もうマドリーしかコパにはいない…/原ゆみこのマドリッド

2020.02.01 20:00 Sat
Getty Images
「カバーニがカラスコになるって、どういうこと?」そんな風に私が狐につままれた気分を味わっていたのは金曜日、一時はアトレティコ入りが決まったも同然と言われていたウルグアイ人CFとの交渉が決裂したそうで、いやあ、PSGへの移籍金オファーは当初の500万ユーロ(約6億円)から、オプション付きの1500万ユーロ(約18億円)まで引き上げたようなんですけどね。最後の最後になって、代理人を務めるカバーニの兄弟が法外なコミッションを要求したからという理由はクラブの懐も厳しい折、納得できなくもないかと。

それが一転、2年前の2月、シメオネ監督のプレースタイルに馴染めなかったせいもありますが、24才という若さで大連一方に行ってしまったカラスコのレンタル移籍による帰還が決まったって、いやだって、中国スーパーリーグは昨年11月で終了。数日前にはスペイン人のホセ・ゴンサレス監督が率いる武漢卓爾がマルベジャ(スペイン南部のビーチリゾート)でプレシーズンキャンプをするために到着し、それこそ現在、大流行中の新型コロナウィルス発症の地から来たチームということで話題になっていましたが、中国スーパーリーグそのものも2月22日の開幕予定が延期に。要はカラスコも金曜にマハダオンダ(マドリッド郊外)の練習場でのセッションに参加するまで、思いっきりバケーション中だったってことでは?
それでも悲しいかな、「休暇では80キロぐらいになる」と言っていたベルギー代表の同僚、アザール程、太っている感じはしませんが(https://bit.ly/2tfxhzR)、シメオネ監督も「Sin duda que nos acompañará/シン・ドゥーダ・ケ・ノス・アコンパニャラ(招集されるのは間違いない)」と言っていた通り、とにかく今は猫の手も借りたいアトレティコですからね。前節レガネスとの兄弟分ダービーで右脚を負傷し、今週の早いうちにはマドリーダービー欠場が決まったジョアン・フェリックスに代わり、カバーニがサンティアゴ・ベルナベウでデビュー、スペイン・スーパーカップ決勝のリベンジゴールを決めてくれるかもと、淡い夢を抱いていたファンもいたかもしれませんが、随分と違うオチになってしまいましたっけ。

え、マドリーダービーもあるけど、まずは今週ミッドウィークのコパ・デル・レイ16強対決がどうなったのか知りたいって?そうですね、マドリッド勢が登場したのは水曜からで、先にキックオフとなったのは2部の弟分ラージョ。ビジャレアルをエスタディオ・デ・バジェカスに迎え、終盤まで押していたようですが、残念ながら、カテゴリーの差が如実に決定力に反映することに。ええ、後半38分には先週、コパの前ラウンドだったジローナ(2部)戦でデビュー。週末にはアラベス戦で初ゴールを挙げた19才のフェルナンド・ニーニョに先制点を奪われると、その2分後には35才のベテラン、カソルラにも決められて、そのまま0-2で敗退です。

いやまあ、先週のベティス戦など、延長、PK戦というしんどい試合でしたし、リーガでラージョは11位とあまり振るっていませんからね。それでも消化試合が1つ少ない状態で、昇格プレーオフ圏内の6位まで勝ち点差3とあって、この日曜のミランデス戦を皮切りに1部復帰への戦いに集中できるようになったのは良いかと思いますが、まさか木曜にはそのミランデスがセビージャに3-1と、世間をあっと言わせる下剋上勝利。偶然もいいところで、来週はラージョを倒したビジャレアルとコパ準々決勝を戦うことになったんですが、これで相手の気が散ってくれるかもしれないのはパコ・ヘメス監督にとってもありがたいんじゃないでしょうか。
そしてその後の時間帯でレアル・マドリーがプレーしたんですが、うーん、サラゴサのビクトル・フェルナンデス監督など、もっとあからさまで、試合前から1位カディスとのリーガ上位対決の方を重要視していることを隠していませんでしたからね。7年ぶりにマドリーをラ・ロマレダに迎え、しかも過去、決勝や準決勝で大金星を掴んだコパの舞台とあって、スタンドのファンはイムノ(クラブ歌)をアカペラで合唱、完璧なビッグマッチ態勢で迎えたものの、スタメンとしてピッチに立ったのは控え選手が多かったとなれば、前半6分に呆気なく、先制点を許してしまったのも仕方なかった?

そう、クロースがCKを上げずに短く出した後、カルバハルから受け取ってエリア内でラストパス。ニアポストにいたビニシウスが触り損ねたため、オフサイドを取られずにファーポストにいたバランがフリーで撃ち込んで、ゴールになっているのですから、まったく最近の彼らは油断も隙もないじゃないですか。おまけにこのところ、やたら好調なクロースは31分にもルーカス・バスケスにアシスト。2点目が入ったため、大体、試合の方向は定まったんですが、ようやくビクトル・フェルナンデス監督も後半12分には重い腰を上げることに。

それは今季、ここまで14得点しているエース、ルイス・スアレスの投入で、いえ、彼はバルサのFWと同姓同名ですが、ウルグアイ人ではなく、22才のコロンビア人なんですけどね。おかげで前半も2本シュートを撃ち、うち1つはGKアレオラに弾かれるなど、サラゴサの中では際立っていた香川真司選手もラストパスを送る相手を得て、やりやすくなったんじゃないかと。でもねえ、28分にハメス・ロドリゲスとのワンツーでエリア内に入ったビニシウスに3点目を取られた後、ルイス・スアレスが香川選手からボールを受けて撃ったシュートをアレオラにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまっては…。

最後はヨビッチと交代でピッチに入ったベンゼマにも昨年12月のバレンシア戦以来となるゴールを決められ、マドリーが0-4のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)で大勝です。うーん、残念ながら、これでサラゴサのコパは終わってしまったため、最近はリーガの試合で見ることが少ない香川選手の出番もますます減ってしまうんじゃないかと懸念されますが、試合後のビクトル・フェルナンデス監督は「Es un chico que juega muy bien y no se le va a olvidar/エス・ウン・チコ・ケ・フエガ・ムイ・ビエン・イ・ノー・セ・レ・バ・ア・オルビダル(彼はとてもいいプレーをする選手だし、忘れられることはない)。とりわけホームでは重要な戦力になるだろう」とリップサービスをしてくれていましたからね。

まだまだ2部は長丁場なので、この先の活躍を期待することにして、マドリーの方はこれで20試合無敗と、ますます調子が上がってきたことを裏付ける結果に。来週木曜午後7時からはコパ準々決勝でサンティアゴ・ベルナベウに、今週のラウンドでオサスナに3-1と快勝したレアル・ソシエダを迎えるんですが、奇しくもこの日曜、ブタルケでまさにその相手と正午から対戦しないといけないマドリッドの弟分、レガネスはカンプ・ノウでどうだったかというと…。

いやあ、マドリーと時同じくして、バルサにもゴール量産スイッチが入ってしまうとは!ええ、翌木曜のその試合はDAZNでしか放送がなく、バル(スペインの喫茶店兼バー)でも見られなかったため、私がリアルタイムで苦しむことはなかったんですけどね。一応、念のため、PKの練習までして乗り込んだレガネスだったんですが、前半4分には早くもグリーズマンに先制点を奪われてしまうんですから、困ったもんじゃないですか。とりあえず、ハーフタイムまではCKからレングレに決められた2点目までに抑え、エン・ネシリのセビージャ電撃移籍後、唯一の頼りの綱となっているブライトワイテも反撃の狼煙を上げる好機を狙っていたようですが、それも後半の序盤までのこと。

ええ、14分にメッシに3点目を入れられてしまってはもう、頑張るのも空しいですよね。「Nos dimos cuenta que no era un partido para competir más/ノス・ディモス・クエンタ・ケ・ノー・エラ・ウン・パルティードー・パラ・コンペティール・マス(これ以上、競うための試合ではないと気づいた)」(アギーレ監督)レガネスはブライトワイテもカンテラーノのプロメルに代え、その後はアルトゥールと再びメッシに花を持たせて、試合は5-0で終了。3-5-2という馴染みのないシステムでセティエン新監督最初の3試合に苦戦したバルサがその日はトレードマークの4-3-3に戻り、水を得た魚のようだったのもツイていませんでしたけどね。もうずっと降格圏に沈んでいるレガネスにとって、肝は勝ち点差3の18位マジョルカと並べるかもしれない日曜のリーガ戦。

冬の移籍市場最終日の金曜にはセビージャから18才のブライアン・ヒル、オリンピアコスから出戻りとなる29才のゲレロ、そしてヤングボーイズから26才のアサレーとFWのレンタル加入も続々と発表されていますしね。前節のアトレティコ戦で退場したGKクエジェルには2試合の出場停止処分が下り、カンプ・ノウでの5失点で受けた心の傷をゆっくり治すことになったものの、ワンダ・メトロポリターノでスコアレスドローに持ち込んだ意地を見せられれば、相手もコパで疲れているという条件は同じ。それ以上にレアル・ソシエダは次のマドリー戦も気になるでしょうし、ここは勝ち点3の獲得を狙っていきたいですよね。

そしてレガネスがアルナイスをレンタルに出したのと同様、エリック・ガジェゴを送り出し、前節のレバンテ戦でエースのチミ・アビラをヒザの靭帯断裂で失ったオサスナを助けるのに協力したお隣さん、ヘタフェも日曜に試合なんですが、こちらはアウェイのサン・マメスでアスレティクと対戦。契約破棄金を払って、エスパニョールに電撃移籍したCBカブレラの代わりとして、一応、木曜にはノッティンガム・フォレスト(イングランド2部)からチェマ・ロドリゲスが来ましたが、レバンテからカバコを獲得する交渉も進行中とあって、もしかしたら土曜の朝には登録されている可能性も。

新戦力がデビューするもしないも、2ラウンド前にコパを敗退し、今は前節から、兄貴分と入れ替わった4位のCL出場圏順位を守ることが目標となるヘタフェですが、こちらも相手がコパ生き残り組。しかもアスレティックは火曜に2部のテネリフェと延長、PK戦までもつれ込む激闘をして、金曜の抽選で次はバルサとホームで当たることになったとなれば、とてもリーガ戦のことなど考えていられない?そうそう、残り1組のコパ準々決勝は先週、アトレティコを延長戦で退けたクルトゥラル・レオネサ(2部B)と0-0で分け、最後はPK戦で勝ったバレンシアと同じくバダホス(2部B)を延長戦で2-3と下したグラナダの対戦となります。

いえ、それより今週末はマドリーダービーが一番の注目なんですが、サラゴサ戦の後、「Veo muchas cosas positivas en el equipo, pero no hemos ganado nada y faltan muchos partidos/ベオ・ムーチャス・コーサス・ポシティーバス・エン・エル・エキポ、ペロ・ノー・エモス・ガナードー・ナーダ・イ・ファルタン・ムーチョス・パルティードス(多くのポジティブなことをチームに見たが、ウチはまだ何も勝ち取っていない。沢山、試合が残っている)」と気を引き締めていたジダン監督はまあ、アザールは全体練習に参加して日が浅いですから、わかるんですけどね。

ベイル、ロドリゴ、ナチョを土曜の試合の招集リストに含めず、とりわけ移籍市場最後の数日にトッテナム復帰も噂されていたベイルは結局、残留。先週のコパ、ウニオニスタス・サラマンカ(2部B)で患った足首のネンザも治っていながら、サラゴサ戦に続いて、ベンチにすら入らないのは不思議ですが、やっぱりそれって、スペイン・スーパーカップ決勝でベンゼマもベイルもアザールもおらずとも、お隣さんに勝っているからこそ、生まれる余裕?

一方、アトレティコはジョアン・フェリックスに加え、このところの負傷欠場常連組、ジエゴ・コスタ、ヒメネス、トリッピアー、アリアスはそのまま、キャプテンのコケも間に合わず、今回は応援合宿参加もしないよう。目新しいのはカラスコに加え、前節は急性胃腸炎で不在だったレマルが戻っていることぐらいですが、ここ4試合でたったの1点だけという、またしても半端なく日照り感が復活してきたゴールは何せ、マドリーと違って、こちらはMFもDFもほとんど得点しませんからね。

FWの補強がならなかったため、コスタが復帰するまで、モラタとコレア頼みのいうのは本当に怖いんですが、はあ。そんなホームチーム絶対優勢の前評判が高いマドリーダービーは土曜の午後4時(日本時間翌午前0時)キックオフ。シメオネ監督は「Tuvimos una semana para preparar el partido, sabemos dónde creemos que podemos hacer daño/トゥビモス・ウナ・セマーナ・パラ・プレパラール・エル・パルティードー、サベモス・ドンデ・クレエモス・ケ・ポデモス・アセール・ダーニョ(ウチは1週間、試合の準備ができたし、どこを叩けば相手にダメージを与えられるかも知っている)」と楽観的に振る舞っていましたが…選手たちにそれを遂行する能力がないと、ていうか、最近ありがちなパスもろくろく繋げない有様だと、マックスで望めるのはスコアレスドローかもしれません。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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