今は凪いでいる…/原ゆみこのマドリッド

2019.06.29 22:30 Sat
「結構、間が空くわね」そんな風に私が退屈を持て余していたのは水曜日、ここしばらく毎日、何がしかの試合があった国際大会、女子W杯もコパ・アメリカもU21ユーロもグループリーグが終了。決勝トーナメントに入ったため、休養日があることに気がついた時のことでした。いえ、2度目のW杯出場で初のグループリーグ突破を成し遂げたスペイン女子はPKを2度も献上したことが響き、アメリカに2-1で敗退。なでしこがオランダに負けるのに足並みを揃えて姿を消してしまったのはともかく、RMカスティージャへの入団が決まった久保建英選手の活躍を楽しみにしていた日本男子代表もコパ・アメリカのグループリーグ突破は叶わなかったんですけどね。

おかげで私も楽しめる試合が減ってしまったんですが、そんな中、こちらのマスコミの期待を一身に背負うことになったのはU21スペイン代表。というのも4チームが3つのグループで戦った後、その先はすぐ準決勝となり、決勝トーナメントに進めるのはたったの4チームだけというコンパクトな大会形式のせいもあるんですけどね。初戦をイタリアに3-1と逆転負け、ベルギーにはかろうじて2-1と勝ったものの、早期帰国を避けるためにはグループ最終戦で3点差以上の勝利が求められていたにも関わらず、まさかポーランドに5-0のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らわせ、得失点数差による首位突破を果たしてしまうとは恐るべし根性。

ええ、その先週土曜の試合ではそれまでCFにマジョラル(レアル・マドリー、昨季はレバンテでプレー)を据えていたルイス・デ・ラ・フエンテ監督はfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/偽のCF)としてオジャルサバル(レアル・ソシエダ)を起用。そのおかげもあってか、前半だけでフォルナルス(ビジャレアルからウェストハムに移籍)、オジャルサバル、ファビアン(ナポリ)がゴールを挙げ、後半にもセバージョス(マドリー)、途中出場のマジョラルが決めて、余裕のスコアでベスト4入りしてしまったとなれば、この木曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのフランスとの準決勝だけでなく、ドイツvsルーマニア戦勝者との決勝、更にはこれで参加が確定した来年の東京五輪へと果てしなく夢が膨らんでいくのも理解はできる?
いやあ、取らぬ狸の皮勘定は避けて、選手たちと同様、当面、私も準決勝に照準を合わせているんですけどね。ちょっと面白かったのはその対戦相手、フランスには年齢的に出場資格がありながら、去年、大人の代表でW杯優勝を達成したエムバペ(PSG)やリュカ(アトレティコからバイエルンに移籍)が参加していないこと。スペインでもアセンシオ(マドリー)とロドリ(アトレティコ)が2017年大会のリピートをしないことを決め、批判を浴びていたりしましたが、隣国には1度、A代表に上がった選手がU21のヘルプに回る習慣はないため、誰も何も言わないのだとか。

とはいえ、6月のユーロ予選、フェロー諸島戦、スウェーデン戦でA代表としてプレーした後、U21に合流したファビアン、オジャルサバルの両名など、この大会でどんどん評価を高めていますからねえ。前者にはマドリーが狙っているという噂が早速出てきたり、逆に放出確定に近いセバージョスもクラブが5000万ユーロ(約62億円)以上の移籍金でないと交渉に応じないなんて話もあって、名前を売りたい選手には最適な大会なんですが、ロドリなんてもう、7000万ユーロ(約86億円)の契約破棄金額をフルに払ってのマンチェスター・シティ行きがほぼ決まっているとなれば、木曜夜には気温35度が予想されている猛暑のイタリアで汗をかく必要はもうないのかも。
え、若い選手たちの話もいいけど、それより先週末はマドリーのOBたちがサンティアゴ・ベルナベウを沸かせてくれたんじゃないかって?その通りで日曜には恒例のコラソン・クラッシク・マッチが開催。普段の試合とは異なり、チケットが7ユーロ(約900円)からと格安なため、子供の多い家族連れを中心に6万人のファンがスタンドを賑わせることに。試合の方は序盤から、ジダン、フィーゴ、ロナウド、ロベルト・カルロス、ベッカムは来ていなかったものの、ギャラクティコ時代のマドリー国産前線が見事に機能。こぼれ球を追ったラウールの抜け目ないゴールを皮切りに、昨季はベシクタシュのアシスタントコーチを経験したグティも躍動し、モリエンテスも2ゴールと盛り上げてくれたんですが、相手のチェルシーOBもシェフチェンコのPK、ポジェのゴールで1点差迫ります。

すると35分にはこの試合、一番のgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)が生まれ、エリア外からカランブーがボールをネットに突き刺してくれたから、場内は大喝采。後半も再開早々、ギャラスが得点したチェルシーはラウールがPKでこの日、自身2点目を挙げた後にも元アトレティコのチアゴのスルーパスに抜け出したマルダがゴールを入れたものの、両チームの撃ち合いはここまで。最後は5-4でマドリーの勝利に終わったんですが、OBといっても比較的若い選手が多かったせいか、ゲームのテンポも良かったし、何より沢山ゴールを見ることができたため、スタジアムを訪れたファンは満足して帰ることができたんじゃないでしょうか。

ちなみに試合後、ピッチでインタビューに答えていたラウールは今季、RMカスティージャの監督として久保選手を指導することになるんですが、当人の目標は「Inculcar a los chicos lo que es el madridismo/インクルカール・ア・ロス・チコス・ロ・ケ・エス・エル・マドリディスモ(選手たちにマドリー精神を教え込む)」ことなのだとか。うーん、マシア(バルサのカンテラ)育ちの久保選手だけにスペインの2強、どの辺りにサッカー哲学の違いがあるのか、いつか訊いてみたいところですが、彼はこのプレシーズン、トップチームと練習すると聞いていますからねえ。コパ・アメリカの後、たった2週間のバケーションしか取らず、7月8日にバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場に集合するメンバーに入るのかもまだ不明ですが、とりあえず、ジダン監督のチームの予定をお伝えしておくことにすると。

彼らがマドリッドにいるのは最初の1日だけで、翌日にはカナダへ出発。doblete(ドブレテ/CL、リーガの2冠優勝)を達成した2016-17シーズンの夏を過ごしたゲンのいいモントリオール・インパクトのグラウンドでトレーニングに励み、インターナショナル・チャンピオンズ・カップ(夏の国際親善大会)が始まるのは20日、ヒューストンでのバイエルン戦から。続いて23日にはメリーランドでアーセナル戦、26日にはニュージャージーでお隣さんとのマドリーダービーをこなし、30日にはミュンヘンでアウディカップ(バイエルン主催の夏の親善大会)参加となります。まずは準決勝で昨季のCLフィナリストであるトッテナムと顔を合わせ、それからバイエルンorフェネルバフチェと決勝or3位決定戦という流れですが、8月第3週の週末から始まるリーガ開幕前にホームでの新チームお披露目となるサンティアゴ・ベルナベウ杯に関してはまだ相手も日付もわからず。

RMカスティージャの2部Bリーガ戦が始まるのも大体、似たような時期になると思いますが、夏の旅行でたまたま、これらの試合とが重なった場合は覗いてみるのも一興かと。そうそう、マドリーには先日、昨季リーガ1部昇格を果たした同じ首都を本拠とする女子チーム、タコンの経営権を取得。今季はまだ名称が変わらないものの、練習やホームゲームをバルデベバスの施設で行うそうで、2020-21シーズンからは正式にマドリーの一員になるというニュースも。いやあ昨今、リーガには日本人女子選手が結構いますし、こちらにも誰か来てくれたりすると楽しみが増えていいですよね。

え、それでアトレティコの方はどうなっているのかって?うーん、彼らにとって、最大の朗報は日曜に東京で8月のヴィッセル神戸戦を最後に現役引退すると発表したフェルナンド・トーレス(サガン鳥栖)が古巣への帰還を予告してくれたことだったかと。ただ、「para lo que yo quiero hacer en el Atleti necesito formarme/パラ・ロ・ケ・ジョ・キエロ・アセール・エン・エル・アトレティ・ネセシートー・フォルマルメ(自分がアトレティコでしたいことのためには学ぶことが必要だ)」と本人も言っていたように、単なる選手たちとクラブの繋ぎ役になりたい訳ではなく、「アトレティコをもっと偉大にして、まだクラブ史上、達成していないことを成し遂げる」という大きな目標があるため、監督業にしろ、マネージャー業にしろ、修行にしばらく時間がかかるよう。

その一方で、代理人の話ではジダン監督から、「Le dijo que iba a tener pocos minutos, que lo mejor era salir/エオ・ディホ・ケ・イバ・ア・テネール・ポコス・ミヌートス、ケ・ロ・メホール・エラ・サリール(あまりプレー時間がないだろう。退団する方がいいと言われた)」せいで先日、お隣さんへの移籍を決めたマルコス・ジョレンテや、すでに契約書へのサインは済んだと言われている、移籍金1憶2000万ユーロ(約150億円)という、マドリー並みの大盤振る舞いをしたジョアン・フェリックス(ベンフィカ)らのプレゼンもいつになるかわからない状態なんですが、何せこちらは一足早く、7月4日にはプレシーズンがスタートしますからねえ。おそらく今週遅く、もしくは来週の頭には両人ともワンダ・メトロポリターノに姿を見せてくれるんじゃないかと思いますが、さて。

一応、彼らのプレシーズン日程も伝えておくと、昨年夏はW杯があったため、恒例のロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)での地獄のキャンプを省いたせいで、結果的にシーズン中の負傷禍に繋がったことをシメオネ監督が猛反省。今年は7日にはマハダオンダ(マドリッド近郊)を出発し、プロフェ・オルテガの指導の下、ダブル、トリプル・セッション満載の体力増強トレーニングに入るのだとか。親善試合は20日にキャンプ地から程近い、ブルゴス・デ・オスナでヌマンシア(2部)とのヘスス・ヒル・ヒル杯から始まり、その後はアメリカに移動。24日にテキサスでチバス・グアラルダハラ、26日にマドリー戦、31日にはオーランドでMLSオールスターチームと、そして8月3日にメキシコで海外の弟分、アトレティコ・サン・ルイスと対戦してから帰国。

最後は10日にストックホルムでのユベントス戦で昨季のCL16強敗退のリベンジを挑んで準備を終えることになりますが、いやはや。とにかくそれまでにゴディン、ファンフラン、おそらくフィリペ・ルイスもいなくなったDF陣の補強が済んでいることを祈るばかり。何せ、5月末にポルトからCBのフェリペ・モレイラを獲得したという報があって以来、その当人のプレゼンすらまだないのはともかく、毎日、ヘルモーソ(エスパニョール)だ、ロディ(パナメンセ)だ、オタメンディ(マンチェスター・シティ)だ、ブリント(アヤックス)だと名前だけは挙がるものの、実際まだ頭数不足は解消していませんからね。両SBも同じ状態なため、会計年度が変わる7月早々には順次、つつがなく決まってほしいものかと。

その脇で今季はヨーロッパリーグに参加するヘタフェはプレシーズン開始が7月12日と遅め、それに合わせたかのように新戦力到着の報はないんですが、4日にスタートするレガネスも冬にバジャドリー移籍が決まっていたGKクェジェルが契約を延長して残留することになった程度と、こちらも例年通り、8月末の駆け込み人事が主流となりそうな。とりあえず、来週ぐらいには彼らの親善試合の予定なども出てくるはずなので、その辺はまた追ってお知らせしていきますね。

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