GKが頼りになると心強い…/原ゆみこのマドリッド

2020.01.07 18:00 Tue
Getty Images
「これじゃ、まるで代表戦期間みたいだわ」そんな風に私が首を振っていたのは月曜日、これからの2週間、スタジアムに行く機会がないことに気づいた時のことでした。そう、先週末にようやくクリスマスのparon(パロン/リーガの休止期間)が終わり、リーガが再開したというのに、今季からサッカー協会が本来、シーズン開幕前の8月中に行われていたスペイン・スーパーカップを1月の2週目に挿入。フォーマットも改めて、リーガとコパ・デル・レイの優勝チームのガチンコ対決だったのをリーガ1、2位とコパ優勝、準優勝の4チームによるファイナルフォー形式にしたのはいいんですが、昨季はバルサがリーガ優勝とコパ準優勝の2枠で該当していますからね。
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そこでコパ優勝のバレンシアとリーガ2位のアトレティコは当然として、リーガ3位のレアル・マドリーを混ぜての準決勝、決勝となったんですが、サウジアラビアのジェッダで開催というのも問題で、クリスマスシーズンに散財が多いスペイン人ファンに決して安くない旅費を賄う余裕があるのかどうか。ええ、私も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でTV観戦となりますが、この4チームがいないため、今週末はリーガもお休みに。代わりにコパの2回戦があるんですが、まだこの段階、下部カテゴリーのチームが多数残っているため、ヘタフェやレガネスはもちろん、1回戦で敗退したアルコルコン以外の2部の弟分、ラージョ(2部Bのバラカルドと対戦)にしろ、フエンラブラダ(同レクレアティボ)にしろ、アウェイ戦ですからね。よって、近場では試合がないんですが、まあ、今はとりあえず、先週末のマドリッド勢がどうだったか、見ていくことにすると。年明け試合のトップバッターを飾ったのは弟分のレガネスで、3日の金曜にホセ・ソリージャでバジャドリーと対戦。幸先よく、開始4分にはエン・ネシリからのパスをブライトワイテがvolea(ボレア/ボレーシュート)で決め、先制点を奪ったんですが、9分にはウナルに同点弾を挙げられてしまうことに。それでも14分にはロサレスのクロスをブライトワイテが頭で落とし、ロケ・メサのゴールで再びリードしたものの、いやあ、ツメが甘かったのが運の尽き。
後半34分、オメロウがウナルに空中戦で競り負け、ヘッドで同点に持ち込まれてしまったんですよ。ロスタイムにはエン・ネシリとカリージョのダブルチャンスがあったものの、決勝点を入れることは叶わず、そのまま2-2の引き分けとなってしまいましたが、まあアウェイでの試合でしたからね。おかげで日曜にはマジョルカがグラナダに1-0で負けたため、勝ち点差が1に縮まったものの、降格圏を出たのはオサスナと1-1で引き分けたセルタとなり、レガネスは19位のまま。この土曜のコパ、レアル・ムルシア(2部B)の後、17日の金曜にブタルケにお隣さんのヘタフェを迎える弟分ダービーでレッドゾーンを抜け出すべく、シーズン後半の戦いを始めることになります。

そして翌土曜、ホームのコリセウム・アルフォンソ・ペレスに兄貴分を迎えたのがヘタフェで、序盤から今季の調子の良さを裏付けるかのごとく、マドリーにチャンスを作らせなかったんですけどね。スタジアムを満員にしたファンたちもそんな彼らに大きな期待を懸けていたんですが、前半34分、まさかFKからクリアされたボールをメンディが上げたところ、バランと一緒にジャンプしたGKダビド・ソリアが痛恨の空振り。これがゴールに入ってしまったから、私も驚いたの何のって。
それとは真逆に前半、存在感を示したのがGKクルトワでアランバリ、ファジル、更にはカブレラの至近距離からのヘッドをparadon(パラドン/スーパーセーブ)。このお手柄もあって、0-1で後半を始めたマドリーは7分、再びFKからクロースが蹴ったボールを今度はバランが文句のつけようのないヘッドで叩き込み、この日、累積警告で出場停止だったセルヒオ・ラモスの穴を立派に埋めてくれたとなれば、最近はミリタオも守備では頼れるようになってきましたしね。キャプテンも安心して、スペイン・スーパーカップに向けて英気を養うことができたかと。

一方、ヘタフェも14分にはアンヘル、マタに加え、ファジルをホルヘ・モリーナに代えて、30代FWトリオ揃い踏みで反撃を試みたんですが、いやあ、やっぱりここずっと、兄貴分たちには負け越しているせいですかね。結局、最後までゴールを挙げることはできず、あまつさえ、ロスタイムには自陣からベイルが繋いだボールを持ってバルベルデがエリアまでドリブル。ゴール前で出したパスをモドリッチに決められて、最後は0-3で完敗してしまうことに。うーん、彼らが3点差以上で負けた試合も2部に降格したシーズンの2016年4月、1-5とされたマドリー戦以来だったと聞くと、相性の悪さがひしひしと伝わってきますが、土曜のコパ、バルドーナ(2部B)戦を挟んで、その日、直前の試合でエイバルに勝利したバレンシアに取って代わられたEL出場圏6位の奪回が、彼らにとっては1月の目標になるでしょうか。

え、でも年末の記憶を呼び覚ますと、マドリーはこれが3試合ぶりの勝利だったんじゃないかって?その通りで、この日も得点はダビド・ソリアのオウンゴール、バラン、モドリッチと、頼りのベンゼマ、そしてベイル、イスコ、途中出場したビニシウス、ヨビッチと前線は不発だったため、ゴール日照りはひとまず解消といっても少々、懸念は残るんですが、そんな中、一番満足していたのはクルトワだったよう。ええ、「3試合で失点したのは引き分けたバレンシア戦の1点だけだし、その前もエスパニョール戦は完封していた。El trabajo defensivo y del portero esta siendo muy bueno/エル・トラバッホ・デフェンシーボ・イ・デル・ポルテーロ・エスタ・シエンドー・ムイ・ブエノ(守備とGKの仕事はとっても良くて)、試合に勝つのを助けている」と言っていましたが、まあ、確かにこのところ、当人の株も急上昇中ですからね。

実際、シーズン折り返しの19節を終わった時点でマドリーは失点が12とお隣さんと並んで、最小失点チームとなったんですが、その内実はアトレティコのオブラクが全試合に出場して12失点、1試合平均にすると0.63点。3試合をアレオラに譲ったクルトワは16試合で9失点、平均0.56点と元古巣の後輩を上回っているとなれば、ジダン監督も「Es mi portero, para mi es el mejor, no tengo dudas/エス・ミ・ポルテーロ、パラ・ミー・エス・エル・メホール、ノー・テンゴ・ドゥーダス(彼は私のGK。自分にとっては最高のGKで、それに疑いはまったくない)」と信頼を寄せるのも当然だったかと。

ちなみにそのオブラクが今季12失点目を喫してしまった、続く時間帯にワンダ・メトロポリターノで行われたレバンテ戦はというと、今季から移籍した母国のフラメンゴでコパ・リベルタドーレス、ブラジル・セリエAの2冠を達成。凱旋訪問をしたフェリペ・ルイスへ、負傷は治ったものの、まだベンチには入れなかったキャプテンのコケが記念プレートを贈呈するイベントからスタート。スタンドからのオベーションの余韻がまだ醒めやらぬ開始1分、早速、絶好機を迎えたアトレティコだったんですが、え、ちょっと、コレアはGKアイトール・フェルナンデスに弾かれ、ジョアン・フェリックスはDFに当ててしまい、サウールは天高くシュートを撃ち上げてしまうって、もしや今年も彼らのゴール運のなさは続行中?

でも大丈夫、13分にはトマスが送ったボールをトリッピアーがエリア内に入れると、ワンタッチでコレアが流し込み、見事先制を果たしてくれたんですよ。ただねえ、その喜びもたった3分間だけで、カンパーニャの放ったFKをロジェールがシュート。それがモラタをかすめたせいか、オブラクも弾くことができず、あっという間に同点にされてしまったんですが、その1分後には再び場内が歓喜に包まれることになるとは何とも目まぐるしい。ええ、17分、ジョアンがCKから短いボールをロディに送ったところ、そのクロスをフェリペがヘッドで得点。得意の側宙で勝ち越し点を祝ってくれるんですから、ファンの心だって軽くなりますって。

とはいえ、その後は追加点が入らず、いえ、ジョアンも2度程、シュートを撃っていたんですけどね。もちろんどんなにいいチャンスをもらってもフィニッシュに失敗するというのは、アトレティコでは彼だけの十八番でも何でもありませんし、当人もまだ20才と若いため、いくら移籍金が破格の1憶2700万ユーロ(約154億円)だったとて、責めるつもりは全然、ないんですが、そのまま2-1でチームが勝てたのはオブラクのおかげ。ええ、後半38分、ロスタイムの48分とバルディの危険なシュートを弾いてくれなかったら、新年早々、ファンもすっきりしない気持ちで家路を辿っていたかと。

これにはシメオネ監督も「Actuo en los momentos decisivos, pero la ultima fue de un jugador que te hace ganar partidos/アクトゥオ・エン・ロス・モメントス・デシシーボス、ペロ・ラ・ウルティマ・フエ・デ・ウン・フガドール・ケ・テ・アセ・ガナール・パルティードス(決定的瞬間に介入してくれたが、最後のセーブは試合に勝たせてくれる選手のプレー)」と称賛を惜しみませんでしたが、当人はいつもながらに謙虚。ええ、「もっと早くカタをつけたかったけど、上手くいかない時はいかないもので、3点目が取れなかった。La parada es de reflejos y por suerte la he parado y ojala que siempre sea asi/ラ・パラダ・エス・デ・レフレホス・イ・ポル・スエルテ・ラ・エ・パラードー・イ・オハラ・ケ・シエンプレ・セア・アシー(セーブは反射神経のおかげで、運良く弾くことができた。この先もそうあってほしいね)」とサラリと流してしましたが、まあねえ。

一応、これでアトレティコもリーガ3連勝と引分け地獄とは完全に縁を切れたようですし、順位も金曜にアスレティックと引分けたセビージャを抜いて、勝ち点は同じでも3位に上がりましたからね。そこへ同日、最後の試合でバルサがエスパニョールとのカタルーニャ・ダービーを2-2に持ち込まれたため、2位のままながら、同じ勝ち点で再び並んだマドリーがいる首位グループとの差も5になったとなれば、まだまだリーガ優勝を諦めることはない?

それはともかく、現在、マドリッドの兄貴分たちの目標はスペイン・スーパーカップ準決勝の勝利で、まずはこの水曜午後8時(日本時間翌午前4時)から、マドリーがエイバル戦でエースのロドリゴが右ヒザをケガ、出場できなくなったバレンシアと激突。月曜からベルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でトレーニングを再開したチームはアセンシオとアザールを除き、ヘタフェ戦ではまだ招集されなかったハメス・ロドリゲス、マルセロ、ルーカス・バスケスの負傷明けメンバーも連れて、火曜にはジェッダ入りする予定ですが、実は彼ら、リーガ前半戦の対決では1-1だったバレンシアだけでなく、バルサともアトレティコともスコアレスドローと拮抗した結果しか、残せておらず。

まあ今回は90分でドローだった場合、延長戦、そしてPK戦で決着はつくからいいんですが、現地に出発前、最後の練習でベンゼマが太ももと負傷、ベイルも気管支をウィルスにやられ、準決勝にも決勝にも出られないんじゃないかという報がマドリーから伝わってくるって、あまりに間が悪くない?かといって、木曜午後8時からのバルサ戦に向けて、アトレティコは万全かというと、何せ、彼らは去年も0-0で終盤まで粘りながら、またしてもメッシの一発でリーガ戦に負けていますからね。

今回も頸椎の椎間板エルニアで手術を受けたジエゴ・コスタが2月まで戻らず、モラタ一択のCFの補強もまだできておらず、最近はコレアがゴールづいているとはいえ、どこまで信用できるのかどうか。こちらも年末の練習で負傷したレマルはさておき、レバンテ戦で復帰したビトロに続き、サビッチ、コケがチームに戻るはずですが、果たして結果は如何に。ちなみに今季2度目のクラシコ(伝統の一戦)orマドリーダービーとなるかもしれない決勝は日曜午後7時にキックオフ。3位決定戦がないため、準決勝で負けたチームが早く戻って来られるのは先々を考えると、楽でいいかもしれませんね。

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