クラシコがなくてもリーガは続く…/原ゆみこのマドリッド

2019.10.29 20:00 Tue
「目が悪くなった訳じゃなかったんだ」そんな風に私がホッとしていたのは月曜日、プロリーガ協会が先週末の10節でデビューしたPUMAの冬用デザイン公式球は降雪など、極度な悪天候時にしか使わないことに決めたという報を読んだ時ことでした。いえ、スタジアム観戦した土曜には回転するボールが橙色に見えて、まるで選手たちがオレンジでも蹴っているみたいでちょっと、笑えたんですけどね。翌日曜、いつものバル(スペインンの喫茶店兼バー)で見たヘタフェの試合では、しょっちゅうボールがどこにあるのかわからなくなる始末。コンタクトレンズの調整に眼科に行った方がいいかと迷った程だったんですが、どうやらそれはTV観戦していた大勢のファンも同じだったよう。
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いくら斬新なデザイン(https://bit.ly/2PnAs10)で差をつけたいからと言って、映像にした時の視覚効果をまったく考えずに採用してしまうリーガもリーガなんですが、まあ、先週末は本来なら、マスコミの話題を独占しているはずのクラシコ(伝統の一戦)が12月18日に延期になるなど、近頃は妙なことが起こりますからね。試合のなかったスペイン2強に取って代わり、昇格組のグラナダが1973年以来のリーガ1部単独首位に立ったなんていうのもその副産物の1つでしょうが、その下の2位から5位には同じ勝ち点19でバルサ、レアル・ソシエダ、アトレティコ、セビージャが並び、そこから1ポイント少ないレアル・マドリーがかろうじてヨーロッパリーグ出場圏内に入る6位って、稀に見る混戦とはまさにこのこと?まあ、現状はともかく、とりあえず先週末、試合のあったマドリッド勢の報告をしていくことにすると、お昼からクラシコTV観戦という予定が消滅したため、午後4時からのレガネスのホームゲームを見ようと、ゆっくりランチを済ませてから、アルーチェ発のバスに乗ってブタルケに向かった私でしたが、実はこの試合、まだ今季白星が1つもなく、最下位が定位置になってしまった弟分チームにとって、まるで決勝のような様相だったんですよ。そう、先週月曜にはペレグリーノ監督が辞任し、センブラーノス暫定監督が初指揮を執ったんですが、何せ相手のマジョルカは前節、マドリーに勝利して自信をつけていましたからね。
そこへ序盤早々から、CBシオバスが接触プレーでどこか痛めてしまい、DFラインも前監督の敷いた5人制から4人に変えていたため、またすぐ失点するんじゃないかと私もドキドキだったんですが、とんでもない。前半31分にロサレスのラストパスをゴール前でカリージョがスルーした後、ブライトワイテが押し込んだゴールでリードしただけでなく、後半もブライトワイテの一撃がゴールポストを叩いたり、アルナイスが1対1のシュートをGKレイナに弾かれるといった具合で全然、余裕で1-0の勝利をゲット。

それこそ、センブラーノ監督も「Era cuestión de cambiar la dinámica y lo hemos conseguido/エラ・クエスティオン・デ・カンビアール・ラ・ディナミカ・イ・ロ・エモス・コンセギードー(問題は流れを変えるということで、我々はそれを達成した)」と言っていた通り、トップの交代が如何にチームのムードに影響するかという証明になりましたが、最後まで「Si, se puede/シー、セ・プエデ(イエス、ユー・キャン)」と熱い応援を送っていたファンたちの功績も認めてあげなくては。
いえ、だからって、次節、水曜午後9時15分(日本時間翌午前5時15分)にサンティアゴ・ベルナベウに兄貴分を訪れる試合について訊かれ、「Dar de nuevo la campanada en el Bernabéu? Por qué no.../ダール・デ・ヌエボ・ラ・カンパナーダ・エン・エル・ベルナベウ?ポル・ケ・ノー(ベルナベウでまたスキャンダルを起こす?出来ない訳がある?)」とブスティンサが答えていた程、レガネスが上手くなったとは思えないんですけどね。まあ、試合後、ミックスゾーンで選手が出て来るのを一緒に待っていたオンダ・マドリード(ローカルラジオ局)のレポーターに聞いた話では、これまでチームが1勝もできなかった辛い時期、インタビューに答えてくれたのはキャプテンの彼だけだったとか。

実際、各国代表戦前のブタルケでレバンテ戦に負けた後など、コメント中に涙ぐんでいた程だったため、この日の喜びもひとしお。それでついつい、2017-18年コパ・デル・レイ準々決勝2ndレグでは0-1の負けをサンティアゴ・ベルナベウで1-2と逆転し、兄貴分を破って準決勝に進出した時を思い出して強気になっていただけじゃないかと思いますけどね。とりあえず、この白星で土曜だけは最下位を脱出したレガネスでしたが、翌日にこちらもダビド・ガジェゴ監督から、マチン監督になって間もないエスパニョールがレバンテに勝ったため、週明けには再び底辺に逆戻り。とにかく今はちょっとずつでもいいから、勝ち点を積み上げていくことが望まれます。

そしてこの日も後半13分から途中出場、1度だけ放ったヘッドも大きく逸れてしまい、同点弾を挙げることはできなかった久保建英選手が、クラシコ取材の当てが外れてこちらに回って来た日本人記者などもいたものの、まったく質問に応じることなく、9月のコリセウム・アルフォンソ・ペレスと同様、ファンと写真を撮っただけで帰ってしまったため、私も早々にブタルケを退散。次のワンダ・メトロポリターノへ向かったんですが、アスレティック戦が午後9時キックオフとあって、こちらも余裕の移動となりました。よって、両チームの選手がアップに出て来る時から、場内の雰囲気を観察することができたんですが…。

まったくもって、アトレティコのファンは素直なんですよ。実は先週火曜のCLレバークーゼン戦では今季、不調のコケにブーイングが飛んだりしていたんですが、その直後から、シメオネ監督を始め、チームメートはもちろん、クラブのレジェンドらも口を揃えて擁護コメントのオンパレード。それがバッチリ効いて、彼がピッチに現れた瞬間から、まだ少なかったスタンドのファンは「Oe, oe, oe, oe, Koke, Koke」と彼のカンティコ(応援歌)を合唱。それには本人も感動したか、この日は最近、あまり見られなくなっていた粘りのあるプレーをしてくれたとなれば、たまには批判されることも悪くない?

とはいえ、赤白のライトを点灯してチームを迎えたスタンドが静まった後、最初にヒーローになったのはやっぱりGKオブラクで開始74秒もしないうち、CKからイニゴ・マルティネスが強烈ヘッドしたゴールを横っ飛びでparadon(パラドン/スーパーセーブ)。それからも「前半は今季のアウェイ戦では違いのある出来の良さだった。Hemos tenido el balón, hemos apretado arriba, hemos sido más nosotros/エモス・テニードー・エル・バロン、エモス・アプレタードー・アリバ、エモス・シードー・マス・ノソトロス(ウチはボールを持って、前線でプレスをかけ、いつもよりずっと自分たちらしかった)」(ガイスカ・ガリターノ監督)というアスレティックに押されていたものの、隙をついて攻めることを忘れなかった彼らは28分、エリア内でウナイ・ヌニェスをかわしたコレアがパスを折り返すと、これをサウールが撃ち込んで先制点にしてくれたから、どんなに場内が沸いたことか。

え、今季、アトレティコの公式戦に皆勤しているサウールだけど、これが初ゴールというのは意外じゃないかって?そうですね、先日はスペイン代表のユーロ予選ノルウェイ戦で入れていましたが、そのことは当人も気にしていたようで、試合後の記者会見では「Me obsesiona bastante el gol... pese a que soy medio/メ・オブセシオナ・バスアンテ・エル・ゴル…ペセ・ア・ケ・ソイ・メディオ(自分はかなりゴールに執着している。ボクはMFなんだけどね)。ゴールが入る、入らないで評価されるし、得点したから、マスコミの前でも話せるのもホッとするよ」と告白。

とにかく、潤沢にゴールが入るチームではないため、FW以外の選手が貢献してくれるのは私としても大歓迎ですが、その後、ラウール・ガルシアの孤を描くシュートもオブラクが弾いたアトレティコは1-0とリードして後半に入り、いやあ、これまでだったら、反射運動のように全員が一歩引いてしまうため、ファンはイライラする時間を過ごすはずだったんですけどね。何故か、この日のチームは前に進むことを恐れず、19分にはトリッピアー、コケ、コレアと繋ぎ、最後はモラタが決めて2点目もゲットしてくれたから、驚いたの何のって。

もうこうなればこっちのもの、そのまま2-0で勝利した彼らはマドリーダービーから、リーガ3試合続けていたドロー地獄を抜け出したんですが、せっかくお隣さんを上回り、バルサと並んでcolider(コリデル/同点首位)となったのはほんの一夜の夢。ええ、最初に話した通り、日曜にはグラナダがベティスを破り、勝ち点差1をつけて、アトレティコを2位軍団に追いやったからですが、まあ今週はミッドウィーク開催のリーガもあって、勝ち点6が動きますからねえ。サビッチ、ヒメネス、ジョアン・フェリックスが負傷欠場なのは変わらないものの、アトレティコが火曜午後7時(日本時間翌午前3時)からのアラベス戦、そして土曜のセビージャ戦のアウェイ2試合に勝てば十分、首位の座を狙えるのでは?

ただ決して甘く見てはいけないのがそのセビージャで、ええ、日曜にはサンチェス・ピスファンに先乗りした弟分のヘタフェが2-0で完敗。いやあ、木曜のELバーゼル戦でのブルーノに続き、この日も序盤からニヨムが、こちらはブルーノの代理でCBに入ったエチェイタに頭をぶつけられてダウン。後半9分までは持たせたんですが、ダミアン、ジェネもケガで遠征に参加できず、馴染みのDF陣が使えなったのもボルダラス監督の選手起用策に影響しましたかね。いくらニヨムは左右両方のSBをできるからといって、交代でオリベイラを入れ、左SB本職のラウール・カルネロを右に回したのが高くつくことに。

というのも24分には途中出場で左側に入ったオリベル・トーレスが絶妙のスルーパス。カブレラに先んじて受けたチチャリートにそれまで古巣相手にファインセーブを連発していたGKダビド・ソリアの脇を抜くシュートを決められ、先制されてしまったから。更に33分にも今度は1対1で迫るオカンポスにダビド・ソリアが抜かれ、止めの2点目を入れられてしまったんですが、うーん、その辺は同じ木曜にELを戦った者同士ながら、この夏にはチームの半数を入れ替え、得点力アップを図っていた相手に先見の明があったかと。

ええ、この日は先発したホルヘ・モリーナ、マタも、モリーナと交代したアンヘルも精彩がなく、自慢の30代FWトリオをカルテットにすべく、この夏加入したエンリク・ガジェゴも初ゴールを挙げる前にケガでお休みしていますしね。加えて昨季は鉄壁だった守備陣にも負傷者続出で綻びが出ているとなると、この木曜午後9時15分(日本時間翌午前5時15分)、今をときめく首位グラナダをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎える試合など、一体、どうしたらいい?

いやまあ、10月にはサンティアゴ・ベルナベウで4-2と負けた相手も見ているため、そんな無茶苦茶強いチームでないことはわかっているんですけどね。今季のヘタフェは久々のヨーロッパの大会で慣れない週2ペースで試合が続いているため、とにかく選手たちのやりくりが大変。今のところは11位と降格圏からも離れていますし、ELグループリーグも首位と勝ち点1差で2位といいところにつけているため、まだあまり心配することはないと思いますが、とにかくこれ以上、負傷者が出ないといいんですが。

え、それで週末は休みだったマドリーはどうしているんだって?それが土曜だけ練習を休んで、日曜から再開した彼らだったんですが、まず朗報はルーカス・バスケスと共に、10月のクロアチア代表戦でケガをして帰って来たモドリッチがチーム練習に復帰していたこと。それとは真逆なのがベイルで、そう、まさしく彼もウェールズのキャプテンとして同僚対決したその試合でこむら返りを起こしたんですけどね。どちらもそれから、マドリーの試合を欠場しているんですが、奇妙なことにベイルに関してはparte medico/パルテ・メディコ(医療レポート)が出てないんですよ。

そのせいで、従業員の健康に関する個人情報を同意なしに開示することを禁じているスペインの刑法を盾にして、ベイルがクラブに医療レポートを出さないように要求したという話や、本当はケガしていないから出さないんだという噂などが出回った挙句、ここ3回のセッションではジムでの運動しかしていない当人が月曜にロンドンに電撃渡航。もう、それも治療のためなのか、何なのか、さっぱり見当がつかないんですが、要はそんな状態ですから、水曜のレガネス戦で復帰することは期待されていません。

とはいえ、クラシコ延期のおかげで先週火曜のCLガラタサライ戦以来、試合のなかったマドリーですからね。今回に限っては土曜にリーガのあった弟分より、体力満々でしょうし、何よりトルコでいい結果を出してきたのがメンタル的にも選手たちに好影響を及ぼしているはず。そんなジダン監督のチームにたいし、この試合もセンブラーノス監督が指揮を執るレガネスがどこまで意地を見せられるか、私もちょっと楽しみにしています。

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