ゴール日照りが伝染した…/原ゆみこのマドリッド

2019.12.24 18:00 Tue
「また随分、極端だわね」そんな風に私が驚いていたのは日曜日、サンティアゴ・ベルナベウから日付が変わって家に戻ったところ、いやあ、その頃の時間には試合のサマリーを見るのに重宝しているTVE(スペイン国営放送)のエストゥディオ・エスタディオもGOL(ゴル/スポーツ専門局)のディレクト・ゴルも終わっていますからね。何か、選手のコメントでも映ればいいなと、出演者が怒鳴ってばかりでうるさいため、普段は敬遠しているMega(メガ)のチリンギートにチャンネルを合わせてみたところ、折しもホランド(ザルツブルク)だの、オバメヤング(アーセナル)だの、レアル・マドリーがこの冬、獲得すべきFWについて、喧々諤々の大論争の最中だったからですが、いや、だって、まだ引き分けが3試合続いただけですよ。
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実際、ミッドウィークのクラシコ(伝統の一戦)の後など、結果はスコアレスドローながら、レングレとラキティッチのバレンへのペナルティがVAR(ビデオ審判)にスルーされたこともあり、ジダン監督のチームが勝っていてもおかしくなかったと、世論的には「今季のマドリーはリーガ優勝も狙える」という意見が優勢に。それが日曜の夜も無得点が続いただけでこの豹変ぶりとは、これ如何に。いやまあ、お隣さんのなど、11月後半から12月初旬まで4試合で2分け2敗という不調が続き、もちろんその中にはCLユベントス戦やバルサ戦があったため、仕方ないところもあるんですが、チャンスがあってもゴールが全然、入らないため、「とにかくヨーロッパで実績があって、即成果を挙げられるCFを1月にゲット」が至上命題に。そうやってマスコミが騒いでくれたおかげか、最初はチミ・アビラ(オサスナ)ぐらいしか、聞こえなかった候補の名前も月曜にはとうとう、カバーニ(PSG)という大物が挙がってきましたからね。アトレティコへの移籍が実現可能はともかく、先週末にはクラシコで不発だったグリーズマン、メッシ、ルイス・スアレスが揃い踏み。アラベスに4-1と快勝して、バルサが単独首位で年を越えることにもなりましたし、新年9日のスペイン・スーパーカップ準決勝で彼らと顔を合わせる前に、メッシの1点など、軽々返せるFWが来てくれたらと思いますが…うーん、新戦力のお給料はどうするんでしょうね。
まあ、移籍市場の話はまだ先でいいので、今は2019年最後のマドリッド勢の試合がどうだったか、お伝えしていくことにすると。土曜にトップバッターを飾ったのは弟分のヘタフェだったんですが、ちょうどその時刻、私はワンダ・メトロポリターノでスペイン・レジェンドチームとワールド・レジェンドチームのチャリティマッチを観戦。かなり丸くなったモリエンテスやルイス・ガルシア、デル・ピエロ、フィーゴ、エトー、ロベルト・カルロスらが華々しく6-6の撃ち合いを演じるのはそれなりに見応えがあったんですが、タイミングが悪いですよね。ミッドウィーク中、ずっと降っていた雨は止んでいたものの、強風が吹き荒れていたためか、お客さんも少なかった上、私が聴きいっていたオンダ・マドリード(ローカルラジオ局)からは残念な報が。

ええ、ラ・セラミカでビジャレアル戦をプレーしたヘタフェは前半、0-0で終わった後、再開後7分にアウギッサのシュートをGKダビド・ソリアが弾きながら、モイ・ゴメスに押し込まれ、先制点を奪われてしまったんですよ。おまけに16分には後半からピッチに入ったオリベイラが2枚目のイエローカードをもらい、退場してしまったとなれば、10人のヘタフェがそのまま1-0で負けてしまっても仕方なかったかと。ただ、そのオリベイラの退場直前にはククレジャへのファールがスルーされており、「Hoy mucha gente estará contenta porque hemos perdido/オイ・ムーチャ・ヘンテ・エスタラ・コンテンタ・ポルケ・エモス・ペルディードー(今日は大勢の人がウチが負けたのに満足しているだろう)。ヘタフェが上にいるのが気に障るんだ」(ダビド・ソリア)と文句を言いたくなる気持ちもわかりますけどね。
何せ、この日はケガでケネディとジェイソンを欠いていたのもあり、ホルヘ・モリーナと交代したアンヘルもゴールを挙げることができず。せっかく8試合無敗、6連勝で来たヘタフェもちょっと一息となりましが、まあ彼らが永遠に負けないというのもありえませんしね。それでもヨーロッパの大会出場圏の6位でクリスマスを迎えられるとなれば、今年がヘタフェにとって最高の年だったのは確かかと。1月には2年前から、再三、重度の負傷を繰り返していたマルク・ベルガラが引退する代わりに、中盤を補強するという話もありますし、paron(リーガの停止期間)明け、1月4日にコリセウム・アルフォンソ・ペレスにマドリーを迎える兄弟分ダービー、そして2月のELアヤックス戦に向けて、今は選手たちも英気を養ってくれたらいいんじゃないでしょうか。

そして翌日曜、正午からのエスパニョール戦を見にブタルケに向かった私でしたが、いやもう、丘の上にあるこのスタジアムは本当に吹きっさらしで、昼間なのにワンダの何倍も寒かったの何のって。とはいえ、前日の午後移動ではバルセロナからのAVE(スペインの新幹線)が強風のため、途中で何時間も足止めを喰らい、マドリッドのホテルに着いたのが深夜零時近くだったというエスパニョールのマチン監督も「A las condiciones meteorológicas se adaptaron mejor ellos/ア・ラス・コンディシオネス・メトオロロヒカス・セ・アダプタロン・メホール・エジョス(天候的条件には彼らの方がよく適応していた)」と言っていたように、すぐ近くのシュダッド・デポルティーボ・ブタルケで練習しているレガネスの選手たちには慣れがあったのが幸い。

前半早々、11分にはオスカルのスルーパスを追ったブライトバイテが先制ゴールを挙げると、序盤のチャンスにシュートをネット脇に撃ち込んでしまったエン・ネシリを後半9分にもアシスト。前回のホームゲームでもセルタから3点リードを奪いながら、最後は3-2と追い上げられていたレガネスだったため、この2点目で寒風に堪えていたファンもホッとできたんですが、何度か敵のCKが続いた際にはセットプレーに弱い彼らだけにドキドキさせられたものでしたっけ。それでもこの日は2-0で勝利と、アギーレ監督就任以来、初の無失点試合を達成し、ここ3試合で勝ち点7ゲットとはお見事です。

前日には17位のマジョルカが久保建英選手は頑張っていたものの、セビージャに同じスコアで負けていたため、19位のレガネスとの差が勝ち点2になったのも降格圏脱出に向けて励みになりますし、年明け3日もバジャドリーと同格の相手になりますからね。いよいよ彼らにも幸運期がやって来たんじゃないかと思いますが、真逆なのはリーガで7試合勝利のないエスパニョール。最下位で年越えとなるのはともかく、月曜には10月初旬にダビド・ガジェゴ監督の後を引き継いでいたマチン監督も解任されてしまったんですが、それでもEL32強対決には残っているって、ちょっと不思議ですよね。

え、それで9月末のマジョルカ戦での勝利から、アウェイ5試合連続引き分けという恥ずかしい記録を引っ提げて、ベニト・ビジャマリンでベティスに挑んだアトレティコはどうなったのかって?いやあ、開始7分にモラタが頭でゴールを決めたものの、ありがちなオフサイドで認められず、逆に16分にはフェダルのヘッドがゴールバーを直撃し、ヒヤリとさせられたんですけどね。おまけに34分、ジョアン・フェリクスが自陣から出したスルーパスに独走しながら、やっぱりモラタはGKジョエルとの1対1を制することはできず、手に当たったボールがゴールポストに弾かれしまう始末。おかげでブタルケから戻った私が遅いランチを食べながら、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で見ていた前半は恒例の0-0で終了です。

でもこの日はツキがあったんですよ。そう、シメオネ監督が後半早々にレマルをコレアに代え、コケの負傷欠場で右サイドにいたエレーラをボランチへ、サウールを左サイドへとポジションチェンジしたところ、ベティスのアレックス・モレノが自陣エリア付近でボールを逃すという大チョンボ。いや多分、「sabíamos que si cometíamos un error, este equipo te penaliza/サビアモス・ケ・シー・コメティアモス・ウン・エロール、エステ・エキポ・テ・ペナリサ(ミスを犯せば、このチームはウチに害を与えるとわかっていたよ)。実際、こっちは2度ミスをして、うち1回は向こうが失敗した」と後でルビ監督が言っていた、もう1つの例はモラタの1対1だったんでしょうけどね。途中出場すると、まさしく起爆剤そのものの働きをすることが多いコレアがこのボールを奪うと、ジョエルもかわして、ゴールを決めてしまったから、有難かったの何のって。

ただそれ以降、異様なまでに自陣に引いてしまったアトレティコはベティスの猛攻にさらされ、アップアップしていたんですが、38分にはモラタの3度目の正直が発現。ええ、コレアがエリア内右奥で粘り、ゴール前に出したラストパスをtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で流し込んだんですが、うーん、ホントに彼は実力のあるFWなのか、判断が難しい。何せ、ロスタイム終了間際にはバルトラのゴールが決まり、VARですったもんだしながら、その2点目のおかげで、最後は1-2で勝てましたからね。ようやくアウェイで勝ち点3を得てヘタフェを追い越し、CL出場圏の4位で正月を迎えられるとなれば、マドリッドの兄貴分のメンツも何とか保つことができた?

そんな調子ですから、やはり冬の市場でゴール量産タイプのFWは獲った方がいいかと思うんですが、翌日からバケーションに入ったアトレティコがマハダンオンダ(マドリッド近郊)のシュダッド・デポルティーボ・ワンダで練習を再開するのは29日の日曜日。年明けは4日、ホームでのレバンテ戦となりますが、何せ補強はレマルでも誰でも、今いる選手が出ない限り、サラリーキャップの制限でできないと言われていますからね。そうそうすぐには決まらなさそうなため、とりあえずはコケ、サビッチが回復して戻ってくるぐらいが朗報となりましょうか。

そして日曜午後9時、マドリーが今年のリーガ最終戦のトリを大勢のファンが詰めかけたサンティアゴ・ベルナベウで飾ったんですが、こちらはお隣さんとは逆にツキのなさが災いすることに。ええ、前半にはエリア内に侵入したクロースのシュートがゴールバーに当たったり、ベンゼマがGKウナイ・シモンをかわして角度のないところから撃ったボールがウナイ・ヌニェスの踵でクリアされてしまっただけでなく、後半にも目を傷めたミリタオと交代したナチョやヨビッチのヘッドが枠に嫌われているとなれば、一体、どうしたらいいものやら。

その上、ガイスカ・ガリターノ監督の敷いた5人DF制が効いたか、当人も後で「イスコはプレーしない確信があった。それでmetimos gente alta y muy fuerte/メティモス・ヘンテ・アルタ・イ・ムイ・フエルテ(背が高くて強靭な選手を入れた)」と説明していたんですけどね。マドリーは前後半計37回もサイドからクロスを入れながら、先発はロドリゴとビニシウスという小柄な2人だったのもありますが、そのうちシュートに行けたのはたったの7回。残り5分を切ってからはセルヒオ・ラモスも加わり、ベンゼマ、ベイル、ヨビッチの4巨頭で攻めたものの、先日のバレンシア戦のようにロスタイムに身長2メートルのGKクルトワが全員攻撃に加わるセットプレーのチャンスもなく、1点も取れませんでしたっけ。

幸い、前半のウィリアムスのシュートを除くと、アスレティックの攻撃が非常に残念だったため、ドローで勝ち点1は稼げましたけどね。おかげでせっかく、クラシコで首位バルサと同じ勝ち点の2位を維持したマドリーも2差の2位に後退。試合前は「この前はゴールが足りなかったが、それはバルサ戦だけ。Nosotros tenemos gol/ノソトロス・テネモス・ゴル(ウチにはゴールがある)」と強気だったジダン監督もこの結果には、「チャンスがある時に決めないといけない」とちょっと渋い顔でしたっけ。それでも「Tenemos un equipo de calidad y sabemos que desde la paciencia lo vamos a cambiar/テネモス・ウン・エキポ・デ・カリダッド・イ・サベモス・ケ・デスデ・ラ・パシエンシア・ロ・バモス・ア・カンビアル(ウチは質の高いチームで、辛抱を持ってすれば変わっていけるのを知っている)」と言えちゃうところは羨ましいんですけどね。

ただ問題はアトレティコ同様、1月8日には彼らにもスペイン・スーパーカップ準決勝のバレンシア戦が迫っていることで、ベルギー代表の同僚、クルトワなども「cada día está major/カーダ・ディア・エスタ・メホール(日々、良くなっているよ)。でも回復の程度はドクターに訊かなきゃわからない」と話していたアザールがいつ戻るのか、全然、見当がつかないこと。このクリスマス休暇中にはマルセロ、ルーカス・バスケスもケガが治るといいんですけどね。彼らの様子が確かめられるのは30日、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場で予定されている公開セッションですが…ここ数年の恒例のようにソシオ(協賛会員)のみ対象なのか、一般のファンも入れるのかはもう少し近くならないとわからないようです。

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