一発勝負が仇となったのは…/原ゆみこのマドリッド

2020.01.25 16:00 Sat
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「マドリッドには来ないのは残念ね」そんな風に私がガッカリしていたのは金曜日、来週開催のコパ・デル・レイ16強対決でレアル・マドリーとサラゴサのマッチングが決まった時のことでした。いやあ、火曜に久保建英選手のいる格上のマジョルカを3-1で制し、香川真司選手のいる2部のチームが勝ち上がったのはそれ程、意外でもなかったんですけどね。今季のコパは準決勝以外、一発勝負となり、試合はカテゴリーが下のチームのホームで行われるため、香川選手の雄姿をサンティアゴ・ベルナベウで見ることは叶わず。

え、でもコパのサラゴサ戦といえば、マドリーにはいい思い出がないんじゃないかって? そうですね、2004年の決勝では延長戦で2-3と負け、2006年の準決勝1stレグなんて、あれよあれよという間にディエゴ・ミリトに4ゴールも決められ、6-1の大敗を喫して、ラ・ロマレダから帰って来たなんてこともありましたが、あれはまさにジダン監督もプレーしていたガラクティコ時代。となれば、サラゴサが再び波乱を起こすことも考えられるとはいえ、でもねえ。現在、4位の彼らとしては1部昇格の戦いを優先した方がいい気もするんですが、それはまさにプレーオフ出場圏の6位と勝ち点差4の11位にいる2部のマドリッドの弟分、ラージョも同じ。

そう、こちらも格上のベティスと対戦しながら、延長戦で2-2の同点に追いつく根性を見せ、最後はPKの死闘に勝ってエスタディオ・デ・バジェカスのファンを歓喜させていたんですけどね。折しも同日には先週、ベンフィカを経由して元エースのラウール・デ・トマスが加入したのに続き、生え抜きのエンバルバまで、さすがに降格も2度目となると、27才になった自分のキャリアが2部でのプレーで終わってしまうと危惧したんでしょうかね。契約解除金の1000万ユーロ(約12億円)を置き土産にやはり、エスパニョールに行ってしまったとなれば、とても来週水曜のビジャレアル戦を楽しむどころではなさそうですが、もっと気の毒なのは降格圏の19位にいるレガネスだったかも。

だってえ、延長、PK戦の末、アンドラを下した1回戦から、0-4と大勝したレアル・ムルシア戦に続き、この木曜はエブロにジョナタン・シウバのゴールで0-1と辛勝。これら、2部Bの3チームとの対戦で人工芝の慣れないピッチも含む、数々の苦労を乗り越えてきた彼らの次の相手はバルサなんですよ。それも8カード中、2つしかない1部チーム同士の対戦となったため、クジが引かれた順番で木曜にカンプ・ノウでプレーする破目になったとなれば、もしや一足先に2回戦で敗退していたお隣さんのヘタフェの方が賢かった?

イビサ(2部B)との試合はロスタイム終了間際にグリーズマンが当人にとってもその日、2点目となる勝ち越しゴールを決め、1-2でかろうじて延長戦突入を避けることができたバルサだったとはいえ、基本的にホームでは強いですからね。今度はセティエン監督もメッシをベンチに入れないなんて怖い真似はしないでしょうし、エン・ネシリのセビージャ電撃移籍後、1週間してもまだ代わりのFWが見つかっていないレガネスがどこまで頑張れるのかは不明。それはともかく、まずはマドリッドの兄貴分の明暗を分けた今週の試合からお伝えすることにしましょうか。

水曜にウニオニスタス・サラマンカ(2部B)との32強対決に挑んだのはマドリーで、いえ、前日の朝など、会場のピスタス・デ・エルマンティカが雪に覆われており、開催が危ぶまれたりもしたんですけどね。幸い、当日は雪も雨も降らず、ジダン監督も安心して、先週末のセビージャ戦をコンディション不良で欠場したベイルとハメス・ロドリゲスを先発で送り出したところ、前半17分にはその2人の働きで先制点が入ります。ええ、ハメスの上げたクロスは敵DFにクリアされたものの、そのボールがベイルの正面に。胸でトラップすると、右足であっさりシュートを決めてくれたんですが、当人にまったく祝う様子がなかったのはすでにこの時にはもう、左足首を痛めていたから?

実際、後半に入ってすぐ、ベイルのパスから生まれたゴール前シュートのチャンスをハメスが敵GKに弾かれてしまった後、7分にはブライムと交代してしまったんですが、計算外だったのは12分、やはりピッチに入ったばかりのロメロにナチョとミリタオが翻弄され、同点ゴールを奪われてしまったこと。でも大丈夫、この日は後でウニオニスタスのハビ・ルアセス監督も「Cuando he visto la alineación, hemos visto que nos respetaba/クアンドー・エ・ビストー・ラ・アリネラシオン、エモス・ビストー・ケ・ノス・レスペタバ(スタメンを見た時、ウチはリスペクトされているとわかった)」と言っていた通り、リーガ戦並みにベンゼマやカセミロ、バルベルデ、カルバハル、マルセロらを使っていたマドリーはその5分後に再び、リードすることに成功したんです!

そう、エリア内左奥まで入ったベンゼマがマルセロに戻したボールからのクロスがゴール右前にいたブライムに当たり、うーん、当人はその場に倒れていましたし、とてもシュートしたようには見えなかったんですけどね。ゴールの方角に飛んだボールをゴンゴラがオウンゴールにしてくれたため、有難い勝ち越し点になったというオチでしたが、そこは今季、ほとんど出場機会がなく、それでもヘタフェなどからのレンタルオファーを断って、マドリー残留にこだわっているブライム。ロスタイムにはエリア内から、見事なゴールを決め、改めてジダン監督にアピールしつつ、チームを1-3という余裕の勝利に導くことに。

いやあ、この試合の後、「El agua caliente dura 20 minutos/エル・アグア・カリエンテ・ドゥラ・ベインテ・ミヌートス(お湯が20分しか出ないんだよ)。今日は40人ぐらいシャワーを使うから、最後の人たちは絶対、水になる」とウニオニスタスの選手が心配していたように、マドリーの誰かがピスタスで冷水シャワーを浴びて帰ることになったのかどうかは確認が取れませんでしたけどね。どうやらベイルはまたしても負傷中となり、この日曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのバジャドリー戦を欠場するよう。いえまあ、水曜午後9時からはコパのサラゴサ戦もありますし、ベイルだけでなく、ベンゼマがいなくてもスペイン・スーパーカップで優勝してしまうようなチームですからね。

金曜にはバルデベバス(バラハス空港の近く)のグラウンドでとうとう、アザールとアセンシオがボールを使った練習を始めたとて、前者は早くて2月1日のマドリーダービー、何より26日のCLマンチェスター・シティ戦1stレグに万全の態勢で挑めるように調整とのことですから、今週末、戻って来られるのはジェッダで足首を負傷したセルヒオ・ラモスだけになりますが、まあ、そんなに心配はしなくていいかと。相手のバジャドリーも2部のテネリフェに負けてコパを敗退、リーガも15位とあまり調子が良くないですからね。きっと休養十分のクロース、モドリッチ、イスコらが活躍してくれますよ。

そして翌木曜、クルトゥラル・レオネサ(2部B)相手に大失態を犯してしまったのがお隣さんで、うーん、モラタとGKオブラクがマドリッドに残ったのはまだ、スペイン・スーパーカップ決勝で痛めた部位が治っていないからとは聞いたんですけどね。序盤からジョアン・フェリックスに最高のスルーパスをもらったビトロがゴール枠を捉えられなかったり、エレーラの孤を描くシュートがクルトゥラルの控えGK、リュカ・ギファールに逸らされてしまったりと前半、0-0で終わるのはよくあること。後半もサウールのvolea(ボレア/ボレーシュート)が天高く飛んで行ってしまったり、再びビトロが1対1で失敗しながらも16分、ジョアンのアシストでコレアが先制点を決めてくれたから、私もホッとしていたんですが…。

選手たちまでそれで油断していい訳ありませんって!実際、岡崎慎司選手のいる2部のウエスカを破った時と同じに、リードされてから積極的な攻勢に転じたクルトゥラルは何度もCKを獲得すると、38分にはカスタニェダが同点ゴールをゲット。ビトロと交代して、ついにアトレティコデビューを果たしたサポンジッチが2度撃ったシュートも弾かれ、1-1のまま延長戦突入だなんて、まったく体力のムダ使いもいいところじゃないですか。それどころか、後半4分には敵の高速カウンターを喰らい、カルディーニャのクロスからベニトに決勝ゴールを挙げられてしまう始末で、その時点でアトレティコの前線は22才のサポンジッチ、18才と19才のカメージョ、リケルメのカンテラーノ(Bチームの選手)、そして20才のジョアンと何とも頼りないものになっていましたからね。

そのまま2-1で負けてしまったのもムベなるかなんですが、はあ。いやあ、お隣さんにPK戦で敗れたスペイン・スーパーカップ決勝はともかく、先週末、2-0で完敗したエイバル戦よりは少々、マシだったトマスも「jugando así es normal que nos gane cualquier equipo/フガンドー・アシー・エス・ノルマル・ケ・ノス・ガネ・クアルキエル・エキポ(こんな風にプレーしていたら、どんなチームでもウチに勝って当然)」と認めていたんですけどね。今までこのチームを特徴づけていた気合や執念が今季はあまり、見られないような気がするのは私だけではない?

というか、この日はコケやオブラクがおらず、キャプテンを務めていたサウールも「En siete años que llevo en el primer equipo jamás había vivido esto/エン・シエテ・アーニョス・ケ・ジェボ・エン・エル・プリメール・エキポ・ハマス・アビア・ビビドー・エスト(自分がトップチームにいる7年間、こんな状況は経験したことがない)」と言っていたんですが、いえ、私はありますよ。まさにシメオネ監督が着任する前、2部Bのアルバセテにコパ敗退し、マンサノ監督が解任された2011年もそうですが、それ以前には毎年、お決まりのように発生した真冬のクライシス。うーん、当時とは選手たちの質も値段も違うはずなんですけどね。それにも関わらず、ダメダメのアトレティコに戻ってしまったって、もしやそれって、シメオネ監督のせい?

いえ、当人が「La responsabilidad es absolutamente mía/ラ・レスポンサビリダッド・エス・アブソルータメンテ・ミア(責任は完全に自分にある)」と言っていたのは別として、この敗退を受けて、いよいよ記者会見では「監督を続ける強さが自分にあると感じるか?」とか、「一時代が終わったのでは?」といった、解任の噂が囁かれ始めた指揮官に向けられがちな質問もありましたからね。もちろん今はジエゴ・コスタ、コケ、ヒメネス、トリピアーと負傷者が多く、とりわけ前線の選手がジョアンを筆頭にゴール運から見放されているという逆境もあるんですが、うーん、これはカバーニ(PSG)1人を獲れば、全て解決できるものなんでしょうか。

どちらにしろ、覆水盆に返らずなので、クルトゥラルにはバレンシアと対戦することになった次のコパの試合で頑張ってくれることを祈りつつ、アトレティコは2月18日のCLリバプール戦1stレグまでの3週間、ミッドウィークをみっちり練習に当てられることを災い転じて福にしてもらいたいもの。とにかく選手たちが心を入れ替えて、強いチームが戻って来るのを期待しているんですが、さて。ちなみにこの週末の彼らは日曜正午(日本時間午後8時)から、ワンダ・メトロポリターノにレガネスを迎えての兄弟分ダービー。リーガでもバルサ、マドリーら、首位グループとの差が勝ち点8に開いてしまったので、苦しい状況にある弟分に同情している余地はないんですが、とにかくシメオネ監督にとっても今が踏ん張りどころでしょうね。

え、それで2回戦でコパが終わってしまい、今週は水曜にブラジルのパルメイラスからレンタルで加入したFWデイベルソンのプレゼンなどをやっていたヘタフェはどうしているのかって?いやあ、最下位でチームの梃入れ中のエスパニョールにカブレラを引き抜かれたDF陣の穴がまだ埋まっておらず、この日曜午後4時、コリセウム・アルフォンソ・ペレスにベティスを迎える試合はエチェイタ、ブルーノ辺りで何とかしないといけないんですけどね。相手はラージョとのコパでボルハ・イグレシアス、ホアキン、グアルダード、バルトラといったレギュラーを多数、使っていたため、体力的にはヘタフェに分があるかと。前節はレガネスとの弟分ダービーにも0-3で快勝していますしね。アンヘルはまだ負傷で出られないものの、ホルヘ・モリーナ、マタの30代FWコンビがいれば、EL出場圏5位の座を守ることもきっとできますって。

ちなみに2月20日には今季のEL32強対決のアヤックス戦1stレグを控える彼らなんですが、この木曜には27日、アムステルダムのヨハン・クライフ・アレナでの2ndレグのチケットを販売開始。たった4時間で割り当て2500枚中1000枚がなくなり、ファンも久々のヨーロッパの強豪相手とのビッグマッチに遠征する気満々なんですが、ボルダラス監督のチームもミッドウィークの重荷がなくなったのをいい方に活用できるといいですよね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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