立場はあまり変わらないけど…/原ゆみこのマドリッド

2019.11.09 17:00 Sat
「そういや、2試合勝ってなかったっけ」そんな風に私が思い出していたのは金曜日、スペイン代表がプラド美術館で11月の招集リスト発表記者会見をすると聞き、物珍しさで見に行った時のことでした。いやあ、先月のユーロ予選、スウェーデン、ノルウェイとの北欧2連戦ではどちらも1-1と引分けだったんですが、2020年ユーロ本大会出場は決まったため、全然、記憶に残っておらず。あとは来週土曜のマルタ戦、週明け月曜のルーマニア戦で1位突破を確定すればいいだけとあって、サッカー協会がメンバーをスペインの誇る芸術作品に絡めて発表するビデオ(https://bit.ly/2Q1pU8a)を制作したのもやはり、何かでファンの興味を惹く必要があったから?
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まあ、常連のセバージョス(アーセナル)が負傷でリスト落ちし、クロアチアで成長著しいダニ・オルモ(ディナモ・ザグレブ)がU21から昇格したのが主だった注目点だった今回の招集リスト(https://bit.ly/2WW4dry)に関してはともかく、最初のマルタ戦はカディス(スペイン南部のビーチリゾート都市)のカランサでの開催となるんですが、マドリッド訪問の予定のあるファンにお伝えしておきたいのは2点。来週月曜午後7時から、ラス・ロサス(マドリッド近郊)の協会施設での初日練習が一般公開されるのと、ルーマニア戦が18日午後8時45分、ワンタ・メトロポリターノでキックオフとなることで、時間の合う方は覗いてみるのも一興かと。ちなみにご当地選手となるアトレティコ勢では9月10月と1人参加だったサウールに加え、ここ5試合連続得点の実績を買われて復帰したモラタがいるんですが、いやもう、やはりセルヒオ・ラモスとカルバハルの2人が招集されたレアル・マドリーと共に今はむしろ、paron(パロン/リーガの停止期間)後のCLグループリーグ5節の方がずっと気になる状態になっていますからね。それは一体、どうしてかというと…。
今週は火曜にバルサがスラビア・プラハと0-0で引き分け、バレンシアが終盤の猛攻でリールに4-1と逆転勝ちした後、水曜夜9時に揃って試合をしたマドリッドの兄貴分チームだったんですが、結果は完璧に相反するものに。いえ、私はオンダ・マドリード(ローカルラジオ局)の2元中継を聴きながら、サンティアゴ・ベルナベウでガラタサライ戦を見ていたんですけどね。その日、長友佑都選手とマッチアップする右サイドに入ったロドリゴが前半4分、マルセロのクロスを拾って先制すると、7分にもマルセロの上げたボールを今度はヘッドで決めて2点目をゲット。更に14分にはエンゾンジがクロースの足を踏んだのがエリア内だったことがVAR(ビデオ審判)により発覚し、ラモスがPKでチームの3点目を入れているとなれば、もう勝負はあった?

もちろんこれにはトルコからやって来た3000人のガラタサライファン以外、観客は大満足だったんですが、モラタ、ジエゴ・コスタの2人CFプラス、コレアのトップ下でもまったくチャンスが作れず。どうせまた、前半のアトレティコは0-0で流すのだろうとタカを括っていた私にドイツから、呆気に取られるような報が伝わってきたのは41分のことでした。ええ、それまで7度もレバークーゼンにCKを蹴られ、1度などはゴールバーを直撃していたそうですが、まさかGKオブラクのクリアをアランギスが再度上げたところ、あろうことか、トマスが頭でジャストミート。オウンゴールで先制点をプレゼントしているって、どうなっているんでしょう。
そんな迷走するお隣さんを嘲笑うかのようにマドリーはハーフタイムに入る前にも、ええ、優秀な18才の新人、ロドリゴがゴール前に送ったボールをベンゼマが決めて、4-0というスコアにして前半を終了。ここまで点差が開くともう、後半はバイアレナでいつ、シメオネ監督が選手交代で事態を打開してくれるのかばかり気になっていたんですが、どうやらその日は左SBのロディをレマルに代え、サウールを守備に回す常套手段が裏目に出たよう。後半9分にはベララビのパスをエルモーソがクリアできず、フォラントに2点目を入れられているとなれば、もう諦めるしかない?

一応、このところの習慣でリードされた後から本気を出したせいか、それからはあの温厚なGKオブラクまでが絡むtangana(タンガナ/小競り合い)があったり、29分にはモラタのゴールがオフサイドで認められなかったり、レバークーゼンのアミリがレッドカードで退場となったりしたんですが、とにかく初動が遅いのが致命的ですよね。ようやくトマスのスルーパスから、モラタが1点を返せたのはロスタイム3分のこと。その1分後にも再びモラタが近距離からシュートを撃ったんですが、これも彼が決められるのは1試合につき1ゴールという、原因不明のジンクス通り、GKフラデツキーに弾かれてしまったため、アトレティコは2-1で負けてしまうことに。

いやあ、この日も過去数試合の轍を踏んでしまったことに対して、シメオネ監督は「el primer responsable del primer tiempo soy yo/エル・プリメール・レスポンサブレ・デル・プリメール・ティエンポ・ソイ・ジョ(前半の責任は私にある)。チームが応えられるようなモチベーションを与えられなかったのだから」と選手たちを庇っていましたけどね。大事なCLの試合となれば、監督が何を言おうと言うまいと、やる気を出すのが普通のはずですが、今更ながら、「Tenemos que aprender de los errores/テネモス・ケ・アプレンデール・デ・ロス・エローレス(ボクらはミスから学ばないといけない)。だんだん時間は残り少なくなっていくし、こういうことは繰り返しちゃダメだ」(サウール)って、一体、何回間違えれば、覚えられるんですか?

一方、まったくそれとは対照的だったのがマドリーで、大差で気が緩みがちがちな後半にも36分にはカルバハルのラストパスをベンゼマが押し込んで5点目。自身CL50得点目として、マドリーのレジェンド、ディ・ステファノのクラブ歴代3位の記録を抜くと、うーん、もうこれは飽くなきハングリー精神へのご褒美でしょうかね。ロスタイムにもロドリゴがゴールを決め、マドリーではラウールに続く、2番目に若い年齢でCLハットトリックを達成してしまったから、これには私もただただ、驚くばかりだったかと(最終結果6-0)。

ちなみにジダン監督によると、ロドリゴの特性で際立っているのは「su inteligencia/ス・インテリヘンシア(そのインテリジェンス)」で、「学んで成長したがっている。テクニック的に秀でていて、まだフィジカルには改善の余地があるが、プレーに間を置く賢さも持っている」のだとか。でもねえ、この日は終盤、ファンにカンティコ(メロディーのついたコール)も歌ってもらい、「He cumplido un sueño escuchando al Bernabéu corear mi nombre/エ・クンプリードー・ウン・スエニョ・セウクチャンドー・アル・ベルナベウ・コレアル・ミ・ノンブレ(ベルナベウが自分の名前を唱和してくれるという夢が叶った)」と言っていた当人もロッカールームでチームメートに試合球にサインしてもらい、ご満悦だったかと思いますが、油断は禁物ですよ。

というのも真っ先にお祝いに駆けつけた、その日はパルコ(貴賓席)観戦をしていたビニシウスもゴール数こそ違えど、デビューした昨季、一時は大ブレイクしていましたから。とにかく活躍し続けるのが何よりなんですが、ロドリゴにとって有利に働くのは1つ年上のブラジル人の先輩より、右サイドでのプレーを苦にしないこと。おまけにそのポジションを争うはずのベイルはハメス・ロドリゲスと一緒で、土曜午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)からのエイバル戦の招集リストに入れていませんからね。ええ、金曜の記者会見ではジダン監督が「負傷している訳ではないが、まだプレーできない。グラウンドでトレーニングしていたが、チーム練習をしていないから、試合には出られない」と私はちょっと抄訳してしまいましたが、しつこい記者たちの質問に答えて、その理由を懇切丁寧に説明もしてくれています。

そんな状態ながら、ベイルもハメスもそれぞれ、ウェールズ、コロンビアの代表に呼ばれているそうで、とりわけ前者の場合はお国のご奉公に行く度、ケガをして戻って来るという悪癖があるため、ロドリゴもカセミロ、ミリタオと共にブラジル代表でプレーする際にはくれぐれもご用心。とりあえず、ガラタサライ戦の前半に交代したマルセロ以外、ようやく定まってきたベストメンバーをイプルアではリピートできそうなマドリーですが、いよいよ26日のCL5節でPSGとホームで対戦して勝てば、グループ突破が決まりますからね。このところ、乾貴士選手が2試合連続先発して2連勝中、しかも昨季は3-0と完勝されたエイバルも手ごわそうとはいえ、リーガ上位戦線は団子になっているため、選手が大量出向する代表戦で負傷者を増やさず、まずはCLに片をつけるというのが彼らとしても得策ではないでしょうか。

そして同じグループ2位で、やはり5節のユベントス戦で勝てばCL決勝トーナメント進出が決まるものの、こっちはアウェイ戦ですし、相手も相手ですからね。そこへレバークーゼン戦で溜まりに溜まった膿が出まくった感のあるアトレティコは日曜午後4時(日本時間午前零時)にエスパニョールをワンダに迎えるんですが、木曜のELでルドゴレツ(ブルガリア)に6-0とお隣さんに匹敵する大勝をした相手を警戒したか、金曜の練習でシメオネ監督はスタメン候補にビトロとエレラを抜擢。ずっとノーゴールの続くコスタのベンチ待機は当然ですが、ようやく今季、初めてお休みがもらえるかと思われたサウールはドイツで打撲を受けたフェリペ、もしくはロディの代わりとして守備陣に加わっていたのだとか。

まさにヒメネス、サビッチのリハビリが終わらない中、少数精鋭体制のツケを1人で背負わされているようですが、エスパニョールもリーガでは19位と決して調子良くありませんからね。ジョアン・フェリックスもまだ戻らないため、またしてもモラタの1点で勝利を決めないといけないという状況は続きそうですが、月曜にはアギーレ監督が赴任、金曜の初陣レアル・ソシエダ戦で劣勢から、エン・ネシリのゴールで1-1の引き分けをもぎ取ったレガネスの最下位脱出の励みとなるよう、できたらエスパニョールとの差が広がらないようにしてあげられたらいいのですが。

え、ELではもう1つの弟分、ヘタフェもプレーしていなかったかって?いやあ、そうなんですが、バーゼル戦が午後6時55分からだったため、うっかりしてちょっと遅れて私が近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に着いた上、店員さんに頼まないとチャンネルを合わせてもらえなかったのもあって、すでに前半7分、カブラルのゴールで1-0と負けていたのはショックでしたが、でもねえ。いくら「ニヨムはほぼ全試合に出ていたし、ジェネも筋肉系のケガの後、2試合連続でプレーして危険を冒せなかった」(ボルダラス監督)とはいえ、本職ボランチのマクシモビッチを右SB、左SBのオリベイラをCBという未経験のポジションでスタメンに使ったのは少々、ムリがあったかと。

すると44分には、やはりローテーションで先発に混ぜてもらったカンテラーノ(ヘタフェBの選手)のウーゴ・ドゥーロが敵にエリア内で倒され、PKをゲット。マタがこれを決めて同点に追いついたんですが、後半15分にも守備の穴から、ビドマーからフレイにラストパスが通り、2点目を奪われているのではどうしたものか。ただそれも40分、敵DF陣の背後から抜け出した途中出場のアンヘルが、FKからポルティージョが繋いでエリア内に放り込んだボールを見事なchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)でネットへ。せめて勝ち点1は取れたかと思いきや、オフサイドを宣告されてしまうって、ちょっとお、VAR係は何している?

いや、それがELには小国のマイナーなチームも参加しているせいか、グループリーグではないんですよ。そのまま2-1で負けてしまったため、ボルダラス監督も「Esta competición no puede permitirse un error tan grave/エスタ・コンペティシオン・ノー・プエデ・ペルミティールセ・ウン:エロール・タン・グラベ(これ程、重大なミスをこの大会が許すことはできない)」とカンカンでしたけどね。これでバーゼルに2連敗となった彼らですが、同じ勝ち点6でクラスノダールと並んで2位にいるため、残りの2節でグループ突破は十分可能。一応、リーガでも首位とたった勝ち点3とはいえ、7位の彼らにそこまで狙う義務もありませんからね。この日曜に控えているオサスナ戦を無事済ませたら、代表選手のあまりいないヘタフェだけに2週間、ゆっくりできるのは本当にありがたいですよね。

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