あまり楽観的にはなれない…/原ゆみこのマドリッド

2019.09.17 17:00 Tue
「ホントはもっとワクワクしているはずだったんだけど」そんな風に私が首を振っていたのは月曜日、お昼のスポーツニュースがその日、北京から帰還、夜にはコロン広場で祝勝行事が開かれるという、スペイン代表のバスケットW杯優勝関連ニュースの後、すぐCL話題に突入。今週から、いよいよヨーロッパの大会が始まることを意識させられた時のことでした。いえ、今季のマドリッド勢はレアル・マドリー、アトレティコのCL常連兄貴分に加え、弟分のヘタフェも9年ぶりにヨーロッパリーグに出場。少なくとも12月までは充実したミッドウィークが保障されているのは決して悪いことじゃないんですけどね。

ただ、どのチームも先週末のリーガの試合で懸念を残していて、とりあえず順番にお話ししていくと、土曜の午後1時に先陣を切ったのはマドリー。雨のサンティアゴ・ベルナベウにレバンテを迎えたんですが、ベイルが出場停止、イスコやモドリッチも負傷で欠けているメンバーはいたものの、前半はかなりいい出来を見せてくれることに。ええ、濡れた芝の上をボールが速く走るのを利用して、24分にはカルバハルのクロスをベンゼマがヘッドして先制すると、30分にもハメス・ロドリゲスの落としたボールをベンゼマが決めてdoblete(ドブレテ/1試合2ゴールのこと)を達成。おまけに40分、ビニシウスがゴール前に入れたラストパスをカセミロが押し込み、効率良く3点を取ってしまったから、最近はホームで苦戦する彼らを見慣れていたスタンドのファンも喜んだの何のって。

でもねえ、ロッカールームでのパコ・ロペス監督の叱咤激励が効いたレバンテが後半に反撃してきたんですよ。3分にはもう、モラレスからアシストを受け、ボルハ・マジョラルがレンタル元に恩返し。「El Madrid es mi vida/エル・マドリッド・エス・ミ・ビダ(マドリーはボクの人生)。下部組織から11年もプレーしきたから、ゴールなんて祝える訳もなかった」と当人は後で言っていましたが、まだこの時はマドリーも余裕があったんでしょう。とはいえ、水曜のCLを気にして、ジダン監督がブラジル代表から戻って来たばかりのカセミロを15分に下げたのはちょっと、早まった判断だったかと。
というのも何度も何度もトライした結果、ようやくゴールに入ったビニシウスのシュートもVAR(ビデオ審判)で認められず、開幕直前にケガをしたアザールもようやく、途中出場でマドリーデビューを果たしたものの、そのシュートはGKアイトールに止められて追加点がなかったところに29分、メレロのヘッドでレバンテが1点差に迫ってきたから。あまつさえ、ロスタイムにはベソの強烈ヘッドをGKクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で弾き、何とか3-2で逃げ切ったんですが、まさに終盤の彼らは「el Madrid ha acabado pidiendo la hora/エル・マドリッド・ア・アカバードー・ピディエンドー・ラ・オラ(マドリーは試合終了を今か、今かと審判に頼んで終わった)」(パコ・ロペス監督)という状態だったとなれば、誰もが次のPSG戦に恐れを抱いたのも当然だった?

え、本来なら、カセミロ同様、バランを休ませるはずだったのにセルヒオ・ラモスがミリタオと交代していたのはどうしてなのかって?それがどうやら、ラモスがふくらはぎを痛めてしまったせいだったようですが、CL初戦はナチョと一緒に出場停止となる彼には日曜のセビージャ戦まで回復する時間があるため、大丈夫。むしろ、守備陣で気になるのはこの試合で首を痛めたマルセロの欠場が月曜に決まったことで、いえ、一応、左SBにはメンディもいるんですけどね。中盤もイスコが戻れるか、戻れないか微妙なところで、ベイルは体力満々なはずですが、果たしてどうなることやら。
一方、同じ土曜にリーグ1のストラスブール戦を行い、パルク・デ・プランスのスタンドから延々とブーイングを受けていたネイマールが後半ロスタイムにchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)で決勝点。1-0で辛勝したPSGはその彼がやはり出場停止で出られず、カバーニとエムバペの復帰も間に合わないとあって、おそらく最大の敵はマドリーから河岸を変えたばかりながら、いきなり先発でセーブを連発していたGKケイロル・ナバスとなる見込み。サラビア(セビージャから移籍)やアンデル・エレラ(同マンチェスター・ユナイテッド)といったスペイン人選手や、こちらも古巣対決となるディ・マリアなどの調子も気になりますが、水曜午後9時(日本時間翌午前4時)の試合ではとにかく、CLとなると燃えるマドリー気質を当てにしています。

そして土曜の午後4時には弟分のレガネスがビジャレアル戦に挑んだんですが、もちろんマドリッドの衛星都市にあるブタルケも雨模様なのは同じ。それでも忠実な地元のファンたちは応援に駆けつけていたんですが、いや、2週間、じっくり練習できたといっても急に強くなったりはしないんですね。というか、paron(パロン/リーガの休止期間)前より守備が劣化、前半にジェラール・モレノに先制点を奪われた後、ジョナタン・シウバのオウンゴールでも失点すると、後半ロスタイムにもジェラール・モレノに自身2点目を許し、0-3で完敗してしまったとなれば、一体、どうしたらいいっていうんでしょう。

うーん、この日は昨季、シーズン序盤の不調で変更し、成功を収めた5人DF制を4人に戻してみたペレグリーノ監督でしたが、開幕から3連敗の打開策にはならず。それどころか、勝ち点0の最下位のままで今週末、来週ミッドウィークと続く、バレンシア、アスレティック、グラナダとのリーガ3連戦に突入するのは本当に気が重いかと。しかもアスレティック戦以外はアウェイとあって、難易度が上がるのは辛いところですが…とりあえず、マルセリーノ監督電撃解任のショックでカンプ・ノウでは5-2の大敗。この火曜にはスタンフォード・ブリッジでチェルシーとのCL戦に挑むバレンシアが調子を取り戻さないことを祈るぐらいしか、私にはできません。

え、思いっきり、この2週間何をしていたのか、疑わせたのはアトレティコも同じだろうって?その通りで夕方には近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に足を運んでレアル・ソシエダ戦を見た私だったんですが、アノエタ改めレアル・アレナでのオープニングゲームでの彼らはもしや、フィジカルサーキットトレを楽しみすぎて、ボールを使った練習をあまりしていなかったのかとすら、思わせる惨状を披露。かつての同僚、GKモヤを脅かすには遠く及ばず、何とか前半はオジャルサバルのシュートをGKオブラクが足で弾き、無失点で凌ぎ切ったものの、後半12分にはとうとう、自慢の堅い守備も崩壊してしまったんです。

そう、シメオネ監督がこの日は才能の煌めきをほとんど見せていなかったジョアン・フェリックスを今季初出場となるコレアに交代した直後、今季はお隣さんからソシエダにレンタル移籍をしているウーデゴールがエリア内から撃ったシュートがサビッチの足に当たり、軌道が変わってゴールになってしまったんですよ。おまけにそのショックも癒えない3分後、今度はウーデゴールのFKを、マークについたコケを頭1つ上回るジョアンと同じ19歳の長身FWイサクがヘッドで落とし、オブラクが弾いたボールをモンレアルが蹴り込んで2点目を奪われてしまったから、さあ大変!

いえ、まあ、一番ショックだったのはその時、アーセナルからソシエダに加入したばかりの左SBの足が顔に当たり、オブラクがダウンしてしまったことなんですけどね。チームドクターの治療を受けて、朦朧としながらも立ち上がり、プレーを続けたがった彼ですが、ここは「en estos casos manda el doctor/エン・エストス・カソス・マンダ・エル・ドクトール(こういう場合はお医者さんの言うことが絶対なんだ)。一番大事なのは健康だってことを言い聞かせなきゃならなかった」というサウールやコケに説得されてアダンと交代。幸い重傷ではなく、ソシエダの追加点もなかったため、それはいいんですが、その後、ビトロのシュートもヒメネスのヘッドも見事にモヤがブロック。アトレティコはそのまま2-0で今季初黒星を喫してしまいましたっけ。

結局、日曜にはセビージャがアラベスに勝ち、首位の座も取られてしまった彼らなんですが、今はまだ4節が終わったばかり。大して気にすることもないものの、頭が痛いのはあの、ろくろくボールも繋げないアトレティコがまたしても姿を現したことで何せ、水曜にはワンダ・メトロポリターノにユベントスを迎えないといけませんからね。もちろん昨季のCL16強対決、トリノでクリスチアーノ・ロナウドにハットトリックを許し、赤っ恥の逆転敗退を喰らった2ndレグの前には2-0で完勝した1stレグもありましたし、何よりこれはグループリーグ。そんなに恐れることはないとはいえ…。

ヒザのケガが治って、モラタが復帰できるのかもわからない上、ジエゴ・コスタが今季まだ無得点なんですよ。おまけに先日のユーロ予選でジョアンがまだまだ、ポルトガル代表の大先輩には及ばないこともはっきりしましたし、こちらには出場停止者はいないんですが、とにかくゴールが入るかどうか不安。情けないことに、ユベントスも先週末はフィオレンティーナとスコアレスドロー。キッエリーニだけでなく、ピアニッチ、ドグラス・コスタも負傷で出られないといった辺りがちょっとした気休めになるぐらいではねえ。何はともあれ、トマスは出場できるようになったため、せめてワンダを満員にするファンに恥ずかしい思いをさせるような試合だけはしないでくれたらと思います。

そして木曜のELで2年前、アトレティコのCLグループリーグ敗退を引き起こしたカラバフ(アゼルバイジャン)と戦うセビージャ、フェレンツバーロシュ(ハンガリー)と顔を合わすエスパニョールと共にコリセウム・アルフォンソ・ペレスにトラブゾンスポル(トルコ)を迎えるヘタフェの直前リーガ戦はどうだったかというと。いやあ、ベニト・ビジャマリンでの試合は前半15分、エリア内に突進したククレジャをバラガンが倒し、それでゲットしたPKをマタが決めて先制。加えて25分にはアランバリを吹っ飛ばしたカルバーリョがVARで退場となったため、今季初勝利は固そうだったんですけどね。

後になって思えば、その時、審判がプレーを止めなかったら、こぼれたボールをマタが2点目のゴールに変えていたところだったんですが、逆にそれが仇になったか、セティエン監督からルビ監督に代わり、妙にラフプレーが増えた相手に気が立ってしまったというのもあるんでしょうか。「Nos faltó esa agresividad ofensiva para marcar un segundo gol/ノス・ファルトー・エサ・アグレシビダッド・オフェンシーバ・パラ・マルカル・ウン・セグンド・ゴル(2点目を取るための攻撃面でのアグレッシブさが欠けていた)」(ボルダラス監督)彼らは1人少ない相手にいつまで経っても決着をつけられず。そうこうするうち、後半28分にはジェネがエリア内でフェキルを倒し、ホアキンにPKで同点にされてしまうことに。

うーん、古巣のファンからオベーションを浴びて交代するホルヘ・モリーナからCFを引き継いだアンヘルが終盤、ククレジャのスルーパスに抜け出して、GKバチリクをかわしてシュートを決めたなんてこともあったんですけどね。半歩もないオフサイドをVARに見咎められてしまい、得点にならなかったのは本当に惜しかったかと。結局、そのまま試合は1-1で終わり、これでヘタフェは3連続ドロー。お隣さんのレガネスよりはマシですが、勝ち点3しかないのでは、ボルダラス監督が指揮官になって以来、初の降格圏18位になってしまったのも仕方ありませんって。

まあ、その辺は、リーガ3連戦の来週はバレンシア、バルサと強敵が続くため、この日曜のマジョルカ戦で少しでも順位を上げてくれることを期待するとして、とにかく頑張ってほしいのはトラブゾンスポル戦。相手もトルコリーグで1勝3分けとそれ程、調子を上げている訳ではなさそうですしね。モロッコ代表からケガをして帰って来たファジルの回復具合は気になりますが、コリセウムのファンも待ち侘びていた久々のヨーロッパの舞台でいいプレーを見せてくれたら嬉しいですよね。

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