才能の差が如実に出てしまった…/原ゆみこのマドリッド

2019.12.03 12:00 Tue
「明暗クッキリだわ」そんな風に私が頭を痛めていたのは月曜日、15節の終わったリーガの順位表を見直していた時のことでした。いやあ、弟分のレガネスが最下位なのは今に始まったことではなく、残留ラインに位置する17位マジョルカとの差が勝ち点8なのも変わっていないんですけどね。クラブの予算規模を考えると、それに匹敵するぐらい、恐ろしい状況になってきたのがアトレティコで、先週末前はまだCL出場圏内の4位、首位に並ぶバルサ、レアル・マドリーとも勝ち点3差でかろうじて、優勝争いに喰らいついていた感があったのが、今やセビージャだけでなく、レアル・ソシエダ、アスレティックにも追い越されて6位まで後退。
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おまけに首位勢2チームは16日に延期されていたクラシコ(伝統の一戦)で雌雄を決するため、このままだとその勝者との勝ち点差は9まで拡大しますし、3位のセビージャにも離されてしまいましたからね。更に弟分ヘタフェがたった勝ち点1差で7位につけているとなれば、当面はガチでEL出場権争いに臨まないといけないって…こうなると、もしや今季のCLグループリーグを3位敗退して、4度目のEL優勝で来季のCL出場権ゲットを目指した方がいいかもしれないって私が大袈裟すぎる?まあ、4位との差はまだ勝ち点1しかないため、そこまで悲観的になる必要はないんでしょうけど、とりあえず、先週末のマドリッド勢の試合がどうだったか、順番にお伝えしていくことにすると。土曜の午後1時、トップバッターを飾ったお隣さんはキックオフから、雨がザーザー降るメンディソローサでアラベスと対戦。火曜のPSG戦で足首を負傷したアザールに代え、ベイルを入れただけでなく、GKもクルトワからアレオラへとローテーションを行ったジダン監督でしたが、前半は何度かチャンスはあったものの、両者無得点で終わります。
でも、どこぞの誰かさんとは違い、彼らはFW以外にも得点できる選手を抱えているんですよ。ええ、後半7分、あとでアシエル・ガリターノ監督も「ウチは事前にマドリーのセットプレーについて話し合っていたが、ellos tienen el talento de poner ese buen balon y como lo remata Sergio Ramos/エジョス・ティエネン・エル・タレントー・デ・ポネール・エセ・ブエン・バロン・イ・コモ・ロ・レマタ・セルヒオ・ラモス(彼らにはいいボールを上げて、セルヒオ・ラモスがあんな風に撃ち込むというタレントがある)」と嘆いていたように、クロースが蹴ったFKをキャプテンが頭で流し込んで先制しているんですから、ベンゼマに当たりがない日があっても全然、大丈夫?

ただこの日はラモスのツキが吉凶混合だったようで、20分にはエリア内でホセルの顔を腕で払ってPKを献上。ルーカス・ペレスに同点にされてしまったマドリーでしたが、その4分後には2試合連続で先発出場を果たしたイスコがジダン監督の期待に応えます。いえ、モドリッチのクロスをGKパチェコの前でヘッドしたボールは弾かれてしまったんですけどね。こぼれ球に駆けつけたカルバハルが蹴り込んで勝ち越し点を挙げてくれたとなれば、もう安心。
それこそ、この日は午後4時から、2部の弟分アルコルコンがウエスカを迎える試合を見るため、アトーチャ駅からセルカニアス(国鉄近郊路線)に乗っての移動が控えており、それからしばらくして近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)を出ないといけなかった私にはまさに好都合の展開だったんですけどね。幸い終盤、アラベスが7回にも渡るCK攻撃をかけてきたのも、途中、主審の無線機器が壊れてしまったせいでのロスタイム8分となった試練も何のその、マドリーはリードを守って2-1で勝利することができましたっけ。

おかげで「Ha sido un partido duro, pero con estos partidos se ganan la Liga/ア・シードー・ウン・パルティードー・ドゥーロ、ペロ・コン・エストス・パルティードス・セ・ガナン・ラ・リーガ(ハードな試合だったけど、こういう試合があって、リーガ優勝できるんだ)」(マルセロ)という貴重な勝ち点3を獲得したマドリーですが、今週土曜の午後1時にサンティアゴ・ベルナベウで対戦するのも降格圏にいるエスパニョール。最近は攻守共に調子がいいですし、今は絶好の稼ぎ時と言っていいのかもしれません。

え、ヘタフェやレガネスに行くよりちょっと電車に乗っている時間は長いものの、ラス・タマラス駅からすぐのサント・ドミンゴに着いたところ、岡崎慎司選手がスタメンでなかったのにはガッカリしなかったかって?いやあ、スタンドで日の丸の国旗を広げていた日本人カップルもそうだったんじゃないかと思いますが、アウェイでの不調を鑑みて、ミチェル監督が前線を入れ替えてきたのは結果的に大成功。ええ、前半こそ、ダトコビッチのゴールがVAR(ビデオ審判)により、オフサイドで認められなかったものの、後半18分にはフアン・カルロス・レアルが抜け出して先制点を挙げると、25分にもエウゲニのシュートが弾かれたところをミケル・リコが決めたとなれば、2週間前のフエンラブラダ戦にも駆けつけていた大勢のウエスカファンがどんなに喜んだことか。

ちなみに岡崎選手が登場したのは後半37分のことで、あまりチャンスも作れなかったアルコルコンに0-2と堂々、チームが勝利するのをピッチの上で祝っていたんですが、ミックスゾーンで訊いたところ、「控えになるは試合前のミーティングで知った」そう。「最近、先発が続いていたし、アウェイで自分のパフォーマンスが良くないのもあったのかな」と反省していましたが、こういうタイミングでこそ、自身もリフレッシュして調子を上げていくのが大事なのだとか。「ミチェル監督のサッカーはボールを丁寧に繋いでいくものだから、なかなかFWにパスが集まらないという特徴もあるけど、ワンチャンスしかなくてもゴールを入れていかないとね」と決意を語っていましたが、何より喜ばしいのはすっかりチームに溶け込んでいるように見えたことだったかと。

ええ、週1で学んでいるスペイン語はまだマスターするには程遠いとあって、チームで食事をしている時など、「言葉ができないせいでオレ、空気?みたいな気がすることはある」ものの、「ボールがあれば仲良くなれるのがサッカー」。ウエスカ(スペイン中東部)の町でもよく地元の人たちから声をかけてもらえるようで、レストランなどに入っても良くしてくれるため、「そういうところのチームだからこそ、何かを成し遂げたいという意欲が出てくる」のだとか。何せ、今の彼らはグティ監督率いるアルメリアと同勝ち点で並んで3位。この日のように苦手のアウェイも克服していければ、来季は最速1部Uターンも夢ではないため、岡崎選手も気合が入りますよね。

いやまあ、マドリッド勢を応援する私としてはアルコルコンやパコ・ヘメス監督のクビが危なくなっているというラージョを心配しないといけないところなんですが、この先、日本人選手が試合に来る機会は2月にアルコルコンと柴崎岳選手のデポルティーボ、ラージョとウエスカの対戦までないんですよ。ただ、それとは別にしても2部の3チームのスタジアムはピッチの近くで迫力のプレーが見られたり、当日のチケットが売り切れになったりすることがほとんどないため、1部のカードとスケジュールが合わないファンがちょっと覗いて見るのもお勧めですが、一番行きやすいのはやはり、ラージョのエスタディオ・バジェカスでしょうか。

そしてアルコルコンから私が家に戻った頃から本格的に降り始めた雨は翌日曜、マドリッドでは1日中止まなかったんですが、正午から、好天のラモン・サンチェス・ピスフアンでセビージャに挑んだレガネスは、いえ、序盤にCBシオバスがヒザを痛め、負傷交代となったものの、オスカルやエン・ネシリが先制点のチャンスに恵まれたんですけどね。結局、後半18分にGKクェジェルが弾いたクンデのchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)をディエゴ・カルロスに押し込まれ、そのまま1-0で負けてしまうことに。就任から3試合、まだ初白星を挙げられていないアギーレ監督も「Nos falto un gol/ノス・ファルトー・ウン・ゴル(ウチは1点が足りなかった)」と嘆いていたんですが、ここまではレアル・ソシエダ、バルサ、セビージャと相手は上位チームばかり。真の残留への戦いが始まるのは今週日曜、ブタルケで行わる18位のセルタとの試合からになるはずです。

一方、夜9時にワンダ・メトロポリターノでのバルサ戦が控えていたため、私が行けなかったコリセウム・アルフォンソ・ペレスでのヘタフェvsレバンテ戦は何せ、同じマドリッドですからね。ザンザン降りが続く中でのプレーとなったんですが、もしかして彼らも出来のいい方の兄貴分に似て悪天候に強い?だってえ、前半を0-0で終えると後半は大変身。9分にジェイソンのCKをカブレラがヘッドで決めて先手を取った後、15分にもホルヘ・モリーナが自ら獲得したPKを沈めて、さくさくと2点リードしちゃったんですよ。それで満足した私が早めにメトロに乗ったところ、22分にもアンヘルがCKから頭で追加点、33分にも今度はティモルがレバンテの壁の下を通り抜けるFKで4点目って、まさに氷雨の中、合羽を着て見に来てくれたファンに報いる完勝と言っても過言ではない?

おかげでシメオネ監督就任以来、リーガ戦では1度も勝っていないバルサとの試合を見るのにちょっとだけ勇気が出た私でしたが、うーん、スタメンアナウンス時はもちろん、ボールに触れる度に沸き上がるグリーズマンへのpito(ピト/ブーイング)はすでに織り込み済みだったため、驚かされはしなかったんですけどね。むしろ、目を瞠ってしまったのは序盤から、アトレティコが攻めていたことの方で、前半はヘルモーソがゴール右前からのシュートを2度失敗。モラタも強烈ヘッドをGKテア・シュテーゲンに弾かれるなど、決してやられっぱなしではなかったんですが…。

要はレガネスと同じでゴールが入らないんですよ。後半もフォンド・スール(ゴール裏南側席)のウルトラたちが、「Querias tener un nombre y se te olvido ser un hombre/ケリアス・テネール・ウン・ノンブレ・イ・セ・テ・オルビド・セル・ウン・オンブレ(名を馳せたくて男であることを忘れた)」と昨季までのエースに当てつけた横断幕を掲げたり、「Griezmann muerete/グリーズマン・ムエレテ(信じまえ)」とカンティコ(チャント)を歌っているのに気を取られている間、モラタから始まったカウンターがトマス、コレアのシュート失敗で終わるという、根深いゴールアレルギーを見せつけられた後にはとうとう、シメオネ監督が唯一の希望の光だったジョアン・フェリックスをビトロに交代。

もっとも夏に1憶2700万ユーロ(約153億円)でベンフィカから加入した20才は1憶2000万ユーロ(約145億円)を残して、バルサに河岸を変えたグリーズマン同様、目立った働きをしていた訳ではありませんが、でもねえ。すでにもうスコアレスドローでも仕方ないというムードがスタンドに漂っていた40分、勝負に決着をつけたのは翌日にはパリで6回目のバロンドール授賞式が控えていたメッシ。ええ、それまでも2度程、カウンターを主導し、ルイス・スアレス、グリーズマンのシュートに繋げていた彼が3度目の正直とばかり、レマルのサイドチェンジしたボールを受けたセルジ・ロベルトに合わせて走ると、ルイス・スアレスとのリターンを経て、GKオブラクの右脇の狭い隙間を抜くシュートを決めてしまったとなれば、場内がシーンとしてしまっても仕方なかったかと。

結局、バルベルデ監督も「カウンターというのは走ること。スペースを選んで上手く走らないといけない。メッシのようなテクニックある選手はその間、レーダー全開で的確なパスコースがわかっている。皆がマークを外して動くから、para los jugadores con tanto talento es mas facil decidir/パラ・ロス・フガドーレス・コン・タント・タレントー・エス・マス・ファシル・デシディル(あれだけのタレントのある選手は決めるのがより簡単になるんだ)」と話していましたが、はい、つまりは才能の問題です。いえ、シメオネ監督は「Hay que entender que estamos en un ano de transicion/アイ・ケ・エンテンデール・ケ・エスタモス・エン・ウン・アーニョ・デ・トランシシオン(ウチは移行期にあることを理解しないといけない)」と言っていましたけどね。

「Prefiero jugar mal y ganar/プレフィエロ・フガール・マル・イ・ガナール(悪いプレーしても勝つ方がいい)」と当人は話していたとはいえ、傍目には何度も何度も懲りずにミスを繰り返しているように見えるサウールやコレア、トマスなどもう、ずっといる選手なんですよ。大体、それ以前に帰り道、メトロのエスタディオ・メトロポリターノ駅でファンたちが「昔はフォルランとかアグエロ(現マンチェスター・シティ)、ファルカオ(現モナコ)なんかがいて、バルサと撃ち合っていたよな」と愚痴っていたように、チャンスにゴールを決められないのはもう本当に個人の資質としか言いようがないかと。

それよりもっとガッカリだったのが、シメオネ監督がまた「El Madrid y el Barca no me preocupan, me preocupa el Sevilla, que ya nos saca cinco puntos/エル・マドリッド・イ・エル・バルサ・ノー・メ・プレオクパン、メ・プレオクパ・エル・セビージャ、ケ・ジャー・ノス・サカ・シンコ・プントス(マドリーとバルサのことは心配しない。気になるのはセビージャで、もう勝ち点5差をつけている)」と再びクラブの最低限ノルマ、4位以上でCL出場権確保さえすればOKの姿勢に戻ってしまったように見えることで、いえ、サラリーキャップが限度額までいっぱいのところ、椎間板ヘルニアの手術でジエゴ・コスタが全治3カ月となってしまい、売るにも売れず。1月の補強も難しいとあって、ない袖は振れないのはわかっているんですけどね。

ただ最近はシメオネ監督への不満もファンから聞かれますし、このまま金曜のビジャレアル戦でも勝てないようだと果たしてどうなることやら。とりあえず現在、直接ライバルとなったヘタフェは日曜、同じくアウェイで乾貴士選手のいるエイバルと当たりますが、何せ彼らも昨季はあと一息でCL出場圏の4位に滑り込むところでしたからね。油断している間にアトレティコがマドリー第3のチームになったりしていたら、きっとファンはカンカンですよ。

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