代表戦は息抜きになる…/原ゆみこのマドリッド

2019.11.12 17:00 Tue
「誰が誰だかわからないわ」そんな風に私が困っていたのは月曜日、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設のスタンドでスペイン代表の練習を見ていた時のことでした。いやあ、前日、リーガ戦で本職でない左SBとしてフル出場したサウール(アトレティコ)やベティスとのアンダルシアダービーで死力を尽くして勝利をもぎ取ったヘスス・ナバス(セビージャ)といった日曜試合組の選手たちが20分程、ロンド(輪の中に入った選手がボールを奪うゲーム)と軽いランニングをしただけでジムに行ってしまったのは理解できるんですけどね。土曜にプレーしたセルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)やブスケツ(バルサ)を含む、大多数のメンバーが早上がりを選択してしまったのは一体、どうして?
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いえ、唯一の代表練習一般公開日、とっぷり日も暮れた午後7時という時間にわざわざ、見学に足を運んでくれたファンを失望させてはいけないと、ロベール・モレノ監督が知恵を絞り、その後は同時にグラウンドの反対側でロンドをしていて当惑させた、2021年ユーロ予選の準備中のU21代表の有志を集め、前代未聞の混成セッションでparidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)などはやってくれたんですけどね。いかんせん、現在のU21チームはオジャルサバル(レアル・ソシエダ)やファビアン・ルイス(ナポリ)、そして今回からはダニ・オルモ(ディナモ・ザグレブ)もA代表に昇進したため、ほとんどが1部チームの控えか、2部の選手ばかり。唯一、U21で私が見分けられる自信のあるククレジャ(ヘタフェ)も前日プレーしたせいか、グラウンドに姿が見えませんでしたしね。よって、スタンドの観客からはA代表で残っていたカルバハル(マドリー)、オジャルサバル、チアゴ・アルカンタラ(バイエルン)、ベルナト(PSG)、そして先月から、後輩チームに呼ばれているバルサ期待の新鋭、アンス・ファティらの名前を呼ぶ声が聞こえたぐらい。実際、私も練習より、近くでTVE(スペイン国営放送)のレポーターがカメラの前で広げていた、お披露目になったばかりの赤の濃淡の切り替えが斬新とも、けったいとも言われている新ユニフォーム(https://bit.ly/32DUsj3)の方が気になってしまったんですが、まあ、すでにユーロ本大会出場の切符を手に入れた彼らにとって、今回のマルタ戦、ルーマニア戦は1位を確定する目標しかありませんからね。来年の3月にはドイツとオランダとの親善試合もありますし、今はそんなにガチ見する必要もないのかもしれません。
え、それより先週末のマドリッド勢がどうだったのかが気になるって?そうですね、金曜に13節の先陣を切った弟分のレガネスはサン・セバスティアンでレアル・ソシエダと1-1で引き分け、初陣のアギーレ新監督に勝ち点1を贈ったんですが、兄貴分ではまず土曜にマドリーがイプルアでエイバル戦をプレー。それがまさに染みついたgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)体質は1度戻ると恐ろしいというか、CLガラタサライ戦でハットトリックを挙げたロドリゴをベンチに置いても平気なぐらい、他の選手たちにも感染していたんでしょうかね。「No han especulado para nada y han venido a por nosotros/ノー・アン・エスペクラードー・パラ・ナーダ・イ・アン・ベニードー・ア・ポル・ノソトロス(まったく様子見をすることなく、我々に勝ちに来た)」(メンディリバル監督)彼らが口火を切ったのは前半17分のことでした。

ええ、モドリッチのシュートがGKドミトロビッチに弾かれて逸れたところをベンゼマが撃ち込んで先制点を奪うと、その3分後にはアザールがエリア内でデ・ブラシスに倒されてPKをゲット。定例通り、それはセルヒオ・ラモスが決めたんですが、まさか29分にも今度はコテがローカス・バスケスにペナルティを犯すとは相当、エイバルのDF陣もマドリーの速攻に泡を喰っていた?2つ目のPKはこれも習慣となったか、ラモスがキッカーを譲り、ベンゼマがリーガトップに立つ今季通算9得点目を挙げたんですが、いやもう何だか。
ザーザー降りの中、水分を多く含んだ芝のせいか、ボールの走りが異常に速い上、そこをワンタッチパスでマドリーがどんどん繋いでいく光景には思わず、私も魅入られる程だったんですが、ホントに羨ましいですよね。10月の代表戦週間のすぐ後、マジョルカに1-0で負けて以来、改善のための練習に真摯に取り組んだとはいうものの、「Si mantienes la puerta a cero, decide nuestra calidad/シー・マンティエネ・ラ・プエルタ・ア・セロ、デシデ・ヌエストラ・カリダッド(無失点をキープすれば、ウチの質の高さが試合を決めてくれる)」(ジダン監督)と言い切れる、才能ある選手たちが揃っているのは。

後半16分にもモドリッチの折り返したパスをバルベルデがエリア前から撃ち込んで4点目を奪うと、ジダン監督はイスコ、ビニシウス、ブライムを投入し、今季はあまり出番のない選手たちの士気を高めるのに残り時間を使用。せっかく乾貴士選手が3試合連続で先発したエイバルが、「Hemos corrido mucho pero sin sentido/エモス・コリードー・ムーチョ・ペロ・シン・センティードー(ボクらは沢山走ったが、何かをしようという目的がなかった)」(エンリッチ)という状態だったのもあり、試合はそのまま0-4で終了することに。うーん、その日、最後の試合ではバルサがPK1本、FK2本のハットトリックを挙げたメッシ様々のおかげで4-1とセルタに勝ったものの、マドリーにとっては2チームに縮小した首位集団に残れたのもありがたかったかもしれませんね。

そして翌日曜はお昼のマジョルカvsビジャレアル戦でレンタル移籍中の久保建英選手がPK獲得に加え、リーガ初ゴール。同い年でマドリーに入団したロドリゴに負けじとばかり、チームを3-1の勝利に導く大活躍をしたのをマルカ(スポーツ紙)のサイトで知った後、ワンダ・メトロポリターノへ向かった私でしたが、北部のように傘こそ必要なかったものの、このところはマドリッドも天気が悪い日が多いんですよ。怪しい曇天に強風が吹いていたため、まだ11月なのにヒートテック2枚重ねの真冬装備で出動しないといけないとはまったく、この先が思いやられますが、感心だったのはようやく、アトレティコの選手たちにも学ぶ姿勢が出てきたこと。

ええ、このところ前半を眠って過ごす試合を繰り返していたのを反省、ジエゴ・コスタの代わりに入ったビトロを中心にキックオフすぐから、エスパニョール陣内に攻め入っていたんですが、前半15分、スルーパスで抜け出したモラタが1対1のvaselina(バセリーナ/ループシュート)を外してしまったのをキッカケにあっさり付け焼刃が取れてしまったから、さあ大変!いきなり得意の「3度のパスも続かない」状態に陥って、オンダ・マドリード(ローカルラジオ局)の実況アナなど、「Que falta de talento del Atletico!/ケ・ファルタ・デ・タレント・デル・アトレティコ(アトレティコにはタレントが何て不足しているんだ)」と幾度も嘆いていた程でしたが、その冴えたるシーンが38分にやって来ます。

そう、トマスが自陣エリア近くで放った危ないパスをコケがビクトル・サンチェスに奪われ、ダルデルの一撃にGKオブラクが破られてしまったんですよ。さすがにその瞬間は最近のガッカリする成績にも関わらず、応援を続けていたファンたちの間に静寂が広がりましたが、大丈夫。ハーフタイム入り直前、今度はトマスの大きなパスに抜け出したモラタがエリア内奥からクロスを上げ、コレアがほぼゴールライン上と言っていい位置でヘッド。ただ、これがスコアに上がるにはモラタにオフサイトがなかったか、VAR(ビデオ審判)に確認しなければならず、おかげで得点と同時に両チームはロッカールームへ。せっかくの今季初ゴールだったコレアもピッチでスタジアムDJのアナウンスと共に喜びを表現することができませんでしたが、まあそれは大したことではありません。

肝心なのは同点に追いついたアトレティコが自信を取り戻したことで、いえ、後半早々、CKの際にフェリペがダビド・ロペスに倒されたプレーはVAR検分の後、何故かフェリペのファールにされてしまったんですけどね。13分には再びビトロのパスに抜け出したモラタが今度はGKディエゴ・ロペスの脇を抜くシュートを決め、ここ6試合に渡る1試合1得点というお約束を果たしてくれたから、どんなにスタンドが歓喜したことか。

その上、40分にCKからダビド・ロペスが決めたゴールも脇でコケがひっくり返っていたため、ファールで無効になったという幸運にも恵まれた彼らはロスタイムにカウンター攻撃が成功。モラタと交代したジエゴ・コスタがエリア内右から出したラストパスをエレラがスルー。うーん、これには失点のキッカケを作ったキャプテンに花を持たせるためだったなんて意見もあったんですけどね。すぐ後ろにいたコケが意表を突かれながらもシュートを決めてくれたため、ようやく今季2度目の1試合3得点、お隣さんに比べると見劣りはするものの、アトレティコにとってはgoleadaと言ってもいい、3-1のスコアで勝利することができたのは良かったかと。

え、とりわけCLレバークーゼン戦で負けた後、選手たちに前半、モチベーションを与えられなかったと自身の責任を強調していたシメオネ監督は一体、この試合の前にはどんな口上で彼らのやる気を引き出したのかって?いやあ、記者会見で話した当人は「モチベーションは個人の内面的なことで、私たちは夢や希望をかき立てる部分に触れてそれを目覚めさせることができる。サッカーは人生同様、熱中と夢からできているからね。Lo que hablo en el vestuario, se queda ahí/ロ・ケ・アブロ・エン・エル・ベストゥアリオ・セ・ケダ・アイー(ロッカールームで話したことはそこに残る)」とはっきりとは言ってくれませんでしたけどね。

この日はリーガで19位と苦労しているエスパニョールが相手だったこともありますが、選手の才能や質ではお隣さんにかなり劣るものの、10月のparon(パロン/リーガの停止期間)からの7試合、3勝3分け1敗でも、何とか勝ち点差1の3位でアトレティコはリーガ上位争いに残っているんですから、そんなに悲観したものではない?今はとにかく、その日は試合前、50年目、65年目を迎えたソシオ(協賛会員)に記章を贈るワンダでの式典にゲスト出演(https://bit.ly/2pa8KdF)、その席で20才のバースデーを祝ってもらっていたジョアン・フェリックスが代表戦明けに復帰して、ちょっとだけでもサッカーで魅了してくれるチームになってくれるのを祈るしかありませんでしょうか。

そしてワンダを出る時、0-0だった弟分ヘタフェとオサスナの試合は私が近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)まで戻って来た後半15分過ぎもそのままで、いえ、先に言うと、最後までゴールは生まれず、スコアレスドローで終わったんですけどね。前半にはホルヘ・モリーナへのペナルティが認められなかったり、終盤も彼のシュートがゴールバーに嫌われてしまったりと押し気味ではあったんですが、負傷したGKルベンに代わったエレリンに2度もparadon(パラドン/スーパーセーブ)を披露されてはねえ。とはいえ、先週はELのバーゼル遠征で疲れている彼らですし、今節は順位も7位と変わらず。それどころか、来季のEL出場権がもらえる6位のアスレティックと勝ち点で並んでいるとなれば、首位まで勝ち点5に開いてしまったことなんて全然、嘆くことはありませんって。

ちなみに最後に代表戦週間終了後、23、24日の週末でのリーガも見ておくと、最下位キープを続けているレガネスは土曜にブタルケにバルサを迎えるという、更なる試練にさらされることに。日曜にエスパニョールとのアウェイ戦となるヘタフェは兄貴分の虎の威を借りたいところかと。次の週にCL5節の控える兄貴分たちはどちらも土曜にアトレティコがグラナダ遠征、マドリーがホームにレアル・ソシエダを迎えることになりますが、実はこちら、代表戦には別の意味で注目が。

ええ、前回のユーロ予選クロアチア戦でケガをして、それから1度もマドリーでプレーしていないベイルがウェールズ代表に着くなり、まったく普通に練習に参加していたことが物議を醸していたんですが、何せもう彼なしでもマドリーはゴール量産ができるようになりましたからね。逆にブラジルA代表に初招集されたロドリゴやウルグアイ代表に行ったバルベルデらが無事に帰って来てくれることの方がジダン監督には大事かもしれませんが…むしろ気が揉めて仕方ないのは19日に大阪で予定されているキリン・チャレンジカップで日本と対戦するベネスエラに招集されたロサレスを含む、クラブ史上初7人もの各国代表選手を送り出しているレガネスのアギーレ監督なんじゃないでしょうか。

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