休みがないから勝てなかった訳ではない…/原ゆみこのマドリッド

2019.11.02 20:00 Sat
「やっぱり得しているわよね」そんな風に私が八つ当たりをしていたのは金曜日、このミッドウィーク開催のリーガでは、先週土曜に予定されていたクラシコ(伝統の一戦)が延期されたバルサとレアル・マドリーが揃って5得点の大勝。しっかり1位と2位に返り咲いているのを確認した時のことでした。いやあ、だからといって、前節をお休みしていれば、10節でたった10得点と、クラブ史上最低に並ぶゴール日照りに陥っていたアトレティコだって、メンディソロサでgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)できたなんて言う気は毛頭ありませんけどね。

ただ不公平に思うのはバルサに5-1で負けたバジャドリーはともかく、マドリーの被害者が弟分のレガネスだったためで、サンティアゴ・ベルナベウで1部昇格後、最多得点差となる5-0で負けたセンブラーノ暫定監督も「クラシコをやっていればまた、違っただろう。Habría habido rotaciones y el marcador habría afectado/アブリア・アビードー・ロタシオネス・イ・エル・マルカドール・アブリア・アフェクタードー(ローテーションもあったはずだし、スコアにも影響しただろう)」と認めていましたからね。もちろん、大差をつけられたのは先を見すぎてしまった彼らの自業自得とも言えるんですが、とにかくアトレティコがどうしていつまで経っても同じ過ちを繰り返すのかは…まあ、とりあえず試合を見ていくことにしましょうか。
火曜にマドリッド勢の先陣を切った彼らはアラベス戦で中盤をローテーション。とはいえ、前半停滞していたのはコケとトマスの代わりにマルコス・ジョレンテとエレラが入ったのが元凶というより、シメオネ監督は「si un equipo no empieza bien es responsabilidad del entrenador/シー・ウン・エキポ・ノー・エンピエサ・ビエン・エス・レスポンサビリダッド・デル・エントレナドール(チームがいい形で試合をスタートしなかったなら、それは監督の責任)。何か、選手が失望することがあったからだ」と言っていましたけどね。今季はもう、そんなの毎度のことで、0-0でハーフタイムを迎えるのもいつしか習慣になっていたため、私も平日の午後7時過ぎ、人気のあまりない近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で諦めて眺めていたんですが、動きが生まれたのは選手交代のあった後半のこと。

ええ、頭からジョレンテをトマスに、15分でエレラをモラタに、24分にはシメオネ監督の絶大な信頼を受けて先発しながら、この日もまったく精彩のなかったジエゴ・コスタをモラタに代えたところ、あら不思議。25分にはGKオブラクのゴールキックをモラタが胸でトラップすると、コケ、モラタ、そしてコレアを経たボールを最後はモラタがフィニッシュして先制点を挙げてくれたから、有難かったの何のって。おまけにその1分後にはアラベスのDFがバックパスをミス。1人、モラタが敵ゴールに迫ったため、「con el segundo gol se habría terminado el encuentro/コン・セグンド・ゴル・セ・アブリア・テルミナードー・エル・エンクエントロ(2点目で試合は終わっていただろう)」(シメオネ監督)という期待をして、見守っていたところ…。

何でえ、モラタが1対1のシュートをGKパチェコの正面に撃って弾かれた上、回り回って、やはり至近距離から撃ったコレアまでセーブされてしまわないといけないんですか!このチャンスに追加点が入っていれば、27分、ここまで4試合連続得点をしていたルーカス・ペレスにエリア前からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決められてもどうってことなかったはずですが、いやはや後悔先に立たず。2節前、パレホのスーパーFKで同点にされてしまったバレンシア戦同様、「Cuando te meten un gol así no hay que pensar más/クアンドー・テ・メテン・ウン・ゴル・アシー・ノー・アイ・ケ・ペンサール・マス(あんなゴールを入れられたら、もう何も考えることはない)」(モラタ)って、君たち、本当にそれでいいの?
いえ、トマスなども口では「Tenemos que olvidarnos de este partido y seguir trabajando/テネモス・ケ・オルビダールノス・デ・エステ・パルティードー・イ・セギール・トラバハンドー(この試合のことは忘れて、努力し続けないといけない)」と言っていたものの、きっとまたしても追いつかれ、1-1の引き分けに終わった原因を頭の中では究明、反省を重ねているはずと信じていますけどね。とはいえ幸い、今週末、土曜の午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)からサンチェス・ピスファンで対戦するセビージャも水曜にオカンポスのゴールでリードしながら、ソリアーノに同点弾を決められ、バレンシアと1-1のドローと似たような目に遭ったばかり。

おかげで両者勝ち点20での4位、5位となり、拮抗した立ち位置の見応えのある試合となるのは良かったんですけどね。どうやらヒメネス、サビッチ、ジョアン・フェリックスの復帰は来週水曜のCLレバークーゼン戦でもなさそうなアトレティコのため、決して「Es una de las cinco mejores plantillas que hay en el mundo/エス・ウナ・デ・ラス・シンコ・メホーレス・プランティージャス・ケ・アイ・エン・エル・ムンド(彼らは世界で5指に入るいいチーム)」というロペテギ監督のお世辞などは真に受けず、次こそ前半から、ガンガン攻めて、限りある時間とチャンスを無駄にしないプレーを見せてほしいもの。ここ3試合連続得点しているモラタもコスタが不調の今、できれば1試合2ゴールを目標にしてくれませんかね。

そして水曜はサンティアゴ・ベルナベウを訪れた私でしたが、先週火曜、イスタンブールでのCLガラタサライ戦以来の試合となるマドリーは選手たちが休養十分とあって、同じスタメンをリピート。逆に土曜のマジョルカ戦でようやく今季初勝利を挙げたレガネスは、いえ、センブラーノス監督はペレクリーノ監督と違って、5人DF体制はとらないんですけどね。ただ最終ラインはブスティンサ、タリン、オメロウ、ジョナタン・シウバの4人とはいえ、ボランチにCBのアワジエン、左のアタッカーにSBのケビン・ロドリゲスとスタメンに総勢6人のDFを投入して、守りを固めてきたんですが、序盤からこの慣れない人員配置を利用されてしまったから、さあ大変。

ええ、早くも6分にはマルセロのクロスをベンゼマがゴール前のロドリゴに送ってマドリーに先制されると、その2分後にはベンゼマのアシストでクロースが2点目。更に24分にはエリア内でアザールをGKソリアーノが倒してしまい、一旦はセルヒオ・ラモスのPKを弾いたものの、VAR(ビデオ審判)により、GKの足がゴールラインより前にあったことが発覚し、やり直しで3点目まで奪われてしまうことに。まさしく「en los primeros 20 minutos hemos hecho todo los que nos dijo el mister durante la semana/エン・ロス・プリメーロス・ベインテ・ミヌートス・エモス・エッチョー・トードー・ロス・ケ・ノス・ディホ・エル・ミステル・ドゥランテ・ラ・セマーナ(最初の20分間でボクらは監督がこの1週間言っていたこと、全てをやった)」(カセミロ)という状態でしたが、これではたった3日間しか、準備期間のなかったセンブラーノ監督のチームが太刀打ちできなくても仕方ない?

実際、レガネスの守備崩壊は後半24分にも発生。ブスティンサのバックパスミスから、今度はオメロウが途中出場のモドリッチを倒し、ラモスにキッカーを譲られたベンゼマにもPKゴールを献上しているんですから、平日の夜9時過ぎとあって、ほとんどレガネスファンが応援に来てなかったのは正解だったかと。そんなマドリーのゴール祭りはロスタイムまで続き、1度はオフサイドで得点を認められなかったヨビッチも再び、カルバハルのクロスをヘッドでネットに叩き込み、嬉しい移籍後初ゴールをゲット。

うーん、こんな簡単に5-0の大勝ができるなら、それこそ月曜から火曜に渡ってロンドンにある代理人事務所を訪問。冬の市場での中国行きも噂されているベイルや、2年前に離婚した奥さんとの間にもうけた長女に続き、この度は代理出産で次女が生まれたため、コロンビアに帰国中のハメス・ロドリゲスなんて、別にいなくてもいいのかも。ちなみにこの2人は土曜午後9時(日本時間翌午前5時)から、こちらもホームゲームとなるベティス戦の招集リストにも入らなかったんですが、今度は来週水曜のCLガラタサライ戦もジダン監督は考えないといけませんからね。

レガネス戦ではベンチ外となったビニシウスが戻り、1才年下のロドリゴとのブラジル人ティーンエイジャー同士によるポジション争いも見物ですが、このミッドウィーク節、フェキルのゴールで土壇場に2-1とセルタに競り勝ち、降格圏を脱出。ルビ監督のクビが懸かっているため、次節セビージャとのアンダルシアダービーのことなど、考えていられないベティスには要注意が必要かと。何せ、ここ2シーズン、ベルナベウで連敗している相手ですからね。むしろ、日曜午後6時30分にブタルケに乾貴士選手のいるエイバルを迎える試合の方に集中していたと言える最下位のレガネス相手とは、かなり勝手が違うと思いますよ。

そして帰りのメトロにはハロウィーンの仮想をした若者が大勢いた木曜日、11節最後のカードでコリセウム・アルフォンソ・ペレスに、バルサ、マドリーの勝利で首位から3位に転落はしていたものの、昇格組ながら快進撃を続けているグラナダを迎えたヘタフェはどうだったかというと。いやあ、これが何と、9月にやはり2部から戻ってきたマジョルカと対戦した時とまったく同じで、開始から30分程はとにかく、ピッチのそこここで選手が倒れている展開に。もうこうなると、ヘタフェがアグレッシブだという噂を鵜呑みにして、相手はやり返す気満々というか、むしろやられる前にやってしまえの精神なのか、私にはわかりかねますが、今季のボルダラス監督のチームはELの試合も控える身ですからね。

下手にケガをさせられても困るとスタンドでヤキモキしていたんですが、大丈夫。34分にはそれまでソルダードと揉めたり、見当違いのロングパスを蹴ってばかりいたククレジャが発奮してくれたんです。ディエゴ・マルティネス監督が趣向を変えて投入したDF5人制の囲みを破ってエリア内に侵入すると、アンヘルにラストパス。そのシュートがしっかり決まって先制したヘタフェは41分にもジェイソンのCKをアランバリがヘッドで叩き込み、火曜に兄貴分ができなかった2点目の壁を早々に突破してくれたとなれば、同じ木曜開催ながら、先週のELグループリーグの試合とは打って変わり、スタンドを大入りにしたファンもどんなに喜んだことか。

いやまあ、相手には負傷明けや痛みを抱えた選手も多く、「45分か60分ぐらいしかプレーができない者もいて、選手起用に縛りがあった」(マルティネス監督)という事情があったようで、後半、キケとプエルタスを投入し、通常の4-4-2に戻ったグラナダは押し返してきたんですけどね。29分など、マチスのクロスをアドリアン・ラモスがヘッドしたボールはGKダビド・ソリアが弾いたものの、ゴール前に詰めていたプエルタスに決められ、一時は2-1と差を縮められたヘタフェでしたが、ちょっとお。誰も知りませんでしたよ。この夏、市場が閉まる直前、2部のラス・パルマスから加入したティモルがFKの名手だったなんて。

そう、その彼が42分、エリア右前から放ったFKがゴールバーに当たった後、ネットに入って、止めの3点目が入ったんですよ。これでスコアは3-1となり、そのままヘタフェは勝利。前節、セビージャに負けたせいでまた2桁の11位になっていた順位も9位に戻り、何よりEL出場圏の6位とたった勝ち点差3となったとなれば、それこそ「Estamos en el camino/エスタモス・エン・エル・カミーノ(ウチは順調に進んでいる)」(ボルダラス監督)と言っていいのでは?

ただやっぱり次節、日曜のセルタ戦には欠場者が出ていて、ハーフタイムで退いたカブレラはハムストの筋肉を伸ばして様子見、3試合ぶりに復帰したダミアンも後半、負傷交代でしたが、こちらは累積警告も相まって出場停止に。まだブルーノも戻ってないだけに、セビージャ戦の負けなど、守備が選手交代を機に乱れたせいもありましたし、この日もニヨムが左に行ったり、右に行ったりと、ポジションチェンジにバタバタしていたシーンも見かけていたため、この2日間はボルダラス監督もDF陣に注意して練習してくれたらと。

ちなみに相手のセルタはベティスとの降格圏マッチボールに敗れ、一時、エスクリバ監督の解任が確定とも言われていたんですが、とりあえずこの週末は続投するよう。いやあ、2015年には不成績でシーズン終盤にヘタフェを解任され、チームが2部落ちする原因を作った彼ですが、2年後にはヘタフェ相手に4-0と大敗したせいでビジャレアルの監督も解任に。今回、またヘタフェのせいでクビになったら、何とも気の毒ですが、勝負の世界はシビアですからね。来週はELバーゼル戦のスイス遠征もありますし、ヘタフェにはこのまま調子を上げていってもらいたいところです。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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