期待をかきたててくれるのは嬉しい…/原ゆみこのマドリッド

2019.06.14 12:30 Fri
「本当に皆、ギャラクティコを待っていたのね」そんな風に私が驚愕していたのは木曜日、エデン・アザールのプレゼンのため、サンティアゴ・ベルナベウに向かったところ、スタジアムの周りにできた入場待ちの行列がどこまで行っても途切れず。記者席に着いてからもどんどんスタンドに人が増えていって、最後はバックスタンドと両ゴール裏席の3階までほぼギッシリになってしまったのを見た時のことでした。いえ、それでも2009年にクリスチアーノ・ロナウドのプレゼン時の7万人には及ばず、スポーツ紙の推定では5万人ぐらいだったようですけどね。今季はコパ準決勝敗退、リーガ優勝絶望、CL16強対決でアヤックスに逆転敗退と2月末からの続いた暗黒の1週間の後、ずっと我慢を強いられ、ホームゲームの観客数も振るわなかったレアル・マドリーだというのに、アザールのプレゼンだけでこんなに人が集まるとは思っていなかったから。
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いえ、ベルナベウが賑わるのを自分が目撃したのは今週に入って2回目のことで、実は月曜にはスペイン代表の2020年ユーロ予選スウェーデン戦が開催。最初のサプライズはGKが金曜のフェロー諸島戦から変わらず、ケパ(チェルシー)の3試合連続出場となったことだったんですが、このスウェーデン戦に限っては彼でもデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)でもあまり差はなかったかと。というのも、攻撃の要、クラエソン(クラスノダール)が前半27分にジョルディ・アルバ(バルサ)のタックルを受け負傷。早々にヨハネソン(レンヌ)と交代せざるを得なくなった敵は後半にシュートを1回撃っただけでそれ以外、セーブが必要なシーンがなかったから。それでもわざわざプレミアリーグ終了後、1週間程、ユナイテッドのGKコーチに付き添ってもらい、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で個人練習。体調維持に努めていた当人にとっては結構、ショックはあったはずで、後で不在中のルイス・エンリケ監督に代わり、試合の指揮を執ったロベール・モレノ第2監督も「Cualquier persona en la vida necesita ese estado de dulce para triunfar/クアルキエル・ペルソーナ・エン・ラ・ビダ・ネセシータ・エセ・エスタードー・デ・ドゥルセ・パラ・トリウンファール(誰でも人生において勝利するには甘美な状態が必要だ)。ケパがアーセナルを制してのEL優勝でそういうポジティブな時期にあるのを利用したかった」と先発GKの選択について話していましたけどね。
何せ、次の代表戦は9月の頭、来季のリーグが開幕してから間がない上、8月14日にあるUEFAスーパーカップで今季のCL王者、リバプールを相手に再び、ケパにいいところを見せられてしまったら、デ・ヘアは控えのポジションが確定してしまう恐れもなきにしろあらず。まあ、その辺はかなり先のことですから、今は置いておくとして、この試合の前半、積極的に攻撃を仕掛けながら、スペインが無得点に終わったのはスウェーデンのGKオルセン(ローマ)によるところが大きかったんですよ。ええ、彼はファビアン(ナポリ)、パレホ(バレンシア)、セルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)らの強烈シュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)。

16分にはパレホのラストパスから、ロドリゴ(バレンシア)がゴールを挙げたなんてこともあったものの、微妙なオフサイドで認められないという不運も。うーん、昨今、女子W杯やU20W杯、U21ユーロでもVAR(ビデオ審判)が採用されているんですが、ユーロ予選ではないっていうのはもしや、試合数が多すぎて人手が足りないから?
そして0-0のまま後半に入ると、序盤は目立った空席もほとんどなくなり、ベルナベルは観客数7万2000人の大入りを記録。その頃には場内を何周もする“ola/オラ(ウェーブ)”も始まり、これって代表戦の場合、ファンが退屈しているってことなんですが、大丈夫。18分には、下手に慣れたスタジアムでプレーしたせいですかね。今季のクラブでの不調ぶりに輪をかけて精彩のなかったアセンシオ(マドリー)が左側から上げたクロスがラーション(AIKソルナ)の腕に当たり、エリア内のハンドでスペインはPKをゲット。もちろんキッカーはラモスが務め、DFとしては異例の代表20ゴール目を記録して、キックオフ前に代表最多の122勝達成を表彰されたのはダテではないことを証明してくれます。

え、その時も3人の息子さんと共にTVタレントの彼女、ピラール・ルビオさんが付き添っていたけど、ゴールを挙げた後、指輪を差し出してプロポーズする仕草のパフォーマンスまでするなんて、ちょっと最近のラモスは浮かれすぎていないかって?いやあ、それは当然のことでこの土曜にはセビージャの大聖堂でピラルさんと挙式。500人近い招待客にはベッカム夫妻やバルサのピケとシャキーラ、元同僚のカシージャスとTVレポーターのサラ・カルボネーロのカップルと、ピラルさんの課した白だけでなく、黒も赤もピンクもオレンジもグリーンも着てはいけないという厳しいドレスコードと子連れ禁止という条件にも関わらず、大勢のセレブの出席を取り付けている上、セビージャ近郊にあるラモスの別荘で開く披露宴では100万ユーロ(約1憶2000万円)の出演料でとうとう、AC/DCのプライベートコンサートまで実現してしまったとなれば、人生の頂点、ここに極まれり?

ただそんなラモスでも後輩思いなところは尊敬できて、スペインは40分にもエリア内に駆け込んだモラタ(アトレティコ)がヘランデル(ボローニャ)に倒されてペナルティを獲得。当人も「yo ni le he preguntado porque el siempre quiere marcar/ジョ・ニー・レ・エ・プレグンタードー・ポルケ・エル・シエンプレ・キエレ・マルカル(訊きもしなかったよ。だって彼はいつもゴールを決めたがるから)」とラモスがキッカーをリピートするものと思い込んでいたところ、何とモラタに譲ってくれたから、意外だったの何のって。いえ、確かにシーズン終盤のモラタはほとんどゴールが入らず、代表で先発したフェロー諸島戦でも無得点に終わっていたんですけどね。

それを「Al final el delantero vive del gol/アル・フィナル・エル・デランテーロ・ビベ・デル・ゴル(FWはとどのつまり、ゴールで生きているからね)。自分が最初のPKを決めた後、次はチームメートに譲って、士気を回復してもらうのが一番さ」とかつてはマドリーの同僚であっても、将来はアトレティコで引退したいと最近のインタビューで言っていた、ライバルのエース候補に恩を売るのはちょっと、上から目線な感じがしないでもありませんが、まあ無事にPKが決まって2点目が入ったから、良かったかと。

おかげでようやくファンも安心することができたんですが、PKゴールだけで物足りなかった試合をメデタク終わらせてくれたのは若いファビアン(ナポリ)とオジャルサバル(レアル・ソシエダ)の2人。ええ、3月に初招集されながら、A型インフルエンザで泣く泣くイタリアにUターン。その時に代わりを務めたサウール(アトレティコ)も今回は休暇先のバリ島でシャッポを脱ぐしかない程の大胆なプレーを見せていた前者のパスから、後者が敵DFをかわしてのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を42分にねじ込んでくれたとなれば、月曜の夜にわざわざスタジアムまで足を運んだ観客だって満足したに違いありませんって。

これで3-0と快勝したスペインは予選4連勝でグループ首位の座を確固たるものにしたんですが、次の予選は9月5日のルーマニア戦、8日のフェロー諸島戦。それまではサッカー協会も3月から、重病の娘さんの側を離れられないルイス・エンリケ監督の後任を探すかどうかの決断を保留にするのだとか。まあ、それまではかなり時間がありますしね。スウェーデン戦の後、翌日からラス・ロサスで練習中のU21代表に合流したファビアン、オジャルサバルらを始め、バジャホやセバージョス(マドリー)も出場するユーロが土曜のイタリア戦を皮切りにスタートしますし、こちらも楽しみではありますね。

え、そのU21ユーロにはマドリーファンも注目した方がいいんじゃないかって?その通りで、スペイン代表戦の2日後、同じベルナベウで来季の新戦力のプレゼン第1弾があったんですが、その日はベオグラードでのリトアニア戦で見事なゴールを挙げてきたヨビッチが初めてファンの前に姿を見せることに。フランクフルトから6000万ユーロ(約74億円)で移籍したセルビアA代表FWなんですが、21才と若いため、イタリア・サンマリノでの大会にも彼は招集されているんですよ。いやあ、日程がモロにかぶる中、A代表とU20代表を兼任、火曜のイタリア戦勝利にも貢献して、土曜には韓国とのW杯決勝に挑むことになったウクライナのGKルニン(今季はレガネスにレンタル移籍していた)程のハードスケジュールではありませんけどね。優秀な選手だけが入団できるマドリーだけに各国代表でも引っ張りだこなのは当然だった?

ちなみにそのヨビッチのお目見えには4000人強のファンが歓迎に駆けつけたんですが、まずはアンテパルコ(貴賓席前ホール)でのプレゼンセレモニーで、「こんなにビッグなクラブと契約できてボクは世界一幸せだ」という趣旨のスピーチを25秒という、滅多にない簡潔さで済ませた彼はどうやら、いきなり大舞台に放り込まれてかなり緊張していたよう。ええ、後で当人も「唯一、怖かったのはピッチに出ること」と言っていましたが、ユニフォームを着てファンに挨拶した際には、いや私など、プレゼン中に流された名場面ビデオではかなりアクロバティックなゴールが多かったため、高度なリフティングやドリブルを見せてくれるんじゃないかと期待していたんですけどね。

それが上がっていたヨビッチが失念したか、一緒にいたスタッフが伝え忘れたか、GK以外、ほとんどの新入団選手が披露してくれる恒例行事をすっぽかし、すぐにプレゼント用のボールをスタンドに向けて蹴りに行ってしまったのにはちょっとビックリ。いえ、カメラが頼むたびにユニの胸についている紋章にキスしてみせたり、自身のスマオを持ち込んでスタンドを背にセルフィーを撮ったり、PKマークからベルナベウ最初のゴールを決めてみたりと、他は至って普通の若い選手でしたけどね。まだジダン監督ともチームメートとの誰とも話していないそうですし、不安なことも多いでしょうが、近日中に隣国のクロアチア出身で、言葉の通じるモドリッチと連絡できることを祈っています。

え、それで翌日、パルコ前に特設されたステージでプレゼンされたアザールはベルギー代表やチェルシーで着けていた10番をもらえるのかって?うーん、この件に関しては皆、気になったようで、パルコ前ステージで両親、そして弟のトルガン(ドルトムント)、キリアン(クラブ・ブルージュ)も加わって家族写真を撮影。ユニフォームに着かえてピッチに登場すると、リフティングでボール扱いの巧みさをしっかり見せつけ、ヨビッチの時の3倍はあろうかという数の、しかもデザインも新しいユニに合わせた金色ベースのアディダス特製のボールをスタンド3面に満遍なく、手や足で放り込んでファンにプレゼントと結構、体力を消耗するお披露目だったんですけどね。

記者会見でもベテランらしい落ち着きを見せた当人は、「コバチッチ(今季はチェルシーにレンタル移籍)を通じてモドリッチと話すことができたけど、冗談で10番を譲ってと頼んだら、ノーと言われたよ」とまあ、ホントにこういう辺り、ピッチの敵選手だけでなく、マスコミの質問もかわすことに相当慣れているよう。実際、スタジアムに隣接したオフィシャルショップではプレゼン直後からアザールのネーム入りユニが売りだされているんですが、ヨビッチ同様、まだ背番号はついていませんでしたしね。予想ではマリアーノの着けている7番か、ベイルの11番といったところのようですが、彼らの移籍先が決まるまではどうなるかわからないのはマーケティング部門もちょっと、営業的に辛いところかと。

ちなみに念願だったというマドリー入団を果たしたアザールは、自分をギャラクティコだと思うかと訊かれ、「そうなるように努力するよ。今のところはエデン・アザールさ」と答えていましたが、スタンドからは「Queremos a Mbappé, queremos a Mbappé!/ケレモス・ア・エムバペ(ボクらはエムバペが欲しい)」というカンティコ(メロディーのついたシュプレヒコール)が聞こえるといった一幕も。

いやあ、そこまで獲ると、すでにロドリゴ(サントスから移籍)、ミリトン(ポルト)、ヨビッチ、アザール、そして来週水曜にプレゼンが予定されている左SBメンディ(オリンピック・リヨン)で移籍金に3億ユーロ(約370億円)を費やしたというマドリーだけに、収支バランス的にリーガ協会やUEFAのファイナンシャル・フェアプレー要件を満たすのが難しくなりそうですけどね。何はともあれ、まずは1人、スター選手がチームで活躍する姿を見たいというマドリーファンの望みが叶ったのは私も嬉しく思います。

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