta, nos echamos atrás solos y no sabemos por qué/クアンドー・マルカモス、ケ・ノス・クエスタ、ノス・エチャモス・アトラス・ソロス・イ・ノー・サベモス・ポル・ケ(得点すると、それがウチには大変なんだけど、ボクらはひとりでに後ろに下がってしまう。何でだかはわからない)」って、もしやそれ、脊髄にしみついた反射行動ってこと?

一応、コケなどは「ボクらが下がる時もあれば、相手に押し込まれることもある。グラナダがポジティブな流れに乗ったんだよ」と自分たちの責任でないことを強調していましたけどね。1-0をガッチリ守ってリーガ優勝を遂げた2014年とは違い、昨今では守備のポカもちょくちょくある彼らだけにできれば、敵には遠くにいてもらいたいと願うのはオブラクと私だけではない?こんな状態でおそらく、まだジエゴ・コスタもモラタもジョアン・フェリックスもリハビリが終わらず、きっと心を入れ替えてくるであろうバレンシアとメスタジャで金曜午後9時から対戦とは不安で仕方ありませんが、うーん、やっぱり一番怖いのは来週火曜のCLリバプール戦ですよね。

変わって日曜には正午から、アルコルコンとデポルティーボの2部のリーガ戦があったため、アトーチャ駅からセルカニアスに乗って、ラス・タマラス駅から歩いてすぐのサント・ドミンゴまで足を向けてみた私だったんですが、いや何と、後半ロスタイムにコバルトブルーの横縞ユニに身を包んだ柴崎岳選手が横に蹴ったFKをケコがクロス、それをコネがヘッドで決めて、土壇場でデポルティーボが0-1の勝利をもぎ取るという劇的な幕切れを目の当たりにすることに。いえ、全体的に試合はアルコルコンが押していて、何度もあったチャンスを決めきれなかったため、スコアレスドローで終わりそうな気配だったんですけどね。

これはもう勢いと言っていいか、シーズン序盤から、最下位でいた時期もあったデポルティーボでしたが、フェルナンド・バスケス監督が3人目の指揮官として12月末に就任して以来、破竹の7連勝。いつも間にやら、順位も14位となり、昇格プレーオフ圏内の6位までも勝ち点差7となれば、前日、もう1つのマドリッドの2部の弟分、フエンラブラダと0-0で分けた試合の前半、ハムストリングスのケガで途中交代した3位サラゴサの香川真司選手、ジローナに1-0で負けた4位ウエスカで途中出場した岡崎慎司選手らと、昇格争いで柴崎選手が競える日も来るかも。

え、それより本題はコパ敗退したばかりのマドリーがエル・サダルで立ち直れたかどうかだろうって? そうですね、開始から猛攻をかけてきたオサスナが1分もしないうちからシュートを撃ち始め、3度目の正直ではルベン・ガルシアの一撃をGKクルトワがセーブ。その時はヒヤリとさせられただけでしたが、13分にはとうとうCKから、ウナイ・ガルシアがヘッドで先制点を奪ってしまったから、さあ大変!でもコパのレアル・ソシエダ戦と違って、この日のマドリーは目覚めるのも早かったんですよ。

ええ、32分にはメンディのクロスが敵DFに当たり、目の前に転がってきた5試合ぶりに試合に呼ばれたベイルのシュートは方向が合っていなかったんですが、いいところにいたのはイスコ。タイミングばっちりのvolea(ボレア/ボレーシュート)を撃ち込んで、まずは同点とします。更にその6分後にはCKから、カセミロが頭で繋ぎ、セルヒオ・ラモスが得意のヘッドで勝ち越し点をゲット。いやあ、彼はマドリーにゴールが入り始める前、ルベン・ガルシアにレッドカード相当の激しいタックルをかませながら、VAR(ビデオ審判)の介入もなく、審判のお咎めなしで済んだという経緯がありましたからね。

その怒りを忘れていなかったスタンドのオサスナファンたちから、ブーングどころか、ライターまで飛んできていたのは気の毒でしたが、選手たちに被害がなかったのは不幸中の幸い。スコアは後半の大部分もそのまま、動かなかったんですが、「El Real Madrid es un rodillo/エル・レアル・マドリッド・エス・ウン・ロディージョ(マドリーはローラー車)。限界まで連れてかれて、最後の10分、ウチはクタクタだった」(アラサーテ監督)オサスナの消耗を利用して、39分にはベンゼマがベイルと代わったルーカス・バスケスにアシストして3点目、ロスタイム2分にはモドリッチの浮き球のパスから、バルベルデがヨビッチに繋ぎ、嬉しいマドリーでの当人2つ目のゴールと、最後は1-4の大勝ですから、マドリーのリーガでの強さに陰りはないと言っていいかと。

試合後はルーカス・バスケスも「他の年はこういうスタジアムで勝つのに苦労して、ahí era donde tirábamos LaLiga/アイー・エラ・ドンデ・ティラバモス・ラ・リーガ(そこでリーガ優勝を逃していた)」と言っていた通り、オサスナのようにホームで強いチームから勝ち点3を得るのは貴重ですからね。その日はバルサもベティスに2-3と逆転勝利したため、1位と2位の差は勝ち点3で変わらなかったものの、今の調子を勝ち続けるのが何よりかと。そう、コパでのクラシコ(伝統の一戦)は実現しなかったとはいえ、この日曜のセルタ戦、来週末のレバンテ戦、そして後発組のCL16強対決マンチェスター・シティ戦1stレグが終わったら、いよいよシーズン後半のクラシコが3月1日にサンティアゴ・ベルナベウでありますからね。とりあえず、今のところ、リーガはマドリーとバルサの首位争い、ヘタフェとアトレティコの3、4位争いが注目になりますかね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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