盛り上がってほしいけど…/原ゆみこのマドリッド

2019.11.18 20:30 Mon
「明日はお客さん、いっぱい来てくれるといいんだけど」そんな風に私が心配していたのは日曜日、雨の中、日もすっかり落ち、周辺を歩く人の姿も見えず、オフィシャルショップの灯りばかりが煌々と輝くワンダ・メトロポリターノにスペイン代表の練習を見に行った時のことでした。いやあ、3年ぶりに訪れたカディス(スペイン南部のビーチリゾート)では地元からの働きかけが功を奏し、ラモン・デ・カランサでの前日セッションが急遽、一般公開されることになったんですけどね。
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やっぱりマドリッド市民はいつでも代表選手を見られると思っているのか、スタジアム解放の気配などまったくなく、マスコミだけしか入ることができなかったんですが、ガラガラのスタンドを背景に選手たちが全員参加の巨大ロンド(中に入った選手がボールを奪うゲーム)やpartidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)、シュート練習などをこなしていくのを見ているうちにもし、月曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのユーロ2020予選最終節、ルーマニア戦もガラガラだったらどうしようというイヤな予感がしてきたのは私だけじゃない?え、金曜のマルタ戦は久々に景気のいい試合だったんじゃないかって?まあ、その通りで、キックオフ前にはスタンドにセルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)の描かれた巨大な垂れ幕が現れ、10月に達成した代表最多出場168試合を祝っていたんですけどね。ただ、それもこの合宿中にラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設でW杯、2つのユーロのトロフィーとポーズを取って撮影した写真をプリントしただけのものと、ちょっとやっつけの感がなくもなかったんですが、当人は嬉しかったよう。早速、開始4分から、ヘッドでゴールを狙っていったんですが、いやいや。
餅は餅屋に任せましょう。序盤はマルタが敷いたスペインの苦手とする5人DF制に少々、手こずったようでしたが、早くも22分には転機が訪れます。ええ、カソルラ(ビジャレアル)の放ったCKがロドリ(マンチェスター・シティ)、敵DF、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)らの頭を経て落ちた先にちゃっかりいたのはモラタ(アトレティコ)。ボールを軽く蹴り込んで、ここ6試合連続得点中というツキが代表に来ても変わってないことを示してくれたから、私もホッとできることに。同時にこれで彼のこの日のお勤めは終わったなとも感じたんですが、まあそれはそれ。

その後も何度かチャンスを迎えたスペインに2点目が入ったのは40分のことで、こちらはヘスス・ナバス(セビージャ)、ジェラール・モレノと繋ぎ、最後はカソルラが代表で4年ぶりとなるゴールを挙げたんですよ。何せ、一時は足首のケガで再起不能と言われ、何十回も手術を繰り返して復活した、根性の塊のような選手ですからね。後半8分に打撲を受けてパコ・アルカセル(ドルトムント)と交代した時には、ラモン・デ・カランサ(2部カディスのホーム)のファンも大拍手で見送ったんですが、本格的なgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)が始まったのはその後でした。
ええ、ロベール・モレノ監督も「Hemos interpretado bien la defensa suya de cinco/エモス・インテルプレタードー・ビエン・ラ・デフェンサ・スジャ・デ・シンコ(ウチは相手の5人DF制を上手く解釈した)。内側にスペースがあるのはわかっていたからね」と言っていたんですが、17分にはラモスに代わり、先月から招集されだした22才のCB、パウ・トーレス(ビジャレアル)がデビュー直後にサラビア(PSG)のクロスを胸で押し込んで代表初得点もゲット。その1分後にはジェラール・モレノがサラビアにアシストして4点目が決まると、23分にはA代表初招集で初出場したばかりのダニ・オルモ(ディナモ・ザグレブ)まで、チアゴ・アルカンタラ(バイエルン)のラストパスからGKボネッロをかわして初ゴールを挙げているって、ちょっと話が出来すぎていない?

こんな流れになったおかげか、アシストや得点に絡むプレーをずっとしながら、自身はゴールをオフサイドで取り消されたり、シュートを外してしまったりと、その日はツキに見放されていたようなジェラール・モレノも26分、ロドリのクロスをベルナト(PSG)が誰もいないゴールマウス前に送り、代表初ゴールを記録することができましたが、最後の締めはやっぱりベテラン。ええ、40分にナバスがエリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決め、7-0という大差でスペインが勝利したとなれば、途中、再三のピンチにベンチから立ち上がった時に天井に頭をぶつけて出血。氷で傷を冷やしていたマルタのファルージア監督は気の毒だったものの、何とも来年6月のユーロに向けて心強いじゃないですか。

ただ、ちょっとややこしくて私も説明を避けていたんですが、この日の勝ち点3でグループ首位突破が確定したスペインとはいえ、30日に行われる本大会の組み合わせ抽選で第1シードとなるためには最後の試合に勝たないといけないんですよ。というのも今回は規則が変わって、これまでの国別係数を使わず、予選で獲得した勝ち点数順でシードランクが決まるから。おまけに予選10グループ中、半分は5チーム、残りは6チーム編成と差があるため、後者では最下位から取った勝ち点を除いて公正を保つのだとか。つまりスペインの場合、マルタに2勝した分の勝ち点6が引かれ、現在17ポイントとなるんですが、これが増えないと残りの予選結果次第では第1シードの6チームから落ちてしまうかもしれないという訳。

何にしろ、同勝ち点で複数チームが並んだりすると、また考えることが増えて面倒臭いというのもあるため、とにかくルーマニアに勝てば安心と思っておけばいいんですが、とはいえ、この方式ではオランダやドイツが第2シードになったり、前回優勝のポルトガルなど第3シードに落ちる寸前だったなんてこともあるため、第1シードなら強豪と一緒のグループにならないなんて保証はないんですけどね。ファンもあまりこの辺は気にしていない上、相手のルーマニアは金曜のスウェーデン戦に負けて予選敗退が決定。モチベーションがなくなってしまったため、ますますお寒い試合になると思われて、ファンの足が遠のく危険性がある方が困ったことかと。

うーん、日曜の記者会見ではロベール・モレノ監督も収容人数の多いワンダを会場に選んだことについて訊かれ、「グループ予選がどうなるかわからなかったからね。Pensábamos que nos podíamos jugar la clasificación en la última jornada/ペンサバモス・ケ・ノス・ポディアモス・フガール・ラ・クラシフィカシオン・エン・ラ・ウルティマ・ホルナーダ(最終節に予選突破が懸かることもありうると考えた)」と、当初はいざ大事な試合になった時、大勢のファンの応援をアテにできると見込んでいたようですけどね。まさか今になって、空席を心配するようになるとは一体、誰に想像できたでしょう。

まあ、そんなルーマニア戦の見どころなんですが、スタメンはご当地選手であるだけでなく、連続試合得点を8に伸ばしたいモラタ(アトレティコ)と最多出場記録を170に更新したいラモス以外、9人がマルタ戦から変わる予定。できれば、カディスで出番のなかったサウール(アトレティコ)も今週末のリーガで出場停止とあって、足がなまってしまうといけないため、使ってもらいたいところですが、まだ協会からユーロの本番でも指揮を執るかどうか、確約してもらえず、6月に辞任したルイス・エンリケ監督復帰の噂も絶えないモレノ監督にとっては、信頼にたる指揮官であることを世間に示す大事な一戦ですからね。それだけに調子のいい選手を並べてくるんじゃないかと思いますが…何はともあれ、1人もケガ人が出ずに終わってほしいものです。

え、paron(パロン/リーガの停止期間)中の週末は代表戦も地方だったし、私もヒマを持て余していたんじゃないかって?いやあ、1部のチームは練習も連休にしたところが多かったため、土曜には今季から2部に昇格したマドリッドの弟分、フエンラブラダがウエスカを迎える試合を観戦に行ったんですが、ホームのエスタディオ・フェルナンド・トーレスがこれまた、辺鄙な場所にあるんですよ。Googleの地図で出てきた経路案内を信用して、いつもブタルケ(レガネスのホーム)に行くのと同じ493番のバスにアルーチェ駅から乗ればいいだけと軽く見ていたら、とんでもない。所要時間16分なんて大ウソもいいとこ、50分以上もかかったせいで、ようやくスタジアムに到着した時にはキックオフから数分経っていたって、あんまりじゃないですか。

おかげで次回、行く時は絶対、メトロスール(地下鉄南線)のHospital de Fuenlabrada(オスピタル・デ・フエンラブラダ)から徒歩にしようと固く誓った私でしたが、大丈夫。ほぼ満員だったスタンドはホームファンの声で賑わっていたものの、まだ点は入っておらず、このところずっと先発出場を続けている岡崎慎司選手がウエスカの白いアウェイユニを身に着けてピッチにいるのも確認したんですが、先手を取ったのはフエンラ。前半12分にCKからグラデルのヘッドで1点を挙げると、いえ、岡崎選手も30分過ぎぐらいからはシュートを撃ったり、エリア内でボールを奪い合ったりして同点弾を探していたんですけどね。

後半8分にオウンゴールで2点差になると、途中出場のクリストが決めて一旦はウエスカも追い上げたものの、30分にはカウンターでフエンラが3点目をゲット。クリストのdoblete(ドブレテ/1試合2ゴールのこと)も及ばず、3-2と惜敗してしまうことに。いやあ、これで順位もフエンラが2位、ウエスカが4位と逆転したんですが、ちょっとお、この2部の新顔弟分、やたら高い順位にいない?うーん、試合後話をしてくれた岡崎選手によると、「フエンラは上手いと思う。2部でこんなにできるのかという感じで見ちゃうね」とのこと。まあ、敗戦の原因にはウエスカが「4-4-2であんまり繋がず、ロングボール蹴ってみたいなチームだとやりづらい。アウェイで先制点を取られると、かなりきついなあという気がする」というのもあったようですけどね。

加えて彼は「今日は90分、何もできなかったけど、レスターではすぐに出されなくなってしまうところが、今は監督に信頼してもらえている。でも安心はしていられない」と、ずっと先発で使ってくれているミチェル監督に感謝していましたが、何と言っても2部は42試合の長丁場。丁度、その夜にはGOL(スペインのスポーツ専門放送局)で香川真司選手がプレーするサラゴサとアルバセテの試合も見た私でしたが、彼も絶好の先制チャンスにシュートをゴールポストに当ててしまい、当人の交代後の終盤にはエグアラスがPKを失敗。それどころか、ロスタイムには敵に決勝点を奪われて0-1で負けたとなれば、こっちの方が悔しいかも。

大体がして、監督がアンケーラからルイス・セサールに代わっても流れが変わらず、その日もエクストレマドゥラに2-0と負けて15試合白星なしの最下位という状態なのに、柴崎岳選手を日本代表に派遣しているデポルティーボなどのことを考えれば、昇格プレーオフ出場圏にいるウエスカ、日曜には10位に落ちてしまったサラゴサだって、天国のようですが、まあこればっかりはねえ。

一応、マドリッド勢を応援する立場の私としてはフエンラが昨季のラージョ・マハダオンダ(アトレティコの練習場にあるミニスタジアムをホームにするチーム、ラージョ・バジェカーノとは無関係)のように2部B最速Uターンにならなければいいと応援しているんですが、うーん。本当に1部に上がってきたら、タクシーならマドリッドのセントロ(中心部)から40ユーロ(約4800円)ぐらいという説もあるものの、ヘタフェのコリセウム・アルフォンソ・ペレス、レガネスのブタルケ、アルコンコン(2部)のサント・ドミンゴよりもっと行きにくいフェルナンド・トーレスに通えるのか、ちょっと心配です。

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