第2戦が凄いことになっている…/原ゆみこのマドリッド

2019.04.06 14:00 Sat
「まさかヘタフェにこんな熱い戦いが待っていたなんて!」そんな風に私がドキドキしていたのは金曜日、世間が逆転優勝への最後のチャンスと、必死でバルサvsアトレティコ戦を盛り上げようとしているのを冷ややかに眺めながら、ミッドウィーク節の終わった順位表を見直していた時のことでした。いやあ、paron(パロン/リーガの停止期間)前のアスレティック戦をアトレティコが落としていなければ、今頃、首位との勝ち点差が5になっていたため、それならちょっとは直接対決に期待してもいいかなと思わなくもなかったんですけどね。CL16強敗退のショックが大きすぎたか、彼らはサン・マメスでも負けてしまい、前節でちょっとは縮まったとはいえ、今の差は8もあるんですよお。

その一方でちょっと下を見れば、4位ヘタフェから12位レガネスまでも同じ勝ち点差とあって、要は今からアトレティコがバルサとの順位を引っくり返せるのなら、マドリッド郊外南部のお隣さん同士もCL出場権争いを繰り広げているってことにならない?まあ、こちらは間にバレンシア、セビージャ、アラベス、アスレティック、レアル・ソシエダ、ベティス、エイバルを挟んでいるため、そう単純な図式ではないんですけどね。でもこうなると、今週末の大事なカードは弟分たち。いつの間にか、4位に勝ち点差1まで迫ってきたバレンシアとラージョの土曜の対戦に加え、5位まで後退したものの、ヘタフェと勝ち点3差のアラベスにレガネスが挑む日曜正午、そして4差のアスレティックをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えるヘタフェの午後2時(日本時間午後9時)からの試合を注目するべきという気がしないでもありませんが…。
いやいや、先走りしないでこの平日開催のリーガの様子をお伝えしないといけませんよね。まず火曜にトップバッターを飾ったのはアトレティコで、久々のワンダ・メトロポリターノはかなりスカスカに見えたものの、これはジローナ戦の前半12分まで、fondo sur/フォンド・スール(ゴール裏南側席)の応援団がトリノでのユベントス戦に駆けつけた際、クラブやチームの対応が悪かったことに抗議するため、着席を控えていたせいも大きかったかと。もっとも彼らが定位置に陣取っても応援をしなかった前半に何があったということもなく、いやあ、実際、前節0-4と大勝としたアラベス戦をもう忘れてしまったか、5人DF体制で守るジローナの弱点を見つけられず、後半もかなりモタモタしていたアトレティコだったんですけどね。

ようやく31分にはツキが巡ってきたようで、途中出場のビトロが入れたクロスをGKイライソスがクリアしたところ、そのボールをノーマークだったゴディンが悠々とヘッド。あまりに簡単なゴールだったため、主審もVAR(ビデオ審判)に確かめていましたが、「Por suerte el VAR hizo justicia. Otras veces se equivoca/ポル・スエルテ・エル・バル・イソ・フスティシア。オトラス・ベセス・セ・エキボカ(運良くVARが正しいことをしてくれた。他の時は間違えたりもする)」と当人も認めていたように、GKと最初にボールを争ったグリーズマンもオフサイドではなかったことが判明。これで何とか先制することができたんですが、とにかくジローナには3-3に追いつかれて敗退したコパ・デル・レイ16強対戦2ndレグを含め、ここまで6回顔を合わせて1度も勝っていませんからね。

終盤にグリーズマンがGKとの1対1を止められてしまった時には嫌な予感もしたんですが、大丈夫。ロスタイム4分に再び、カウンターから抜け出した彼が今度はvaselina(バセリーナ/ループシュート)を成功させ、2点目を奪ってくれたとなれば、勝ち点3はもうワンダから逃げていきませんって。これでグリーズマンも7試合連続ノーゴールのスランプから脱出できましたしねえ。翌日にはマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でセッション後、決起バーベキュー大会を開いたアトレティコは木曜に休養して、金曜に練習を再開。その時にはスペイン代表から足首を痛めて帰還、ジローナ戦で途中交代したモラタやアラベス戦でケガをしたジエゴ・コスタも普通にトレーニングに加わっています。
実際、「En principio los dos están bien/エン・プリンシピオ・ロス・ドス・エスタン・ビエン(基本的に2人共、状態はいい)」とシメオネ監督もお墨付きを与えていたため、あとはtridente(トリデンテ/3人FW体制のこと)でもcuatrivote(クアトリボテ/4人ボランチ)でも、土曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からのカンプ・ノウでは好きにしてくれればいいんですが、何せ、リーガで当人は5分け9敗とバルサに1勝もできていませんからね。最後に勝ったのは2016年、ビセンテ・カルデロンでのCL準々決勝2ndレグでしたが、やっぱり火曜の結末を考えるとあまり楽観的になれないのは私だけではない?

そう、このミッドウィークリーガは午後7時30分から1時間刻みに試合がスタート。ワンダのプレス・コンファレンスルームでシメオネ監督やロドリゴの記者会見を私が聞いていた頃、ボルハ・イグレシアスのゴールで1-0とエスパニョールに負けていたヘタフェも家に着いてみれば、ホルヘ・モリーナの投入が起爆剤に。後半29分には彼からのスルーパスを受けたアンヘルが同点弾を挙げ、1-1の引き分けに終わっていましたが、先日、レガネスに0-2と負けた弟分ダービーから、少々失速気味なのも確かかと。

ボルダラス監督が「Como todos sabeis somos un equipo pequeno y modesto/コモ・トードス・サベイス・ソモス・ウン・エキポ・ペケーニョ・イ・モデスト(皆が知っているようにウチは小さくて質素なチーム)。これから何が起きても素晴らしいシーズンを送っているのは間違いない」と予防線を張るのもわかりますが、今ではもうコリセウムでCLアンセムを聞きたいというファンの期待もかなり高まってきていますからね。今週末のアスレティック戦を始め、この先まだセビージャ、レアル・ソシエダ、マドリー、バルサと強敵との対戦も残ってはいるものの、何とか4位を死守できるといいのですが。

まあそれはともかく、驚いたのは最初、0-2と負けていたビジャレアルが4-2と逆転していたことの方で、家では中継が見られない私はGOL TVのminuto a minute(ミヌート・ア・ミヌート/1分1分、試合放映権のない同局のレポーターが中継を見ながら様子を伝えてくれる)を流しながら、もしや世の中には奇跡というものがあるのではないかと信じかけていたんですけどね。やはりそうは問屋が卸さず、ていうか、後半45分にメッシのFKが決まって4-3、ロスタイム3分にはルイス・スアレスのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)で同点となり、4-4の引き分けに持ち込まれるなんてあっていい?

そんな肩透かしを食らったせいで、いくら相手はアルトゥル・ビダルが出場停止、デンベレもまだ負傷から戻らず。来週にはCL準々決勝マンチェスター・ユナイテッド戦1stレグがあって気が散っている相手だろうと、逆転不可能に見える勝負に挑むアトレティコの選手たちに何て声をかけていいかわからないんですが、それでもすでに来季のプレシーズンに入ってしまったお隣さんよりはマシかも。だってえ、レアル・マドリーは弟分ヘタフェへのバックアップになるのもすっかり忘れ、水曜のメスタジャでバレンシアに負けてしまったんですよ!

いやあ、この試合、先週末のウエスカ戦とは違い、モドリッチ、クロース、カセミロら、CL3連覇の中盤を並べたジダン監督でしたが、いつになっても得点ができず。それどころか、前半34分にはグエデスに見事なゴールを決められると、後半にはベイルやイスコも入ったものの、とうとう37分、CKからガライのヘッドで差を広げられてしまうことに。ロスタイムには何とかベンゼマが頭で1点を返したんですが、それ以上反撃の時間もなく、2-1で終わったとなれば、今季前半は不調に苦しみながら、いよいよ目標のCL出場圏まであと一歩と迫った相手をそれこそ、勢いづかせることにならない?

まあ、ジダン監督からして、「ウチは調子のいいバレンシアと当たって、彼らには懸かっているものが沢山あった。A lo mejor ahi ha estado la diferencia/ア・ロ・メホール・アイー・ア・エスタードー・ラ・ディフェレンシア(おそらくその辺に差があったのかもしれない)」という調子で、選手たちも「Estamos trabajando para volver el ano que viene y seguro que el Madrid Vuelve/エスタモス・トラバハンドー・パラ・ボルベル・エル・アーニョ・ケ・ビエネン・イ・セグロ・ケ・エル・マドリッド・ブエルベ(ボクらは来季に戻るつもりで働いているし、絶対マドリーは戻って来る)」(カセミロ)という姿勢では現在、4位とは勝ち点差10があってCL出場は安泰とあって、試合の勝敗にあまりこだわらないのもわかるんですけどね。

ただ、その日1時間前にエイバル戦をスタートしていたラージョが、いやあ、彼らは前半40分にはポソのゴールで先制ながら、またしても後半にはお決まりのようにチャルレスとペドロ・レオンのゴールで2-1と逆転負け。順位は19位のまま、残留圏との差は6であまり変わっていないものの、残りが8試合とあって、いよいよ日曜のバレンシア戦では1部での生き残りを懸けて、何が何でも勝たないといけなくなったから。うーん、マドリー戦で5枚目のイエローカードをもらったパレホもバレンシアの競技委員会への申し立てが功を奏して、出られるようですしね。

この先もアスレティックやセビージャ、マドリーと上位チームとの対戦が残っているラージョだけに、何よりエイバル戦を落としたのは痛かったんですが、おかげでほぼ残留が決まった相手を土曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)にサンティアゴ・ベルナベウに迎える兄貴分は幾分、気が楽になったかと。ええ、ソラリ監督が率いていた昨年11月にはイプルアで3-0の完敗を喫していましたからね。ジダン監督もセルヒオ・ラモスを招集外にする余裕を見せていますし、マルセロが累積警告で出場停止となるのはレギロンがスタメン復帰するいい口実になるかも。GKはクルトワがまだ治っていないため、ケイロル・ナバスがリピートするはずですが、また次男のリュカ起用なんていうのもありますかね。

そして木曜はブタルケに出かけた私だったんですが、途中までは相手のバジャドリーも残留確定はまだながら、切迫した勝利の必要性がないチームだったからでしょうか。前半はこの冬、ヘタフェから移籍したセルジ・グアルディオラが3度程、絶好機に失敗して悔しがっていたんですが、後半になるとホームチームのレガネスが押すように。それでも一旦はホアキンがハンドを取られ、主審がペナルティを宣告したプレーもVAR判断でPKがもらえず、0-0のまま、いよいよ5分間の長いロスタイムに入ったところ…。

いやあ、1部に昇格してからここ2年、ギリギリの17位で残留を決めていた弟分だっただけに、順位表の中程にいられる今季はもう満足しているんだろうなと思い込んでいた私が浅はかでした。残り時間、相手を自陣エリア周辺に追い詰めたレガネスは、それはまあ凄まじい猛攻ぶりで、いえ、この日はブライトワイトが出場停止でおらず、エン・ネシリもまだリハビリ中なため、大型FWカリージョの頭目掛けて、CKやらスローインからハイボールの一辺倒だったんですけどね。何と、バジャドリーが最後の交代を行ったため、延長された6分目にファンフランのクロスをとうとうカリージョがヘッドで決めてくれたから、寒い夜に応援に駆けつけたサポーターもどんなに盛り上がったことか。

前節のヘタフェ戦でPKをダビド・ソリアに止められていた当人もこれには我を忘れたか、ユニフォームのシャツを脱いでしまい、日曜のアラベス戦に累積警告となってしまったんですが、いやいや、こういう粘りを見せられるチーム、私は好きですよ。1-0で勝ったペジェグリーニ監督も「El objetivo mínimo es la permanencia/エル・オブヘティボ・ミニモ・エス・ラ・ペルマネンシア(最低限の目標が残留)」と更に上を目指すのにやぶさかないようでしたしね。いよいよ戦国時代の様相を呈してきたリーガで4位から6位or7位(バルサがコパで優勝した場合、EL出場権がもらえる)の座を狙ってみるのも悪くはないのでは?

ちなみにCL戦が早々とマドリッドから姿を消してしまった今季ですが、来シーズンはマドリッド勢4チームがヨーロッパの大会出場という可能性が出てきたのは私にとっても朗報で、心配なのはラージョだけ。それでもバジャドリーがビジャレアルと共に勝ち点差6と射程圏内に留まってくれたのはレガネスのナイスなアシストのおかげですしね。少ないながら、これからの残り試合、弟分同士が助け合って、最後は皆が満足できる結末になってくれるといいんですが。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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