全日本大学選抜の練習試合で感じた疑問点/六川亨の日本サッカー見聞録

2019.04.25 18:20 Thu
©超ワールドサッカー
昨日24日はルヴァン杯の取材前に、味の素フィールド西が丘で行われた全日本大学選抜対U-20全日本大学選抜候補の練習試合を取材した。今年7月3日からイタリア・ナポリで開催されるユニバーシアードの最終選考会を兼ねた試合には、日本代表の森保一監督を始め、影山雅永U-20日本代表監督、齋藤俊秀U-21日本代表コーチらJFA(日本サッカー協会)技術委員会のスタッフや、Jクラブの強化担当など多くの関係者が詰めかけた。

試合は1本目が大学選抜対関東の大学によるU-20大学選抜、2本目は大学選抜対地域所属の大学によるU-20大学選抜で行われ、大学選抜は1本目の試合開始早々に先制点を許したものの、その後は三笘薫(川崎U-18から筑波大学)、上田綺世(鹿島学園高校から法政大)、イサカ・ゼイン(桐光学園高から桐蔭横浜大学)の3連続ゴールで勝利を収めた。
試合を見て改めて感じたのは、上田はストライカーとしてゴール前で味方からのパスを引き出すポジショニングとシュートまでの体勢が秀逸なこと、三笘の落ち着きのあるドリブルと視野の広さは群を抜いていることだった。

さらに2本目から出場した旗手怜央(静岡学園高から順天堂大)はドリブラーの印象が強かったが、同業者いわく「チームメイトからは、怜央君はいつも僕のことを見てくれていると言うように、パサーとしての才能も開花しつつある」との言葉通り、ドリブルだけでなく俯瞰するように攻撃陣をリードしていた。

改めて、この3人は現在の大学サッカー界でも図抜けた存在であることを実感した。
そして彼らだけでない。地域所属の大学によるU-20大学選抜ではストライカーの根本凌(上田西から鹿屋体育大の2年生)は、フィジカルの強さ(183センチ、75キロ)を発揮して存在感を示していた。高校選手権で長野県初のベスト4進出に貢献した逸材だが、隣に座っていた景山監督は大学1年の頃から追跡しているようで、外国人選手を相手にしても引けを取らないフィジカルとメンタルの強さを評価していた。

その他にも将来が楽しみな逸材が揃っており、U-19全日本大学選抜は7月にスイス遠征、9月には韓国で開催されるアジア大学サッカートーナメントに参加する。

そこで疑問に感じたのは、せっかく大学サッカー界の逸材、将来のJリーガー予備軍が一堂に会したのに、この試合が一般のファンには非公開で行われたことだ。ただでさえ注目度が低く、身内や関係者しか観戦に来ない大学サッカーの魅力をアピールする絶好の機会だったと思うと残念でならない。

たぶん今年、ユニバーシアードが開催されることを知っているファンも少ないだろう。かつての関東大学リーグは西が丘が聖地だったが、現在は開催地が分散しているため観戦するのにも苦労する。だからこそ、大学サッカーの関係者はもっと情報を積極的に発信すべきではないだろうか。ここらあたり、JFAにも大学サッカーのバックアップをお願いしたいところだ。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

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