悪い流れは気合で変えないと…/原ゆみこのマドリッド

2019.09.21 19:00 Sat
「結果より、イメージの問題かしら」そんな風に私が首を傾げていたのは金曜日、絶対不可侵だと思われていたジダン監督について、いよいよ後継者候補の名前がモウリーニョ、アッレグリ、ラウールとマルカ(スポーツ紙)で挙がっていたのを見つけた時のことでした。いえ、今週から始まったCLグループリーグでは火曜にバルサがドルトムントとスコアレスドロー。しかもマルコ・ロイスのPKをGKテア・シュテーゲンが弾いてくれなければ、大変なことになっていたぐらいだったんですけどね。よって、同じアウェイでレアル・マドリーも取りこぼしてしまったとて、まだ残り5試合、勝ち点15もあるため、別に決勝トーナメント進出が危うくなった訳でも何でもないのに批判が集まっているのはやっぱり、3-0という外聞の悪い負け方をしたせいだった?
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ちなみに今季のCLではマドリッドの両雄が同じマッチデーに設定されてしまったため、この1節、私はワンダ・メトロポリターノでのアトレティコvsユベントスを観戦。前日にも足を運び、最近お目見えしたアトレティコ・アビアシオン(1939-47年にチーム名がスペイン空軍になった)時代を記念して、展示されるようになった飛行機を眺めた後、まるでシメオネ監督みたいな黒シャツ、黒パンツ姿で、アウェイのスタジアムで練習をしないのが恒例のユベントスの選手たちが”Walking on the pitch(ピッチの散歩)”タイムを過ごすのを見学したんですが、それはまさに嵐の前の静けさ。翌日のワンダは超満員、フォンド・スール(南側ゴール裏席)には「Una fe inquebrantable/ウナ・フェ・インケブランタブレ(不動の信念)」という横断幕が張られ、いつにも増して盛大な応援が繰り広げられる中、昨季のCL16強対決敗退のリベンジを期した戦いが幕を開けることに。いやあ、近くの記者たちが誰もパソコンでPSG vsマドリー戦を見ていなかったため、私も同時進行のお隣さんの様子はオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の二元中継頼りだったんですけどね。折しもそれは、せっかくジョアン・フェリックスが才能の煌めきを見せ、敵をかわしながら、左サイドをドリブルで上がったものの、アトレティコの初シュートをGKシュチェスニーの正面に撃ってしまった直後のことでした。前半14分、パルク・デ・プランスでベルナトのラストパスをディ・マリアがGKクルトワとゴールポストの狭い間にねじ込み、意気揚々と古巣への恩返しを始めたのは。
後でこのシュートの瞬間、目を閉じていた写真が出回るという目に遭い、丁度、向かい側のゴールには移籍後、たった1試合でPSGの正GKの座を確たるものにしたケイロル・ナバスがいたせいもあったんでしょうかね。「En el primer gol estaba colocado en el centro y Di María chutó muy rápido/エン・エル・プリメール・ゴル・エスタバ・コロカードー・エン・エル・セントロ・イ・ディ・マリア・チュト・ムイ・ラピド(最初のゴールの時、自分はクロスに備えていて、ディ・マリアが素早く撃った)」と言い訳していたクルトワでしたけどね。PSGが2点目を決めたのもまだ、ワンダでスコアが動く前。ええ、32分には再び、ディ・マリアがエリア前から自慢の左足で2点目を挙げた報がラジオで伝わってきたから、驚いたの何のって。

おまけにそのすぐ後にはベイルがゴールを決めながら、VAR(ビデオ審判)でハンドが発覚し、得点を認められないという不運もあったマドリーでしたが、いくらセルヒオ・ラモスとナチョが出場停止でバランとミリタオの急造CBコンビだったといってもねえ。そのベイル以外、枠内シュートもなかったと聞くと、ゴールにはならなかったものの、ジョアンやヒメネスのヘッドなどもあったアトレティコは天敵、3月の16強対決2ndレグではハットトリックも喰らわされているクリスチアーノ・ロナウドへの対策もバッチリ。あとは後半、どこかで上手い具合に1点取れればという雰囲気でハーフタイムに入ったのを喜んだ私だったんですが、そうは問屋が卸しません!
だってえ、後半2分、イグアインがボヌッチのロングボールを受けて上がってきたんですが、そのパスを受けたクアドラードがノーマークだったんですよ。それもロナウドチェックが入念すぎたか、サビッチ、ヒメネス、ロディ、トマスの4人がそちらについており、しかもそのクアドラードのシュートがGKオブラクの届かない左上隅に決まってしまったとなれば、笑うに笑えないとはまさにこのこと?更に19分、またトリピアーのサイドから侵入したアレックス・サンチョが上げたクロスをゴール前でマトゥイディに頭で撃ち込まれ、2点目を奪われているとなったら、一体どうしたらいいっていうんでしょう。

でも大丈夫。後でトリピアーも「シメオネ監督は粘るのを決して止めてはいけないと言い続けている。0-2になった時も追いつくことができるとボクらは信じていたし、ファンもそうだった」と後で話していたんですけどね。それから間もなくの24分にはFKから、当日の朝まで熱があったというサビッチが「Es una jugada muy bien entrenada. Saca Koke, Giménez peina en un costado y yo entro a rematar/エス・ウナ・フガダ・ムイ・ビエン・エントレナーダ。サカ・コケ、ヒメネス・ペイナ・エン・ウン・コスタードー・イ・ジョ・エントロ・ア・レマタル(とてもよく練習したプレーだよ。コケが蹴って、ヒメネスが横に流して、ボクがフィニッシュに入る)」という見事なヘッドの連携で1点を返してくれることに。

30分頃にはトマスがこむら返りを起こしたのを機にロディと共に交代。サウールが左SBとなり、ビトロ、そして移籍後初出場となるエクトル・エレラをピッチに入れて同点を目指したアトレティコでしたが、まあこんな勝敗が懸かった状態でしたからね。パリではベンゼマがゴールを入れたものの、途中出場したばかりのルーカス・バスケスのオフサイドでまたしてもマドリーの得点が認められなかったことや、いよいよ45分、ベルナトとムニエのパス交換から、後者がPSGの3点目を入れたことなどに、私があまり注意を払っていなかったのは申し訳ないんですが、若干、進行が遅れ気味だったワンダで最後の見せ場やって来たのも丁度、45分のことでした。

それは普段はセットプレー時にエリア内の戦闘要員とならず、リバウンドを待っていることがほとんどというエレラが、「En el último Simeone me dijo que subiera a rematar/エン・エル・ウルティモ・シメオネ・メ・ディホ・ケ・スビエラ・ア・レマタル(最後のチャンスでシメオネ監督に上がるように言われた)」おかげで、トリピアーのCKをハイジャンプが得意なヒメネスに競り勝って、当人もあまり得意ではないというヘッドで決めてしまったから、どんなに場内が盛り上がったことか。いやあ、これには当人も大喜びでベンチまで駆け寄り、これまで中盤の人事起用にコケ、サウール、トマス、マルコス・ジョレンテを優先して、プレー時間をくれなかった指揮官に起死回生の同点ゴールを入れたのは自分だとアピールしていましたけどね。

やはり昨季まではポルトで、メキシコ代表でもキャプテンを務めているだけの選手だけあって、ピッチでもチームメートに落ち着きを与えていたのは決して偶然ではなかったかと。幸いロスタイムにはロナウドのエリア内シュートがかろうじて枠を逸れ、そのまま試合は2-2の引き分けで終了。何とかCL黒星発進は免れたアトレティコでしたが、ここ3試合続けて2失点をしているのはちょっと気がかりかも。いえ、エイバル戦では逆転勝ちできましたし、負けたのはレアル・ソシエダ戦だけですから、そんなに深刻にならなくてもいいのかもしれませんけどね。

シメオネ監督も「Lo mejor es que nunca perdimos la cara/ロ・メホール・エス・ケ・ヌンカ・ペルディモス・ラ・カラ(良かったのはウチが決してやる気を失わなかったこと)」と逆境にもメゲなかったチームを褒めていたんですが、やはり5年連続のサモラ(リーガで一番失点の少ないGKに贈られる賞)を目指すオブラクが気分を害しても良くないと思ったか、土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からのセルタ戦を前にして、ワンダで行われた金曜の夕方練習では守備に重点が置かれていたよう。

そちらではようやくヒザを痛めていたモラタが合流し、招集リストにも入ったため、今季はまだ初ゴールを挙げていないジエゴ・コスタも今度は2人CF体制で、28日のマドリーダービーを睨みながら、調子を上げていけるんじゃないかと期待していますが、相手のセルタはミッドウィークが空いていた体力十分のチーム。ケガをしていたラフィーニャ(バルサから移籍)も復活したようで、イアゴ・アスパスと共にまた、アトレティコのDF陣が試されることになりますが、ここは何とか、勝利をゲットして、リーガ上位をキープできるとありがたいかと。

え、前節で彼らを抜いて、勝ち点差1で首位に立ったセビージャと今週末当たるのはマドリーなんだから、ここはお隣さんの援護射撃を当てにしてもいいんじゃないかって?いやあ、何せ、向こうはネイマールもエムバペもカバーニもいないPSGに「Nos han superado en todo, en juego, en la media, y lo que más me molesta es la intensidad/ノス・アン・スペラードー・エン・トードー、エン・フエゴ、エン・ラ・メディア、イ・ロ・ケ・マス・メ・オレスタ・エス・ラ・インテンシダッド(プレーでも中盤でも、ウチは全てで上回られてしまった。何より自分がイヤだったのはプレーに激しさがなかったことだ)」(ジダン監督)という理由で、手も足も出ずに負けて帰って来たばかりですからね。

もちろんCLの方は再来週の10月1日、アトレティコも昨季グループリーグで顔を合わせ、ホームでは3-1と快勝しているクラブ・ブルージュをサンティアゴ・ベルナベウに迎える試合から、立て直せば済む話なんですが、実はサンチェス・ピスファンではここ4シーズン、負け続けているという恐ろしい事実が。しかも昨季はW杯に出場するスペイン代表監督の座を棒に振って、マドリーの指揮官となりながら、10月末には不成績で解任となったロペテギ監督がセビージャのベンチで手ぐすねを引いて待っていますし、レンタル移籍をしたレギロン、5年前にマドリーで1シーズンを過ごし、折しもこの木曜のヨーロッパリーグで移籍後初ゴールをFKで挙げたチチャリートまで、古巣への恩返しに燃えているとなると、とてもじゃないけど楽観はできない?

おまけに金曜にベルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場で再開されたセッションで、ケガから復帰していた選手はバルベルデだけで、モドリッチ、イスコ、マルセロはまだ待たないといけないとなれば、それこそパリでは精彩のなかったアザールに頑張ってもらうしかないようですが、こればっかりはねえ。下手をすると、ジダン監督交代の噂が活発化しかねないセビージャvsマドリー戦は日曜午後9時(日本時間翌午前4時)キックオフ。ベストメンバーを並べないといけないCLと、対戦相手にビッグネームがないおかげでローテーションをかけられるELの後の試合というのもマドリーにとっては辛いところですが、キャプテンのセルヒオ・ラモスが戻って来るのは心強いかもしれません。

え、それでセビージャが2年前、アトレティコがCLグループリーグで2引き分けして早期敗退する原因を作ったカラバフ(アゼルバイジャン)のホームで0-3と当たり前に勝利していた木曜日、9年ぶりのEL初戦を迎えた弟分のヘタフェはどうだったのかって?いやあ、この大会は兄貴分も同じなんですが、早い段階ではあまりスタンドが埋まらず、コリセウム・アルフォンソ・ペレスも半分くらいの入りだったんですけどね。幸い相手のトラブゾンスポル(トルコ)とはかなり実力差があったようで、ボルダラス監督もCBのジェネ以外、完全ローテーションで挑んだんですが、前半18分、ラウール・ガルシアのクロスをアンヘルが頭で決めた1点で十分でした。

うーん、後半にはリバプールから移籍したFWスタリッジのシュートをゴール前でジェネがクリアと、ヒヤリとしたシーンもなくはなかったんですけどね。それもアンヘルが更に2度、途中出場のマタにも追加点のチャンスがありながら、決められなかったせいもあったとなると、まあ、その分は現在、まだ白星がなく、不本意ながら降格圏の18位にいるリーガで日曜正午(日本時間午後7時)から、コリセウムに久保建英選手擁するマジョルカを迎える試合のため、取っておいたと解釈した方が気分的にはいいかと。ちなみに彼らのEL次節はクラスノダール戦で、アトレティコと同じロシア遠征になりますが、兄貴分が首都モスクワのロコモティフを訪れるのとは違い、南部に行くのは時間がかかって大変そうですよ。

そして日曜には最下位という、ヘタフェよりもっと辛い立場にあるお隣さん、レガネスも今季初勝ち点を目指してバレンシア戦に挑むんですが、どうにも間が悪いのは相手がこの火曜、チェルシー戦にロドリゴのゴールで0-1と勝利。CLグループリーグ1節、スペイン勢唯一の白星を挙げ、マルセリーノ監督緊急解任で始まった危機を乗り越えてしまったように見えることでしょうか。まあ、といってもセラデス新監督が初めて指揮を執るメスタジャの雰囲気が悪いのは火を見るより明らかですし、ペジェグリーノ監督のチームは1週間、腰を落ち着けて練習できているはずですからね。何とか、早いうちに未勝利状態を脱してほしいものですが…こちらも最初2試合の0-1負けから、2点、3点とだんだん失点が増えているため、まずは守備をガッチリ固めないといけないかもしれませんね。

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