いよいよ長い夏が始まる…/原ゆみこのマドリッド

2019.05.21 17:00 Tue
「高いお給料もらっているんだから、最後までしっかり働くのは当然よね」そんな風に私が頷いていたのは月曜日、先週末にリーガは終わったものの、火曜にあるベイタル・エルサレムとの親善試合のため、グリーズマンも含めたアトレティコの選手たちがイスラエルに向けて出発したのを知った時のことでした。いやあ、レバンテ戦をケガで休んだGKオブラク、サビッチ、ヒメネス、カリニッチまで参加していたのはもしや、観光目的もあるのではとちょっと疑ってしまったりもしたんですけどね。加えてこれから2部昇格プレーオフの厳しい戦いを控えるカンテラーノ(アトレティコBの選手)が6人、しかもカメージョやモジェホなど、土曜も日曜も試合に出たのにまだ働かせるのかと気の毒になってしまったんですが、ティーンエイジャーの彼らなら、体力が有り余っているから大丈夫ってこと?

まあ、そんなことはともかく、マドリッドの兄貴分たちにとって消化試合となってから、とりわけ長く感じられた今季の最終節がどうだったか、お伝えしていくことにすると。土曜の午後1時から、先陣を切ったのはアトレティコだったんですが、相手のレバンテは1節前に残留を達成してお祭りムードながら、やはりシュタット・デ・バレンシアは鬼門だったよう。ええ、前半6分にはCKからカバコに技ありのtaconazo/タコナソ(ヒールキック)でGKアダンが破られてしまったかと思えば、35分にもトマスが自陣エリア前でボールをロジェルに献上。2点目のゴールを決められてしまうって、本当に今季、一体何を学んできたんでしょう!
そのせいもあってか、ハーフタイムでシメオネ監督はトマスを下げ、18才のカメージョを入れたんですが、まさか再開から3分で、うーん、彼もアトレティコにもう5年いるんですけどね。チェマに倒されたコレアがカッとなって蹴り返したところ、最初はイエローカードだったのが、VAR(ビデオ審判)によりレッドカードに変更。退場で来季のリーガ1節をバルサ戦で課された8試合、最後の分を済ますジエゴ・コスタと一緒に出場停止になっているんですから、まったくもって頭が痛い。もういっそ、今季限りで退団するグリーズマン、ゴディン、そしてその日は最後の試合の記念にキャプテンマークを託されたファンフランだけでなく、それ以外の選手たちも入れ換えた方がいいんじゃないかと、私が近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)のTVの前で毒づいていたところ…。

何と22分、このままだとマンチェスター・シティ行きの話も流れてしまうかもしれないと恐れたんですかね。エリア外から、勇気を出してロドリが撃ったシュートが決まったんですよ!おまけに33分には前節のセビージャ戦でもrebote(レボテ/リバウンド)で先制ゴールを挙げていたコケがこの日もマンサラナラに当ててしまったものの、ボールはゴール右前にいたカメージョのところへ。それを「cuerpo no tengo, pero gol tengo mucho/クエルポ・ノー・テンゴ、ペロ・ゴル・テンゴ・ムーチョ(体はまだできていないけど、ゴールは沢山持っている)」という彼が呆気なく決めてしまったから、ビックリしたの何のって。

だってえ、シーズン前半のエイバル戦後半ロスタイム、1-1で引き分けるゴールを挙げたボルハ・ガルセス同様、このカメージョもトップチーム初出場だったんですよ。しかも2つ年下の彼は今季、フベニルA(アトレティコBの下のユースチーム)に所属、そこで19ゴールと量産し、アトレティコBでも5得点で2部昇格プレーオフ入りを助けているって、もしや待望久しかったフェルナンド・トーレス(ヴィッセル神戸)の再来が近づいている?
いえ、当人も「me gustaria ser una leyenda en el Atletico como todo nino/メ・グスタリア・セル・ウナ・レジェンダ・エン・エル・アトレティコ・コモ・トードー・ニーニョ/全ての子供たちと同じでボクもアトレティコのレジェンドになりたいんだ」と言っているとはいえ、先のことはまだ全然、わからないんですけどね。そのまま試合は2-2で終了、2年連続、お隣さんの上を行くリーガ2位でシーズンを閉じたアトレティコでしたが、ゴディンから第1キャプテンを引き継いだコケなども「Va a ser una temporada ilusionante, con mucha gente nueva, joven y menos joven/バ・ア・セル・ウナ・テンポラーダ・イルシナンテ、コン・ムーチャ・ヘンテ・ヌエバ、ホベン・イ・メノス・ホベン(来季は若い新人やそんなに若くない選手が沢山来て、希望に満ちたシーズンになるだろう)」と言っていましたしね。とりあえずはその言葉を信じておくことにしましょうか。

え、それでアトレティコの試合の終了ホイッスルが鳴る前にバルを出て、私がメトロで向かったコリセウム・アルフォンソ・ペレスでヘタフェはCL出場権を掴めたのかって?いやあ、前半13分にはホルヘ・モリーナからボールをもらったポルティージョがビジャレアルDF陣を上手くかわして先制ゴールを決めたんですが、スタンドの歓喜が続いたのも同時進行のホセ・ソリージャでバレンシアのソレルが35分に得点を挙げるまでのこと。彼らが4位を奪い返すにはバジャドリーに少なくとも引分けてもらわないといけなかったせいですが、それどころか、43分にはCKからイボラのヘッドが決まり、ヘタフェの方がビジャレアルに追いつかれてしまったから、さあ大変!

おまけに後半9分にはロドリゴが追加点を挙げ、バレンシアがリードを2点に広げたため、ヘタフェの選手たちも気落ちしたかと思いますが、31分にはアンヘルのクロスをマキシモビッチが頭で決め、再び勝ち越しに成功。まあそれも42分にはイボラの強烈な至近距離からのヘッドをGKダビド・ソリアがparadon(パラドン/スーパーセーブ)したものの、こぼれたボールをジェラール・モレノが押し込み、また同点になってしまったんですが、その頃にはもう、試合後の1部残留お祝いイベントに頭が行っているバジャドリーに期待できないのは皆、わかっていましたからね。

39分にポルティージョに代わってピッチに入った柴崎岳選手も見せ場を作ることはできず、こちらも2-2の引き分けで終了。いえ、前節にEL出場権は確定していたため、バレンシアと勝ち点2差の5位となり、チームはEurogeta(エウロヘタ)のTシャツを着てスタンドのファンと一緒にお祝い。選手たちに胴上げされたボルダラス監督は「No tengo bajon, estoy super contento/ノー・テンゴ・バホン、エストイ・スーペル・コンテントー(自分は落ち込んではいない。最高に満足しているよ)」と笑っていましたけどね。

なかなか正直だったのはヘタフェのカンテラーノ、ウーゴ・ドゥーロで、ええ、前半せっかく初ゴールを挙げながら、VARでマタのオフサイドが発覚。スコアシートに名前を刻むことができなかった19才など、「ELはいいよ。誰もが出たがるだろう。Queriamos la Champions, pero hemos quedado quintos/ケリアモス・ラ・チェンピオンズ、ペロ・エモス・ケダードー・キントス(CLに行きたかったけど、5位になっちゃった)」と喉を詰まらせていましたが、まあまあ。CLとELはUEFAからの分配金に3000万ユーロ(約37億円)程差がつくのは惜しいところですが、何せ彼らがヨーロッパの大会に出るのは2010-11シーズン以来。

1部のチームを率いるのはヘタフェが初めてというボルダラス監督もその辺は経験がありませんし、ここは焦らず一歩一歩進んで行くのがいいかと。ちなみに気になる柴崎選手の先行きに関して、監督は「Le pedimos mucha salud y seguir trabajando en lo que nos gusta, que es entrenar/レ・ペディモス・ムーチャ・サルード・イ・セギール・トラバハンドー・エン・ロ・ケ・ノス・グスタ、ケ・エス・エントレナール(彼に頼むのは健康と我々が好きなことに努力し続けること、練習だね)」とコメント。どうにも私には真意がくみ取れませんでしたが、もし残留することになれば、試合数が確実に増える来季はもっと出番が増えると思うんですけどねえ。

そしてその時間帯ではセビージャがアスレティックに2-0で勝利して6位を確定、レアル・ソシエダに2-0で勝ったエスパニョールが7位となり、EL予選2回戦からの参戦権を獲得しましたが、まさかそれでRCDEスタジアムのピッチがファンで埋まり、あんな大変なことになるとは!うーん、実はこの道は以前、アトレティコなども経験したことがあるんですが、7月末から公式戦突入となり、しかもグループリーグまで6試合もあるという消耗コースなんですけどね。対戦相手もELだと無名チームが多いため、決勝トーナメント準々決勝ぐらいまで、客席も淋しかったりするものの、12年ぶりのヨーロッパの大会となると、やっぱり夢も膨らむんでしょうか。

一方、土曜の夜に最終戦を行った組ではレガネスがすでに降格しているウエスカに2-1で敗戦。昨季までキャプテンを務め、今季後半からウエスカに加入していたマントバーニが前半にオウンゴール、後半にはヘッドで2点とたった1人で全ての得点を叩き出すという妙な試合だったんですが、そのため残念ながら、ペジェグリーニ監督は目標の勝ち点48を溜めることはできず、順位も13位止まりに。とはいえ、1部昇格して以来、2年間、降格圏ギリギリの17位で終わっていた彼らとなれば、EL出場圏、降格圏のどちらからも勝ち点8差という位置は大いなる進歩と言っていいかと。

その脇ですでに降格していたラージョはせっかく、エンバルバのPKとメドランのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)で2点をリードしながら、終盤にイアゴ・アスパスに2ゴールを決められて、セルタと2-2のドロー。有終の美を飾るどころか、ウエスカに抜かされて最下位になってしまいましたが、もうすでにパコ・ヘメス監督も最短コースで1部復帰しようと、来季のプランニングに入っていますしね。アラベスに2-1で負け、3番目の降格チームとなったジローナも元々、ラージョが大量得点を挙げて勝ってくれるとは思っていなかったはずなので、これでセルタが残留確定となっても別に恨まれる筋合はありませんって。

え、それで日曜のレアル・マドリーの最終戦はどうだったのかって?いやあ、1度は暑くなったものの、また寒さがぶり返し、サンティアゴ・ベルナベウの日影のスタンドで震えていた私でしたが、もうホントに今季は処置なしといったところ。だってえ、頑張っていたのは先日、ジダン監督から来季はクルトワが正GKなると通告を受け、これがマドリー最後の試合になるだろうと言われていたケイロル・ナバスぐらいで、ビニシウスやブラヒムを含め、アピールをしないといけない選手たちも全然、パッとしないんですよ。

挙句の果てに後半16分、グアルダードのラストパスをロレンが決めてベティスに先制されると、30分にもジュニオールの折り返しをヘセが押し込み、まんまと古巣に恩返しされているとなれば、この日もスタンドから大量のpito(ピト/ブーイング)が飛んでいたのもムリはない?いえ、ジダン監督の「No es algo fisico. El futbol es motivacion/ノー・エス・アルゴ・フィシコ。エル・フトボル・エス・モティバシオン(フィジカルの問題じゃない。サッカーはモチベーションなんだ)。マドリーの選手はゲームに何も懸かってないとプレーするのが難しい」という言い訳もわかるんですけどね。

ベティスだって、今季はコパ・デル・レイ決勝がホームのベニト・ビジャマリンで開催されると決まった途端、準決勝でバレンシアに負けてしまうし、ELも16強対決でレンヌに敗退、シーズン終盤の不調が響いて来季のEL出場権も取れず、この試合に0-2で勝った直後、セティエン監督が解任されてしまうぐらいの落ち込みようだったにも関わらず、1点も返せないとはこれ如何に。リードされているのに今季、チームで一番ゴールを挙げているベンゼマを代えたり、最後までベイルの出場がなかったりと、ソラリ監督を引き継いで11試合、5勝2分け4敗という不成績で終わったジダン監督の采配にも疑問はあったものの…。

いえ、もう全部忘れましょう。そんなマドリーの決意が早速、明らかになったのは月曜でいきなり、2023年までクロースが契約延長したことを発表。即日、サンティアゴ・ベルナベウのプレスルームで会見があり、来季もジダン監督のチームで大事な役割を担うだろうと、いえ、CL戦後のミックスゾーンでは彼が英語かドイツ語で喋っているところしか、皆知らなかったせいもあるんですけどね。流暢なスペイン語で全ての質問に答え、驚かせてくれましたが、その彼によると、今季の不振の原因は「Ningun jugador alcanzo su nivel top/ニングン・フガドール・アルカンソ・ス・ニベル・トップ(誰もトップレベルに届かなかった)」からだそう。

確かに「ボクらも人間だから、3年連続CLに優勝した後、これはまあ普通のこと。普通じゃないのはCL3連覇の方さ」(クロース)と言われてしまうと、そうかなとも思えてしまいますが、でもねえ。マドリーだって、CLにもコパにもリーガにも優勝できない年があってもいいんですが、バルサと史上最大の勝ち点差19で終わるというのはかなり恥ずかしいかと。そうは言っても今のところ、クリスチアーノ・ロナウドのユーベ移籍で純減した年間50ゴールを補うクラックの補強はアテがないようですし、果たして来季はどうなるのやら。マドリーのプレシーズン開始は7月6日ですが、それまでに大物選手のメガプレゼンが見られたらいいですよね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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