決着がついていく…/原ゆみこのマドリッド

2019.05.14 17:15 Tue
「やっぱり階段は1つ1つ上がらないといけないのかな」そんな風に私が悔しさを紛らわそうとしていたのは月曜日、ここしばらくリーガ4位の特等席を占有していたマドリッドの弟分、ヘタフェが5位に転落してしまった事実を反芻している時のことでした。いえ、先週末、まんまと彼らを追い越したバレンシアと勝ち点差はなく、直接対決成績で劣っているせいでの順位逆転なんですけどね。7位のアスレティックとは5差あるため、最終節に何が起ころうがELグループリーグ出場権は手中にしているんですが、来季は兄貴分たちと肩を並べて晴れのCLの舞台を闊歩するという夢が叶わないのは何だか、残念だったから。
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え、といってもヘタフェが最後にヨーロッパの大会行きの切符を掴んだのは2009-10シーズン。ミチェル監督の下、6位となってEL出場権をゲットしたんですが、それは折しもアトレティコがフラムを倒してこの大会に初優勝した年で、リーガでは弟分のずっと下、9位で終わっていなかったかって?その通りで実際、シメオネ監督が2012年にEL優勝をリピートした後、毎年CLに出られるようになったのは2013-14シーズンからのことですからね。ヘタフェもELで16強対決までプレーした2010年にはリーガ16位と振るわず、降格の危機も味わっているため、やっぱりまずはハードルの低い大会で数シーズン修行、それからCL出場を目指す方が無難なのかも。ちなみにどうしてそんな状況になったのか、日曜午後6時30分から10試合が同時開催となった37節の様子をお伝えしていくことにすると。マドリッドで開催される3試合のうち、私が足を運んだのはゴディンのお別れ試合となったワンダ・メトロポリターノでのアトレティコvsセビージャ戦だったんですが、キックオフ前にはリーガ2連覇を果たした女子チームがトロフィーを持って場内一周。いえ、彼女たちは前日、グラナダで行われたコパ・デ・レイナ(女王杯)決勝で1週間前、最終節で優勝を決める1-3の勝利を挙げた相手だったレアル・ソシエダに1-2と逆転負けしちゃたんですよね。
そう、せっかく前半15分にはエステルが完璧に流し込んだゴールで先制しながら、18分にはパラシオスのエリア外からのシュートをGKロラが逃してしまい同点に。後半15分にはナイカリに決勝点を奪われ、今季もdoblete(ドブレテ/2冠優勝)はならなかったんですが、いえいえ。「No somos felices por acabar segundos, pero estamos contentos/ノー・ソモス・フェリセス・ポル・アカバル・セグンドス、ペロ・エスタモス・コンテントス(2位で終わったのは嬉しくはないが、我々は満足している)」(シメオネ監督)という、今季は昨年夏にUEFAスーパーカップを獲得しただけ。コパ・デル・レイもCLも16強敗退で終わってしまった男子チームと比べたら、全然偉いってもんですよ。

おまけにこの試合のハーフタイムには今季、それぞれ所属のカテゴリーで優勝したカンテラ(ユース組織)、7、8チームの選手たちが続々とピッチに登場して、スタンドから拍手を贈られていましたが、すみませんねえ。去年は男子チームがネプトゥーノ広場に舞台を組んでEL制覇をお祝い。女子やカンテラの優勝メンバーもそれに便乗してイベントを楽しめたものの、2位ではとても望めませんからね。ここは来季、男子チームが発奮して、再びネプトゥーノに連れて行ってくれるのを期待するしかない?
まあ、そんなことはともかく、試合の方は前半、意外なことにまだCL出場権を争っているセビージャより、アトレティコの方に覇気があったんですよ。ええ、20分には誰にも邪魔されず、ドリブルで敵エリアに近づいたコケがパスの送り先を見つけられなかったんでしょうかね。思い切ってシュートを撃ってみたところ、ボールがケアーに当たり、GKバチリクを破ってしまったから、ビックリしたの何のって。負傷禍でカリーソ、メルカード、エスクデーロとDF陣が不足しているセビージャは左SBゴナロンがハーフタイム前にケガでアマドゥと交代した上、ケアーもロッカールームで気分が悪くなって後半はピッチに出ず。

そのため、久々に見るワンタッチの華麗なパスが繋がり、途中出場したコレアのシュートがVAR(ビデオ審判)でオフサイドとされ、追加点にならなくてもあまり心配していなかったんですが、25分にはアレイシ・ビダルのクロスをサラビアに決められてしまうとは!その後もチャンスはあったものの、応援団席から、「Un gol en la memoria, un Faraón para la historia/ウン・ゴル・エンラ・メモリア、ウン・ファラオン・パラ・ラ・イストリア(記憶に残るゴール、ファラオはクラブ史に残る)」という横断幕を掲げてもらい、「Nos diste la vida y el campeonato. Ganamos LaLiga, qué cabezazo. Es historia viva. Godín es nuestro faraón/ノス・ディステ・ラ・ビダ・イ・エル・カンペオナートー。ガナアモス・ラ・リーガ、ケ・カベサソ。エス・イストリア・ビバ。ゴディン・エス・ヌエストロ・ファラオン(ボクらに命とリーガを与えてくれた。リーガ優勝を決めた凄いヘッド。生きている歴史だ。ゴディンはボクたちのファラオ)」というカンティコ(応援歌)を贈られていた、この日、ワンダでの最後の試合となったキャプテンのお別れゴールは生まれず。

そのまま1-1で引き分けることになりましたが、別にいいですよね。昨季のリーガ最終戦でのフェルナンド・トーレス(サガン鳥栖)、12月のガビ(アル・サッド)に続いて3人目となるため、もうアトレティコのスタッフも試合後はスムースに舞台を準備。9年間の在籍中に獲得した8つのトロフィーがピッチ中央に運ばれると、名場面ビデオの上映、記念プレート贈呈と進み…おやおや、ガビ、ゴディンの後を継ぐ第1キャプテンとしては「そこまで強い性格をしていない」という評価もあったせいですかね。ファンの見守る中、コケへbrazalete(ブラサレテ/キャプテンマーク)を引き渡しするなんて一幕も。

確かに記者会見で今季の総括を訊かれ、「Es una buena temporada/エス・ウナ・ブエナ・テンポラーダ(いいシーズンだったよ)。沢山負傷者が出たし、大事な選手も出て行ってしまった。スーパーカップでマドリーに勝ったし、2位になって…グレートなシーズンだ」なんて当人が答えているのを聞くと、私も少々、不安になってしまいますけどね。ゴディンの方は「Este es un homenaje para mi afición/エステ・エス・ウン・オメナヘ・パラ・ミ・アフィシオン(これはボクのファンへの感謝のイベントだ)。遠くから来た自分に1日目から家にいるように感じさせてくれた。このクラブの紋章を愛するように教えてくれた。今日、サッカー選手のゴディンは別れを告げるけど、常に1ファンであり続けるだろう」という感動的なスピーチで締めくくり、最後は恒例の場内一周と胴上げでセレモニーは終了。

そんなお別れイベントも含め、アトレティコの選手を何人も顧客に抱える近所の美容師のお兄さんの情報によると、前日、合宿先ホテルにサウールの髪を切りに行ったところ、「あと1枚で累積警告になって、最終節には出なくていいんだ」と言っていたそうですが、見事に有言実行。モラタと共にイエローカードをもらって週末のレバンテ戦に出場停止になるなど、あまりに今季はもう店仕舞いの雰囲気が強かったため、私もこの勝ち点1で2位確定の宿題を今週末まで持ち越さなくて済んだのは嬉しいんですが、え?別にその1ポイントは必要なかったんじゃないかって?

いやあ、実際そうなんですよね。というのも同時刻、3位のお隣さんは女子チームがコパのトロフィーを持って場内一周した後のアノエタで3-1と負けていたから。そう、この日も先発のチャンスをもらった19才のブラヒムが「Yo quiero estar en el Madrid sí o sí/ジョ・キエロ・エスタル・エン・エル・マドリッド・シーオ・シー(ボクは何が何でもマドリーにいたいんだ)」という意地を見せ、前半6分にはルーベン・パルドとディエゴ・ジョレンテをかわして先制点をゲット。そこまでは順調だったようですが、どうやらEL予選2回戦からの出場権がもらえる7位になりたいというレアル・ソシエダの執念が勝ったよう。

26分にミケル・メリーノに同点にされると、いえ、34分にはバジェホが手でウィリアム・ホセのシュートを遮り、ハンドでレッドカードとペナルティ宣告というダブルパンチを受けた際にはGKクルトワがPKを弾き、難を逃れたんですけどね。1人少ない状態の後半12分にはマルセロの後ろでサルドゥアが悠々ヘッド、リードを奪うと22分にはオジャルサバルのシュートがゴールポストに嫌われた後、17才のバレネチェアに初ゴールを決められてしまうってもう一体、どうしてよいのやら。うーん、ジダン監督も試合後は「Mejor que acabe la temporada cuanto antes/メホール・ケ・アカベ・ラ・テンポラーダ・クアントー・アンテス(できるだけ早くシーズンが終わった方がいいようだ)」と言っていましたしね。

前節に続き、2試合連続で招集リストに入らなかったベイルの先行きも放出で決定のようですし、月曜にはとうとう、ケイロル・ナバスにも来季は戦力外の通告があったとの報道が。その横では先週末、プレミアリーグが終了したアザール(チェルシー)の入団が確実になったとか、もう完全にシーズンオフに入ってしまったようなマドリーなんですが、こんなんだと、サンティアゴ・ベルナベウでファンと今季のお別れをする日曜のベティス戦も憂鬱なだけかもしれない?

おかげで来季もマドリーにレンタル継続を希望して、同日はブタルケでの最終戦にGKルニンを先発に立てたレガネスもトバッチリを喰らいそうですしね。ちなみに残留を確定していたこの弟分は前節、アトレティコとの試合でも2ゴールを挙げたボルハ・イグレシアスに2得点を許し、エスパニョールに2-0と敗戦。この日はアスレティックも3-1でセルタに勝っていたため、順位は変わらなかったんですが、7位争いの行方は今週土曜午後4時15分、サンチェス・ピスファンでのセビージャvsアスレティック戦と、勝ち点3少ないものの、並べば直接対決の結果で優位なチーム同士がぶつかるエスパニョールvsレアル・ソシエダ戦の結果に委ねられることに。

そして2部降格決定済みのラージョはエスタディオ・バジェカスでキックオフ早々、PKでリードを奪われた後、一旦はメドランのゴールで追いついたものの、最後は後半34分、セルジ・グアルディオラが決勝ゴールを挙げたバジャドリーが1-2で勝利。エイバルに1-0で勝ったビジャレアル、ジローナに1-2で勝ったレバンテと共に残留を確定させたんですが…いやあ、この結果が最終節、ヘタフェの4位奪還という野望にとって、良かったのやら、悪かったのやら。

え、元を正せばカンプ・ノウで先週はCL準決勝2ndレグでリバプールに悪夢の4-0負け。3-0のリードを大逆転され、決勝進出を逃したショックの抜け切れていないバルサに負けた彼らが悪いんだろうって?そうなんですけどねえ、こんな時、思い出すのは以前、ヘタフェを率いていたシュスター監督が何かと、「Somos el Getafe/ソモス・エル・ヘタフェ(ウチはヘタフェだから)」とビッグクラブとの差を強調していたこと。実際、彼らはここ数年、サンティアゴ・ベルナベウやワンダに来た時などもちょっと大舞台が苦手というか、この日も前半、ホルヘ・モリーナのゴールがVARでオフサイドとされてスコアに上がらず。

そうこうするうち、39分にはメッシの蹴ったFKをピケがヘッド、GKダビド・ソリアが弾いた後の混戦からアルトゥーロ・ビダルに先制点を決められてしまいましたしね。柴崎岳選手からポルティージョ、そしてサム・サイス、ウーゴ・ドゥーロとアタッカーをリフレッシュしていった後半もゴールを挙げられないまま、挙句の果てに45分、セルジ・ロベルトと連携したメッシがシュートに行くのを止めようとして、アランバリとジェネがオウンゴールにしているんですから、悲しいじゃないですか(最終スコア2-0)。

そこへ先週、アーセナルとのEL準決勝2ndレグでも連敗し、決勝進出の夢破れたバレンシアも素早く立ち直り、シーズン後半はどんどん尻すぼみになっていたアラベスに3-1と快勝したため、ヘタフェが追い抜かれてしまったんですが、いえ、ボルダラス監督は「Queda una jornada todavía/ケダ・ウナ・ホルナーダ・トダビア(まだ最後の節が残っている)。バジャドリーだって、バレンシア戦でいいイメージをファンに見せたいはず」と諦めていませんでしたけどね。

つまりこの土曜午後4時15分からの最終節、ヘタフェはビジャレアルをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎え、バレンシアはホセ・ソリージャでのバジャドリー戦で4位を獲りにいくんですが、はい、前述のように相手はどちらも先週末、残留が決まってホッとしているチーム。常識的に考えると、ヘタフェとバレンシアが揃って勝つんじゃないかと思いますが、その場合、同勝ち点で上に立っているのは後者ですからね。そこでバジャドリーには頑張ってもらわないといけないんものの、ラージョ戦でチームが来季も1部で戦えるよう導いたセルジ・グアルディオラが実は12月までヘタフェにいたというのはまさに運命の皮肉。

そう、あまり経緯には詳しくないんですが、今季、2部のコルドバからレンタルでヘタフェ入団を果たした27才の彼はシーズン前半、ホルヘ・モリーナ、マタ、アンヘルら30代FWトリオに付け入る隙を見つけられず、出場もたった5試合に留まることに。そこでバジャドリーに河岸を変えたんですが、果たして半年間いた古巣には一体、何を感じている?うーん、最終節、ラージョがセルタに0-7以上で勝たない限り、アラベスに勝っても降格が決まるジローナの方がはるかに不幸なのは当然ですが、最後の奇跡を待つという意味ではヘタフェも近いものがあるかもしれないですね。

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