去る者は追わず…/原ゆみこのマドリッド

2019.05.18 18:15 Sat
「便利な時代で良かったよね」そんな風に私が感心していたのは金曜日、6月のスペイン代表招集リスト発表の際にもルイス・エンリケ監督が姿を現さず。いやあ、彼は3月のユーロ予選マルタ戦前夜に緊急帰国して以来、重い病を患った家族の看病に懸かり切っているため、27日から予定されているラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設での練習や6月7日のフェロー諸島戦、10日のスウェーデン戦もロベルト・モレノ第2監督が引き続き指揮を執るそうなんですけどね。「当人ができなかったのは試合に足を運んで選手を見ることだけで、我々とビデオ会議などで密に連絡を取っていた。Va a ver a todos los entrenamientos en directo/バ・ア・ベル・ア・トードス・ロス・エントレナミエントス・エン・ディレクト(全ての練習をライブで見ることになるだろう)」(モレノ監督)となれば、招集された選手たちも決して手は抜けない?

うーん、協会のスポーツディレクター、モリーナ氏も「監督交代はまったく考えていない」と言っていたんですけどね。幸いだったのは今回の代表戦がグループ6チーム中、上位2チームにユーロ出場権が与えられるユルユル予選の3、4節。しかも3月に2勝しているスペインは首位で余裕があるからでしょうが、これが万が一、6月5~9日にあるネイションズリーグのファイナルフォー(準決勝はポルトガルvsスイス、オランダvsイングランド)に進出していたら、果たしてどうなったことか。その後は次の予選が9月ということで、また考える時間ができるんでしょうが、あまり例を見ない事態なのは間違いないかと。

え、それより同日に発表された来月16日から始まるU21ユーロ・イタリア/サンマリノ大会の招集メンバーにすでにA代表に出世しながら、ヘルプで加わる予定になっていたアセンシオ(レアル・マドリー)とロドリ(アトレティコ)がいなかった方が意外じゃなかったかって?そうですね、デ・ラ・フエンテ監督の話によると、前回、2017年のU21ユーロ・ポーランド大会にも出場した彼らですが、前者は2018年W杯ロシア大会にも参加し、後者も応援メンバーとして同行していたため、ここ2年間、ほとんど休暇が取れず。そのせいもあってか、今は最高のプレーができるレベルにないということで招集を見送ったのだとか。
そんな2人でも今回、A代表の方のリストに入っているのは置いておいて、逆に元気が有り余っているのか、オジャルサバル(レアル・ソシエダ)、ファビアン(ナポリ)ら、梯子をするメンバーもいますけどね。まあ、私としてもスペイン勢にはCL決勝もEL決勝もなく、国際メジャートーナメントもないこの夏はアセンシオもロドリもバケーションを満喫。来季はマドリッドの兄貴分チームでそれぞれ、飛躍の年にしてくれればいいんですが、いやあ、何だかそれも最近は雲行きが怪しくなってきて…。

というのも先週末、ワンダ・メトロポリターノでのゴディンお別れ試合から、アトレティコは近年では稀に見る退団ラッシュが始まっていて、火曜の夜には前々から噂のあったグリーズマンが同じラ・フィンカ(マドリッド郊外の高級住宅地)に住むヒル・マリン筆頭株主の自宅を訪問。シメオネ監督も加わった席で退団の意志を表明し、"La Decision(ラ・デシシオン/決心、昨季終了後にアトレティコ残留を決める過程を描いたドキュメンタル番組)"パート2の制作をピケに依頼する間も惜しんで、その日のうちにクラブのオフィシャルメディアにビデオメッセージを掲載することに。
曰く「He tomado la decision de irme, de ver otras cosas y tener otros desafios/エ・トマードー・ラ・デシシオン・デ・イールメ、デ・ベル・オトラス・コーサス・イ・テネール・オトロス・デサフィオス(出て行って、違うことを見て、違う挑戦をすることを決心した)」となれば、翌水曜、私がマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に駆けつけてしまったのもムリはない?

いえ、もちろんセッション中には普段と変わったことはなかったんですが、丁度、その日はマドリッド市の祝日だったため、選手たちが出て来るのを待つファンで施設のゲートは大賑わい。それも出入り口が2カ所あるため、マスコミのカメラも含め、敷地の角を挟んで50メートル程の距離を何度も行ったり来たりする人が多かったんですけどね。結構、遅い時間に登場したグリーズマンは延々とサインやセルフィーに応じていたため、私も見逃すことはなかったんですが、SNSなどでは早速、「rata/ラタ(ドブネズミ)」なんて呼ばれていたものの、その場のファンたちからは一切、当人を批判する言葉はなく、「これまでありがとう」と言っているんですから、本当に皆優しい。

とはいえ、これが金曜の記者会見でシメオネ監督も仄めかしていたように、契約破棄金額が2億ユーロ(約246億円)から1億2000万ユーロ(約148億円)に下がる7月1日にバルサ移籍が決まり、来季アスグラナ(紺とエンジ)のユニを着て当人がワンダのピッチを踏む日にはスタジアム前の100試合以上出場の記念プレートもクルトワ(マドリー)同様になってしまうのは火を見るより明らか?おまけに彼の場合、ファルカオ(モナコ)やアグエロ(マンチェスター・シティ)移籍の際にはできなかった、2000万ユーロ(約25億円)強という破格の昇給をして去年の夏、引き留めたにも関わらず、こうもあっさり河岸を変えてしまえるとなれば、セレソ会長の「Mas que enojado estoy decepcionado/マス・ケ・エノハードー・エストイ・デセプシオナードー(怒りより失望している)」というコメントには私も頷いてしまうかと。

自分にも移籍の経験があるシメオネ監督などは、「Hay que entender que para los jugadores es un trabajo/アイ・ケ・エンテンデール・ケ・パラ・ロス・フガドーレス・エス・ウン・トラバッホ(選手にとって、これは仕事だということを理解しないといけない)」と言っていましたが、一説によると、バルサでは年棒が1700万ユーロ(約21億円)に下がるみたいですしね。となると、グリーズマンの移籍の理由も「リュカがバイエルンに行ったように、選手は歴史的により上のクラブに行って、自身の成長を探すもの」(シメオネ監督)ということになりますが、はあ。どんなに人材育成に励んでも所詮、名門チームのオーラの前には成す術ないって、やっぱり憂鬱としか思えないかと。

そんな現実もあるのか、グリーズマンの抜けた穴を埋めるFWの補強も「Es difícil apostar por un crack hecho, no lo vamos a buscar/エス・ディフィシル・アポスタール・ポル・ウン・クラック・エッチョー、ノー・ロ・バモス・ア・ブスカル(すでに出来上がったクラックに賭けるのは難しいし、ウチはそういうのは探さない)。レアル・ソシエダから来た時のグリーズマン、ビジャレアルから来た時のロドリ、ベンフィカから来た時のオブラクみたいなのを獲りたい」とシメオネ監督が言っていたため、せっかくグリーズマンとリュカで2億ユーロの売却益がありながら、即座に名前の出ていたディバラ(ユベントス)、カバーニ(PSG)、イカルディ(インテル)といった線は消失。今季のEL準々決勝フランクフルト戦でハットトリックを決めて注目されたベンフィカの19才、ジョアン・フェリックスなんてプロフィール的に該当しそうですけどね。それでも契約破棄金額が1億2000万ユーロ(約148億円)って、うーん最近の移籍金インフレってちょっと凄すぎない?

だってえ、アトレティコはそのゴディンやグリーズマンに加え、やはり30才以上は1年契約というのがネックになってクラブのオファーを拒否したファンフランの代わりも探さないといけないんですよ。残留希望を訴えていたフィリペ・ルイスだって、コパ・アメリカのブラジル代表に招集されたため、条件のいいオファーが届かないとも限らないですし、若手だって、ロドリにマンチェスター・シティが満額の7000万ユーロ(約86億円)払うという話が出ているため、決して楽観はできず。もうこうなると、土曜午後1時(日本時間午後8時)からのレバンテ戦のことなんか、とても考えてなんていられないかと。

それでもアトレティコの今季リーガ最終戦を楽しみにしているファンのため、お伝えしておくと、この試合、すでに4年連続でサモラ(失点率が一番低いGKに与えられる賞)をゲットすることが確定しているオブラクは太もものケガで欠場。ヒメネスとカリニッチもまだリハビリ中でサウールとモラタは累積警告とあって、見どころはグリーズマンがゴールで5年間、プレーしたチームにささやながらも恩を返して終われるかどうか。まあ、2位が確定したアトレティコ同様、レバンテも前節に残留が決まり、パコ・ロペス監督はこれまで出番の少なかった選手を使うようですしね。親善試合でも面白いことはありますし、時間的にも日本のファンに見やすいため、チャンネルを合わせてみるのもいいかもしれません。

え、それよりその後、土曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)からはまだ順位が動く可能性のあるカードがまとめてキックオフするんだろうって?その通りでCL出場権末席の4位を目指して、弟分のヘタフェがコリセウム・アルフォンソ・ペレスにビジャレアルを迎えるんですが、いやあ、彼らは前節にバルサに負け、同じ勝ち点ながら、直接対決の結果でバレンシアに先を越されてしまうことに。要は向こうがバジャドリーから勝ち点を取りこぼしてくれないと、勝っても5位止まりなんですから、一体どうしたらいいものやら。

おまけに前節残留確定組のバジャドリーはお祝いに忙しくて、今週は木曜まで練習していないし、もうここはエースのセルジ・グアルディオラが今季前半に在籍していたため、ヘタフェからもらえるCL出場ボーナス20万ユーロ(約2500万円)を励みに頑張ってくれることを祈るしかないかと。ちなみにビジャレアルも1部残留を決めたばかりのチームなんですが、金曜にはカソルラが4年ぶりに代表再招集という嬉しいニュースが。ええ、2010年のW杯優勝メンバーでもあった彼はアーセナル時代から負傷ループに陥り、計10回も足の手術を受けているんですが、34才になってまた呼んでもらえるとはまさに逆境克服のお手本。

いやあ、その脇で3月に30才で初招集されたヘタフェのマタはセルタのイアゴ・アスパスのケガ治ったこともあり、今回は落選しちゃったんですけどね。とにかく今はビジャレアル戦に勝って、あとは運を天に任せるばかり。ボルダラス監督も「Pase lo que pase tiene que ser una fiesta/パセ・ロ・ケ・パセ・ティエネ・ケ・セル・ウナ・フィエスタ(何が起ころうとお祭りにならないといけない)。素晴らしいシーズンを送った選手たちを祝ってあげないとね」と言っていましたし、低予算の彼らがEL出場権を確保しているだけでも十分、称賛に値しますよね。

そしてバレンシアとヘタフェが負けた場合、4位になるチャンスがある現在6位のセビージャは、その順位を奪って、7月末から始まるELの予選2回戦からの参加を避けたい7位のアスレティックと対戦し、バルセロナではセビージャが勝った場合、自らも勝てばそのアスレティックの7位を奪い獲れるチーム同士、エスパニョールとレアル・ソシエダがぶつかるんですが、緊張感が続くのはこの時間帯だけ。いえ、土曜最後の時間帯にはシーズン開始前の目標だった勝ち点48に届きたいペジェグリーニ監督率いるレガネスが降格済みのウエスカと対戦。足並みを揃えてやはり2部逆戻りとなったラージョがセルタと当たり、ここでもし7点差で勝ったりすると、ジローナがアラベスに勝てば降格を免れたりするんですが、そんな展開はかなり非現実的かと。

一方、やはり消化試合となったマドリーは日曜正午(日本時間午後7時)にサンティアゴ・ベルナベウでのベティス戦でファンと今季のお別れをするんですが、ここ7試合をふくらはぎのケガで欠場し、最終節での復帰を目指していたセルヒオ・ラモスはどうやら間に合わないよう。いえ、スペイン代表には招集されていますし、この火曜には当人もモラレハ(マドリッド近郊の高級住宅地)の教会で洗礼を受け、6月15日にセビージャのカテドラル(大聖堂)で予定されているタレントのピラル・ルビオさんとの挙式準備には余念がないようなんですけどね。

オドリオソラ同様、まだ全体練習には加われていないため、ピッチに立つのは難しいかと。その横で本当にマドリーファンと最後のお別れとなってしまうのはケイロル・ナバスで何せ、クラブの意向で来季の正GKがクルトワに決まってしまいましたからね。CL3連覇の立役者がこうもムゲに扱われるのを見るのは私も残念なんですが、すでにマスコミの注目は来季の第2GKがジダン監督の次男、リュカになるのか、今季はレガネスで修行していたルニンになるのかの方へ。ちなみに売却を望まれていながら、プレーすると値段が下がると心配され、ここ2試合ベンチに入らなかったベイルが招集されるかはどうかは微妙なようです。

そんなマドリーはすでにオフシーズン体制に入っていて、もう来週には昨年夏に契約、今季はサントスにレンタルで留まっていたロドリゴのプレゼンがあるなんて話もあり、ほぼ合意ができているらしいアザール(チェルシー)は29日のEL決勝アーセナル戦の後、21才のFWヨビッチ(フランクフルト)、左SBメンディ(リヨン)ともあとはクラブと金額を詰めるだけになっているのだとか。うーん、こんな調子でポンポン、補強が決まり、6月中もプレゼンで賑わうと私も暇を潰せて嬉しいんですが、金曜にはマルセロとビニシウスがコパ・アメリカのブラジル代表に呼ばれなかったという意外なニュースも。カセミロと3月に来季の入団が決まったミリトン(ポルト)は参加するんですけどね。19才のビニシウスはケガが治ったばかりなこともあり、仕方ないような気がしますが、今季はマドリーでも惨々だったマルセロはこの先、代表復帰に苦労するかもしれませんね。

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