ちょっとだけ光が見えてきた…/原ゆみこのマドリッド

2019.12.14 17:00 Sat
「これで来年もヨーロッパの大会でワクワクできる」そんな風に私がホッとしていたのは木曜日、前夜にCL16強対決進出を決めたアトレティコに続き、弟分のヘタフェが12年ぶり、クラブ史上2度目のEL32強対決に出られるようになった時のことでした。いえ、言ってしまえば、今季のスペイン勢は優秀でCL出場4チーム、EL出場3チームの全てがグループリーグを突破。月曜正午(日本時間午後8時)から行われる決勝トーナメント組み合わせ抽選会をいそいそと待っている状態なんですけどね。
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ただ難点はレアル・マドリーも含め、マドリッド勢は皆グループリーグを2位で通過。そのため、2月の18、19or25、26日と3月10、11or17、18日にあるCLの対戦はグループを首位で終わった違う国のチーム、PSG、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティ、ユベントス、リバプール、ライプツィヒの中から相手が決まる(マドリーとPSG、アトレティコとユベントスは同グループだったため、当たらない)となれば、もうかなりの高確率で決勝でもおかしくないカードが生まれるのは避けられない?うーん、2008年ラウンドルップ監督時代のUEFAカップ準々決勝バイエルン戦の盛り上がりを忘れていないヘタフェファンの間には、2月20日、27日の32強対戦にインテルやアヤックスといった、CL3位敗退で回ってくる大物の来訪を望む声もあったんですけどね。それ以外にもELグループ首位突破組にはアーセナル、マンチェスター・ユナイテッド、ポルト、セルティックらの名門老舗チームもあり、私としてはまだこの段階では次ラウンド進出も決して夢ではないマルメ(スウェーデン)、リンツ(オーストリア)、ヘント(ベルギー)、バシャクセヒル(トルコ)辺りが来てくれると嬉しいんですが、ま、それは抽選を見てのお楽しみということにしましょうか。
とりあえず、今週のマドリッド勢の試合をお伝えしていくことにすると、すでに首位突破が決まっていたバルサがインテルに1-2で勝利、敗退の危険性もあったバレンシアもアヤックスを0-1で倒し、堂々の1位通過を果たした後の水曜、マドリーとアトレティコがグループ最終節に挑んだんですが、いやあ、もう今の時期のワンダ・メトロポリターノはヒートテック2枚重ね、毛糸の帽子、ホッカイロ携帯でもかなり冷えるんですよ。おまけにアトレティコはここ5試合白星がなく、しかも3試合連続無得点という不毛な展開が続いていたため、いくら相手のロコモティフ・モスクワはすでに4位敗退が決定済み。しかもこの日の試合を最後に2月までの冬休みとあって、半分バケーション気分だったとしても決して楽観はできなかったんですが…。

まさか開始1分も経たないうちにコレアのパスを追ったジョアン・フェリックスがGKコチェンコフに倒されて、PKをもらえるなんて!あまりのラッキーさに我が目を信じられなかったファンは私だけではなかったと思いますが、そこは期待を裏切ることでは定評のあるアトレティコ。ええ、せっかくジョアンが蹴ってやろうとボールを持っていながら、PKマークには”モノ”・ブルゴス第2監督の作ったリストで第1キッカーだったトリピアーが。しかも「Trippier era el mejor, normalmente mete seis o mínimo cinco en cada entrenamiento/トリピアー・エス・エル・メホール、ノルマルメンテ・メテ・セイス・オ・ミニモ・シンコ・エン・カーダ・エントレナミエントー(トリピアーが一番上手くて毎回、練習では6本、最低でも5本は決めていた)」(シメオネ監督)うち、その6本目の外れに当たってしまうとは、いやはやもう。GKに弾かれた上、ポストにも嫌われて得点にならないって、もしやこのチーム、ゴールの神様に呪われていない?
ええ、実際このPK失敗の後、サウールなど「Han venido muchos fantasmas del pasado/アン・ベニードー・ムーチョス・ファンタスマス・デル・パサードー(昔の嫌な思い出が沢山、浮かんできた)」そうですが、幸いアトレティコ歴の短い選手が多いこの日のチームは落ち込まず、攻撃を続行。すると16分には1度はスルーされたプレーがVAR(ビデオ審判)からの連絡により、敵のエリア内ハンドだったとされ、再びPKがもらえたとなれば、捨てる神あれば拾う神ありとはまさにこのことです。ええ、今度はジョアンがボールを離さず、キッカーはモラタだよとシメオネ監督の指示を伝えるコケの声にも耳を貸さず、しっかりゴールを決めてくれたから、どんなに場内の空気が軽くなったかと。

だってえ、今季のアトレティコはトリピアーの前にもモラタ、ジエゴ・コスタがPKに失敗して、5回中2回しかゴールになっていないんですよ。ジョアン自身も後で「父がいつも試合の責任を負うのを避けてはいけないと言っているし、ボクはPKを入れるのが好きなんだ」と言っていましたが、まだ弱冠20才とはいえ、アトレティコだって凡人に1憶2700万ユーロ(約155億円)の移籍金を払う訳もなし、このくらいの働きは初年度からしてもらっていいのでは?その後も何回か、チャンスでモラタやコレアにパスをせず、自分でシュートを撃つことを選び、惜しくも外れてしまったため、少々エゴイストのきらいがあるのかと疑われてしまった彼ですが、いやいや。ここ数試合、あれだけ絶好機を迎えながら、ゴールにならない先輩たちの姿を見ていれば、それも無理なかったんじゃないでしょうか。

実際、26分にはコレアのスルーパスをモラタがシュートし、5試合ぶりにネットを揺らしたんですが、オフサイドをVARに見咎められ、せっかく当人がベンチまで駆け戻り、チームメートとお祝いしながらも追加点にはならず。そのまま1-0で後半が始まり、ドイツでレバークーゼンがユベントスと0-0のまま、必要な勝ち点3を取れていないことがかろうじて、慰めになっていたアトレティコでしたが、8分には待望の2点目が決まることに。ええ、それは同時刻、すでに2位突破以外の可能性がなく、若手中心のメンバーでクラブ・ブルージュと試合をしていたお隣さんがロドリゴのゴールで先制点を挙げた直後のことで、短いCKからコケが上げたクロスをフェリペがゴール前からvolea(ボレア/ボレーシュート)して、ポルトからの移籍後初得点をゲット。

いやあ、まさか29才にもなる彼がその後、側転宙返りを見せてくれるとは思いませんでしたけどね。この2点であとは特に危ない場面もなく、2-0とロコモティフを下したアトレティコはクリスチアーノ・ロナウドとイグアインの元マドリーコンビのゴールでユベントスがレバークーゼンに勝つまでもなく、グループ2位での突破を確定できたんですが、うーん、効率面においてはまだまだ問題が山積み。何せ、この日も計23本ものシュートを撃ちながら、たったの2点ですからね。本当に彼らのゴール日照りが終わったのかわかるのは、たった勝ち点差1ながら、3チームも追い越さないといけない7位まで落ちてしまったリーガの順位をCL出場圏の4位まで戻せるかは土曜午後9時(日本時間翌午前5時)から、再びワンダでプレーするオサスナ戦の出来次第といったところでしょうか。

そしてロドリゴの先制点はその2分後、バナケンのゴールで帳消しにされてしまったものの、後半19分にはビニシウスが勝ち越し点を挙げ、更にロスタイムにはモドリッチが3点目を決めて1-3で勝利。せっかく先発のチャンスをもらったヨビッチが不発だったのと、ここまで出ずっぱりだったカセミロを休ますことができなかったことだけが少々気掛かりながら、無事に消化試合を終えたマドリーの方はというと、ブルージュから戻ってみれば、もう世間は日曜午後9時からのバレンシア戦をすっ飛ばしてクラシコ(伝統の一戦)話題一色だったんですよ。

いえ、それも現在、同じ勝ち点で首位を争っている両チーム、どちらが強いかではなく、本来10月にやるはずだった試合をバルセロナ市内の治安を懸念、来週水曜に延期したため、逆にカタルーニャ独立派が着々と市内集会やカンプ・ノウでのデモンストレーション計画を立てられる事態に。おかげでマドリーのプラット空港からのホテル入り、ホテルからスタジアムまでの移動に困難が見込まれるだけでなく、もしかしたら最悪、invacion masiva al campo/インバシオン・マシバ・アル・カンポ(ピッチへの大量乱入)が起きるかもしれないって、うーん、まあ私のようにTVで見る分にはいいんですけどね。試合が12月になったおかげで都合がついたと、現地観戦を予定しているファンには不安しかないかと。

一応、メスタジャでのバレンシア戦ではCL遠征に同行しながら、出場の機会がなかったベイル、あと1枚で累積警告となり、クラシコに出場停止となる危険があるカセミロらが先発するのかどうか、そこへマルセロが負傷、メンディが出場停止の左SBが誰になるのかといった辺りに興味が持たれますが、相手もマキシ・ゴメス、ガメイロらのFWを含め、負傷欠場者6人と戦力ダウンしているとはいえ、CL決勝トーナメント出場で選手たちの士気が上がっていますからね。土曜にアウェイで4位のレアル・ソシエダに挑むバルサ同様、首位決戦前に躓けないのはお互い様ですが、果たしてどうなるんでしょうか。

え、それで木曜に氷雨の降る中、コリセウム・アルフォンソ・ペレスにクラスノダールを迎えたヘタフェの試合はどうだったのかって?いやあ、2週間前にはドシャ降りの中、レバンテ相手に4-0とgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)勝利をしていた弟分だったため、悪天候は心配していなかったんですが、同じ勝ち点の相手とは引分けても2位のままでいられるせいだったんでしょうかね。せっかくリーガ用のAチームを起用しながら、とにかく前半はチャンスがなく、かといってやはりバケーションのトバ口にいるロシア勢も攻め込んで来る訳でもなしと、カッパを着てスタンドで応援していたファンにはちょっと辛い展開に。

でも後半半ば過ぎにジェイソンがケネディに、アンヘルがホルヘ・モリーナに代わったところ、いきなりゴールが入りだしたんですよ。ええ、31分にCKからマタが頭で繋いだボールをカブレラが、こちらもヘッドで先制点を入れたかと思えば、その2分後にはニヨムのクロスをモリーナが蹴り込んで、あっという間に2点差になったから、驚いたの何のって。更に41分にはケネディがエリア外からシュートを決め、最後は3-0と完勝で決勝トーナメント行きの切符を掴んだヘタフェでしたが、残念ながら、バーゼルもトラブゾンスポルに勝ったため、2位という状況は変わりませんでしたっけ。

ただ、本当に彼らが羨ましくなるのはゴールを入れてくれるCFを3人も抱えているからで、うーん、その試合最後のプレーでケネディが足首を痛めてしまったのは気になりますけどね。これで来年もEL2試合が保障され、現在リーガでもマドリッド2番目のチームとして、来季EL出場圏の5位につけるヘタフェはこの週末、日曜正午からホームでバジャドリー戦。37才のモリーナ、32才のアンヘル、31才のマタの30代トリオに付け入る隙を見つけられず、昨季の後半から河岸を変えた28才のセルジ・グアルディオラが古巣を訪問するのもありますが、今季からヘタフェFW陣に加わった32才のエリック・ガジェゴも何だか、同じ道をたどりそうなのはちょっと皮肉ではありますね。

そして一足早く、金曜に3年前、1部昇格の立役者となったアシエル・ガリターノ監督率いるアラベスとのリーガ戦を迎えたもう1つの弟分、レガネスはハーフタイム入り直前にブライトワイテのゴールで先制したんですけどね。後半36分にはまたしてもCKクリアにもたついた挙句、ホセルに同点弾を許し、1-1の引き分けで終了。前節のセルタ戦に続いての2連勝とはならず、これで残留ラインの17位マジョルカまで、勝ち点差4と、年内の降格圏脱出は不可能になってしまいましたが、今節はそのマジョルカと18位のセルタの潰し合いが日曜にありますからね。来週はまず、火曜にコパ・デル・レイ1回戦、アンドラ(2部B)もありますが、クリスマス前最後の試合となる、ELはグループ1位突破ながら、リーガ現最下位エスパニョールとのブタルケ決戦を頑張ってくれればと思います。

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