ゴールに縁のないチームは1つだけ…/原ゆみこのマドリッド

2020.02.04 17:00 Tue
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「同じ少数精鋭でもえらい違いね」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、レバンテに2-1で勝ったバルサのマッチレポートを見たところ、試合前に聞いていた通り、18人のベンチ入りメンバーのうち、トップチームの選手が15人しかいないのを確認した時のことでした。いえ、現在、最悪の負傷禍に見舞われているアトレティコも状況は似たり寄ったりだったとはいえ、メッシがいるといないのでは雲泥の差。そのアシストがあってこそ、バルサB所属の17才、アンス・ファティが2ゴールを挙げ、首位レアル・マドリーとの勝ち点差3を保てたとも言えますけどね。

だってえ、同じくアトレティコBの18才、カメージョもトップチームで嬉しいマドリーダービー初舞台を踏んだものの、悲しいことにバロンドールを6回も獲っている先輩のヘルプなんて望むべくもなし。シュートする機会すらもらえず、お隣さんとの差はとうとう勝ち点13になるわ、翌日正午、カナリア諸島で行わるラス・パルマス・アトレティコとの2部Bリーガ戦にまで駆り出され、そちらでも1-0で負けているわって、本当に人生とは過酷。それとも当人はこのままFW不足が続けば、猫の手も借りたいシメオネ監督に重宝されて、もしかしたらCLリバプール戦のピッチにも立てるかもと夢見ているのか。とにかく誰であれ、ゴールを決めてくれる選手が現れてくれることを今は私も祈るしかないんですが…。

そう、土曜はサンティアゴ・ベルナベウでダービーだったんですが、これがまた両チームの選手層の厚さの違いを見せつけられる試合で、いえ、ジダン監督がスタメンをMF5人体制にしてくれたおかげで、前半こそ、アトレティコは苦しまずに済んだんですけどね。というのもFWが1人だけで、その後ろにイスコ、バルベルデ、モドリッチ、クロース、カセミロが並ぶというのは先日のスペイン・スーパーカップ決勝でもマドリーが採用。ヨビッチがベンゼマになったとて、あの延長戦を含めた120分を無失点で抑えきったアトレティコがそうそう、ミスする訳ありませんって。

でもねえ、いくら優勢を利用して攻めていったとて、ビトロのシュートはGKクルトワの正面へ。コレアの一撃はゴールポストで逸れるといった具合でやっぱり、ゴールが入らないんですよ。更には30分、モラタがカセミロにエリア内で倒されても審判はスルー、VAR(ビデオ審判)もペナルティがあったかどうか、チェックしてくれないなんて、いえ、真ん前の特等席でそのプレーを見ていたクルトワは「Morata se tropieza con sus propias piernas/モラタ・セ・トロピエサ・コン・スス・プロピアス・ピエルナス(モラタは自分の足をもつれさせたんだよ)。VARが何も言わなかったんだから、何もなかったってことさ」と言っていましたけどね。

いくらモラタだって、カセミロの足で邪魔されなかったら、転んだりはしなかったと思いますが、この日の彼が襲われた不幸はこれだけにあらず。ええ、アトレティコの選手として、初めて古巣のベルナベウを訪れたところ、マドリーファンたちから、「Morata, eres una rata/モラタ、エレス・ウナ・ラタ(モラタ、お前はドブネズミだ)」と歌われてしまったからですが、まあ、クルトワなんて、ワンダ・メトロポリターノの前にあるアトレティコで100試合以上出場選手を記念するプレートにイケアのミニネズミ人形(1ユーロ)を積まれる体験をしていますからね。モラタはマドリーで93試合しか出場していませんし、そもそもこちらには記念プレートもないため、カンティコだけで済んでまだ良かったんじゃないでしょうか。

でも本物の不幸はそんなことじゃなかったんです!0-0のままハーフタイムが来て先に手を打ったのは、「No estaba contento con lo que estaba viendo en el campo/ノー・エスタバ・コンテントー・コン・ロ・ケ・エスタバ・ビエンドー・エン・エル・カンポ(ピッチで起きていることに満足していなかった)」というジダン監督。もちろん控え選手にも良いカードを沢山持っているとはいえ、彼にしてみれば珍しく、後半頭から、クロースとイスコを下げて、ビニシウスとルーカス・バスケスの投入で4-3-3に切り替えるとはまったくもって潔い。対するシメオネ監督はと見ていれば、え?どうして後半5分にモラタをレマルに、そう、1月の移籍市場でカバーニ(PSG)を迎えるため、売却要員となっていた選手に代える?

まあ、タネを明かせば、要はモラタがふくらはぎをケガしてしまったからなんですけどね。もうこなってはあと残り40分、「La lesión de Morata fue una cosa sorprendente/ラ・レシオン・デ・モラタ・フエ・ウナ・コーサ・ソルプレンデンテ(モラタのケガは驚かされることだった)」(サビッチ)というアトレティコの選手たちも死ぬ気で守り倒すしかないと思っていたはずですが…それからすぐ、11分のことですよ。ようやくヒザの靭帯断裂から回復、こちらも放出予定だったところ、トリッピアーとアリアスの同時負傷により、前節から右SBのスタメンとなったベルサイコがビニシウスにスルーパスを通され、レマルもメンディのラストパスを止められず、ゴール前に突っ込んで来たベンゼマに先制ゴールを決められてしまったのは!

もうしょうがないですよね。リードされた後、反撃をすべくシメオネ監督がピッチに送り込んだのは前日に大連一方から出戻りレンタル移籍が決まった、昨年12月に中国スーパーリーグ終了後、バケーションしていたカラスコにカンテラーノのカメージョとなれば、そのまま1-0で負けてしまっても。結局、使われることのなかったFWサポンジッチにしろ、つい最近までデビューすらしていなかった選手ですしね。

ジエゴ・コスタに加え、ジョアン・フェリックス、コケ、当日にはエレーラまでが筋肉痛で招集外と攻撃陣にそれ以上のオプションがある訳もないとなれば、まったく違うシステムを異なる才能のある選手で実行可能なお隣さんに大きく水を開けられ、とうとう「Hasta que no esté matemáticamente perdida LaLiga seguiremos luchando/アスタ・ケ・ノー・エステ・マテマティカメンテ・ペルディーダ・ラ・リーガ・セギレモス・ルチャンドー(数字的に優勝が無理になるまで、リーガを戦い続ける)」(マルコス・ジョレンテ)とまあ、まるでシーズン末期のような台詞を聞く破目になったのも致し方ないところかもしれませんって。

え、ベルナベウの観客が試合の終盤に「Cholo no te vayas, Cholo quédate!/チョロ・ノー・テ・バジャス、チョロ・ケダテ(シメオネ監督、行かないで。続投して)」と歌っていたのはどういう意味なのかって?いやあ、単なる嫌がらせでしょうが、一理がない訳でもなく、いえ、カバーニ獲得が失敗した事情は代理人を務める兄弟が法外なコミッションを要求(アトレティコ側)orPSGと最後まで移籍金額が折り合わなかった(カバーニ側)と水掛け論的展開になっているため、真相はわからないんですけどね。世界一高い年棒をもらうシメオネ監督とそこそこ高給な選手たちのせいで、ここ数年のアトレティコはサラリーキャップ枠がギリギリ、このままだと来季も少数精鋭路線から変われないことに。となればまた、負傷者の大量発生が起ころうもんなら、一気に戦力が弱まることになるため、マドリーファンも目障りなライバルが減って嬉しいのかもしれませんが…。

そして日曜の正午にはブタルケにレガネスの応援に行った私でしたが、相手はヨーロッパの大会出場圏を狙うレアル・ソシエダ。アトレティコとの兄弟ダービーで退場したGKクエジェルが出場停止で、スタメンとなったソリアーノが前半20分、ゴールキックをサンガリに向けて蹴ってしまい、今季売り出し中のスウェーデン人FW、20才のイサクに先制点を決められてしまった時には頭を抱えたものですが、大丈夫。後半5分には左からのクロスをエリア内に頭で落としたオメロウがブライトワイテのヘルプもあって、同点ゴールをゲット。そこでイマノル監督も木曜のコパ・デル・レイ準々決勝マドリー戦に備え、温存していたウーデゴーアや冬の市場が閉まるまでトッテナム移籍の可能性があったため、出場を自粛していたウィリアム・ホセらを投入したんですが、どちらのチームにも一向に勝ち越し点は生まれません。

それこそ試合は、「Era un 1-1 seguro/エラ・ウン・ウノ・ウノ・セグロ(絶対、1-1の引き分けだった)」(アギーレ監督)という方向に進んでいたんですが、ロスタイム4分にレガネスにエリア正面、近い位置からのFKが与えられたんですよ。キッカーに立ったのは後半35分からピッチに入ったオスカル。そういえば、いつだかこのマドリーからレンタル2年目の選手、凄いFKゴールを入れていたなとうっすら私が思い出していたところ、あらまあ。この日もボールがゴール右隅に見事に吸い込まれ、土壇場でレガネスの勝利が決まってしまったから、ビックリしたの何のって。

それもそのはず、去年12月のセルタ戦でもオスカルがFKを直接決めていたのを私はブタルケで目撃していたんですが、このゴールで2-1とし、勝ち点3を獲得。18位のマジョルカと並んだとなれば、ファンが「Leganes es de la primera/レガネス・エス・デ・ラ・プリメーラ(レガネスは1部のチーム)」と大合唱していたのもわかるかと。うーん、試合前、スタジアムのある丘を上がっていく間、横を歩いていた男の子が連れのお祖父さんに「残留は難しそうだね」と言っているのを聞いて、結構、ファンは現実的なんだと知った私だったんですけどね。エン・ネシリがセビージャに電撃移籍してしまっても1月末日には3人のFWをレンタルで補強できましたし、ようやくコパがなくなったため、1週間丸々土曜のレバンテ戦に向けて準備できるのもアギーレ監督には好都合かもしれません。

一方、予想外の躓きをしてしまったレアル・ソシエダなんですが、主力選手を休ませるという目的は達成。木曜午後7時(日本時間翌午前3時)からのマドリー戦にはオジャルサバル、ウーデゴーア、ウィリアム・ホセと強力なアタッカーたちを並べてくるはずですが、何せ相手にはマドリーダービーのベンチに入らなかったベイル、ロドリゴもいますからね。おまけに11月からずっとリハビリだったアザールも復帰できるかもしれないとなれば、まさに会場も敵地、サンティアゴ・ベルナベウ。やはり、ちょっと分が悪いような気はしますが、このコパ準々決勝も一発勝負だけに何が起きるか、わかりませんよ。

え、それで栄えあるマドリッド勢2番目のCL出場圏チームはどうだったのかって?いやあ、前節、とうとう兄貴分のアトレティコを抜いて、堂々4位に上がったヘタフェなんですが、これがまた、手がつけられない程、強くなっちゃったよう。ボルダラス監督がまだ1度も勝ったことのないサン・マメスに乗り込んでのアスレティック戦では前半37分、ダミアンがマタ、デイベルソンとの連続ワンツーから、先制ゴールを挙げることに。後半6分にもエリア内でニヨムのクロスがレクエの腕に当たっていたことが後付けでVARに指摘され、マタのPKで2点目を奪ったとなれば、ボールポゼッションが29%しかなくたって全然、支障はない?

うーん、ヘタフェは前節のベティス戦でもアンヘルがPKを決め、1-0で勝利と、VAR運に恵まれているのも羨ましいんですけどね。こちらも相手はコパ生き残り組で先週はテネリフェ(2部)と延長PK戦、この木曜にはバルサと準々決勝を戦うとあって、リーガに集中できないところもあったんでしょうが、試合後には「Una vez que va por delante se juega muy poco a fútbol/ウナ・ベス・ケ・バ・ポル・デランテ・セ・フエガ・ムイ・ポコ・ア・フトボル(一旦、リードした後はほとんどサッカーをしてない)。前半なんて、いいとこ19分間プレーしただけ」(ジェライ)、「Al final, uno se caía al suelo, se perdía tiempo/アル・フィナル、ウノ・セ・カイア・アル・スエロ、セ・ペルディア・ティエンポ(最後は誰かが地面に倒れて時間稼ぎ)。ファール1つに1分ムダにして、こちらのリズムを崩してきた」(ムニアイン)といった文句もチラホラと。

でもそんなのいいんです。だってサッカーの世界では勝利が正義だから。おかげでアラベスと引分けたセビージャを抜き、今や3位になったとなれば、ボルダラス監督が「Da satisfacción mirar la clasificación, sobre todo por los puntos que temenos/ダ・サティスファクシオン・ミラール・ラ・クラシフィカシオン、ソブレ・トードー・ポル・ロス・プントス・ケ・テネモス(順位表を見て満足を覚える。とりわけウチの稼いだ勝ち点のおかげでね)」と破顔一笑していたのも当然だったかと。いやあ、1月にはカブレラが突如、エスパニョールに行ってしまったなんてショックもあったヘタフェなんですけどね。コパを2回戦で早々に敗退したせいか、ここ3週間、毎日3時間の練習をしているそうで、レギュラーCBを引き継いだエチェイタもジェネと安心の守備を披露して、ここ2試合無失点ですしね。

次節、コリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎える相手もこの火曜、グラナダとのコパ準々決勝を戦わないといけないバレンシアとあって、更にヘタフェの躍進は続きそうな気がしますが、さて。そんな威勢のいい弟分と比べ、順位も6位とかろうじてEL出場圏内に引っかかっただけのアトレティコは折りしも今週末、土曜にワンダでグラナダ戦なんですが…モラタはふくらはぎの負傷でお休み、戻って来れそうなのはコケとエレーラだけという寂しい見通しとなると、本当に今季はCL出場権を獲得できるのか、そろそろファンも不安になってきているところじゃないでしょうか。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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