とどこおりなく代表戦が済んだ…/原ゆみこのマドリッド

2019.03.29 12:00 Fri
Getty Images
「夏のダービーなんてまだ、どうでもいいよお」そんな風に私が呆れていたのは木曜日、paron(パロン/リーガの停止期間のこと)もさすが2週間目になると、マドリッドの両雄番の記者たちも戦力補強予想ネタが尽きたんでしょうかね。まだシーズンが終わるのに2カ月も残っているにも関わらず、とうとうメインのニュースがこの夏のプレシーズンマッチ、インターナショナル・チャンピオンズカップ(国際親善大会)の話になっていたのを見た時のことでした。いやあ、確かにバケーション中の人も多い7月26日、たまたま自分がアメリカ旅行中でニュージャージーの近くにいたら、メットライフ・スタジアムでのレアル・マドリーvsアトレティコ戦を覗いてみるのも悪くはないと思うんですけどね。

とはいってもその前にはコパ・デル・レイからもCLからも敗退済み、リーガも首位と大きく水を開けられ、逆転優勝の望みがほぼ絶たれた両チームとはいえ、残り10試合をキャンセルする訳にはいかず。2位と3位を占める互いの差も前節で勝ち点2差に縮まったため、どちらがスペインの首都でナンバーワンとなるか、威信を懸けての争いとなるんですが、はあ。やっぱりどう見ても興味深い展開にはならなそうなのが、私も頭が痛いところで…。
そんなことはともかく、先にスペイン代表の話をすることにすると、2020年ユーロのグループ予選第1戦でノルウェーに2-1と勝利した彼らは火曜にマルタとの第2戦を迎えたんですが、実は前日の夜、家族によんどころない事情が発生し、ルイス・エンリケ監督がプライベートジェットで緊急帰国というハプニングが。ただそこは相手も相手ですしね。ロベルト・モレノ第2監督も後で「tenemos todo atado y consensuado y saque muy poco de mi/テネモス・トードー・アタードー・イ・コンセンスアードー・イ・サケ・ムイ・ポコ・デ・ミー(全て決めてあったし、打ち合わせしていた通りで自分からやったことはほとんどない)」と言っていた通り、試合はスペインのペースで順調に進んでいきます。

え、それでも序盤、2度サウールがシュートを外した後、モラタが判で押したようにヘッドを外してしまった時にはまたしてもゴール日照りのアトレティコ勢が足を引っ張っていると、心配になったんじゃないかって?うーん、この日はポゼッションが80%以上あったものの、チャンスはノルウェ-戦より少なく、パスのスピードも遅かったため、イライラしなくもなかったんですが、大丈夫。前半30分、事前に「iba hablando con Morata que podia ser bueno y desmarque a la espalda/イバ・アブランドー・コン・モラタ・ケ・ポディア・セル・ブエノ・イ・デスマルケ・ア・ラ・エスパルダ(モラタと上手くいくかもしれないから、敵の背後を突くことを話していた)」というエルモーソ(エスパニョール)がセンターからロングパス。これを受けたモラタがGKボネロの脇を抜くシュートを決め、先制点を挙げてくれたから、助かったの何のって。

後半はその日、右SBを務めていたセルジ・ロベルト(バルサ)が積極的に上がり、アセンシオ(マドリー)に何度もラストパスを供給していたんですが、追加点が入ったのは5年ぶりに代表復帰、先日のメスタジャではキビキビしたプレーが好印象だったヘスス・ナバス(セビージャ)がサウールと交代してからのこと。ええ、27分にナバスの上げたクロスをモラタが頭でようやく決めてくれたおかげですが、試合後に当人が「Se que hay mucha gente esperando que no la meta para opinar/セ・ケ・アイ・ムーチャ・ヘンテ・エスペランドー・ケ・ノー・ラ・メタ・パラ・オピナル(意見するため、ボクがゴールを入れないことを期待する人々がいるのは知っているよ)」と言っていたのはちょっと、ヒガミ根性が過ぎたかも。
そりゃあこの2試合でもらったシュートチャンス、7、8回程はありましたでしょうか。その全てをゴールにできるようなFWなら、今頃アトレティコにいることはなかったと思いますが、少なくとも代表ではアシストをしてくれる同僚が比べ物にならない程、沢山いることにまずは感謝すべきかと。結局、1983年のユーロ予選では12-1の大勝という奇跡を起こし、大量の得失点数差を覆して、本大会出場を決定。折しもその時のマルタGKの息子がこの日、相手のゴールを守っていたなんてこともあり、goleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)の夢もあったものの、0-2と控えめな勝利を挙げたスペインでしたが、あまり感動がないのは主要国際大会予選の常ですからね。

ええ、どうしても全UEFAメンバー参加という建前上、予選では強国と弱小国の対戦カードが多くなってしまうため、その辺は昨年、始まったネーションズリーグなど、ランキングを合わせたグループ編成が成功。スペインのファイナルフォー進出は叶わなかったものの、イングランドとクロアチアという見応えのある試合は良かったなんて気もしないでもないですが、こればっかりはねえ。そうそう、そんな代表戦でも記録達成に喜んでいる選手はいて、それはキャプテンのセルヒオ・ラモス(マドリー)。というのも2008年から2012年までのスペイン黄金期のキャプテンを務めた先輩、カシージャス(ポルト)の代表最多通算121勝に並んだからで、あと4試合出れば、出場試合数でも最多となる、その167試合に追いつくことに。

いやあ、当人も「A cuatro de tu amigo, que esta temblando ya/ア・クアトロ・デ・トゥ・アミーゴ、ケ・エスタ・テンブランドー・ジャ(あと4試合なんてもう、友達のカシージャスも震えているだろう)」とジョークを言っていましたが、とりあえず、同日はノルウェーとスウェーデンが引き分け、スペインの単独1位が決定。この先はラモスと定番CBコンビを組むお相手が誰になるかを含めて、6月のフェロー諸島戦とスウェーデン戦を楽しみに待つしかないかと。ちなみに後者の方は10日、サンティアゴ・ベルナベウが会場となるため、夏休みにマドリッド訪問を予定されている方は気に留めておいたらいいかもしれませんよ。

そして話を今週末のリーガに向けると、そうですね。マドリッド勢を応援する私として一番お勧めなのは土曜午後1時からの弟分ダービー。現在、CL出場圏末席である4位を占めるヘタフェがコリセウム・アルフォンソ・ペレスにお隣り町のチーム、レガネスを迎えるからですが、スペイン代表に初招集、ほんの数分だけとはいえ、ノルウェー戦でデビューを果たしたファン・マタを始め、柴崎岳選手、マキシモビッチ(セルビア)、フルキエ(グアルダルーペ)、ジェネ(トーゴ)ら、各国代表に出向した選手たちが元気に戻ってきたホームチームに比べ、初めて大量、6人ものメンバーが招集されたレガネスでは頼りのFW、エン・ネシリが右ヒザの半月板を痛めて帰って来たというから、さあ大変。

いやあ、先週は2部の弟分、ラージョ・マハダオンダとの練習試合で3-2と勝利、長期負傷離脱からようやくシマノフスキが復帰したり、ブスティンサのケガも治ったという朗報があったばかりだったんですけどね。降格圏とは勝ち点差8ありますが、まだ残留目安の40に届いていない彼らだけに、検査次第でエン・ネスリが手術で今季絶望となってしまうとなると、ちょっとペレグリーノ監督も辛いかと。一方、前節バレンシアとスコアレスドローを演じ、5位アラベスとの差が勝ち点2になってしまったヘタフェとしては、同日、遅い時間でその直接ライバルと対決するのが兄貴分であるからといって、あまり過信しない方がいいかも。

え、ユベントスに衝撃のCL逆転敗退を喰らい、そのショックでアスレティック戦でも2-0と完封されてしまったアトレティコだったけど、この代表戦期間で十分、ゴールを回復できたんじゃないのかって?その通りでスペイン代表のモラタだけでなく、ここずっとゴールから遠ざかっていたグリーズマンもフランスのモルドバ戦、アイスランド戦で2試合連続得点。先日ワンダ・メトロポリターノで行われたベネズエラ戦には出場機会のなかったコレアもタンジェでのモロッコ戦ではアルゼンチンを0-1の勝利に導き、メッシの負傷離脱を補いましたし、トマスもガーナ代表でゴールを挙げてきたとか。その辺を見ると、メンディソローサで点が入らないということはありえなさそうですが、また何でなんでしょうかねえ。よりによって、水曜にリュカのバイエルンへの移籍が正式発表されるとは!

いやあ、冬の市場ではアトレティコの交渉が実って、今季いっぱい残留、契約破棄金額の8000万ユーロ(約100億円)でこの夏に移籍ということになっていたんですけどね。12月からヒザの負傷でリハビリを続けていた当人も今週頭にはマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でチームのセッションに加わり、フィリペ・ルイスの回復と共にようやく左SB受難が終わると喜んでいた矢先、いきなりバイエルンの意向で靭帯を手術することに。来季のプレシーズン開始に間に合わす方を選んだとなれば、もちろん「Me ha costado muchisimo decirle no al Atletico/メ・ア・コスタードー・ムチシモ・デシールレ・ノー・アル・アトレティコ(アトレティコにノーと言うのは凄く辛かった)」(リュカ)というコメントはあったものの、恐るべしは彼に年棒1300万ユーロ(約16億円)も払えるバイエルンの資金力。

まあ実際、予定を早めたのはアトレティコに今季のタイトル獲得の可能性がなくなったせいも多分にあるんでしょうけどね。どうやら来季の彼らはDF陣が全入れ替わりに近い状態になるらしく、ゴディン、フィリペ・ルイスは退団見込みで、サビッチ、ファンフランも怪しいとか。その代わり、ポルトから数人、あとはアヤックスのタグリアフィコなどが補強候補に挙がっていますが、果たしてその新加入選手のうち、どのくらいが今季、負傷者続出で昨夏のプレシーズンを反省。復活が決まったダブル、トリプルセッション満載の地獄のロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)キャンプを生き残ることができる?

それはともかく、土曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのアラベス戦ではシメオネ監督が再びジエゴ・コスタ、モラタ、グリーズマンのtridente(トリデンテ/3FWのこと)を起用するようで、ロドリゴが出場停止となるため、中盤はトマス、コケ、サウール、DF陣はファンフラン、ゴディン、ヒメネス、フィリペ・ルイスとなる予定。とにかく残り10試合、これからアトレティコに来る選手たちを失望させないよう、強いチームを見せてくれることを祈っています。

そして日曜には現在、マドリッド勢で唯一、降格圏に沈んでいるラージョがベティスをエスタディオ・バジェカスに迎えるんですが、これはミチェル監督から引き継いだパコ・ヘメス監督の出戻りデビュー戦になるだけでなく、午後2時という、これまでスペインではランチライムに当たるため、タブーとされていた時間帯に初めて開催される試合に。そのため、ベティスのステイン監督など、ここ数日、練習を午後1時から始め、選手たちの体を慣らしているようですが、相手にも今季は32強対決で敗退してしまったELに来季も出場するため、6位との勝ち点差4を縮めるという目標がありますしね。もちろん同じ19位ながら、安全圏の17位と勝ち点差6が開いてしまったラージョの方が緊急度は高いんですが、とにかくまずは7連敗の悪い流れを断ち切ることが先決でしょう。

その後、午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)から、サンティアゴ・ベルナベウでマドリーがジダン監督復帰後の2試合目に挑むんですが、今回の相手は最下位のウエスカ。どうもこちらもエムバペ(PSG)が来ることになったり、やっぱり来年夏まで持ち越しになったり、アザール(チェルシー)、マネ(リバプール)と、予算が5億ユーロ(約625億円)という夏の市場の話ばかり聞こえていたんですが、木曜には各国代表に行っていた選手たちもほとんどバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場に戻ったよう。負傷していたマルコス・ジョレンテやルーカス・バスケスもリハビリを終え、日曜の試合に向けて準備ができているとか。

そんな中、注目はスタメンGKで、復帰初戦にジダン監督はそれまでソラリ監督の下でクルトワの控えとなっていたケイロル・ナバスを抜擢。いやあ、前者はベルギー代表のロシアとの試合で珍しいポカを犯し、チェリシェフ(ビジャレアル)にゴールを決められて、同僚のアザールに「ビデオを見過ぎて、ボクみたいにドリブルしたくなったんだろう」と茶化されたりもしていたんですけどね。当人が「Fue un pequeno error, pero asi es la vida del portero/フエ・ウン・ペケーニョ・エロール、ペロ・アシー・エス・ラ・ビダ・デル・ポルテロ(小っちゃなミスだけど、GKの人生なんてこんなものさ)」とあまり、意に介していなかったのはそれでもチームがロシアに3-1で勝利、続くキプロス戦も0-2と快勝したおかげだった?

ケイロル・ナバスの方は大西洋を渡ったコスタリカで親善試合を2つこなし、グアテマラと引き分け、ジャマイカに勝利して帰ってきましたが、こればっかりは監督の腹次第ですからね。こちらもすでにシーズンの目標がないため、あとはファンにいいプレーを楽しんでもらうぐらいしかできないんですが、とりあえず、イスコやセバージョス、マリアーノら、これまであまり出番がもらえなかった選手たちに期待。来週は火水木にもリーガ戦があるからいいものの、こんな早くからミッドウィークがヒマになるのは私も久方ぶりですし、ちょっと視点を変えていかないといけないですよね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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