ツキも実力もないと…/原ゆみこのマドリッド

2020.01.28 17:05 Tue
「またEL出場権を目指すことになるのかしら」そんな風に私が嘆いていたのは月曜日、21節明けの順位表を見たところ、5位に落ちたアトレティコのすぐ下に6、7位に並ぶレアル・ソシエダとバレンシアが勝ち点差2でつけているのに気がついた時のことでした。いやあ、折しも前日は2006~09年にチームを指揮していたアギーレ監督が弟分レガネスを率いてワンダ・メトロポリターノを訪問。「私のいた頃はインタートトカップ(2008年まであった夏の志願制の大会、優勝チームはUEFAカップ/ELの前身の予選に出場できた)経由でヨーロッパに行ったものだった」なんて、リーガ順位で6位以内に入ることすら難しかった、苦難の時代を思い出させてくれたせいもあったんですけどね。
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ここ7年連続CLに出場、うち2回は決勝まで行っている彼らがそこまで極端に退行するというのも想像し難いんですが、そこは何でもありのアトレティコ。次はここ19試合、無敗を保っているお隣さんとのマドリーダービーとなれば、いくらお昼のクアトロ(スペインの民放)のスポーツニュースが、代理人がマドリッドに到着し、ここ数時間のうちにカバーニ(PSG)の移籍が決まるかもしれないと嬉しいことを言ってくれたとて、現在のチームのプレーぶりを見る限り、スーパーFWを1人獲れば、全てが解決するという状態ではすでにないような。せめて先日、サウジアラビアのジェッダで開催されたスペイン・スーパーカップ決勝のように意地を見せて、GKオブラク頼みでもいいから、サンティアゴ・ベルナベウで無失点を貫けば、幸いリーガ戦では延長もPK戦もなし。勝ち点1はゲットできるとはいえ…今はただただ、早くまた、アトレティコの勝利を拝める日が来てくれるのを祈るしかないかと。
まあ、無力感に浸っていても仕方ないので、まずはその兄弟分ダービーがどうだったのかお話しすると、実は前日、土曜には首位のバルサがバレンシアに2-0で負けるという波乱が。本来だったら、これは勝ち点差8を5に縮めるチャンスと、容赦なく、降格圏に沈んでいるレガネスに襲いかからないといけないアトレティコだったんですけどね。まだ別のグラウンドで練習していたコケとトリッピアーの招集も要はただの合宿応援参加、アリアスもコパのクルトゥラル・レオネサ戦で負傷していたため、正午のキックオフ時に右SBとして登場したのは昨季、インテルへのレンタル移籍中にヒサの靭帯を断裂、ようやくリハビリが終わったヴルサイコとは何とも泣かせてくれるじゃないですか。

おまけにコパ32強対決で2部Bの相手に敗退したのを反省して、心を入れ替えたとはとても思えないというか、ますます自信を失っていたんでしょうかね。前半はコレアがフリーで撃ったエリア内シュートが大きく外れたぐらいしか、見せ場のなかったアトレティコは後半、ビトロ、H・エレーラ、シャポニッチを投入しても5人DF体制でしっかり守るレガネスのゴールを破れず。それどころか、時間が経つにつれ、焦りが出てきたか、どの選手も右往左往するばかりで、パスミスも増えていったため、スタンドからpito(ピト/ブーイング)も聞こえるように。実際、大昔のアトレティコだったら、いい加減、「Vete ya!/ベテ・ジャー(もう出て行け)」というカンティコが監督に対して起こっていてもおかしくなかったはずですが…。
ええ、アギーレ監督も「Ha dado todo, titulos, Champions siempre, cantera, dinero.../ア・ダードー・トードー、ティトゥロス、チャンピオンズ・シエンプレ、カンテラ、ディネーロ(タイトル、毎年のCL出場、ユースチーム、お金、全てをもたらしてくれた)」大功労者であるシメオネ監督には、フォンド・スール(ゴール裏南側席)に陣取る応援団を中心に、「Ole, ole, ole! Ole Simeone!/オレ・シメオネ」のチャントが何度も飛んでいましたが、アウェイ2連敗の後、ホームでもスコアレスドローではねえ。シメオネ監督自身は、「Tenemos una semana importante para recuperar la calma/テネモス・ウナ・セマーナ・インポルタンテ・パラ・レクペラール・ラ・カルマ(ウチには落ち着きを取り戻すための1週間ある)。数人は負傷中の選手が回復して、チーム内の競争も激しくなるだろうし、この土曜は勝利を掴む夢を抱いて試合に挑む」と言っていましたが、果たして選手たちの心境は如何に?

え、後半ロスタイムにはレガネスのGKクエジェルが大揉めしていたようだが、一体、何だったのかって?いやあ、試合中ずっと、2005-06シーズンにトップチームに上がった古巣と引き分けに持ち込もうと、時間稼ぎに熱心な彼だったんですが、ちょっとやりすぎて、ゴールの後ろにボールを取りに行った際、recogepelota(レコヘペロータ/ボールボーイ)に突き飛ばされたかのように演技。主審がその行為にイエローカードを出し、前にも抗議で1枚もらっていたため、退場となったものの、なかなかピッチから出ていかなかったんですよ。それで早くプレーを再開したいアトレティコの選手と小競り合いになったんですが、モラタの首を叩いたり、地面にひっくり返ったりと少々、35才のベテランにしては大人気ない態度だったかと。

その場はホナタン・シルバが急遽、グローブをはめ、1分も続かなかった残り時間を凌いだんですけどね。ちなみにクエジェルは通常の1試合より多い出場停止を課されるだろうと言われていますが、チームが降格を争っている真っ最中だというのに、まったくもう。いまだにセビージャに電撃移籍してしまったエン・ネシリの穴を埋められておらず、この試合もブラーズヴァイトとカリージョしかFWがいないという事態にアギーレ監督も万が一を恐れたか、後者を投入したのも残り15分を切ってからという用心深さでしたからね。もちろん、オスカルのベンチスタートなど、木曜のコパ16強対決バルサ戦に備えての温存という意味もあったんでしょうが、この先、しばらくリーガではレギュラーGKも使えないとなったら、それこそ泣きっ面に蜂では?

そしてアギーレ監督の会見を聞いた後、私はメトロとセルカニアス(国鉄近郊路線)を乗り継いで、午後4時から、もう1つの弟分ヘタフェがベティスを迎える試合を見にコリセウム・アルフォンソ・ペレスに向かったんですが、実はこちらも危うく0-0で終わりそうだったんですよ。先週、2部の弟分、ラージョに延長、PK戦でコパ32強対決を敗退した後、気分を変えるためか、ベイビーピンクの第3ユニを着た相手はそれ程、強く見えず、再三のピンチも無得点で切り抜けていたものの、その日はヘタフェも攻撃陣が不発。ホルヘ・モリーナもマタもゴールを挙げることができず、後半にはそれぞれ、先日、パルメイラスから加入したブラジル人FWのデイベルソン、2週間前に敗退したコパ2回戦で負ったケガが治ったアンヘルと交代したところ、終盤にサッカーの神様にひいきされたのはボルダラス監督のチームでした。

というのもヘタフェのCKの時、ボールがアレックス・モレノの手に当たったとして、それもプレーが進行して3分ぐらい経った後にVAR(ビデオ審判)が主審に連絡。遡ってハンドによるPKが与えられたからですが、実はこの数分前、ベティスのCK時にアンヘルがやはり手でボールに触っていたにも関わらず、何故かこちらはスルーされてしまうことに。まさにそのアンヘルがPKを決め、ヘタフェが1-0で勝ったとなれば、「ウチはVAR運がなくて、プレーをチェックしないといけない時、担当者がコーヒーでも飲んでいるのか、見てもらえない」と嘆いていたルビ監督を始め、ベティス勢がカンカンだったのも当然だった?

いやあ、スローモーションのリプレーを見ると、明らかに手でボールを払っていながら、アンヘル自身は「Es un rebote/エス・ウン・レボテ(あれはリバウンドだよ)」とシラッと言ってしまえるのは、さすが32才のベテランと感心しましたけどね。このVARの恩寵がなければ引分けだったところ、勝ち点3を稼いでアトレティコに並んだだけでなく、得失点差で1つ上のCL出場圏、4位の座をかっさらってしまうとはこの弟分、まったく侮れませんって。おまけにヘタフェもコパがもうなく、1週間丸々練習して、日曜にアスレティック戦となれば、先輩チームが復権するにはちょっと時間がかかるかもしれませんね。

そして夜には近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でレアル・マドリーのバジャドリー戦を見た私だったんですが、ジダン監督のチームも前半12分、クロースのFKから、カゼミロがヘッドで決めたゴールがVARにより、オフサイドと判明し、スコアボードに上がらない不運に見舞われることに。まあ、ここ8試合勝利がない相手が一生懸命に守っていたせいもあるんですが、さすがに後半に入ると疲れも出てきたのか、マドリーがほとんど敵陣に入り浸りとなったため、先制点も時間の問題と思われていたんですが…。

意外とかかりましたね。ゴールが入ったのは後半33分、頼りになるセットプレーのキッカー、クロースが蹴ったCKはサリスにクリアされてしまったものの、ボールは再びクロースの足元に。彼がエリア内に戻したところ、その日は出場停止のカルバハルに代わり、右SBとしてプレー。「En esa me iba a quedar, el mister me dijo que fuera al primer palo/エン・エサ・メ・イバ・ア・ケダール、エル・ミステル・メ・ディホ・ケ・フエラ・アル・プリメール・パロ(あのプレーで自分はエリア外に残るつもりだったけど、監督にニアポストへ行けと言われた)」ナチョが頭で叩き込んじゃうんですから、驚いたの何のって。いやもう、ベンゼマが去年12月15日のバレンシア戦以来、得点していなくても、ベイルがねん挫でお留守番になろうが、ロドリゴがまだ力不足だろうが、マドリーが負けない理由はこの辺にある?

うーん、スペイン・スーパーカップ決勝で痛めた足首が治り、先発に戻ったセルヒオ・ラモスだけでなく、ジダン監督も「A balon parado y en el juego, cuando centramos sabemos que tenemos rematadores/ア・バロン・パラードー・イ・エン・エル・フエゴ、クアンドー・セントラモス・サベモス・ケ・テネモス・レマタドーレス(セットプレーでも普通のプレーでもクロスを上げる時、ウチには撃ち込める選手がいることはわかっている)」と言っていたように、ヴァランもカゼミロも空中戦に強いですからね。一方、バジャドリーも残りの時間、必死で攻め、後半41分にはCKからのボールをセルジ・グアルディオラがゴールに流し込んだんですが、こちらはオフサイドでノーゴール。そのまま守り切ったマドリーが0-1で勝つと、バルサに勝ち点差3の単独首位にいよいよ躍り出ました!

そんな彼らは水曜、午後7時からラージョがエスタディオ・デ・バジェカスにビジャレアルを迎えた後、午後9時(日本時間翌午前5時)にラ・ロマレダで2部のサラゴサとコパの16強対決。先週のウニオニスタス・サラマンカ(2部B)との試合のようにモドリッチ、クロースといった主軸にローテーションがあるかはわかりませんが、途中出場のバルベルデ、バジャドリーに行かなかったヴィニシウスなどは先発の可能性が高いかも。相手のサラゴサでは土曜のヌマンシア戦に香川真司選手が出なかったため、こちらもコパでプレーするんじゃないかと思いますが、さて。

ちなみに現在、2部では岡崎慎司選手のいるウエスカが3位、サラゴサは勝ち点差1の4位。ダイレクトで1部昇格できる2位、グティ監督率いるアルメリアとも3差しかないため、ビクトル・フェルナンデス監督にとっては、首位カディスと顔を合わせる週末のリーガ戦の方が優先順位も高いはずですが、サラゴサにはコパでマドリーに一泡を吹かせてきた過去があるんですよ。ええ、2004年にはコパ決勝で負け、2006年には準決勝1stレグで6-1の大敗を喰らった黒歴史はジダン監督自身がピッチで体験しているだけに今回もひょっとしたら…。いやあ、今の彼らはgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)はあまりなくても、絶好調のGKクルトワを含め、守備が固いから、きっと大丈夫ですよね。

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