大山鳴動して鼠1匹だった…/原ゆみこのマドリッド

2019.12.21 18:45 Sat
Getty Images
「どうやら年内はあまり変わらないみたいね」そんな風に私が肩すかしを喰らっていたのは金曜日、ようやく延期されていたクラシコ(伝統の一戦)も終わり、20チーム全てが同じ消化試合数で迎える2019年最後となるリーガ18節を前に順位表を確認していた時のことでした。いやあ、細かいことを言えば、マドリッド勢で唯一、降格圏にいる弟分のレガネスが最下位に戻ってしまったら、それはそれで頭が痛いんですけどね。どちらにしろ、残留圏17位のマジョルカとは勝ち点5差、18位のセルタとも4差とあって、レッドゾーンで年を越すのは避けられず。
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もう1つの弟分、CL出場圏内4位のヘタフェはEL出場圏内の5位にいる兄貴分のアトレティコと1差で、両チーム共、3位のセビージャを追い越すのは可能なんですが、クラシコを終えても勝ち点差がつかなかったバルサ、レアル・マドリーの首位陣からは6差、7差という距離。むしろ8位のバレンシアまでを含めて、3~6位のヨーロッパの大会出場圏順位でクリスマスを迎えられたらといった感じかと思いますが…いえ、まだ先は長いんですから、今はそこまで気にしなくてもいい?ちょっと先走ってしまいましたが、とりあえず、コパ・デル・レイの1回戦とクラシコが行われた今週のマドリッド勢の試合がどうだったかというと。実際、マドリー(昨季リーガ3位)とアトレティコ(リーガ2位)はバルサ(リーガ優勝)、バレンシア(コパ優勝)と共に、1月8~12日の予定で今年からファイナルフォー形式と化したスペイン・スーパーカップをジェッダ(サウジアラビア)で戦うため、1月11、12日のコパ2回戦まで免除。32強対決から参戦とあって、1回戦をプレーしたのはレガネスとヘタフェだけだったんですが、どちらも下部カテゴリーのチーム相手だったにしてはちょっと苦労していたよう。
ええ、とてもじゃないですが、今季から一発勝負になって、参加111チーム、計55カード(1チームは不戦勝)もあるこのレベルでは一応、1部チームだけはDAZNでの中継があったものの、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)も流してくれず、私もサマリーを見られただけだったんですけどね。週末のリーガが日曜正午からだからとゴネて、開催日を火曜にズラしてもらったレガネスは11人、全員控え選手でアンドラ(2部B)との試合をスタート。すると前半24分にはモハのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)で先制され、後半17分にようやくカリージョが決めて同点に追いついたはいいものの、90分どころか、延長戦を終えても勝ち越し点が奪えなかったんですよ。

おまけに突入したPK戦では最初のキッカーだったカリージョが失敗してしまい、どうなることかと冷や冷やしながら、マルカ(スポーツ紙)のライブティッカーを追っていたんですが、大丈夫。アギーレ監督に抜擢され、延長戦からピッチに入っていたカンテラーノ(レガネスBの選手)、アイマネ、プロメル、アビレスの3人がPKに成功する間に敵も1人がGKソリアーノに弾かれ、最後は5-6で何とか勝利って、いやまあ、彼らにしれみれば、「Es un partido de seis puntos. Los que sumas y no hacen ellos/エス・ウン・パルティードー・デ・セイス・プントス。ロス・ケ・スマス・イ・ノー・アセン・エジョス(勝ち点6の試合だ。ウチがポイントを貯めれば、相手はゼロなんだから)」(アギーレ監督)という、勝ち点が同じ最下位エスパニョールと当たる日曜の一戦の方が断然、大事なんですけどね。
クリスマスのパロン(リーガの停止期間)が明けた1月3日にもバジャドリー戦があるため、それこそ金曜の抽選会で決まったコパ2回戦、レアル・ムルシア(2部B)戦なんて、パスしたいぐらいじゃないかと思いますが、更に間が悪いことにキャプテンのブスティンサが今週の練習で右足首を捻挫。結構、重傷で全治3週間とも言われているため、アンドラ戦で疲れているロサレスやアワジエムが連投しないといけないのは予期せぬ逆境だったかと。

まあ、相手のエスパニョールが木曜にコパのジュエイダ(2部B)戦をプレーし、ウー・レイの2得点で0-2と勝ったものの、休養期間が短いのはちょっと慰めになりますけどね。そうそう、奇遇にも水曜にはお隣さんのヘタフェが一足先にレアル・ムルシアのホーム、エスタディオ・エンリケ・ロカ・デ・ムルシアをエル・パルマル(3部)戦で体験。普段、設備の整わないグラウンドでプレーしている下部カテゴリーのチームが近場のスタジアムを借りたせいですが、こちらはカンテラーノ(ヘタフェBの選手)のウーゴ・ドゥーロと共にエースのホルヘ・モリーナが先発しています。レガネス同様、前半22分にはエチェイタのオウンゴールでリードされてしまったんですが、後半から出場したアンヘルが18分にはFKから、見事なヘッドで同点にしてくれるんですから、有難い。

続いて25分にもそのアンヘルがゲットしたPKをモリーナが決め、1-2で勝利となれば、やっぱり頼りになるのはお馴染み30代FW陣?いえ、マタだけは土曜午後6時30分からのビジャレアル戦に備え、お留守番だったんですけどね。同日、コミージャス(3部)戦に0-5と大勝している相手を倒し、マドリッド2番目のチームとして2019年を終える大望を果たしたいなら、おそらく2回戦のバダローナ戦(2部B)もそうなるでしょうが、コパでローテーションするのは当然かと。

うーん、だからって、木曜に恒例の、昨季までの在籍時には柴崎岳選手(現在は2部のデポルティーボ)も出演していたビジャンシコ(クリスマスキャロル)のビデオ(https://bit.ly/2Z8VV0C)お目見えを行ったクリスマス会でアンヘル・トーレス会長に、「Si el año pasado quedamos quintos, este año queremos ser cuartos o terceros/シー・エル・アーニョ・パサードー・ケダモス・キントス、エステ・アーニョ・ケレモス・セル・クアルトス・オ・テルセーロス(昨季は5位で終わったんだから、今季は4位か3位になりたい)」とまで、野心的になれられても困るんですけどね。

できれば、兄弟分、足の引っ張り合いにはならず、マドリー、アトレティコと揃ってのマドリッドCL出場3チーム体制となってくれればいいんですが、さて。ちなみに今週、久々に暇なミッドウィークを過ごしたアトレティコは日曜午後4時(日本時間翌午前0時)からのベティス戦の準備に専念。木曜にアントニアーノ(3部の下の地方リーグ)が軒先を借り、ベニト・ビジャマリンでコパの試合が開かれた際にはドシャ降りの雨、ボールもようよう転がらない状態だったにも関わらず、ベティスが余裕で0-4と勝っていましたが、シメオネ監督のチームが乗り込む時までにはちゃんと水がはけていてほしいかと。

いやあ、今週の彼らはキャプテンのコケがハムストリングスを痛め、一足先にクリスマス休暇に入ってしまったなんてこともあり、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場ではその代理を務めていたのはエレーラだったよう。他に朗報はサビッチの復帰ぐらいで、何が何でもゴール日照りを補うCFを獲りたい冬の移籍市場で少しでも高値がついてほしいという思惑か、レマルが先発リピートするようだと言われていますが、まあモナコに払った7000万ユーロ(約85億円)の元はとても取れそうにありませんからね。とにかく、いつぞやのバルサ戦のように失点に繋がるミスだけはしないでくれるといいんですが。

え、それでヘタフェのコパ戦の後に始まったクラシコはどうだったのかって?それが私も30分以上前にいつものバルに行き、しっかり席を確保して、キックオフを待っていたんですが、幸い心配されたカタルーニャ独立派のデモなどがカンプ・ノウから600メートル離れたホテル・ソフィアから、完全に交通遮断された道を通ってスタジアム入りする両チームのバスに迷惑をかけることはなし。ただ、バルサには1度発表されたスタメンから、直前にブスケツが発熱でベンチに残り、ラキティッチが入るというハプニングがあって、もちろんそのせいばかりではないでしょうが、序盤から押し込んでいったのは珍しいことにマドリーの方だったんですよ。

ええ、両チーム通じて史上最多となる43試合目のクラシコ出場を果たしたセルヒオ・ラモスも「Ha salido bien la estrategia de presionar arriba y quitarles el balón/ア・サリードー・ビエン・ラ・エストラテギア・デ・プレシオン・アリバ・イ・キタールレス・エル・バロン(高い位置からプレスをかけてボールを奪うという作戦が上手くいった)」と認めていたんですけどね。バレンシア戦に続く、二匹目のドジョウを狙った彼らは15分過ぎには何度もCKでチャンスを作ることに。実はその時、バランが最初はフランス代表の同僚、レングレにスパイクで太ももを踏まれ(https://bit.ly/2Z8VV0C)、2度目は後ろからラキティッチにユニフォームを引っ張られてと、一般的にはペナルティと見なされる行為があったんですが、何故だか、主審もVAR(ビデオ審判)もスルー。

それにはカセミロなども「Nos vamos enfadados porque al menos lo podían haber revisado/ノス・バモス・エンファダードス・ポルケ・アル・メノス・ロ・ポディアン・アベール・レビサードー(少なくとも見直すことはできたんだから、ボクらは怒っている)。それでPKになるかならないかは別としてね」と抗議していましたが、でもねえ。「Estábamos emparejados en el uno contra uno/エスタバモス・エンパレハードス・エン・エル・ウノ・コントラ・ウノ(ウチは1対1で敵にペアにされていた)。ボールを持つたび、3対3の状況にされてしまった」とバルベルデ監督が話していたバルサが前半、メッシからの絶妙のループパスをジョルディ・アルバがゴール前で外すという運にも恵まれていましたからね。

おかげで0-0のままハーフタイムに入り、あれだけチャンスがありながら、ゴールにならないとはまるでお隣さんの試合のようだと私も拍子抜けしていたんですが、まさか後半もまったく得点が入らないとは!ええ、それさえなければという、12月の頭にアトレティコがバルサに0-1で負ける原因となったゴールを入れたメッシも後半、5分過ぎにスタンドから、いくつもの黄色いボールがカタルーニャ独立派の抗議行動として投げ入れられ、気が散ってしまったんですかね。14分にはその日、自身唯一のチャンスの失敗。

一方、マドリーも26分にはメンディのアシストでベイルがゴールを入れたものの、前者のオフサイドで認められずと、そのままスコアレスドローで終わってしまったんですが、いやあ、聞けばクラシコが両者無得点で引き分けるのは17年ぶりだったとか。その最後は2002-03シーズン、永遠のライバルに移籍したフィーゴがカンプ・ノウに戻り、CKの時、スタンドからコチニージョ(子ブタの頭)が飛んできた試合だったそうですが、まあこの日、試合後にスタジアムの外で9人が逮捕される小競り合いなどはあったとはいえ、大量のファンのピッチ乱入など、事前に恐れられていた妨害行為がなかっただけでも良かったんでしょうかね。

この結果、クラシコ前同様、同じ勝ち点でバルサ1位、マドリー2位のままとなったんですが、やっぱり最近、ゴールには不自由していない余裕ですかね。試合後の記者会見で得点できなかったことについて訊かれたジダン監督は、「Yo creo que la falta de gol ha sido algo puntual/ジョ・クレオ・ケ・ラ・ファルタ・デ・ゴル・ア・シードー・アルゴ・プントゥアル(ゴール不足は一過性のことだと思う)」と全然、心配してないよう。更に「No estoy contento por los jugadores, porque merecieron más/ノー・エストイ・コンテントー・ポル・ロス・フガドーレス、ポルケ・メレシエロン・マス(満足はしていない。選手たちはもっといい結果に値いしたからね)」と、強敵相手に互角以上に戦ったチームに自信を得ていたようですが、週末のリーガ年内最終戦は若干、バルサの方が有利かも。

だってえ、1日早い土曜とはいえ、彼らはコパで1チームだけ、格下相手に敗退したアラベスをホームに迎えるのに比べ、日曜午後9時(日本時間翌午前5時)から、今年のリーガ戦でトリを務めるマドリーがサンティアゴ・ベルナベウで激突するのはアスレティックなんですよ。相手は火曜にインテルシティ(3部)とのコパに0-3で勝利している上、ここで勝てば、ヨーロッパの大会出場圏内でクリスマスを祝えるかもしれないというモチベーションンがあるとなれば、そうそう簡単な試合にはならないかと。

ちなみにマドリーではこの一戦、クラシコでイエローカードをもらい、とうとう累積警告でカセミロが出場停止になるのに加え、足首を痛めたラモスも招集されるか微妙。負傷者ではハメス・ロドリゲスがチーム練習に戻ってきていますが、アザール、マルセロ、ルーカス・バスケスはまだリハビリ中です。何はともあれ、スペインが大型低気圧に襲われた今週、マドリッドも雨続きだったため、いい加減、傘なしで出かけられる夜になってくれたら、有難いんですが…。

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