これじゃ、ファンだって胃が痛くなる…/原ゆみこのマドリッド

2019.10.05 15:00 Sat
「いやまあ、確かに今度こそ頂上決戦ではあるけどね」そんな風に私が首を振っていたのは金曜日、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場プレスルームであった試合前日記者会見生中継をレアル・マドリーTVで見ていた時のことでした。そう、リーガ前節のマドリーダービーも首位争いだったとはいえ、アトレティコは3位。よって、「Mañana jugamos primero contra segundo y significa todo/マニャーナ・フガモス・プリメーロ・コントラ・セグンド・イ・シグニフィカ・トードー(明日は1位と2位がプレーして、それが全てを物語っている)」(ジダン監督)というのはその通りなんですけどね。

とはいえ、3年ぶりに1部に戻って来たグラナダが「es un equipo que está haciendo una buena temporada igual que nosotros/エス・スン・エキポ・ケ・エスタ・アシエンドー・ウナ・ブエナ・テンポラーダ・イグアル・ケ・ノソトロス(ウチと同じようにいいシーズンを送っているチーム)」というのはともかく、最後の3単語や如何に!?だってえ、リーガは別として、あのクラブ・ブルージュ戦の直後ですよ。実際、CLグループリーグ2試合で勝ち点1というのはまさに2年前、お隣さんが経験済み。続くカラバフとの連戦で引き分けした挙句、グループ3位でヨーロッパリーグに回って優勝するという結末はアトレティコなら良くても、天下のマドリーにはグループ敗退など、決してあってはならないことのような気がしたから。

まあ、先のことはわからないため、とりあえず、どうしてマドリーがそんな苦境に陥ったのか、お話していくことにすると、火曜は午後6時55分という早い時間帯にキックオフを迎えた彼らだったんですが、いやあ、セビージャ、オサスナ、アトレティコ戦と無失点試合が続いて、ようやくザル守備問題は解決したと思われていたんですけどね。その日は前線に知名度のある選手がまったくいないのに油断したか、前半9分、カルバハルが南ア人のタウに背後を取られると、1人でエリアに向かうナイジェリア人のボナベントゥレにラストパスを出されてしまうことに。
その彼がまた、サンティアゴ・ベルナベウの大舞台で上がっていたかのように右足でのボールコントロールに失敗、左足に当たったボールが偶然にもゴールに向かったとなれば、「El primer gol que hemos encajado ha sido un poco de risa/エル・プリメール・ゴル・ケ・エモス・エンカハードー・ア・シードー・ウン・ポコ・デ・リサ(ウチが奪われた最初のゴールはちょっとお笑いものだった)」(ジダン監督)ではありませんが、まっとうなシュートを予想していたGKクルトワがマヌケに倒れてしまっていても仕方ない?

更にマドリーは39分にもボナベントゥレに2点目を奪われてしまうんですが、こちらもキッカケはモドリッチのボールロストという不注意によるミス。またしてもエリア内に入って足がもつれた当人は転ぶ寸前で体勢を立て直し、vaselina(バセリーナ/ループシュート)でGKの頭を越える入るゴールを決めたんですが、いやあ、こんなけったいな形で2度も失点してはねえ。早速、スタンドからクルトワにpito(ピト/ブーイング)が飛んでいましたが、でも違うんですよ、後半、彼がアレオラと交代したのは。自身の不甲斐なさにさいなまれ、胃が痛くなったせいではなかったのだとか。
ええ、これに関してはクラブも金曜になって「クルトワは不安によるパニック発作を起こした訳ではなく、急性胃腸炎の症状でプレー続行不可能となった」とわざわざ、公式声明をウェブに出して説明していましたけどね。ただ、ちょっと腑に落ちないのは、だったら、試合前から具合が悪かっただろうに何故、先発させたのかってことですが、とりあえず、アレオラは後半8分に再び突っ込んで来たボナベントゥレのシュートをセーブ。そこからはマドリー伝統のremontada(レモンターダ/逆転劇)精神が発動し、13分にはベンゼマのクロスをセルヒオ・ラモスがヘッドで撃ち込んでまずは1点を返します。

でもねえ、実はナチョも左ヒザの靭帯を痛め、ハーフタイムにマルセロと代わっていたため、最後の1枠でビニシウスしか入れられなかったマドリーはフォルマーが2枚目のイエローカードをもらって退場。それを機にようやく40分になって、FKからカセミロが頭で決めて同点に追いついたんですが、結局、逆転するには至らなかったんですよ。今更悔やんでも遅いですが、ジダン監督は「Estan tocados/エスタン・トカードス(ケガをしている)」と言っていたものの、こうなると、翌日の練習には普通に加わっていたベイルとハメス・ロドリゲスをベンチに入れなかったのは指揮官の判断ミスだった?

うーん、とはいえ、相手はクレマン監督からして、「この勝ち点1は歴史的、ウチのプレーぶりも歴史的だった」と感激していたクラブ・ブルージュですからね。本来なら、Bチームでもgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)していてもおかしくないんですが、おかげで2得点の英雄、ボナベントゥレなど、ゴールを入れたらタトゥーするという公約に「2つするよ」と嬉々として話している始末。もちろん、カセミロも「todavía tenemos muchas oportunidades, todavía dependemos de nosotros/トダビア・テネモス・ムーチャス・オポルトゥニダーデス、トダビア・デペンデモス・デ・ノソトロス(まだウチには沢山チャンスがあるし、自分たち次第だ)」と言っていたように、10月22日のガラタサライ戦では前半、ダメダメだった選手たちも心を入れ替えて、残る4試合を4連勝ぐらいの気概で挑めばまだ、CLの軌道修正は可能とはいえ…。

困ったのは休む間もなく、グラナダ戦が来てしまうことで、何と金曜にはクラブ・ブルージュ戦で頸椎捻挫が治って初プレーしたマルセロが今度は右太ももを負傷。マルチDFのナチョは全治2カ月とも言われていますし、メンディもまだリハビリ中とあって、左SBがトップチームに1人もいないんですから、まったく恐ろしい。いえ、記者会見でチーム規定に違反して、ブルージュ戦が始まってから遅れてスタジアムに着いた上、木曜午後などはスペイン・オープンでゴルフ観戦を満喫していたベイルを原点回帰させることをきっぱり否定したジダン監督は以前、ポルトで経験したことがあるらしいミリタオを当てにしているみたいですけどね。

相手のグラナダはホームではありましたが、バルサも破っていますし、古巣に恩返し願望のあるソルダードもいますからね。クルトワがまだ練習できず、GKがアレオラになるのはベルナベウのファンにブーイングの対象を与えなくていいと思いますが、代表戦週間突入前、最後となる土曜午後4時(日本時間午後11時)からのこの試合、一体、どんな展開になるんでしょうか。

そしてブルージュ戦が終わった後、急いで帰った私が後半5分過ぎぐらいから、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で見ることができたロコモティブ・モスクワ戦のアトレティコはどうだったのかというと。いやあ、メトロの駅までの道々、幾つか並んでいるお店のTVでチラッと目に入った前半終盤の映像ではシメオネ監督が怖い顔していたのしか印象になくて、どうせまだ0-0だろうと思ったんですが、意外や意外。再開から3分後、モラタのラストパスをジョアン・フェリックスがシュート、最初はGKギジェルメに弾かれてしまったものの、ゴール方向に走り続けていたのが幸いして、2度目のトライで先制点を挙げていてくれたから、驚いたの何のって。

おまけにいつもの席に座って落ち着く暇もあらば、12分には敵のCKをクリアしてカウンターが発動。自陣まで懸命に走ったジョアンが反対サイドのジエゴ・コスタにボールを送ると、最後はゴール前へのキラーパスを突っ込んで来たトマスがゴールって、何だか話が上手すぎじゃない?というのも実は最近、他の中盤の選手がパッとしないせいもあって、とりわけマドリーダービーの後など、この成長著しいガーナ人のカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)にやたらスポットが集まるように。

それこそ、シメオネ監督も試合前記者会見では、「ヒエラルキーやスペースの占め方、アトレティコでプレーするのがどういうことなのか、感情的にわかっている。Son dos de los jugadores más importantes del Atlético/ソン・ドス・デ・ロス・フガドーレス・マス・インポルタンテス・デル・アトレティコ(アトレティコで一番大事な選手のうちの2人)」とコケとサウールを庇わないといけない破目になっていましたからね。それが守備だけでなく、こんな形のゴールまで入れてくれるようになったとなれば、いくら私が時折、とんでもないところで敵に向けてパスを送るという、何度も目にした許しがたいミス故にトマスを信用しきれなくてもこれはもう、シャッポを脱ぐしかない?

いやあ、27分にはGKオブラクがヒメネスのCKヘッドクリアがクリホビアクの前に落ちる前に究極の千里眼を発揮。当人は「Son reflejos/ソン・レフレホス(反射神経だよ)」と謙遜していましたが、至近距離のシュートを手で弾いただけでなく、2度目のショットも距離を詰めてparadon(パラドン/スーパーセーブ)してくれたおかげでもあって、0-2で勝利することができたアトレティコでしたけどね。家に帰ってGOL(ゴル/オープン放送のスポーツ専門チャンネル)でハイライトを見たところ、前半にはこれまでケガや出場停止で実現しなかった大型CFコンビがとうとう、今季公式戦デビューしたものの、コスタはCKからジョアンが頭で流したボールをゴール前50センチから吹かしているし、モラタも絶好機をモノにできず。

一応、ジョアンは「Tengo más espacio para conducir la pelota/テンゴ・マス・エスパシオ・パラ・コンドゥシール・ラ・ペロータ(ドリブルするスペースがより多くある)」と2人の存在を歓迎していたようですけどね。今回もスペイン代表に呼ばれなかった彼らには、ポルトガル代表のお勤めが待っている19才にあまり負担をかけないよう、日曜午後4時からのバジャドリー戦で是非ともゴールゲッターを担当してもらいたところ。今回のCLグループリーグ3、4節の連戦も相手はレバークーゼンと、火曜はユベントスに3-0で負けていたものの、結構強敵ですからね。来週はサウールやトマスもそれぞれ、スペイン、ガーナ代表に行くため、留守番組のコケにもここはしっかり精進してもらいたいものです。

そして水曜にはバルサがカンプ・ノウで序盤にインテルのラウタロウに先制されながら、ルイス・スアレスの2発で2-1と逆転勝利。アトレティコと同じ勝ち点4となり、バレンシアはメスタジャでアヤックスに0-3と完敗してしまった後、木曜に弟分のヘタフェがELクラスノダール戦をプレーしたんですが、トラブゾンスポルとの初戦同様、ほとんどの選手をローテーション。その上、ホルヘ・モリーナ、マタの両エースにアランバリまでお留守番にしたのが仇にならなければいいがという私の心配は見事に杞憂に終わることに。ええ、前半36分にはケネディからスルーパスをもらい、後半16分にもラウール・カルネロのFKを流し込んで、アンヘルが2ゴールを挙げてくれたんですよ。

いえ、24分にはアリに1点を返され、35分にはティモルが2枚目のイエローカードで退場となるという逆境もあったんですけどね。そのまま1-2で逃げ切り、2連勝でグループ首位って、このヘタフェ、Bチームも結構、強い?ただ、リーガの方ではまだ調子が上がらず、勝ち点7で16位と低迷しているため、この日曜には今季は立場が逆で、相手の方がミッドウィークがヒマ。4節前には兄貴分のアトレティコも2-0と負けてしまった、改装オープンしたレアル・アレナでレアル・ソシエダと当たるのも大変ですが、ここはEL休養組が頑張ってくれるのを期待しましょうか。

え、それより7試合で勝ち星ゼロ、勝ち点も2しかない最下位の極限状態でこの土曜午後1時から、レバンテをブタルケに迎えないといけないレガネスの方が事態は深刻じゃないかって?まあ、そうなんですが、こればっかりは風向きが変わってくれないことにはどうにもなりませんからね。今のところは残留ラインの17位と勝ち点差4とまだ許容範囲内のため、とにかくまずは初勝利を掴んでくれると嬉しいかと。

ちなみにレガネスのすぐ上の19位、久保建英選手のいるマジョルカは日曜正午(日本時間午後7時)から、やはり木曜にELでCSKAモスクワをロシアで0-2と倒してきたばかりの18位エスパニョールに迎えるとあって、こちらも白星ゲットのいいチャンスになりそう。何にしてもリーガが進むにつれ、だんだん降格圏脱出も難しくなるため、どこも早めに手を打ちたいところですよね。

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly