明日は我が身とならないように…/原ゆみこのマドリッド

2019.03.08 20:05 Fri
「要は2点差の先勝なんて全然、当てにならないってことじゃない!」そんな不安が私の中に沸き起こったのは水曜日、オールド・トラフォードでのCL16強対決1stレグに0-2と先勝していたPSGがホームでマンチェスター・ユナイテッドに1-3と負け、総合スコア3-3のアウェイゴール差で逆転敗退したのを夜のサッカー番組で知った時のことでした。いやあ、その日は1stレグにホームで2-1と勝っていたローマが延長戦の末、カシージャスとペペ、オリベル・トーレスとアドリアンといったマドリッドの両雄に在籍した選手がいるため、親近感がなくもないポルトにエスタディオ・ド・ドラゴンで3-1を喫し、総合スコア3-4で姿を消すなんてこともあったんですけどね。

それどころか、アウェイで1-2という僅差勝利ながら、格付け的に絶対有利だったお隣さんなど、前日に総本山のサンティアゴ・ベルナベウでアヤックスにまさかの逆転突破を許すという大失態が犯していたとなれば、もしかしてワンダ・メトロポリターノではユベントスに堂々2-0で完勝。クリスチアーノ・ロナウドにいい恰好もさせなかったし、アトレティコには頼りになるGKオブラクもいるため、来週火曜にトリノである2ndレグではそれ程、心配をしなくてもいいだろうという私の見通しはとんでもなく甘いものだった?

いえ、その前に先週のコパ準々決勝2nd、リーガとクラシコ(伝統の一戦)連敗のショックから、わずか3日後、レアル・マドリーのCL決勝トーナメント、今季最初で最後となったホームゲームがどんなだったか、お伝えしていかないといけません。うーん、これで3試合連続の満員御礼となったスタンドはやはり、4連覇の懸かった大会とあって、fondo sur/フォンド・スール(ゴール裏南側)に大きな垂れ幕やモザイクが復活していたんですけどね。開始4分、バランのヘッドがゴール枠に弾かれてしまったのがケチのつき始めだったかと。
するとその2分後、タディッチにクロースがボールを奪われ、ナチョも止められずにラストパスがジエィフに。ヨハン・クライフ・スタジアムでもアヤックスの1点を挙げていた彼が先制ゴールを決めてしまったから、驚いたのなんのって。それでもまだ勝っていたマドリーだったため、スタンドも平静を装っていたんですが、18分、またしてもタディッチが今度はネレスにラストパスを供給し、「Nuestra idea era marcar 2 goles/ヌエストラ・イデア・エラ・マルカル・ドス・ゴーレス(ボクらの考えは2ゴールを決めることだった)。あんなに早くできるとは思わなかったけどね」(タグリアフィコ)という、アヤックスの夢想していた通りの展開になるなんて一体、誰に想像できた?

そこへ更なる災厄がマドリーを襲い、うーん、ジダン監督の時もロペテギ監督の時も控えが多かったルーカス・バスケスですからね。土曜のバルサ戦ではベンチ待機でお休みをもらっていたものの、今年になってスタメン出場が続いていたのに筋肉が悲鳴を上げたか、29分にはハムストリングの肉離れを起こし、ベイルと交代することに。おまけにその4分後には、「スタートダッシュは相手に勝ったんだけど、タックルからは逃れられなかった」というビニシウスも右足首の靭帯断裂でアセンシオとチェンジ。いやまあ、それでも2014年CLリスボンでの決勝では開始9分でエースのジエゴ・コスタを負傷で失った、どこぞのチームよりすっとましで、何せ今季はBBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)改め、BBA(同ベイル、ベンゼマ、アセンシオ)でシーズンを始めたマドリーですからね。
まだ大丈夫なんじゃないかと思っていたところ、41分にはベイルが得意の左サイドから駆け込んで撃ったシュートまでゴールポストを直撃してしまうとは、あ、これって本当に運が悪いかも。実際、後半も状況は改善せず、17分にはファン・デ・ベークが繋ぎ、それまでアシスト役だったタディッチが3点目のゴールをゲット。しかもその事前のプレーでボールがサイドラインから出ていた疑いがあり、審判がたっぷり4分間程もVAR(ビデオ審判)と連絡を取った挙句、得点を認めるというオチだったとなれば、もう己のツキのなさを恨むしかありませんって。

え、でも25分にはレギロンのパスから、アセンシオが反撃の狼煙となるゴールを挙げ、fondo norte/フォンド・ノルテ(ゴール裏北側)3、4階席で飛び跳ねていたオランダ人たちに圧倒されていた観客もお家芸のremontada(レモンターダ/逆転劇)を期待、ちょっとは盛り上がったんだろうって?まあ、そうなんですが、それから2分も経たない時のことでした。左サイドからシューネが蹴ったFKにGKクルトワの長い手も届かず、アヤックスが4点目を奪ったのは。おかげで後程、ベルナベウの駐車場を出る時には「No paras ni un taxi, vete al Atleti/ノー・パラス・ニ・ウン・タクシー、ベテ・アル・アトレティ(タクシーさえ止められない。アトレティコに行っちまえ)」と心無いマドリーファンから、当人も罵られたりもしていたものの、いや、失点はGKのせいだけじゃないですからね。

結局、その後は「No nos ha alcanzado el esfuerzo que hicimos/ノー・ノス・アルカンサードー・エル・エスフエルソ・ケ・イシモス(ウチの努力が届かなかった)」(ソラリ監督)というマドリーは追加点を挙げることなく、ロスタイムにはファールでイエローカードをもらったナチョが無力感からか、口が滑って即座に2枚目を提示され、退場になってしまったように、その日のマドリーは守備陣を始めとして、何もかもがガタガタ。それこそ、テン・ハグ監督が前日に「セルヒオ・ラモスがいないのは大出血を招く」と言っていた通り、1stレグでの勝利で過信して、累積となるイエローカードゲットでこの試合の出場停止を狙ったことが裏目に出たのは火を見るより明らかだったかと。

うーん、当人には昨季も準々決勝ユベントス戦で0-3と先勝した後、2ndレグで自発的出場停止になった過去が。その時は総合スコアで同点に追い詰められた後半ロスタイム、ルーカス・バスケスがペナルティを受け、ロナウドがPKゴールを決めるまで延長戦突入の危険にあったチームをハラハラしながら、パルコ(貴賓席)で見守っていたはずなんですけどね。まさか、アマゾンで放送するドキュメンタリーの撮影(https://bit.ly/2XIxF4s)予定があったため、その苦い経験を忘れてしまったなんて思いたくはありませんが、まさにこれって、後悔決して先に立たず?

それでも1-4で負け、総合スコア3-5でCL敗退が決まった後には、「Claro que echamos en falta a nuestro capitan/クラーロ・ケ・エチャモス・エン・ファルタ・ア・ヌエストロ・カピタン(もちろん、ウチはキャプテンを必要としていた)」と嘆くソラリ監督やチームメートを慰めるためにロッカールームに降り、この失態の責任は選手たちにあると叱責していたペレス会長と鉢合わせ。「夏の間にFWを取ってと言ったはず。自分たちが全部悪い訳じゃない」と反論したところ、放出してやると脅される破目に。「だったら、契約年数分の年棒を払ってくれれば、胸を張って出ていくよ」と、ラモスが啖呵を切ったなんて裏話も翌日には出てきたんですけどね。

とはいえ、残った現実は試合中、誰か落ちる人がいたら怖いなと思う程、力のこもった応援を続け、チームが「サッカーの専門家も誰も信じていなかったが、応援に来た4000人のサポーターと我々だけは信じていた」(テン・ハグ監督)歴史的勝利を挙げた後もずっと、ピッチで喜ぶ選手たちと「Ramos bedankt!(ラモス、ありがとう)」と歌いながら、お祝いをしているアヤックスファンの声が響く中、マイクの前でカルバハルが「Llevamos una temporada de mierda/ジェバモス・ウナ・テンポラーダ・デ・ミエルダ(ボクらは最悪のシーズンを送っている)」と吐き捨てていた通り、この1週間でコパもリーガも最後の命綱、CL優勝の目も失ってしまったという辛いもの。

ミックスゾーンに現れたルーカス・バスケスも「この状態を受け入れるのは難しいけど、vamos a acabar la temporada de la mejor manera posible/バモス・ア・アカバル・ラ・テンポラーダ・デ・ラ・メホール・マネラ・ポシーブレ(今季をできるだけいい形で終えたい)」と言っていましたが、いやあ久々ですねえ。マドリーのヨーロッパの試合が3月に終わってしまうなんてことは。それこそ2005年から2010年の6年間はずっと、16強敗退が続いていたため、私もそんなものかと思っていたんですけどね。その後のモウリーニョ監督時代は3年連続準決勝進出、続く5年間では4度の優勝とCLを長い期間、楽しむことができていたため、この先、ベルナベウでリーガしか見られない2カ月以上をどう過ごしたら、いいものやら。

そのリーガも首位バルサと勝ち点差12となり、逆転優勝と言うのもおこがましくなってしまったため、世間ではお決まりの次期監督候補の名前が次々と飛び交う始末。どうやら木曜の朝はジダン監督再招聘案が有力だったようですが、夜にはテレ・マドリッド(ローカルTV局)がソラリ監督即時解任、モウリーニョ監督の復帰がほぼ確定と断言するまでになっていましたが、こればっかりはねえ。

とにかく今の彼らにできることは、他局がソラリ監督にとって、最後の試合になるだろうと言っている週末日曜、午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのバジャドリー戦でこのビッグウィーク全敗の悪いイメージを払拭することぐらいですが、恐れていた通り、ビニシウスは全治2カ月、ルーカス・バスケスも1カ月の重傷。おまけに翌日にはカルバハルまで右太もも肉離れを起こしていたことが発覚し、ベイルもアヤックス戦の終盤に足首を痛めていたとなれば…クロース、カセミロ、モドリッチも疲労困憊していますし、これまであまり出番のなかったイスコやマリアーノ、セバージョスといった選手たちに期待するしかありませんかね。

そして目標が来季のCL出場圏獲得だけになってしまったマドリーが今後、気に懸けないといけないライバルの1つ、現在、勝ち点差6で栄えある4位に鎮座している弟分のヘタフェはこの土曜、コリセウム・アルフォンソ・ペレスに最下位のウエスカを迎えるんですが、実は彼らがこんな高みいるのには訳があって、2月にコパ準々決勝2ndでバレンシアに手痛い後半ロスタイムの逆転敗退を喰らって以来、リーガ5試合で黒星がないんですよ。おまけにホルヘ・モリーナとマタの両エースが絶好調で、失点も兄貴分のアトレティコに次ぎ、リーガで2番目に少ないとなれば、前節はセビージャに2-1で勝利。19位との差を勝ち点1に、残留ラインの17位セルタとも勝ち点差3に詰め、勢いに乗っているウエスカとはいえ、勝つのは至難の技かと。

それはすでに週明けにはミチェル監督を解任と報じられた、マドリッド勢唯一の降格圏在住者、19位のラージョのためにもなるため、喜ばしいことですが、何せ彼ら自身は土曜にカンプ・ノウでのバルサ戦ですからね。とにかく先日のジローナ戦を見る限り、私もあまり楽観的なことは言えないんですが、そこは9試合連続白星なしの後、いきなりベルナベウでマドリーに勝ってしまったジローナみたいな例もなきにしろあらず。まだ12試合もあるんですから、希望を失ってはいけませんよ。

そして土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)にワンダにレガネスを迎えてミニダービーに挑むアトレティコはいうと、いやあ、また週1試合ペースに戻ってしまいましたからね。毎日、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場で汗を流しているんですが、時間があるのをいいことに、シメオネ監督はリーガ用と来週火曜のCL用の2種類のスタメンを用意しているよう。まず、レガネス戦では前節退場したコケと累積警告のゴディンが出られないのは仕方ないんですが、中盤にロドリゴ、トマス、ビトロ、コレアを配置。前線も足の付け根を痛めたジエゴ・コスタがまだのため,グリーズマンとコンビを組むのはカリニッチにして、3月の各国代表戦後まで戻れないヒザを痛めたリュカ、前節ふくらはぎを痛めたフィリペ・ルイスら負傷者で欠員となる左SBにはカンテラーノ(アトレティコBの選手)のソラーノを当てる予定だとか。

翻って、ユベントス戦1stレグでの品のないポーズにも関わらず、幸いUEFAからの処分が罰金2万ユーロ(約250万円)のみに留まり、トリノでもベンチに入れることになったシメオネ監督は、そちらで出場停止のトマスをコケ、同ジエゴ・コスタをモラタで補うんですが、この大一番の左SBはファンフランに任せるよう。うーん、最近、ケガばかりしているフィリペ・ルイス同様、今季で契約が切れる30代の彼ですが、こちらはすでに1年延長のオファーが届いたみたいですしね。そのポジションにあまり馴染めず、文句を言っていたサウールにシーズン終了後売却の噂が出ているのを見てもやっぱり、黙って仕事をする選手には報いがあるってことでしょうか。

一方、前節レバンテ戦の勝利で11位、ヨーロッパリーグ出場圏の6位までも勝ち点差4と着々と上昇しているレガネスは今回、主力に欠場者が多数出る見込み。ええ、累積警告での出場停止がオスカル、レシオ、シオバス、GKクェジェルと4人もいる上、キャプテンのブスティンサ、ジョナタン・シウバがケガでプレーできないからですが、心強いのは大型FWエン・ネシリの復帰かと。うーん、水曜の練習でアトレティコはユーベ戦に備えて、ハイボールのクリアを集中的に練習していたとスポーツ紙で読んだんですが、これはレガネス戦にも有効ですからね。何はともあれ、春の到来を前にマドリッドから全てのCLがなくなってしまわないよう、ケガ人を出すことなく、尚且つ首位との距離を現在の勝ち点差7以上、離されないように終えてもらえるといいんですが。

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