ゴールは少なかった…/原ゆみこのマドリッド

2019.10.26 10:00 Sat
「同じ1点差なのにツキがなかったわね」そんな風に私が残念がっていたのは木曜日、ヨーロッパの大会グループリーグ3節が終わり、マドリッド勢でヘタフェだけが負けてしまったのをコリセウム・アルフォンソ・ペレスで見届けた時のことでした。いやあ、火曜に先駆けてCLを戦った兄貴分2チームも決して華々しい勝ち方をした訳ではないんですけどね。というよりむしろ、終始、相手を押していた弟分の方が勝ち点3ゲットにふさわしかった気がしないでもないですが、「esto es fútbol/エスト・エス・フトボル(これがサッカー)」(ボルダラス監督)。一瞬の明暗が勝負を分けるスポーツということでしょうが、まずは2強の試合の方から話していくことにすると。
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火曜の夜、私が向かったワンダ・メトロポリターノではアトレティコがレバークーゼンを迎えたんですが、前半に起きた特筆すべきイベントとしては14分、ヒメネスが右太ももを負傷し、急遽エルモーソがピッチに入ったことぐらい。他は「Donde Saúl, Koke y Thomas fueron una fábrica de pérdidas/ドンデ・サウール、コケ・イ・トマス・フエロン・ウナ・ファブリカ・デ・ペルディーダス(サウール、コケ、トマスがボールロスト工場だった中)、違いを見せようと試みたのはエレラだけ。あと1人、勇気があったのはコレアで、プレーが成功しようが失敗しようが、彼はチャレンジすることで生きている」というエル・パイス(スペイン一般紙)のマッチレポートがあまりに的を得ていたため、引用しますが、となれば、ありがちな0-0で前半が終了したのも当然だった?結局、この状態は後半が始まっても変わらず、シメオネ監督は17分にはコレアをレマルに、25分にはコケをモラタに代えて打開を図るんですが、その効果が33分に現れたんですよ!ええ、レマルが左サイドのロディに繋ぐと、21才のブラジル人SBが絶妙なクロス。そのボールをモラタが頭で決め、とうとう先制点が入ってくれたから、助かったの何のって。この試合の見どころはそれだけで、この日はGKオブラクがグローブを汚す必要にも迫られず、そのまま1-0でアトレティコが勝利。これで同日、ロコモティブ・モスクワに2-1で勝ったユベントスと共に勝ち点7と、順調にグループ突破への道を進めたのは何よりだったかと。
え、それより試合後は途中交代したコケにスタンドの1部から、pito(ピト/ブーイング)が飛んでいたことの方が問題視されていなかったかって?まあ、最近のプレーぶりからして仕方ないところもあるんですが、ゴールを挙げた後、モラタがベンチまで駆けて行って、シメオネ監督やコケと抱き合っていたようにチーム全員がキャプテンを擁護。もちろん「皆がコケのように走って働いてくれますように。Si tuviéramos 11 jugadores como él ganaríamos siempre/シー・トゥビエラモス・オンセ・フガドーレス・コモ・エル・ガナリアモス・シエンプレ(彼のような選手が11人いたら、ボクらはいつも勝っているだろう)」(モラタ)というのはあまり現実的ではないと思いますけどね。

シメオネ監督も「ファンはその時々に見て感じた通りに振る舞う。ルイス・アラゴネス、カミネーロ、キコ、クラブのレジェンド全員、ブーイングされた」と何だか、お隣さんがクリスティアーノ・ロナウドやセルヒオ・ラモス、マルセロなどがサンティアゴ・ベルナベウのファンにピーピーされる度、用いてきた論理で応じていていましたが、何せ当人にもビセテンテ・カルデロンでプレーしていた頃の実体験がありますからね。更に金曜のリーガ戦前監督記者会見でも「コケは戦術的な能力があるから、ピッチで自分のいない場所での状況も解決しようとする。それで大きな責任を背負ってしまうんだ」と、試合でこじれている理由を説明していましたが、大丈夫。
木曜のマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習後、帰りを待ち受けるファンたちにも励まされたせいか、「ボクは自分自身を100%信じている。クラブや監督、多くの人々が信頼してくれているし、voy a seguir trabajando como siempre lo he hecho/ボイ・ア・セギール・トラバハンドー・コモ・シエンプレ・ロ・エ・エッチョー(いつもやってきたように働き続けるよ)」とコケ自身も明るい笑顔で言っていたため、土曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、アスレティックを再びワンダに迎える試合では巻き返しを期待できる?

それより心配なのはサビッチに続いて、ここまでアトレティコとウルグアイ代表で出ずっぱりだったヒメネスもケガをしたため、ここ当分、少なくとも来週のアラベス、セビージャ戦辺りまではフェリペとエルモーソだけで乗り切らないといけないCBコンビの方ですが、折しも火曜のCLではこの夏、退団したリュカ(バイエルン)とロドリ(マンチェスター・シティ)も負傷。そろそろどこのチームも選手のやりくりに苦労する時期がやって来たということでしょうか。

いやあ、実際、アトレティコのCL戦が終わった直後、イスタンブールでガラタサライ戦のキックオフとなったレアル・マドリーなど、長期離脱のアセンシオとナチョはもちろんのこと、ベイル、モドリッチ、ルーカス・バスケスがリハビリ中で遠征に参加せず。とうとう18才のロドリゴが当人も「No me lo esperaba. Me sorprendió/ノー・メ・ロ・エスペラバ。メ・ソルプレンディオ(予想していなかった。ビックリしたよ)」という、初の先発指令をホテルでの試合前ミーティングで受ける破目になっていたんですが、ワンダのミックスゾーンでオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の中継を聴いていた私は序盤、「Paradon de Courtois!/パラドン・デ・クルトワ(クルトワのスーパーセーブ)」という実況アナの絶叫に、2度も続けて驚かされることに。

ええ、以前、コルドバやデポルティーボでプレーしていたFWアンドネの至近距離のシュートを弾いたからですが、早くも18分にはベンゼマと連携したアザールが折り返しのパスをクロースに送り、そのシュートでマドリーは先制。となれば、この試合を落とすと、クラブ初のヨーロッパリーグ制覇を目指すことにもなりかねなかったジダン監督もいくらか、気が楽になったのでは?前半終盤にもベルハンダの一撃をクルトワが阻み、0-1のままでハーフタイムに入ったところで私もメトロで家に向かったんですけどね。残り15分を見ようと近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に入った時にも同じスコアだったのは少々、ガッカリ。

だってえ、よくシュートを撃っていたようなマドリーなんですが、後から記録を見ると、計27本、うち枠内が14本もあったんですよ。それなのに終盤、1才年上のビニシウスに先んじて大役を務めたロドリゴがこむら返りを起こし、ヨビッチに交代した際など、まだスペイン語が不自由な21才のセルビア人FWに英語が得意でないジダン監督が本来なら、右サイドから仕掛けるようにと伝えたかったところ、「You attack, that's all(君は攻撃する。それが全てだ)」としか言えなかったせいもあったんでしょうかね。結局、追加点はなかったんですが、0-1でも勝ち点3というのは一緒です。

そこへ首位のPSGもクラブ・ブルージュに0-5と大勝してくれたため、マドリーはグループ最下位から2位に上昇。おかげでCL決勝トーナメント進出の希望を膨らますことができましたが、うーん、やっぱりズルいですよね。「Con un gol, sufres/コン・ウン・ゴル、スフレ(1点だけでは苦しむもの)」(ジダン監督)という激戦の後、土曜のクラシコ(伝統の一戦)がデモなどでカルーニャ州の治安が安定しないため、12月18日に延期となり、来週のミッドウィーク開催のリーガ、水曜の兄弟ダービーまで、彼らに試合がないのは。そこは水曜にスラビア・プラハとのアウェイ戦に何とか、1-2で勝った首位のバルサも同じなんですが、この週末はミニバケーションで休養が取れる上、モドリッチ、ベイル、ルーカス・バスケスも戻って来られるとなれば、現在最下位のレガネスには泣きっ面に蜂だった?

いえ、とりあえず、土曜午後4時(日本時間翌午前1時)からのマジョルカ戦はペジェクリーノ監督の辞任で暫定的にBチームから昇格したセンブラーノス監督が指揮することが決まっていますし、来週までには新監督を招聘したいとクラブも懸命に後任を探しているんですけどね。昨季ウエスカを2部降格から救えなかったフランシスコ監督はその経験故か、ウルグアイ人のグスタボ・ポジェ監督にも9試合でたったの勝ち点2という不成績を嫌われ、話がまとまらないのではどうしたものやら。おまけにブタルケを訪れるマジョルカは前節、マドリーを破り、昇格後、まだ1つも勝ち点を稼げていないアウェイ戦に久保建英選手共々、張り切って乗り込んでくるとなったら…ここはレガネスファンも奇跡が起きるのを祈るしかないかも。

そして木曜、ヘタフェのELバーセル戦となったんですが、やっぱりこの大会のグループリーグは集客が難しいですね。スタンドは半分程の入りで、スイスからやって来たファンこそ、「Ultra Boys(ウルトラ・ボーイズ)」、「Extrem Radikal(エクストレム・ラディカル)」、「Fanatik(ファナティーク)」といった横断幕やポスターを掲げ、チームの入場に合わせてbengala(ベンガラ/発煙筒)を何本も焚くなど、勇ましかったんですが、幸いながらスタジアム外での衝突はなし。

それでもアンヘル・トーレス会長によると、「No se han portado muy bien, han roto unas 100 butacas/ノー・セ・アン・ポルタードー・ムイ・ビエン、アン・ロトー・ウナス・シエン・ブタカス(とても行儀よく振る舞ったかどうかはわからない。100個程、座席を壊していった)」そうですが、いえいえ。2008年のUEFAカップ(ELの前身)準々決勝でバイエルンが訪れた時など、ドイツ人たちは引っぺがした椅子を投げ合っていましたからね。それを思えば、試合中に騒ぎも起こらず、平和なものだったんですが、これって、もしやバーゼルが早い時間から勝っていたおかげ?

そう、前半9分にアンヘルがFKからゴール前で放ったシュートがゴール枠に当たってしまったのがヘタフェのケチの付き始めで、14分にはCBブルーノがケガでカブレラに交代することに。まさか、それで動揺した訳ではないでしょうが、その3分後、自陣エリア近くでボールをクリアしようと追っていたジェネがスリップ。これをペトレッタに奪われ、ファビアン・フライにゴールを決められてしまうんですから、まったく運が悪い。

だってえ、それ以外はほとんど守ってばかり、おまけにイエローカードを8枚も受け、後半28分には退場者も出していたバーゼルなんですよ。ただ、ヘタフェもボールを持って試合の主導権を握るのに慣れていないチームなので、数度のGKニコリッチのファインセーブはともかく、意表を突く速攻ができず、そのまま0-1で負けてしまったのは自業自得の面がなきにしろあらず。とはいえ、だからって、試合後、ボルダラス監督が「今日は相手がイエローカードを多数もらったり、時間稼ぎをしていたのに、いつも乱暴だ、姑息だと批判されるのはウチばかり」と八つ当たりをしていたのはどうかと。

実際、この日の結果でバーゼルが勝ち点7と首位に立ったものの、ヘタフェも6あるため、残り3試合で決勝トーナメント進出を決めることは十分、可能ですからね。あまり負けたことをクヨクヨ考えず、今は日曜午後6時30分、サンチェス・ピスファンでプレーするセビージャ戦に焦点を合わせてほしいところ。何せ、相手はヘタフェ同様、ローテーションメンバーで挑んだ同日のドゥドランジュ(ルクセンブルク)戦にも3-0と快勝し、ELグループリーグで3連勝していますからね。

リーガでもアトレティコと同じ勝ち点16で6位とEL出場権争いの定位置についているため、3差で9位とようやく上がってきたヘタフェとしても、これはいい挑戦になるのでは?ちなみにマドリーとバルサ以外、今週末からもリーガ3連戦と、ヨーロッパの大会出場チームにとっては辛い日程になりますが、皆、ここが正念場と思って、頑張ってくれるといいですね。

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