混戦の責任は誰にある?/原ゆみこのマドリッド

2019.11.05 16:30 Tue
「ヘタフェが大躍進してる!」そんな風に私が驚いていたのは月曜日、上の方でチームが団子になっているリーガの順位表をじっくり眺めていた時のことでした。いえ、先週のミッドウィーク節終了後から、マドリッドの弟分チームたちの順位はまったく変わってないんですけどね。とはいえ、同じ7位ながら、ヨーロッパリーグ出場圏の6位まであと勝ち点3だった、出来のいい方であるヘタフェは今ではたったの1差に。それどころか、首位まで3差になったとなれば、恐れ多くも来週末には首位軍団の一角に食い込むことも夢ではない?
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いやまあ、本音を言うと、1位から3位が同じ勝ち点で並び、4位5位はたったの1差、6位が2差で7位が3差という、21年ぶりの混戦で上位争いが起きている状況には私も戸惑っているんですけどね。というか、先週末、土曜の夕方の試合でバルサがレバンテに驚愕の3-1逆転負けをした後、マドリッドの兄貴分たちがあとほんのちょっとだけ、ツイていれば、こんな破目にはならなかったとなれば、悔しさもひとしおなんですが…まずはアトレティコの試合から振り返っていくことにすると。サンチェス・ピスファンでセビージャに立ち向かった彼らは前半、ロペテギ監督がグデリをディエゴ・カルロスとクンデの間に入れて敷いたCB3人制に苦戦。おまけに28分にはバネガの蹴ったFKをフリーのバスケスに悠々とヘッドで撃たれ、GKオブラクも止められずに先制されてしまうんですから、困ったもんじゃないですか。そのまま1-0でハーフタイムに入ると、早速、シメオネ監督が手を打ったんですが、確かにレマルをジエゴ・コスタに、トリッピアーをアリアスにという、2人同時に後半頭から投入という策は功を奏しましたね。ええ、9分にはコレアのクロスをコスタが頭でネットに叩き込んだのは残念ながら、VAR(ビデオ審判)でコレアのオフサイドが見つかってしまったため、スコアボードには上がりませんでしたが、大丈夫。
同じように15分、試合当日まで、打撲で出場できるか不明だったセビージャの左SBレギロンのサイドを突き、今度はアリアスがエリア内奥からクロスを上げるとモラタがヘッドを決めて同点弾をゲット。すると運がアトレティコに吸い寄せられたかのようにその10分後、コケがグデリに倒されたのはエリア外とされ、FKの準備をしている間にVARが介入。いきなりPKになっちゃうんですから、こちらも驚いたの何のって。でもねえ、今のコスタは心底、ゴールの神様から嫌われているんでしょうね。彼の蹴ったPKはGKバチリクに弾かれてしまい、こぼれ球をシュートしたコケも防がれてしまってはどうしようもありませんって。

それより何より、信じがたいプレーが起きたのはロスタイム1分のことで、再びアリアスが折り返しのラストパスを出してコスタがエリア内からシュートしたところ、当然のようにグデリに当たって入らず。そこでモラタが撃ち直したんですが、GKが弾いて転がったボールをクンデが前向きに倒れながら、ゴールライン前でヒザの間でキープして固まってしまったんですよ!もうこんな亀の子のような真似をされたら、モラタだって、後ろからほとんどない相手の脚の隙間を蹴ってみるぐらいしかできず、それを審判にファールに取られてしまったんですが、え、そう来ます?
うーん、そのまま1-1の引き分けで試合が終わった後、コケなど「Parecía que le había dado en la mano, luego ha retenido el balón.../パレシア・ケ・レ・アビア・ダードー・エン・ラ・マノ、ルエゴ・ア・レテニードー・エル・バロン(手でボールに触ったように見えたし、それからボールを保持してたけど…)。審判はPKにしたくなかったのか、VARを見たくなかったのかな」と文句タラタラでしたけどね。ちなみにマルカ(スポーツ紙)の元審判員による解説ではこのプレー、「地面に両手をついている時、手に触れてもペナルティにはならない。ただボールの保持があったのは明白で、その場合はエリア内の間接FKが与えられなければならない」そうなんですが、いや、でもゴールラインすぐ前で間接FKって、敵は11人、ライン上に並んで守るんでしょうか。

規則の解釈はともかく、おかげでアトレティコは9月末のマドリーダービー以来、6試合で5引き分けという、情けない体たらくになってしまったんですが、一番の原因はモラタも「Lo que nos falta es salir a los partidos como hemos estado en la segunda parte/ロ・ケ・ノス・ファルタ・エス・サリール・ア・ロス・パルティードス・コモ・エモス・エスタードー・エン・ラ・セグンダ・パルテ(ボクらに欠けているのは後半みたいに、どの試合も始めること)」と言っていた通り、このところの彼らは前半丸々捨ててしまう日が多いこと。いえ、この日で4試合連続得点となった彼にしてもその間、自身が1度もdoblete(ドブレテ/1試合2ゴールのこと)を達成できなかったせいで、チームは1-1でドローを続けているという見方もできなくはないんですが、まったくもう。

そんな彼らは今週、水曜午後9時(日本時間翌午前5時)から、バイアレナでのレバークーゼン戦に臨まないといけないんですが、月曜のマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習でもやはりヒメネス、サビッチの負傷組CBの姿は見えず。かろうじてジョアン・フェリックスが足首ネンザ後、初めてグラウンドに現れ、個人練習を行ったそうですが、おそらくまだ戦力にはならないかと。もうこうなると、モラタの1点だけでも勝利に十分なことを祈るしかありませんが、とりあえず、ユベントスと同じ勝ち点で2位にいるため、CLグループリーグではちょっと余裕があるのはありがたいですよね。

そして土曜はまだ頭の冷えない状態でサンティアゴ・ベルナベウに向かった私でしたが、こちらもケチのつき始めは前半7分、アザールがフェダルをかわして決めたゴールがVARでオフサイドを取られてしまったこと。いえ、前節には弟分レガネスに5-0で大勝し、得点力不足は解消したと思われていたレアル・マドリーだったんですけどね。解任の瀬戸際にあったルビ監督が用いた3CB制がお隣さん同様、障害になったのと、セルヒオ・ラモスやベンゼマがGKジョエルに弾かれてしまったせいで、前半を0-0で終えることに。

え、後半18分には自陣からアザールが放ったパスにメンディが独走。1対1でのシュートを失敗しなければ点が入っていたんだろうって?いやあ、彼はマルセロとは違いますからね。守備もしっかりしていますし、足も速いんですが、元々、得点要員ではないため、ここは致し方なかったかと。更には38分、ベンゼマのクロスがエリア内でフェダルの腕に当たるというプレーもあったものの、ジダン監督も後で「Es del árbitro, porque no ha consultado ni el VAR/エス・デル・アルビトロ、ポルケ・ノー・ア・コンスルタードー・ニ・エル・バル(審判によるよ。VARで見直しもしなかったんだから)」と言っていたように意図的ではないものとして、完全にスルー。

まあ、その辺はクルトワなどが試合後、「Lo de las manos es algo complicado/ロ・デ・ラス・マノス・エス・アルゴ・コンプリカードー(ハンドについてはややこしいんだ)。地面についた手が体の近くにあって、不自然な姿勢じゃなきゃ、ペナルティじゃないと説明されたけど、今日のは結構、離れていたからね。判断基準を知るのが難しいよ」と話していましたが、そういうこともまま、ありますからね。それより理解不能だったのはその後、すぐにジダン監督が今季のマドリー唯一と言っていい得点源、ベンゼマをヨビッチと交代させてしまった件で、すでにパルコ(貴賓席)観戦していた負傷組、ベイルとハメス・ロドリゲスが引き上げていた最後の方では、ラモスがCF化して攻めていたものの…。

結局、「メンディとのプレーで右目のコンタクトレンズがズレちゃって、戻すことができなかった」というジョエル相手にもゴールを決めることはできず、マドリーは今季4度目の引き分けに甘んじることに。一応、それも勝ち点1をゲットして、バルサに並ぶことはできましたが、心配なのは水曜のCLガラタサライ戦。ようやく3節ではそのトルコ勢にアウェイで0-1と勝って、何とかグループ2位に上がったものの、ここでまた、うっかり白星を逃すと、再び2年前、アトレティコが経験したカラバフの悪夢の再現(3位でCLグループ敗退後、ELで優勝)が取り沙汰されかねませんからね。こちらもベイルとハメスはまだ復帰できませんが、バルベルデやマルセロが先発に戻るため、攻守共に戦力アップしてくれたらと思います。

そして日曜、午後6時30分という時間に並行してプレーしたのが弟分チームたちなんですが、どうやらヘタフェは対戦相手セルタの絶不調を利用して、前半37分にケネディが先制ゴールを決めると、後半は適当に流しながら、0-1で勝利をゲット。何せ、この木曜にはELバーゼル戦のスイス遠征も控えている彼らなので、ピッチでバタバタ選手が倒れていた前節グラナダ戦みたいなフィジカル対決ばかりするのではなく、省エネの試合も挟んでいかないと持ちませんからね。敗戦後、解任が発表されたセルタのエスクリバ監督には気の毒なことになりましたが、それでもまだ下には下がいるもので…。

ええ、最下位を爆走しているレガネスがもう末期症状だったんですよ。日が落ちていくブタルケにエイバルを迎えた彼らは前半6分、ロサレスがエリア内奥から折り返したパスをブライトワイテがシュート。軌道にいたカリージョが後押ししたボールはGKデイミトロビッチに当たり、そこに詰めたエン・ネシリが何とか押し込むという、先発FWトリオ総がかりで先制ゴールにしたんですけどね。18分にはコテのクロスをチャルレスが頭で決めて同点にされると、一気に選手たちに落ち着きがなくなってしまうって、かなりヤバくない?

おかげでエン・ネシリやロサレスがゴール前を横切る最高のラストパスを送ってもカリージョもオスカルも間に合わないし、時間が経過するにつれ、GKクエジェルがロングボールを蹴るだけという単調な攻撃に特化。更に最悪だったのは後半39分、前がかりになっているところにカウンターをかけられ、自身によると、あまり調子は良くないものの、この日は2試合連続の先発となった乾貴士選手も「ウチの攻撃が右寄りになっていたのはファビアンがいいからじゃないかな」と言っていたオレジャナが抜け出すと、最後はキケ・ガルシアに勝ち越し点をゲットされてしまったから、さあ大変!

そうなると、焦ってばかりのレガネスにはまったくチャンスが作れず、そのまま1-2で負けてしまったんですが、これでは兄弟分ダービーを捨てて、このエイバル戦の準備に専心していたセンブラーノス暫定監督が3部のBチームに戻ることになったのも仕方なかったかと。結局、月曜午前中にはクラブがアトレティコファンには顔馴染み、5年前には日本代表も率いたことのあるハビエル・アギーレ監督を招聘したことを発表(https://bit.ly/34tEklt)し、午後の練習から指導に当たっていましたが、ここまで12試合で1勝しかできず、残留ラインとは勝ち点差6も離れていますからね。

チームの立て直しもそう簡単にはいかないと思いますが、まずは今週金曜のレアル・ソシエダ戦でお手並み拝見。相手は日曜最後の試で1-2と勝利して、グラナダの単独首位返り咲きを防いだだけでなく、自身もバルサ、マドリーと並んでトップ集団に入っているだけに一筋縄ではいかないはずですが、その先もバルサ、セビージャと続くとなれば、もう強敵だからなんて言い訳は通じません。何はともあれ、ラージョの降格で5チームから4チームに減ってしまったマドリッド勢が来季はたった3チームだけなんていうのは避けてもらいたいです。

そうそう、今週土曜の午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)の次節ではイプルアにマドリーを迎えるエイバルだったため、レガネス戦後にインタビューに答えてくれた乾選手にどんな心構えでいるか、訊いてみたんですが、「調子良くなくてもレアル・マドリーはレアル・マドリー。凄く強いチームだし、簡単な試合はない。マドリーだから難しい試合になるとは思うけど、いい準備をしてやっていきたい」とのこと。いえいえ、相手はCL戦直後ですし、2節前には久保建英選手のいるマジョルカに負けたなんてこともありましたしね。エイバルが勝利する可能性も十分ありそうですが…マドリッド勢があまりに弱いというのも実は私が困るんですよ。

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