ゴール不足は心配した方がいい…/原ゆみこのマドリッド

2019.09.24 16:30 Tue
「あまり慰めにはならないわよね」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、その日の午前中、先日、アルカラ・デ・エナレス(マドリッド近郊)にオープンしたアカデミア(下部組織)用練習場で施設のお披露目を兼ねて練習したアトレティコが男女混合partidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)を行い(https://bit.ly/2mC8fHv)、ジエゴ・コスタが女子チームのGK相手にゴールを決めて喜んでいる姿をお昼のニュースで見た時のことでした。いやあ、当のアトレティコ・フェメニーノも土曜にバルサ女子に6-1と大敗。リーガ・イベルドロラ(女子リーガ1部)開幕戦で9-1という痛い洗礼を受けた、来季からレアル・マドリー配下の女子チームとなる昇格ほやほやのタコン同様、手痛い目に遭ってバルセロナから帰って来たばかりなんですけどね。

といっても女子に関してはリーガ3連覇中というのもあり、あまり心配はしていないんですが、アトレティコファンの悩みの種はプレシーズンマッチでは当たりまくりながら、出場停止処分とケガで3節から今季を始めたコスタがここまで4試合、まだゴールを挙げてないこと。もっと言えば、彼が公式戦で得点したのは昨季の3月が最後ですし、モラタも先週末の試合でヒザの負傷が治って途中出場したとはいえ、こちらもまだヘタフェとの初戦で1得点しただけですからねえ。とりわけリーガのここ2節、零封されていることを考えると、FW陣には早いところ、ゴール嗅覚を取り戻してもらわないとマズいことにならない?

まあ、そのマドリッド市内から行くのに1時間半程かかる新練習場は当面、女子チームとユースチームが日々のセッションと試合で使用、大人の男子チームはこれまで通り、モンクロア(市内のバスステーション)から25分のマハダオンダ(マドリッド近郊)で練習を続けるため、今は先週末のマドリッド勢の試合のお話をしていくことにすると。まず土曜、先陣を切ったのはワンダ・メトロポリターノにセルタを迎えたアトレティコで、ミッドウィークのCLユベントス戦まではいきませんが、丁度、Dia de las Penas/ディア・デ・ラス・ペーニャス(ファンクラブの日)の催しもあったため、雨が降り出す悪天候にも関わらず、スタジアムの入りはまずまず。
ただ、前半は移籍後初出場となったCBフェリペのヘッドやジョアン・フェリックスのシュート、後半もコケのミドルでチャンスを作ったアトレティコだったんですが、GKルベンにparadon(パラドン/スーパーセーブ)を連発されて得点できなかったんですよ。序盤にサンティ・ミナとの接触プレーで顔を打たれ、同様のアクシデントで途中交代となったエイバル戦のリピートの心配をされたGKオブラクも後半29分、ブライス・メンディの至近距離のシュートをパラドン返し。失点を防いでくれたため、最後は0-0で終わったんですが、いやあ、シメオネ監督も「en el segundo intentamos todas las vías para encontrar el gol/エン・エル・セグンド・インテンタモス・トーダス・ラス・ビアス・パラ・エンコントラール・エル・ゴル(後半、ウチは得点するため、全ての方法を試みた)」と言っていたものの、CKが10回近くもありながら、全然、ゴールが決まらなくてはねえ。

おまけに昨季、同じポルトガルリーガでプレーしていたフェリペなど、「若い選手だし、相手に研究されているしね」と庇っていたものの、移籍金1憶2700万ユーロ(約152億円)の大型新人ジョアンはこの試合で3連続途中交代。もちろん「Los jugadores no tienen en contrato que tienen que jugar los 90 minutos/ロス・フガドーレス・ノー・ティエネン・エン・コントラトー・ケ・ティネン・ケ・フガール・ロス・ノベンタ・ミヌートス(選手たちは90分間プレーしなければいけないという契約をしていない)」という、シメオネ監督の言葉もわかりますが、何せ、ミッドウィーク開催節のある今週、水曜午後7時(日本時間翌午前2時)からのマジョルカ戦の後にはいよいよ、お隣さんとのマドリーダービーがワンダに到来しますからね。ここは若干19才とはいえ、当人も歯を食いしばって、リーガのハードルをできるだけ早く乗り越えてもらいたいかと。
それでもこの日は夜に試合をしたバルサも1憶2000万ユーロ(約144億円)のグリーズマンにルイス・スアレスが先発、後半にはメッシ、スペイン国籍取得でU17代表に招集可能となった16才のアンス・ファティも投入したにも関わらず、昇格組グラナダのホームで2-0と敗戦。大手はどこもまだエンジンがかかっていないのかと私も胸を撫でおろしながら、日曜日を迎えたところ…ようやくスタートダッシュに躓いていた弟分2チームの朗報が届いたんですよ。

そう、まずは正午にヘタフェがコリセウム・アルフォンソ・ペレスでマジョルカと対戦したんですが、開始7分、ジェイソンが蹴ったCKをババがオウンゴールにしてくれたのがホームチームを後押し。19分にはラーマンとサルバ・セビージャが打撲でプレー続行不可能となり、急遽、久保建英選手がピッチに入るといった、どうやら彼を目当てに観戦に来ていた日本人ファンたちには嬉しいサプライズもあったりしたんですが、33分にはCK時にサストレがマタを倒したプレーがペナルティになるなど、この日はジャッジでもヘタフェに追い風が。もちろんPKは37才のエース、ホルヘ・モリーナが確実に決め、2点リードでハーフタイムに入った彼らは後半18分にも敵エリアのゴールライン際で粘ったマタがニヨンにラストパスを出して3点目をゲット。

誰もがこれで勝負ありと思ったものですが、いえいえ、マジョルカにも諦めていない選手がいたんです。ええ、25分、カブレラが目の上を切って治療中、ヘタフェが1人少ない時に久保選手が上げたクロスをブドミルが頭で撃ち込んで1点を返すと、32分にはクリアミスから転がったボールをゴール前でtaconazo(タコナソ/ヒールキック)。あっという間に1点差になった上、プレーが進むたび、ピッチのどこかで選手が倒れているという、冗談のような光景が展開されていたのもあって、一時、場内も緊張に包まれたものですが…でも大丈夫。木曜のELトラブゾンスポル戦でも決勝点となるゴールを挙げ、この日もスタンドの大歓声に迎えられての途中出場となったアンヘルが39分、ポルティージョのスルーパスから4点目を決めてくれたとなれば、もう大船に乗った気でいていい?

そのまま4-2のスコアで今季リーガ初勝利を挙げたヘタフェは降格圏の18位から11位にジャンプアップ。これなら水曜のバレンシア戦でもいい勝負ができるだろうと期待させてくれたんですが、それをますます確信させてくれたのは同日、午後4時からメスタジャでプレーした弟分のお隣さん、レガネスが見事に今季初勝ち点をもぎ取っていたから。そう、前半21分にはルベン・ペレスがロドリゴを倒したタックルがエリア内だったとされ、パレホのPKゴールで先制されたペジェグリーニ監督のチームでしたが、決して下を向かず。ゴールバーを直撃するシュートも放っていたオスカルが35分にはGKシレッセンを破り、同点に追いつくと、お馴染みの5人DF体制に戻していたのも幸いして、先週はCLでチェルシーを破っていたバレンシアと1-1で引分けているんですから、これは紛れもないpuntazo(プンタソ/大きな勝ち点)だったかと。

いえ、それでもレガネスが最下位なのは変わっていないんですけどね。おまけにこの水曜には、直後の試合でアラベスを下し、リーガ首位に立ったアスレティックをブタルケに迎えないといけないとあって、まだまだ険しい道のりが続くんですが、実はこの開幕から5試合でたったの勝ち点1というのは昨季とまったく同じ成績だとか。その後、着実に調子を上げ、シーズン終盤はEurolega(エウロレガ/ヨーロッパの大会に出場するレガネスの意)となる可能性も残しつつ、13位で終わったのはまだ記憶に新しいところ。

となれば、この引き分けを機にこれから上昇気流に乗ってくれることを祈るばかりですが、実は日曜夜には兄貴分も面目躍如を果たしてくれたんです。ええ、水曜にはCLでPSGに3-0と叩きのめされて戻って来たマドリーだったんですが、ここ4年、ずっと黒星続きのサンチェス・ピスワンに乗り込んでのセビージャ戦、ジダン監督はミリタオをセルヒオ・ラモスに代えた以外、まったく同じのスタメンでスタート。ロペテギ監督になって、スペイン代表風のパスサッカーをするようになった相手の方がボールポゼッションは高かったんですが、シュートまでに至らなかったのが幸いしましたかね。

マドリーの方もアザールやハメス・ロドリゲスがGKバチリクに弾かれ、前半は両チーム共、無得点で終わったんですが、後半にようやく、見せ場がやって来ます。ええ、19分、ベイルが繋いだボールをエリア内奥からカルバハルがクロス。それをベンゼマがヘッドして、先制点ゲットとなったから、イライラしながら、試合を見ていた近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)のお客さんたちもどんなに喜んだことか。残り4分にはノリトとチチャリートの途中出場組でGKクルトワを破ったセビージャでしたが、それもオフサイドの判定となり、最後は0-1でマドリーが勝利。勝ち点でアスレティックに並び、6位に落ちてしまったお隣さんとも1ポイント差をつけたんですが…。

いやあ、この白星で最近、後任候補まで挙がる程だった世間の批判を一時的にかわすことができたジダン監督は、「la labor defensiva de todos ha sido la clave para ganar/ラ・ラボール・デフェンシバ・デ・トードス・ア・シードー・ラ・クラベ・パラ・ガナール(全員の守備の仕事が勝利のカギだった)。とりわけハメス、アザール、ベイルはよく守ったよ」と選手たちを褒めていたんですけどね。まったくもって不思議なのは、モチベーションが上がって当然なCLの試合でintensidad(インテンシダッド/プレーの激しさ)がないというのはやっぱり、ここ6年で4度もそのタイトルを獲得している選手がチームにごろごろいるだけに少々、ハングリー精神に欠けてしまっている?

まあその辺はこの水曜午後9時(日本時間翌午前4時)、オサスナをサンティアゴ・ベルナベウに迎える試合で確認するしかありませんが、月曜の夜にはミラノのスカラ座で開催されたFIFAベストの表彰式にベストイレブンに選ばれたラモス、アザール、モドリッチ、マルセロが参加。うち2人はまだケガのリハビリ中のため、別にいいんですが、ミッドウィーク開催のリーグがある忙しい週にこんな催しをするのは果たして如何かと。いえ、実際、火曜にセリエAの試合があるからと欠席したのはベストの3候補に入ったクリスチアーノ・ロナウドだけで、同じく火曜にビジャレアル戦がありながら、栄えあるベストの受賞者となったメッシや、今年からできた最優秀GK賞の候補に挙がっていたテア・シュテーゲンら、バルサの選手が姿を見せていたことの方がむしろ、驚きではあったんですけどね。

別にマドリーは週末のダービーを考えて、ジダン監督が水曜の試合ではローテーションするからいいんだろう見方もできますが、オサスナも昇格組とはいえ、開幕から5試合1勝4分けとまだ黒星のないチーム。とりわけホームゲームということもありますし、引き分けによる取りこぼしでさえ、失態とされるマドリーだけにここは何とか、セビージャ戦と同じ緊張感を選手たちに保ってもらいたいところですが、さて。いやあ、来週ミッドウィークにはCL、ELの2節もありますし、10月2週目の代表戦週間が始まるまで、レガネス以外のマドリッド勢は連戦い次ぐ連戦。こういう時期はどこの監督さんもやりくりを考えるのが大変ですよね。

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly